WsdHarumaki 2023/03/08 20:24

青の洞窟:説得【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(18/50)

第四章 青の洞窟
第三話 説得

 魔女のミナリアは洞窟に閉じ込められた黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略を成功させた、次の攻略は魔王の墓と呼ばれる【青の洞窟】を向かう。

「あんたが説得するのか? 」
 村長は私を見ながら悩んでいた、どうやら説得のエキスパートが欲しかったのかもしれない。

「成功報酬にして下さい、大丈夫です、説得できなかったらお金は不要です」
 ギルドから受けた内容は説得するだけで報酬を貰えるが、さすがに小娘がお話しただけで手数料を取るのは気が引ける。それに本来の目的は【青の洞窟】なので、手間賃に関しては気にしていない。村長は現金なのか村長は現金なのかニコニコしながら、説得する相手を教えてくれた。

「魔王の墓を見張るじいさんなんだよ、名前はマルシアル。かなり昔から居るが彼はもう体力が無い、道中も危険なので隠居しろと説得してくれ」
 昔は強い剣士だった彼は、【青の洞窟】で仲間を亡くしてから洞窟を見張っていると言う。

「ほっとけばいいのに、なんでわざわざ説得するのかしら? 」
 レオノーラが不思議そうに語る。彼女は霊体なので他の人には見えないし、話す言葉も聞こえない。私は村長の家から出ると銃使いのオスカーに聞いてみる。

「オスカー、どうすれば説得できるかしら? 」
 しばらく沈黙した後に彼は言葉少なめに語る。
「復讐の意味が強いと思う、彼を説得するのは難しいだろうな。彼は自分の無能さに我慢できないから、ここに縛られている……」

 私は人を納得させられるような経験もない、オスカーですら難しいのに私のような未成年の話を聞いてくれるとは思えない。ギルドの仕事が、どれほど難しいか理解できた。オスカーは続けて話をする。

「無理してまで危険な場所に行くのは、自殺も考えていると思う。道中で命を無くせば、仲間への弔いになる。自分もモンスターに殺された、これならあの世で顔向けできる……そんなところかな」
 オスカーの無表情な顔は悲しげに見える。私も悲しくなる、そんなに思い詰めた顔をされると私も泣けてくる。彼がどんな経験をしたのか私には想像できない。好きな人を冒険中に亡くしたら私はどうするのだろうか? もう二度と冒険しない? 復讐を誓う? 感情が入り乱れると涙が出る、泣かないように必死に我慢をして【青の洞窟】まで歩いて行く。

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 【青の洞窟】が見えてくると老人が近くに座っていた。長い剣を持つ彼はかなりの老体に見える。うなだれている彼に近づくと気配で私を見る。

「マルシアルさん」
 私は声をかけながら近づいた、彼はゆっくりと立ち上がる。そして剣を抜いた。剣を突きつけながら叫ぶ。

「ここに立ち入るな! 帰れ! 」

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