4話<挿絵付き小説>一年後、オタクのオレ♂は爆乳(ビッチ)ギャル♀になっている

♯4
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曲輪(くるわ)タクオミ。
成績は中の下、運動も得意ではなく、容姿も普通。
大人しい性格で、目立たないタイプの生徒だ。
しかし今や、良くも悪くも校内で彼のことが話題にされない日はない。
健全で退屈な男子高校生たちにとって、目の前に降って湧いた「ネタ」を無視できるはずもなかった。
女の子になってしまう、という荒唐無稽な話を信じる信じないにかかわらず、
彼の行動や変化は逐一、話題に上り共有されることとなった。もちろん、本人に気づかれないように。
マラソンの授業中、集団の中ほどに位置するF組のふたりが、後方で走っているタクオミにちらと視線を向けた。

「なぁ、さっき着替えてる時さ、曲輪の…見た?」
「やっぱりお前も気づいたか。というかみんな気づいてたと思うけど」
「俺の見間違いじゃなかったか。膨らんでた…よな?ちょっとだけど」
「あぁ マジだったんだな、アレ。ビビったわ。」


彼の症状が説明されてからそれなりの日数が経ったが、
実際のところ、女の子になる病気なんて真面目に信じている生徒はほとんどいなかった。
単に話の「ネタ」として扱われる程度で、女子として認識されていたわけではない。だから、タクオミの身体の変化に気づいたクラスには大きな動揺がはしっていたのだ。
現にこのふたり以外のクラスメイトも、時折タクオミに視線を向け、それぞれ彼を話題にしているようだった。
当の本人は何かに気をとられているのか、その様子にまったく気づいていないが、
それでも彼らは声をひそめて話をつづけた。

「すげぇよな。アイツ、本当に女の子になるんじゃね?」
「実際に見ちまったら信じるしかねぇよなぁ」
「俺今のうちに仲良くしとこ。もしかしたらワンチャン有るかもしれないし」
「おい、お前さすがにそれは…」

そんな風によそ見をしながらべちゃくちゃと話しながら走る生徒たちを見て、
体育教師にして担任ミヤコーの怒号が飛んだ。
ふたりは慌てて口を閉じ、正面を見て走り出す。そんな時だった。
後方集団がにわかに騒がしくなったのだ。何事かと目を向けると、
件の人物、曲輪タクオミがコースを外れて歩き出しており、
そして数歩もいかない内に突然倒れた。
騒然とする中、ミヤコーがタクオミに駆け寄り、他の生徒たちもコースを外れて集まってきていた。
先ほどまで話をしていたふたりも、当然その輪に加わり、そしてミヤコーにタクオミを保健室に連れて行くように頼まれたのだった。
彼が授業中意識を失い倒れたのは、これで二度目となる。
完全に気を失ってはいるが前回と違い呼吸もしていたし、顔色も悪くない。
おそらく大事はないだろうということで、とりあえず保健室で休ませることになったのだ。
ミヤコーは両親へ連絡のため職員室に戻り、ふたりはタクオミを担いで保健室へ。
残りの生徒たちはマラソンを続けることになったが、もはや誰も真面目に走る生徒はいなかった。

「げっ、保健のセンセーいねーじゃん。いっつもいないよなあのオバちゃん」
「とりあえず、寝かすしかねーだろ。もっとちゃんと持てよ。」
「持ってるだろ」
完全に気を失った人間を運ぶのは思った以上に重労働で、マラソンの方が楽だったのではないかと思うくらいだった。
ようやく保健室のベッドにタクオミの身体を横たえると、ふたりは大きく息を吐いた。

「どーする?センセー呼びに行く?」
「そーすっか。どーせ中庭でタバコ吸ってんだろうし」
「……」
「……」
そう決定したにも関わらず、ふたりは動き出すこともなく沈黙したまま視線を落としている。
その先には静かに眠るタクオミの姿があった。ベッドの上の彼の体はわずかに汗ばみ、静かに呼吸を繰り返している。
そしてその胸部にしっかりと存在を主張する突起。そこにふたりの視線はくぎ付けになっていた。

「つかミヤコーがそのうち来るっしょ。それまで待ってようぜ」
「…そうだな」
それだけ言うと再びふたりは沈黙する。ベッドの側から動こうともせず、タクオミを見つめたまま。
ほんの一分ほどそうしていただろうか。ひとりが、声をひそめて尋ねた。

「………あのさ」
「なに」
「なんかさ……いい匂いしたよな」
「…………あぁ」

保健室特有の消毒液の匂いに混ざるのは、汗の匂いばかりではない。
男子校に似つかわしくない、女の子の匂い。
先ほどまではもっと間近で香っていた、甘い香り。

「それに、柔らかかった」
「…………あぁ」
タクオミの体は細く骨ばってはいたが、運んでいる最中ずっとふたりの肩や腕に触れていた、いや押し当てられていた突起の感触は、小さいながらも女性特有の柔らかさを有していた。
そんな体に密着してここまで運んできたのだ。健全な男子高校生であるふたりの体にも、当然の変化が起きていた。

「やべ、俺なんか勃ってきたかも」
「サイアクかよ(オレもだけど)」

冗談めかしながらも、ふたりの股間が大きく張りつめているのは明らかだった。
頭ではそれがまだ男のモノだとわかっていても、目の前に触れるおっぱいがあれば、
触ってみたくなってしまうのが男というものなのだ。まして健全な男子高校生であれば尚更である。
ふたりはゴクリとつばを飲み込むと、どちらともなくそのふくらみに手を伸ばした。
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