投稿記事

無料プランの記事 (110)

WsdHarumaki 2023/02/24 23:41

弟の憂鬱:七色の指輪【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(15/50)

第三章 弟の憂鬱
第五話 七色の指輪

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略を成功させる、祠の宝石をカットしたルビーを銃使いのオスカーに渡す。

 オスカーとギルドで別れると、幽体の状態の洞窟の主のレオノーアがついてくる。ニヤニヤしている彼女は、オスカーと私の仲が良いのをからかうが、私は気にしない。私からすればオスカーは、お父さんと同じくらいに歳を取って見える、おじさんなのだ。

 私は宝石の洞窟に向かう。指輪に宝石を使うと言うので街を出て、また少しだけ遠出する。洞窟に入り彼女が住んでいる巨大なクリスタルの前に立つと、あのクリスタルの中に導かれた。豪華な廊下を歩きながら、この不思議な状況に馴れている自分に驚く。

 クリスタルの中では、レオノーアは生身の女の子だ。私の前に立つと左の手首をやわらかく握る。

「指輪を見せて」
 洞窟の主のレオノーアが私の指輪に触る。指輪の宝石は美しく輝き赤や青、緑や黄色、めまぐるしく変わり光輝く。彼女は宝石の封印を解除すると指輪が強化されると教えてくれる。

「指輪は強くなるの?」
「封印した宝石を全て入れるわ、あんたにあげたのは本当に欠片ね」
 封印されていた宝石の塊を、私が持ち帰る。大人のこぶし大の宝石は鞄には入るが重たかった。こんな小さな指輪に…………入るの?

 私が不思議そうな顔をしていると、レオノーアは、また教えてくれる、宝石を指輪に吸収させる、この七色の指輪は宝石を喰らう。指輪の中に宝石の力は内部に吸収されて利用できる。表面が七色に輝くのは喰らった宝石の種類が多数あるから、と教えてくれた。

「そんなに便利なのね」
「封印を解いて指輪を喰わせれば、世界最強になれるわよ」
 そんな甘い言葉で私を誘惑するレオノーアは、封印が解き終わったら返せと言うに決まっている。それに七色の指輪が取れないと、結婚指輪もはめられない、これではまるでレオノーアと結婚しているみたいだ。

「熱あるの? 顔が赤いわよ」
 私が愛想笑いをしていると、彼女はルビーの塊を持ってくる。既に加工してあるのか、複数個の大きな宝石はギラギラして怖くなる。カットする事で余った宝石を銃使いのオスカー達に渡している。宝石もこれだけ巨大だと、城をまるごと買える値段に感じる。私は前からの疑問を、レオノーラに聞いてみた。

「宝石の洞窟は無限に宝石を出せるの? 」
「そうよ、呪われたクリスタルは無限に宝石を生み出せる」

「…………それなら、七色の指輪も無限に強くなる? 」
「…………ここは呪われた人間を宝石にするのよ」

 絶句する。宝石が対価なしで出現するなら苦労はしない。人を食って宝石が生み出されている、それで呪われたクリスタルなのか。

「呪われるのには条件があるから、あなたは平気よ、もう私と契約している」
 レオノーラがルビーの塊を私の指に近づける。瞬きすると消えて無くなる。宝石と指輪を接触しただけで取り込めていた。

「便利でしょう? あなたの力はどんどん強くなるけど、前回みたいに魔法が使えない状態は危険ね、護衛をつけなさい、料金が払えるようにカットした宝石を渡すから」
 私はうなずくと、レオノーラから青の洞窟の場所を教えてもらう。私はまたギルド経由で、青の封印を探検しよう。

WsdHarumaki 2023/02/23 20:16

弟の憂鬱:銃を持つ男【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(14/50)

第三章 弟の憂鬱
第四話 銃を持つ男

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略を成功させた、祠(ほこら)にはまっていたルビーを手に入れる。

 金属製の筒の重さは剣の数倍はある。俺の銃は太く長く重い、扱いが難しく馴れるために何年も訓練が必要だ。俺はそれを子供の頃から扱っていた。

「火薬と鉛弾が入った袋だ」
 親父が銃の使い方を教えてくれる。奥深い山奥で獣を倒すために銃を使う、俺の国では、それが当たり前の職業だ。俺はその生活を捨てた、いや逃げた。自分ではもっと大きな事が出来ると信じた。傭兵に志願して国を出る。

 結果は散々だ。傭兵として戦場で功績を挙げても名声は上がらない。単に使い捨ての駒として重宝された。俺はそこも逃げるように別の国へ向かう。

 ギルドから複数の依頼を貰いながらのんびり生活している。今は仕事の掛け持ちが多い。

「ミナリアか? 」
 ギルドに行くと金髪の美しい少女が居る。ターゲットの一人だ。まだ若く苦労を知らなさそうな彼女は洞窟のドラゴンに殺ろされそうになっていた。

「まだギルドで仕事を受ける気か?」
 俺は心底驚く、あの状況を経験してもまだ働きたいのか? 普通なら親元に逃げて帰る。

「オスカーさん、報酬をお渡ししたいです」
 笑う彼女は年相応にかわいい仕草で俺に袋を渡そうとする。俺は首を横にふる。

「お前が倒した、お前が使え」
「……あの小さい声で話をしますが……大金です」
 秘密めかして俺に小声で説明する。どうやらルビーを渡したい事が判ると、俺は二階を指さす。

「このギルドの二階は貸し切りで利用できる、そっちで話をするか? 」
 ミナリアは素直な顔でうなずく、警戒心が無いと言うか男と二人きりになるのを心配していない。俺は彼女と二階の部屋を借りる事にした。なにやら案内人のマリアが俺を睨んでいる。平気だ、変な事はしない。手で合図しながら俺は二階に昇る。

xxx

 俺は袋の中身を見ると考え方を変えた。高額なルビーが複数個ある。

「これを貰っていいのか? 」
「当然です、報酬です」

 ニコニコ笑う彼女は無邪気なのか、宝石の価値が判らないのか嬉しそうに俺に袋を渡す。俺は前から武器を作りたかった。俺は彼女に礼を言うと袋を受け取る。

「大事に使わせて貰うよ、また仕事があるなら手伝う」
「ありがとうございます、次もお願いします」

どうやら俺はミナリアに信頼されたらしい。

WsdHarumaki 2023/02/22 21:16

弟の憂鬱:弟の事【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(13/50)

第三章 弟の憂鬱
第三話 弟の事

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアに封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略を成功させる、祠(ほこら)のルビーを手に入れられた。

 朝から仕度してルビーの袋を用意する。小さな袋だが価値は凄まじく高い。小分けして貰ったルビーは仲間達への報酬だ。ギルドに預ける事で、ルビーの配達や受け取りが可能になる。

 扉が上品に叩かれた。この仕草は弟なのはすぐ判る。コンコンと機械のように正確に叩く、几帳面で礼儀正しく落ち着いている。まるで大人と接している気分。自分の未熟さを突きつけられている感じもある。

 扉を開ける。黒髪で少し巻き毛のある短めの髪の少年は賢そうな顔で立っていた。

「リュカ…………」

 家を追い出された時には弟とは顔を合わせなかった。悲しくて余裕がなくて少しばかりの荷物を持つとすぐに家を飛び出した。私が邪魔なら邪魔でもかまわない、母が私を嫌いでもかまわない、だって実の子供じゃない。他人の子供の面倒を見られないのは当たり前だ、それでも悲しい。弟と血は繋がっているが、母親にそっくりだ。冷静で物事に動じない、いや冷徹にすら感じる。

「餞別を持ってきました」

 弟とは仲が悪いわけじゃない。それでも本当の姉弟はこんなに冷えた関係なのか?と思うときもある。よそよそしいのだ、まるで事務的にお付き合いしているだけで、私を遠ざけたいの? と感じる時もある。この時は餞別で泣けてきた、餞別? お別れ? それも無表情で?

 違う、弟は笑いをかみ殺していた。笑おうとして我慢しているのが判る、そんなに姉が嫌い? まぁ確かに、こき使ったりした事もあるけど、姉ならこれくらい普通よね? 程度だ。私を笑いに来たと思うと自然に涙が出た。私の思い違いなのは自分でも理解している。リュカは性格が素直で良い子だ。自分勝手な想像で悲しくなり自分の事を嫌いになる。

「今日は帰って……」

 くるりと回ると弟は帰る。私は扉を閉めるとゆっくりと窓に近づくと馬車に乗る弟を見送る。同じ母の姉弟ならもっと普通にお話できるのかな? と思う。私はルビーの袋を手に取るとギルドに向かうために部屋を出た。

xxx

「マリア、預け物があるの……」
「報酬あるわよ」
 魔女ギルドの案内人のマリアがふりむくと微笑む、前回のお手紙を届けた報酬だ。小銭なのでお昼代くらいにしかならない。

 カウンターに革袋を二つ置く、中身をマリアに話すと息をのむ、価値が高いのだ、繁華街に持ち家を買えるくらいの金額だ。

「これがあんたが倒したドラゴンの報酬? 」
「みなさんのお陰で倒せました」

 祠(ほこら)のルビーの事は正直に話すが、宝石をカットして加工した人物については、教える事はできない。洞窟の魔女の事は知られてはいけない。

「ミナリア、次は青の洞窟よ」
 いつのまにか私の後ろに居るのは、洞窟の主のレオノーアだ。彼女は気ままに私を監視している。自分を裏切らないか、彼女の秘密を人に漏らさないか…………

WsdHarumaki 2023/02/21 19:21

弟の憂鬱:魔女の娘【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(12/50)

第三章 弟の憂鬱
第二話 魔女の娘

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略が終わる、封印の祠(ほこら)のルビーを手に入れる

 「まちなさい! 」
 子猫を追いかけて姉が走り回る。母は厳格な人で僕は子供の頃から厳しく育てられ、行儀作法に関してはうるさく言われた。だが姉は、先妻の娘で自由奔放に育っている。感情が豊かで泣いたり怒ったりと起伏が激しいので見ていると面白いが、母からすればどう接すれば良いのか判らない様子だ。

「ごめんなさい! 」
 母が叱責すればボロボロと涙を流す。まるで継子(ままこ)イジメのようにも見える。もてあましているのは僕から見ても理解できた。姉は叱られてもすぐに遊び回るので、何とも思ってないのかもしれない。だが躾ける側からすれば扱いにくい。

 父親は温厚な人で、僕をかわいがってくれた。同じように姉も甘やかしていた。他家の子供よりは、わがままに育っている。

「リュカ」
 姉が僕を呼ぶ時は本を見せてとか、書庫から資料を出してとかそんなお願いだ。女性には学問は不要とされていたので、ミナリア姉さんは、行儀作法の先生や音楽の家庭教師からしか学べない。

 その日は昼下がりで僕は本を読んでいた。中庭で騒ぎが起きる、召使い達があわてている。僕も好奇心から立ち上がり庭に出ると……温室が壊されていた。

「なにかあったの?」
 幼い僕を見ながら召使いが、大丈夫ですよと部屋に連れ戻した。後で母から話を聞くと、姉が温室のガラスを魔法で破壊したと憂鬱そうに語る。姉は大量のガラス玉を生成していた。

「私はあの子を育てる自信が無いわ……」
 母は僕を抱きしめる。姉は魔女として力を得ていた、国の大半の女性は魔女にはならない、適正もあるが呪文を知らなければ発動はしない。幼い頃から訓練をしないと前線で戦えるようにはならないので、中途半端に力を持つと危険だ。貴族の娘を戦わせるために魔法を学ばせる事は出来ない。

 もちろん魔法を使える子供が居れば、召使いも怖がる。力を使われたら大人でも怪我をするし、働けない体になれば、僕の家から追い出される可能性もある。家の中で姉は自然と孤立したが、姉は気にせずに自由に生きていた。僕はその姿が羨ましい、まるで小鳥が自由に空を飛び回っているように見えた。地面に居る僕は小鳥を眺めながら空を飛びたいと願う。

「旦那様が事故で…………」
 父が死んだのは馬車の事故だ。道ばたの石に車輪が乗り上げた拍子に、車軸が折れて横倒しになり、乗車していた父は頭を強く打ち亡くなる。悲しいというよりもこんな事で死ぬんだと呆然とした、姉も母も泣いている。姉は特に大泣きして大変だった。感情的になる女の子が魔法を使うと危険だ。もちろん姉はそんな事はしないが、周囲の人間はそう思っていただろう。

「姉さん大丈夫だよ」
 姉のそばで僕が慰める。だけど姉はあまり僕に心を開かない、やはり母が違うと他人に感じるのかもしれない。僕は悲しいはずなのに、その状況を淡々と感じているだけだった。

限定特典から探す

月別アーカイブ

記事を検索