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WsdHarumaki 2023/06/02 19:02

ミナリアとレオノーア:大団円【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(50/50)

第十章 ミナリアとレオノーア
第五話 大団円

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、全ての封印が解かれた事で、呪いが全世界に向かって広がり始めた。

「だからどうした、呪いを少女に刻む、お前らも外道だ! 」
 老剣士が叫ぶ、怒りに満ちた眼は呪縛を解いていた。怒号と共に剣を抜いて巨大な宝石骸骨に突撃する。怒りが伝染したのか、カルリト少年も走り出した。私は夢から覚めるように現実に戻る、呪いを呪いで返せば永劫まで終わらない。

 銃使いのオスカーも連続で宝石銃を骸骨に向けて乱射する。しかし宝石骸骨には通用しない、魔法は吸収されていた。魔法も物理攻撃もダメ。私は宝石化したブーツを脱いで走った、足が痛い、素足が血まみれになるのが判る。私は止まらない。レオノーアに抱きつく。

「お願い! おかあさんを返して! 」
 自明のように口にしていた。この体は私の母のもの、今はレオノーアの魂が入っているが、元は数千年生きてきたセレーナの体だ。そう思うと泣けてくる、とても大きな声で泣いてしまう。幼い時のように泣いていた、宝石洞窟に反響するといつのまにか大音響になる。わんわんと響く音は多重に反射する。

「泣くな……泣くな……俺たちの苦痛を思い出す……私たちの悲しい記憶が蘇る……泣かないで」
 
 悲痛な叫びは宝石骸骨に影響を与える、自分たちが受けた苦しみを他人に与える、与える側に回れば呪いは自分を苦しめる。他人に苦痛を与えれば宝石骸骨も苦痛でもだえる。

 お父様のお葬式の時に泣いた記憶が蘇る、私はステンドグラスを破壊した、結晶を破壊できる力があった、呪いを浄化して壊す精霊の力。今は泣く事で発動する。全ての宝石を破壊する!

 絶叫とともに宝石骸骨にヒビが入ると崩れ落ち始めた、老剣士も少年もあわてて逃げ出す。今はもう、宝石の山が残るだけだ。壁の宝石は輝きが薄れる、死霊は泣かれる事で浄化されていた。誰かが涙を流して彼らの苦痛を和らげる、暗くなる洞窟の呪いは消えていた。私は漆黒の髪の少女を慰める。

「レオノーア、大丈夫?」
「ありがとう」
 漆黒の髪の少女は笑っていた。初めて苦しみから解放されて私に抱きつく。

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「あの洞窟が、古代の宝石を生み出す魔法装置の遺跡だったらしいわ」
 ギルドの案内人のマリアさんが教えてくれた。私は足の治療を受けて回復していた。洞窟の魔女のレオノーアは、今は私と住んでいる。呪いが消えた事で普通の少女に見える。母のセレーナも同じで、力が消えて少女として生きている。どちらも私と同い年くらいなのだ。洞窟の魔女のレオノーアは、百年前の自分の城を探したい、好きだった従者がどうなっているか知りたがっている。

 街の宝石化は、そのままなので宝石の値段はかなり下がっている。魔女達は膨大な宝石のおかげで魔法を縦横無尽に使えて重宝していた。案内人のマリアさんが笑顔で私の将来を知りたがる。

「ミナリアは、どうするんだい? 」
「魔法の指輪を作ろうと思って」
 レオノーアから教えてもらって、宝石のカットの仕方を勉強している。強い指輪を作るつもり。

「結婚したよ! 」
 元婚約者のライアンさんはラミラさんと結婚した。街を救った英雄として今では有名人だ、いち早く住民を守った事で評判が上がっている。

「姉さん、相談があるんだ……」
 弟のリュカは、私の母のセレーナに恋した、さすがに継母のイネスがとめている。年齢的に問題ないのだが、セレーナは子持ち、子供は私だ。弟が結婚したら、弟がお父様になるのかな? 少し笑ってしまう。

 老剣士のマルシアルさんやカルリト少年も街に居着いている。どうやら冒険が楽しいらしい。銃使いのオスカーが私を呼ぶ。

「凶悪なモンスターの依頼を受けた、行くぞ」
 私は念願の自立を得たのだろうか? 今では私の泣き虫も治った。洞窟で泣いたから、もう泣かなくていいと思う。

終わり

WsdHarumaki 2023/06/02 19:00

ミナリアとレオノーア:根源の魔術【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(49/50)

第十章 ミナリアとレオノーア
第四話 根源の魔術

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、全ての封印が解かれた事で、呪いが全世界に向かって広がり始めた。

 美しい黒髪の少女は後悔と懺悔で泣いていた。彼女も被害者だ、私は直感する。助けないと、私が近寄ろうとすると足が動かない。ブーツが宝石化していた。呪いが近すぎて浄化できない。

「ミナリア、下がれ!」
 銃使いのオスカーが叫ぶ、宝石銃が強い光を放つ。巨大なクリスタルに向けて銃の魔力が着弾する。耳をつんざくようなガラスが割れる音がすると透明なクリスタルが破壊された。耳が高音で痛い、耳鳴りでしばらく音が聞こえない。

「汝らが望んだ事だ!」

 崩れたクリスタルから巨大な頭蓋骨が見える、ゆっくりと起き上がるとクリスタルで出来た骸骨だ、二階建ての家くらいは身長がある。全ての骨が宝石のように七色に輝く。立ち上がる骸骨は私達に向かって片手を差し出す。その瞬間に私は、いや私達は古代の世界を見ている事に気がついた。

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 上半身裸の男女がゆっくりと歩く、神殿のようにも見える。太く白い柱に薪の灯りがパチパチとはぜている。彼らは奴○なのか、手足は鎖で縛られている。槍を持った半裸の男たちは、一人ずつ床に開いた穴の中に奴○を落とす。穴からは叫び声が上がる。逃げる奴○は、ひきずって落とされた。私は無惨な光景に恐れた。

「なんてひどい」
「むごいな、二千年前くらいの風景だな」
 老剣士がつぶやく、私達は過去を見せられていた。穴の中は炉だ、人体を与えて宝石を生み出す悪魔の発明。宝石により国が富み栄える。人を放り込んで宝石を作り上げていた、それを玉座から見ているのは、セレーナ。黒髪の少女は、嫌悪と侮蔑で顔を歪めていた。

「いつまでこれを続けるの?」
「必要悪です、隣国からいくらでも奴○を集められます」

 家来は国のためと彼女を説得するが彼女は限界が来ていた。セレーナはいつしか考える事をやめた、それでも罪悪感は消えない。人を贄(にえ)にした呪いは残る。その呪いが国を滅ぼした、奇怪な宝石骸骨が国中にあふれると王族も国民を全て殺された。最後に残る少女の前に宝石骸骨が集まる。

「私も殺して……」
 セレーナは骸骨達に懇願するが、決して許されない怨嗟で彼女を縛る。永遠に生きる呪われた少女、触れるものを宝石にする呪い。呪われた精霊となり、何千年も生きてきた。いつしか彼女は人の心が消えている。宝石のために彼女は利用されて、最後は封印された。

「……やめて……」
 私は涙を流す、母のこの呪いをどうすればいいのか判らない。

WsdHarumaki 2023/05/31 22:47

ミナリアとレオノーア:強い呪い【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(48/50)

第十章 ミナリアとレオノーア
第三話 強い呪い

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、全ての封印が解かれた事で、呪いが全世界に向かって広がり始めた。

「これは危険すぎるな」
 老剣士のマルシアルは、昔は魔王軍の先兵と闘う猛者だ。彼から見ても街の惨状は予想できない。樹木が宝石化していた、野良犬も宝石に変化している。生き物を宝石に変化させる呪いは、無機物である建物もゆっくりとだが美しく光る宝石に変えていた。

「ここまで強い呪いなら洞窟に入ることすら難しい……」
 老剣士のマルシアルは、大事そうにダイヤを御守り代わりに持っている。私も呪いに対抗できるのか、近くに居るだけでみんなが宝石化しない。

「洞窟までどれくらいだ?」
「歩いても数時間でつきます」
 銃使いのオスカーが質問する。軽いお手伝いの仕事を頼まれた時に見つけた洞窟だ、街からそれほどは離れていない。街から出ると別世界のようにクリスタルと宝石で埋め尽くされた景色が広がる。歩くだけで大変だが、オスカーは障害物を宝石銃で、どんどん破壊した。

「弾になる宝石がいくらでもあるからな」
 宝石の塊を銃の上の金属台に乗せて打ちまくる。台所から借りた漏斗を加工して利用する。無くなれば宝石を拾って置くだけだ。

「普段は宝石を加工するんだが今は応急だな」
 ケタ違いの魔法力で道が出来る、障害物もなくなり直線で洞窟に進む事ができた。そして懐かしいレオノーラが住む洞窟に到着する。

「ど……どんな化け物が居るんですか? 」
「骸骨くらいだけど……」
 赤の洞窟で一緒になったカルリト少年が怖そうにつぶやくが、凶悪なモンスターは居ない、中に入ると呪われて宝石化する洞窟なだけで、本来ならば人を入れてはいけない。老剣士が剣を抜く。

「俺が盾になる、十分に生きた、指示してくれ」
「彼女とまずお話します、あわてないでください……」
 老剣士のマルシアルが意気揚々と叫ぶ。どうやら私が命令を出す役らしいが、経験もない。私は彼をなだめて先頭に立つと一本道だけどぐねぐねと曲がる洞窟を歩く、周囲は美しい宝石で輝く。

 奥にある大きな洞窟に到着すると、少女が立っていた。漆黒の美しい髪、少女の顔は泣きそうだった。レオノーラが叫ぶ。

「ミナリア、助けて! 」
 彼女は、体の下半分が宝石化していた。呪いの封印が消えて全てをクリスタルに変化させ始めていた。

WsdHarumaki 2023/05/30 19:32

ミナリアとレオノーア:洞窟へ【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(47/50)

第十章 ミナリアとレオノーア
第一話 融合する世界

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、全ての封印が解かれた事で、呪いが全世界に向かって広がり始めた。

「姉さん、しっかりして! 」
 弟のリュカがふらふらしている私を支えてくれた。私は深い後悔で体が震える、致命的な間違いを直感していた。

「ミナリア、リュカ。どうしてここに入ったの? 」
 ドアから入ってきた継母のイネスが私を心配そうに見ている、混乱している中で、倒れている金髪の女性を屋敷に連れて戻る。私は継母から事情を聞いた。

「あの人は私の母なの? 」
 事実を知っても現実とは思えない。父が地下の洞窟に住んでいた女性を愛して私を産み育てたの?

「育ての親は私よ、白い洞窟に居たセレーナは、部屋からは出なかったの……」
 私は混乱する頭で状況を理解しようとする、もしクリスタルの洞窟に封印されていたレオノーアが、私を騙して自由になったら? 長く一緒に居たのに彼女の事は何も知らない。予測もできない。

「黒の魔女が何をしたいのか判らんが、聞いてみるしかない」
 青の洞窟を一緒に探検したマルシアル老人は、最悪の場合は倒す事も考えろと言う。私がレオノーアを殺せる? 魔法の指輪は砕けた、彼女に対抗するだけの力がもう無い。私はまたシクシクと泣き出す。

 大粒の涙を流していると、継母のイネスが私の頬を叩く。大して痛くもないのに初めて叩かれた驚きと悲しさで大泣きする。

「ミナリア! レオノーアに会えて話が聞けるのは、あなただけよ! しっかりして」
 私は継母のイネスを見る、体が震えている、怖いのだ。私はそこで気がつく、力を持てない女性達も居る、力がある私が泣いてどうするの。

「ごめんなさい、私は洞窟を知っています。」
 奇妙な事に、私は継母に叩かれて初めてイネスを感じた。母として家を守る責任や子供達を育てる事はとても大変だ。わがままで困らせた私をどう扱えば判らなかった継母。私は人に迷惑をかけていると考えなかった。自分の事しか見てない子供。

「魔女の力は判らないが、魔法の銃は通用する筈だ。俺が一緒に行く」
 銃使いのオスカーが私を見つめる、黒の洞窟を探検したラミラが片手をあげる。

「母のマリアに相談しましょう、ギルドの力を使えるわ」
 その場に居た全員が協力を申し出る、また涙があふれる。その涙をハンカチでふいてくれる継母が、本当の母のセレーナが私を呼んでいると部屋に連れて行かれる。

WsdHarumaki 2023/05/29 20:22

ミナリアとレオノーア:融合する世界【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(46/50)

第十章 ミナリアとレオノーア
第一話 融合する世界

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、全ての封印が解かれた事で、呪いが全世界に向かって広がり始めた。

「姉さん、しっかりして! 」
 弟のリュカがふらふらしている私を支えてくれた。私は深い後悔で体が震える、致命的な間違いを直感していた。

「ミナリア、リュカ。どうしてここに入ったの? 」
 ドアから入ってきた継母のイネスが私を心配そうに見ている、混乱している中で、倒れている金髪の女性を屋敷に連れて戻る。私は継母から事情を聞いた。

「あの人は私の母なの? 」
 事実を知っても現実とは思えない。父が地下の洞窟に住んでいた女性を愛して私を産み育てたの?

「育ての親は私よ、白い洞窟に居たセレーナは、部屋からは出なかったの……」
 私は混乱する頭で状況を理解しようとする、もしクリスタルの洞窟に封印されていたレオノーアが、私を騙して自由になったら? 長く一緒に居たのに彼女の事は何も知らない。予測もできない。

「黒の魔女が何をしたいのか判らんが、聞いてみるしかない」
 青の洞窟を一緒に探検したマルシアル老人は、最悪の場合は倒す事も考えろと言う。私がレオノーアを殺せる? 魔法の指輪は砕けた、彼女に対抗するだけの力がもう無い。私はまたシクシクと泣き出す。

 大粒の涙を流していると、継母のイネスが私の頬を叩く。大して痛くもないのに初めて叩かれた驚きと悲しさで大泣きする。

「ミナリア! レオノーアに会えて話が聞けるのは、あなただけよ! しっかりして」
 私は継母のイネスを見る、体が震えている、怖いのだ。私はそこで気がつく、力を持てない女性達も居る、力がある私が泣いてどうするの。

「ごめんなさい、私は洞窟を知っています。」
 奇妙な事に、私は継母に叩かれて初めてイネスを感じた。母として家を守る責任や子供達を育てる事はとても大変だ。わがままで困らせた私をどう扱えば判らなかった継母。私は人に迷惑をかけていると考えなかった。自分の事しか見てない子供。

「魔女の力は判らないが、魔法の銃は通用する筈だ。俺が一緒に行く」
 銃使いのオスカーが私を見つめる、黒の洞窟を探検したラミラが片手をあげる。

「母のマリアに相談しましょう、ギルドの力を使えるわ」
 その場に居た全員が協力を申し出る、また涙があふれる。その涙をハンカチでふいてくれる継母が、本当の母のセレーナが私を呼んでいると部屋に連れて行かれる。

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