WsdHarumaki 2023/03/09 19:24

青の洞窟:老剣士の決意【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(19/50)

第四章 青の洞窟
第四話 老剣士の決意

 あらすじ
 魔女のミナリアは呪いの洞窟に閉じ込められていた黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされて【赤の洞窟】の攻略を成功させた、次の攻略は魔王の墓と呼ばれる【青の洞窟】を向かう。そこには仲間を失った老剣士のマルシアルが居た。

 まだ未成年の少女が用心棒の男と歩いてくるのが見えた、村の連中が依頼したのはすぐに判る、何度か似たような体験をしている。俺が洞窟の前に座っているのが問題なのか? と腹立たしくも感じるが、村長は住人の安全に関してまかされている、何もしないで俺が事故に会えば責任があると考えるのかもしれない。少女は俺に近づくと俺の名前を呼ぶ。

「マルシアルさん? 」
「ここに立ち入るな! 」
 俺は立ち上がると脅す、どうせ泣いて逃げるだろうと考えた。そして……本当に泣いた。俺は慌てた、金髪の少女は、まだ十七歳くらいだろうか?目からぼろぼろと大粒の涙を流すと、声を出して「ごめんなさい」とか「ゆるして」謝罪を始めた。

「あ!……すまん……怒鳴ってすまん……許してくれ」
 まるで小さな子供のように泣く少女をあやすように話を聞くと、やはり村長の差し金だが、まさかこんな形で説得されるとは思わない。

「判った、もうここに来ないよ、泣くな」
 潮時だった、体も動かないし、ここに居座っても意味はない、老後の資金は若い頃に魔王軍の先兵を倒した時の金で暮らせる。働く必要も無い俺は、みっともない生き方をしていたのかもしれない。ここに居る必要は無かったんだ……後悔が大波のように俺の心を洗い流す。なにかすっきりした感じがする。少女のお陰だ。

「じゃあ俺は村に帰るよ」
「ありがとうございます、私はこれから洞窟を攻略しますので」
「え? 」
 彼女は用心棒の男に合図すると【青の洞窟】の中に入る、ここがどれほど危険なのか知らないのか?俺はあわてて追いかけた。

「まてまて、攻略ってなんの話だ? 俺の説得が仕事じゃないのか? 」
「ごめんなさい、別件の依頼なんです」
 金髪の少女はニコニコ笑いながら洞窟の中を歩く、青白い壁は前に入った時と同じだ、しかし今はトラップを解除するシーフも居ない。いやまてよ?トラップは解除されているか? 俺たちが進んだところまでは解除している筈だ。

「罠とかあるんだぞ? 危険だろうが? 」
 俺は彼女を必死に止めようとした、ぐねぐねと曲がる道を平気で歩き回る彼女についていく、こんな道があったかな?分岐が多い所を案内なしで歩き回る。迷うとは考えないのか?そして大きな広間に出た事に気がついた。前回と同じだ。向こうから六本足の巨大な昆虫型のモンスターが歩いてくる。

 俺は剣を抜いた、彼女だけは帰してやりたい。それがここで死んだ仲間への償いだ。

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