『性教育の自習時間』①

昨日の記事でお伝えしたとおり、旧作公開の第一弾です。
それでは、ごゆっくりお楽しみくださーい🤗

あらすじ

一緒にテスト勉強をするために訪れた同級生女子の部屋で、思いがけない秘密の悦楽。
見た目清純・中身激エロ女子高生と、彼女に熱烈な想いを寄せる男子高校生との、淫靡で猥褻な、熱愛と歓喜の二時間を描く。
「今夜からはエッチをガマンして、ちゃんと勉強しようね」という二人の誓いは果たされるのか。

1 プロローグ

「わぁ、やっぱり女の子の部屋って感じだな~」

 室内に一歩足を踏み入れて中を見回した塩沢達也《しおざわたつや》は、素直に感嘆の声を上げた。その響きには、想いを寄せる女子の部屋に初めて招待された昂揚感も多分に混じっている。

 主がもつ雰囲気と同様に、清潔感あふれる明るい部屋というのが第一印象だった。

 南向きの窓から、薄いカーテン越しに昼下がりの陽光がやわらかく差し込み、アイボリーを基調とする天井や壁の色と相まって、柔らかく落ち着いた空気を醸し出している。居心地のよさそうな空間だ。

 芳香剤でも置かれているのか、清涼感漂う控えめな香りも心地よい。

 壁際に据えられた本棚の中身は、和洋の文芸作品を中心に、ラブコメディやミステリー系の単行本と文庫本、さまざまなジャンルの実用書など。文系科目が得意な彼女らしいラインアップだ。

 達也が〝女子の必須アイテム〟とみなす置き人形やぬいぐるみは、飾り棚とベッドの枕元に、装飾品や小物類はベッドサイドテーブルに整然と並べられている。

 室内のあらゆる調度やアイテムが、部屋の主である女の子の人となりをさりげなく物語っているようだ。まさに達也が思い描いていた〝女子の部屋〟だった。

 異性を強く意識するようになる以前――小学校低学年くらいまで――は、近所の女の子の部屋に上がり込んで遊ぶこともあったが、成長するにつれてそんな機会なくなってしまった。

 こうして女子の部屋を訪れるなんて十年ぶりだ。しかも、部屋の主は達也の憧れの女性《ひと》。名を氷室佑奈《ひむろゆうな》という、達也と同じ高校に通う、同じクラスの女子生徒だった。

 やや長めのショートヘアに端正な面立ち。パッチリした瞳は笑うと目尻が下がって、一段と彼女の愛らしさを引き立てる。

 成績優秀であるうえにクラス委員を務めており、清楚で快活で品行方正で、先生やクラスメートからの受けも良いという、まさに絵に描いたような模範的優等生だ。

 一方の塩沢達也は、中身はともかく見た目はごく普通の男子高校生。

 特にイケメンでもブサメンでもなく、まあ見方によっては、かろうじてイケメンの部類に入るかどうかのボーダーラインという容貌だ。

 理系科目が得意で学業成績は上位だが、佑奈には及ばずといったところ。

 ただ、彼には反骨精神旺盛で硬派な一面があり、一部教員との関係が良好でないために、教師の側から〈扱いが難しい生徒〉とみなされているフシがあった。テストの得点のわりに評価が低い科目があるのは、そのあたりが原因なのかもしれない。

 趣味でバンド活動に携わっていて、ドラマーとしての腕はかなりのもの、と仲間内での評価は高い。そのおかげで、年一回の文化祭の直後は校内での人気が一時的に急上昇するも、容姿や普段の言動が決して目立つほうではない彼の〝モテ期〟が、長続きすることはなかった。

 二年生で氷室佑奈と同じクラスになった達也は、まずその容姿に心奪われ、次に人柄に魅せられて、彼女の熱心な崇拝者となった。

 しかし相手は高嶺の花、と大多数の男子生徒と同様に遠くから憧れのまなざしを向けるだけだった達也が、急速に彼女と親しくなったのは、二学期の席替えで二人が隣同士になったことがきっかけである。

 頻繁に言葉を交わす間柄になって、佑奈との会話の波長がことのほか一致することを自覚した達也は、彼女と同じ空間でともに時間を過ごすことに、この上ない心地良さと充実感を感じるようになっていった。

 佑奈の気持ちを確かめるまでには至っていないが、おそらく彼女も自分と同じような感情を抱いてくれているのではないか。

 あるとき、彼らのクラス全体を侮辱する某教諭の理不尽な発言にひとり正論で立ち向かい、クラスメートから称賛されたことがある。その際、隣席の佑奈も大きな瞳を輝かせながら「すごくカッコよかったよ」と耳元で囁いてくれた。

(もしかすると、彼女も俺のことを……)

 という淡い期待を達也が抱いたのは、実にその瞬間である。

 教室の窓から差し込む陽光が、佑奈の神々しいまでに愛くるしい笑顔に降り注ぎ、達也には彼女の言葉がまるで女神からの賞賛のように感じられた。

 しかし、硬派であれ何であれ、達也も一皮剥けば思春期の男子だ。女神に対して畏れ多くも青臭い欲望を向けてしまうのは、仕方のないことだろう。

 ここ最近、達也の自慰のオカズは、佑奈に対する妄想一色になった。学校での彼女の姿態――特に、制服に覆い隠されたささやかな胸のふくらみや、短めのスカートから伸びるみずみずしい脚、そしてアングルによって時折視界に入る両腿の奥のミステリアスな翳り――を脳裏に焼き付けては、淫らな妄想をかきたてて夜な夜な一人遊びに耽溺していた。放出し終わった後、聖女を穢したことに対する軽い自己嫌悪に悩まされながら。

 そんな達也が、佑奈との関係をもう一段階上のステージに進めたいと願うようになるのも、また当然だった。

 折りを見て、自分の気持ちを率直に打ち明け、交際を申し込むか。

 もしそこで拒絶されてしまえば、現在の良好な関係まで失ってしまう恐れもあるわけだが、佑奈は受け入れてくれるのではないかという感触を、彼女の普段の言動から達也は感じとっていた。

 最初は清らなかなお付き合いでいい。親密度を高めて、お互いをもっと理解して、そして佑奈が許してくれるのであれば、毎夜妄想で描いているようなことができる関係になりたい。

 現在の親密な関係を楽しみながら、告白の機会を窺う日々を送ること一ヶ月あまり。早くも二学期の中間テストが近づいてきた。

 高校生活も折り返し地点を過ぎ、半年後には受験生、と教員たちから代わる代わる発破をかけられ、生徒たちはそれなりに気合を入れて臨む。

 テスト初日を三日後に控えた今日の昼休みのことだった。

 いつもの佑奈との他愛ない雑談から中間テストの話に、それから彼女の苦手な数学対策に話題が移ったところで、達也は、

「そんなら、今日の放課後、一緒にテスト勉強しない?」

 と、佑奈に提案を持ちかけてみた。

「数学なら、俺、協力できるかもしれないし」

 国語や英語という文系科目の成績は他の追随を許さない佑奈だが、数学だけはからきしダメで、ときには赤点近くの危険水域にまで沈むことがあるという。

 達也の提案に、佑奈は大きな瞳を輝かせて二つ返事で乗ってきた。

「それ、いいかも。お互い得意科目が違うから、教え合いっこできるね」

 佑奈の言葉どおり、達也にとっても文系科目の対策という点では佑奈のサポートはありがたいわけだが、そもそも好きな女の子と少しでも長く一緒にいたいという下心満々の提案だから、少し面映い。

 それはさておき、問題は勉強会の開催場所である。

 学校の図書室は自習には向いているが、なにしろ会話を控えなければならないので〝教え合いっこ〟となると具合が悪い。町の図書館も条件は同じだし、あとはファミレスやカフェか……でも、こちらは逆に騒々しくて、勉強に集中できるか心もとない。

 それを言うと、佑奈は少し思案する様子を見せてから、

「塩沢くんさえよかったら、わたしのうちでやる?」

 と、まさに女神からのご神託のような極上プランを示してくれた。

 達也にとっては願ったり叶ったりの展開だが、とりあえず平静を装って建前を返す。

「えっ、いいの? おうちの人の邪魔になんないかな」

 一緒に勉強するぐらいで邪魔になるはずがないのは百も承知で、達也が念押しすると、佑奈は達也の社交儀礼的な懸念をあっさりと払拭してくれた。

「うちの親は共働きだから、昼間は誰もいないんだ。お母さんも夕方まで帰ってこないし」


 ※『性教育の自習時間』② に続く

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