『DQN-親友裏切り-』ちょい出しサンプル3-1
※3・4章を飛ばして、こちら新キャラ登場の5章のサンプルになります。
学校帰り。
親友から借りていたカギで勝手知ったるリビングに入ったオレは、そこで心臓が萎縮した。
なぜって?
だって誰もいないと思っていたのに、そこに人がいたからだ。
目の前にいる「彼」は、両手両足をガムテでぐるぐるにされ、イモムシ状態でリビングの床に転がされている。
しかも目隠しをされてだ。
「ようやく帰って来たな、どういうつもりだ!」
恐らく気配を察したのだろう、彼がオレに向かって声を張る。
「あ………あの………」
「その声は西園寺じゃないな、すまない、驚かせた、この家の者か?」
「………………いえ、違いますけど………」
「そうか、誰か知らないが、頼む、このガムテープを解いてくれ」
「は……はい」
返事をしてから、あっとなる。
パッと見た感じ、彼は恐らく大学生。
つまり、これは間違いなく一志君の仕業ということになる。
断りもなく、彼を自由にしてしまっても大丈夫だろうか………
「どうした、何をしている?」
「………すみません、やっぱり先に一志君に確認してからでないと………」
ここ最近の白峰先輩に対するアレやコレやらが頭をよぎり、お伺いを立てなければという気にさせられる。
「よせっ! オレに変なクスリを飲ませてこんな真似をしたのだアイツだ、連絡を入れる必要なんてない!」
鋭い気迫に空気が揺れる。
目隠しをしているから表情は見えないけど、彼が相当お怒りなのは、スゴク伝わってくる
とはいえ………
「頼む、ヤツが帰ってくる前に解いてくれ」
「………………………」
「………仕方ない、正直に言う、少し前からトイレを我慢している、そろそろ限界なんだ」
「エエッ!」
大変だ、それなら話は別。
オレは慌てて彼の自由を奪っていたガムテを解いた。
「助かった、ありがとう」
「………いえ」
「俺は澤北珀也(さわきた はくや)、君は?」
彼が………いや、澤北さんが目隠しを取って、オレを見てくる。
「松野颯太………一志君の弟の親友です」
「ああ、西園寺と違って頭のデキがずば抜けていいらしいな」
「勲のこと知ってるんですか?」
「恭也から話だけは聞いていた。俺と恭也は従兄で、同じ大学に通っている」
「………イトコ」
ああ、なるほどな――と、至極納得。
だってオレの目の前にいる澤北さんって、白峰先輩と引けを取らないくらいのハイレベルイケメンだから。
何かスポーツをやっていそうな、鍛えられた長身からは自信が溢れていて、自然体なのに魅力がある。
「あの………いいんですか?」
放り捨てられていた衣服を身に着けている澤北さんに、そっと声をかける。
今はそんなことよりも先に、トイレに行った方が………
「すまない、さっきのはウソだ」
「………えっ」
「ああでも言わなければ、拘束を解いてもらえそうになかったからな。とはいえ、ウソをついたのは申し訳ないと思っている」
「………いいえ」
オレの方を見て、きっちり頭まで下げてくれる。
確かに同じ立場だったら、オレでもそうしていたかもしれない。
けれど、一志君に断りもなく拘束を解いてしまった。
今からでも遅くはない、ヨシッ、一志君に連絡しよう。
オレはスマホを取り出した。
とその時、玄関のドアが開いて真っ直ぐこちらに(リビングに)向かってくる気配がした。