5話<挿絵付き小説>一年後、オタクのオレ♂は爆乳(ビッチ)ギャル♀になっている

♯5
消毒液の独特の芳香が鼻をついた。ぼんやりとした頭で思いつくかぎりでは、
体育の授業をしていたはずで、あのまま倒れておそらく保健室に担ぎ込まれたのだろう。
実際には運ばれている途中からオレはわずかに意識があり、クラスメイトが二人がかりで四苦八苦しながら、なんとか保健室にたどり着いたことを覚えている。
なんとも迷惑な体質になったものだ。声を聞いた感じ、こいつらは確か同じクラスの山本と木佐だったか、たぶんだが。判然としないのはオレの頭は熱っぽくうまく働かず、カラダもダルくて動かないためだ。
オレはベッドの上で目を開けることもままならず、保健室のベッドの上でひたすらぼーっとしていた。
オレが倒れた原因だと思われる胸の痛みは、少し違和感を覚える程度でほとんど消え失せていた。どうやら一時的なものだったらしい。
その安堵感とベッドの柔らかい感触がすぐにでもオレを眠りへと誘いそうだったが…
マラソンでかいた汗が少し気になるな。

倒れてからどのくらいの時間がたったんだろうか…感覚的には10分とかそんな程度だろうか。起き上がることはできそうになかったし、このまま何限か授業をサボってしまおうと目をつぶったまま考えていると、近くでひそひそと声をひそめて話しているのが聞こえた。
まだオレの意識は完全に覚醒していないのだろう。水中深くに沈められたような感覚で、その声が何を話しているのかよく聞こえず、内容もまったく頭にはいってこなかった。
だから、何をされているのか、理解するのにかなりの時間を要した。

最初はオレを起こそうとしているのだと思った。
触れるか触れないかくらいの微妙な感じで体を揺すられて、くすぐったさを感じたが、オレの体はうまく動いてくれないのでされるがままになっている。
まるで感触を確かめるようにオレの胸板の上で円周運動をし、少し遠慮がちに手を押し付けては、また離したりしていた。つっついているという感じだ。
左右の感触が微妙に違うところをかんがみるに、おそらく二人がそれぞれ別々にちょっかいをかけているようだ。
何してんだ?くすぐってるつもりか?
なんでこんなことしてるのかわからんけど、どうせ男子高校生がするイタズラというか、悪ふざけだろう。
特に山本と木佐はそういう悪ノリが好きな陽キャタイプだったと思う。
意味もなく友達をくすぐったりからかったりするみたいな。陰キャのオレには理解できないが、どのみち体は動かないし、まぁいいか別に。
反応がなければそのうち飽きてやめるだろうと思っていたが、中々その気配がない。
それどころか、オレの反応が無いのをいいことに次第に二人の動きは大胆になっていった。
しばらくそうされていると、味わったことのない感覚がオレをつつんだ。体がふわりと宙に浮いているような、もどかしいような。
体の奥の方が、熱っぽくなったようにも感じる。
先ほどまではよく聞こえなかった声が、今度ははっきり聞こえてきた。
「すげぇ、ホンモノのおっぱいだぜ。思ったより柔らけぇ」
「つか乳首でかくね?女になるとこうなんのかな」


(…まさかオレ、おっぱい揉まれてる?)
その発想はなかった。
自分がそんなことをされるなんて、思ってもみなかった。だってそうだろう。
男の胸なんて何が悲しくて揉まなきゃいけないのか。自分なら思いつきもしない。
それだけで罰ゲームレベルだ。
この二人なら悪ふざけでやりそうではあるけど、それにしては…。
二人は鼻息荒く興奮している様子で、なにやらごそごそと衣擦れの音も聞こえる。

「こうして見ると、ホントに女に見えるな。全然オカズにできるわ」
「けっこうカワイイんじゃね?髪さらさらだし」

…あぁそうか。こりゃ夢だ。オレのオタク顔を見てこんな感想は出てこないだろう。
オレってかわいくなりたい願望でも持ってるのかな。そりゃ、どうせ女になるんなら、カワイイ方がいいとは思うけど。しかしいくら夢でもこれはない。
それにほら、あれだ。時々こういうことあるよな。金縛りというか、夢の中で体が動かなくなって、頑張って起きようとするんだけどほんのちょっとしか体が動かなくて、やっとの思いで起きたと思ったら元の位置に戻されてる、みたいな。そういうあれだ。うん。
こういう時は無理に起きようとせず、諦めて寝ちまうに限る。

(!?)

瞬間、ビリっと電気が走ったような感覚に体がはねた。
今まで体操着のシャツごしにオレの胸を弄っていた手が、直接オレの乳首を強くつまみ、つねり上げていく。
体操着は胸元までめくり上げられ、お腹まで外気にさらされているようだ。

(なんだ、これ…なんだこれなんだこれなんだこれ!?)
先ほどまで感じていたむずがゆさは、まったく異なる感覚に変化していた。
乳首に指が触れるたび、頭が痺れるような、ゾクゾクした快感に襲われる。
もはや二人は何の遠慮もなく、欲望のままオレのおっぱいを揉みしだいていた。
相変わらず目は開かないままだが、オレの口から荒い息が漏れ出すのがわかる。
(ヤバイ、何がかはわからんけどヤバイって!夢のはずだ、夢なんだから…)
気持ちがいいなんて、思うわけがない。暗闇の中に明滅する光を見て、オレは再び意識を手放した。

目が覚めた時、お昼を少し過ぎたあたりだった。
思ったよりもすっきりとした目覚めで、頭や体の調子も良くなっていた。
保健室には保健のおばちゃん先生がいて、体調のことなど色々聞かれたが、大丈夫だと答えた。
(夢…だよな。全部、夢だったにきまってる。)
結局その日は迎えにきた母親とともに、早退することになった。

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