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WsdHarumaki 2023/03/10 20:40

青の洞窟:青の洞窟【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(20/50)

第四章 青の洞窟
第五話 青の洞窟

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略を成功させた、次の攻略は魔王の墓と呼ばれる【青の洞窟】を向かう。マルシアを説得したミナリアは洞窟の攻略を始めた。

 老剣士のマルシアさんに【青の洞窟】の前で怒鳴られると、私は泣いてしまう。ずっと我慢してきたのに、と思うともっと泣ける。涙がボロボロ出る、うえぇーんと泣くとまるで子供だ。

「ごめんなさい」
 自分でも誰に謝っているのか判らない。感情がコントロールできない。老剣士のマルシアが必死に私をなだめてくれると段々と落ち着いてきた。

「ここは危険なので村に帰りましょう」
「判ったよ戻るよ」
 マルシアが納得してくれる。私は心の底から嬉しくなるとにっこりと笑う、マルシアさんも安心したのか笑顔だ。このやりとりを見ているクリスタルの洞窟の主のレオノーアは、うんざりした顔でつぶやく。

「本来の目的を忘れないで」
 私以外は姿形も声も聞こえない霊体のレオノーアは、青の洞窟の攻略を教えてくれる。この洞窟は侵入者を徐々に小さくする呪いがある。トラップとは異なり呪いのため気がつかない。

「あなたの七色の指輪は、呪いに抵抗できるわ。」
 レオノーアからあずかって私の左手の指から抜けない魔法の指輪。赤の洞窟で得られた宝石の力で莫大な魔力をためている。私は洞窟に入ると老剣士のマルシアさんが心配そうに、護衛してくれる。彼はとても優しい、仲間を大切にしていたと感じる。

「あっち通って、次はこっちよ」
 霊体のレオノーアは指図しながら、呪いが薄い部分を通過させる。呪いは蓄積するので薄い部分を見つけて歩けば効力が落ちる。私達は少しずつ小さくなっているのか、周囲の道が広がり、天井が高くなる。歩いている距離がどんどん短くなる、これでは時間を使っても大人一歩分の道を何倍もの時間を消費する事になる。

 大きな広間に出ると、本来は普通の部屋の筈が巨大な洞窟のドームに居るような錯覚がある。遠くに巨大な青い光が見えた、サファイアだ。

「敵が来るぞ! 」
 銃使いのオスカーが怒鳴る、老剣士のマルシアさんが剣を抜くと昆虫型モンスターを倒そうと前に出る。オスカーは片肘を付くと見た事が無い長い筒をモンスターに向けた。瞬間だ、何かが赤く光ると遠くのモンスターが爆散した。

「何あれ? 私があげた宝石で銃を作ったの? 」
 オスカーは宝石銃で敵を倒し始めた、遠くのモンスターがどんどん消える。

「ミナリアは、指輪の魔法でサファイアを壊して」
 霊体のレオノーアが叫ぶ、オスカーが倒しきれないモンスターが増え始めた。老剣士のマルシアさんの近くまで来る。サファイアを破壊しないと敵は減らない。この洞窟の呪いを維持するのは青い宝石だ、私は左手を遠くの宝石に向けると魔法の呪文を唱えた。

「灯火(ともしび)の霊鳥(れいちょう)」
 指輪から美しい小鳥が現れて赤く燃える。命令された方向に飛び立つと、サファイアめがけて飛んでいく。

 瞬きをする時間で、とても遠くで青い光が広がると同時に、私達は元の大きさに戻っていた。狭い部屋の中で立っている、そして足下には蟻が死んでいた。

「モンスターの正体は、蟻…………」
 老剣士のマルシアさんは、呆然とつぶやく。

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「仲間の敵討ちできたよ」
 マルシアさんは、私の手を嬉しそうに握ると村に戻っていく。私は、こぶしくらいの大きさの青い宝石を手に入れた、私は鞄に大切に保管する。この宝石も七色の指輪に取り込もう。残りの封印はあと二つだ。

WsdHarumaki 2023/03/09 19:24

青の洞窟:老剣士の決意【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(19/50)

第四章 青の洞窟
第四話 老剣士の決意

 あらすじ
 魔女のミナリアは呪いの洞窟に閉じ込められていた黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略を成功させた、次の攻略は魔王の墓と呼ばれる【青の洞窟】を向かう。そこには仲間を失った老剣士のマルシアルが居た。

 まだ未成年の少女が用心棒の男と歩いてくるのが見えた、村の連中が依頼したのはすぐに判る、何度か似たような体験をしている。俺が洞窟の前に座っているのが問題なのか? と腹立たしくも感じるが、村長は住人の安全に関してまかされている、何もしないで俺が事故に会えば責任があると考えるのかもしれない。少女は俺に近づくと俺の名前を呼ぶ。

「マルシアルさん? 」
「ここに立ち入るな! 」
 俺は立ち上がると脅す、どうせ泣いて逃げるだろうと考えた。そして……本当に泣いた。俺は慌てた、金髪の少女は、まだ十七歳くらいだろうか?目からぼろぼろと大粒の涙を流すと、声を出して「ごめんなさい」とか「ゆるして」謝罪を始めた。

「あ!……すまん……怒鳴ってすまん……許してくれ」
 まるで小さな子供のように泣く少女をあやすように話を聞くと、やはり村長の差し金だが、まさかこんな形で説得されるとは思わない。

「判った、もうここに来ないよ、泣くな」
 潮時だった、体も動かないし、ここに居座っても意味はない、老後の資金は若い頃に魔王軍の先兵を倒した時の金で暮らせる。働く必要も無い俺は、みっともない生き方をしていたのかもしれない。ここに居る必要は無かったんだ……後悔が大波のように俺の心を洗い流す。なにかすっきりした感じがする。少女のお陰だ。

「じゃあ俺は村に帰るよ」
「ありがとうございます、私はこれから洞窟を攻略しますので」
「え? 」
 彼女は用心棒の男に合図すると【青の洞窟】の中に入る、ここがどれほど危険なのか知らないのか?俺はあわてて追いかけた。

「まてまて、攻略ってなんの話だ? 俺の説得が仕事じゃないのか? 」
「ごめんなさい、別件の依頼なんです」
 金髪の少女はニコニコ笑いながら洞窟の中を歩く、青白い壁は前に入った時と同じだ、しかし今はトラップを解除するシーフも居ない。いやまてよ?トラップは解除されているか? 俺たちが進んだところまでは解除している筈だ。

「罠とかあるんだぞ? 危険だろうが? 」
 俺は彼女を必死に止めようとした、ぐねぐねと曲がる道を平気で歩き回る彼女についていく、こんな道があったかな?分岐が多い所を案内なしで歩き回る。迷うとは考えないのか?そして大きな広間に出た事に気がついた。前回と同じだ。向こうから六本足の巨大な昆虫型のモンスターが歩いてくる。

 俺は剣を抜いた、彼女だけは帰してやりたい。それがここで死んだ仲間への償いだ。

WsdHarumaki 2023/03/08 20:24

青の洞窟:説得【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(18/50)

第四章 青の洞窟
第三話 説得

 魔女のミナリアは洞窟に閉じ込められた黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略を成功させた、次の攻略は魔王の墓と呼ばれる【青の洞窟】を向かう。

「あんたが説得するのか? 」
 村長は私を見ながら悩んでいた、どうやら説得のエキスパートが欲しかったのかもしれない。

「成功報酬にして下さい、大丈夫です、説得できなかったらお金は不要です」
 ギルドから受けた内容は説得するだけで報酬を貰えるが、さすがに小娘がお話しただけで手数料を取るのは気が引ける。それに本来の目的は【青の洞窟】なので、手間賃に関しては気にしていない。村長は現金なのか村長は現金なのかニコニコしながら、説得する相手を教えてくれた。

「魔王の墓を見張るじいさんなんだよ、名前はマルシアル。かなり昔から居るが彼はもう体力が無い、道中も危険なので隠居しろと説得してくれ」
 昔は強い剣士だった彼は、【青の洞窟】で仲間を亡くしてから洞窟を見張っていると言う。

「ほっとけばいいのに、なんでわざわざ説得するのかしら? 」
 レオノーラが不思議そうに語る。彼女は霊体なので他の人には見えないし、話す言葉も聞こえない。私は村長の家から出ると銃使いのオスカーに聞いてみる。

「オスカー、どうすれば説得できるかしら? 」
 しばらく沈黙した後に彼は言葉少なめに語る。
「復讐の意味が強いと思う、彼を説得するのは難しいだろうな。彼は自分の無能さに我慢できないから、ここに縛られている……」

 私は人を納得させられるような経験もない、オスカーですら難しいのに私のような未成年の話を聞いてくれるとは思えない。ギルドの仕事が、どれほど難しいか理解できた。オスカーは続けて話をする。

「無理してまで危険な場所に行くのは、自殺も考えていると思う。道中で命を無くせば、仲間への弔いになる。自分もモンスターに殺された、これならあの世で顔向けできる……そんなところかな」
 オスカーの無表情な顔は悲しげに見える。私も悲しくなる、そんなに思い詰めた顔をされると私も泣けてくる。彼がどんな経験をしたのか私には想像できない。好きな人を冒険中に亡くしたら私はどうするのだろうか? もう二度と冒険しない? 復讐を誓う? 感情が入り乱れると涙が出る、泣かないように必死に我慢をして【青の洞窟】まで歩いて行く。

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 【青の洞窟】が見えてくると老人が近くに座っていた。長い剣を持つ彼はかなりの老体に見える。うなだれている彼に近づくと気配で私を見る。

「マルシアルさん」
 私は声をかけながら近づいた、彼はゆっくりと立ち上がる。そして剣を抜いた。剣を突きつけながら叫ぶ。

「ここに立ち入るな! 帰れ! 」

WsdHarumaki 2023/03/07 20:55

青の洞窟:頼み事【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(17/50)

第四章 青の洞窟
第二話 頼み事

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略を成功させた、祠の宝石をルビーをカットして報酬として手に入れる。

「剣士さんを諦めさせるんですか? 」
 私はギルドの案内人のマリアからの奇妙な頼み事に驚く、今までは簡単な手紙を配達する仕事ばかりで楽だけど、お昼を食べると無くなるような、お小遣い程度の依頼しか受けていない。今回はその十倍のお値段だ。そして【青の洞窟】の近くの場所だ。私は成功しなくても代金は貰えますという責任感があるような、無いような仕事をギルドから受ける。

「変な依頼ね、楽そうでいいんじゃないの? 」
 私にしか見えないレオノーラが霊体の状態で一緒に歩きながら、つぶやく、私は黙ってうなずく、さすがに道の真ん中で独り言で会話していたら怖い娘と思われしまう。

「ミナリア、ギルドから仕事を貰ったのか? 」
 後ろから声をかけられる、オスカーは背の高い黒髪の銃使いで無表情のまま私に近づく、ちょっと怖いけど信頼している相手だ。赤の洞窟で私を助けてくれた。彼は私が渡したルビーを受け取ると次も連れて行ってくれと頼まれている。高額な報酬を貰えると期待しているようだ。

「はい、簡単なお仕事を受けました、近くに洞窟もあります」
「かまわんよ、俺も儲かる」
 無表情で言われる。顔から喜怒哀楽が判らないので内面を想像できないけど、悪意は無さそうに見えた。私は出発の日を決めるとオスカーに手をふって別れる。

「無愛想な男ね」
 レオノーラは銃使いを好きでは無いみたい。もっとも彼女は大体の人間が嫌いに見えた。

「レオノーラは…………あの水晶から解放されたらどうするの? 」
 小声で聞いてみる。レオノーラは正面を向いたまま黙っている。確か過去に戻れると彼女は話をしていた、元の世界で幸せに暮らしたいのかな?想像する、たった一人で青い骸骨と暮らす毎日、そう考えると涙が出てきた。心細い生活で胸が痛くなる。

「何を泣いているの!? 」
 彼女は驚いた様子で大声を出した、私は道を歩きながら涙を流していた。頭を横にふる、ただただ彼女がかわいそうに思う。速く彼女を助けてあげよう。私は泣きながら宿屋に戻ると、カウンターに居た宿屋の主人が驚いている。その日の夕食は何故か豪華だった。

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「どうした、目が赤いぞ」
 銃使いのオスカーは私の顔を見ながら心配している、もっとも顔は無表情なので、私を心配しているのか? と言われると確信は無い。それでも私は彼の顔を見てニッコリと笑う。

「なんでもありません、いきましょう」
 青の洞窟の冒険へ出発だ。私は転送ゲートに向かって元気に歩き出す。

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