TNG 2023/09/16 02:49

キャラクターの日常03

【ある体育授業中の風景】


今日も絶好調で輝く太陽の元、私の班は
交代で休憩に入っていた。
木陰に座って飲む水筒のお茶が、冷たくて
美味しい。

コップに口を付けてチビチビやりながら、
他の班の様子を眺める。
男子と女子で分かれ、二人一組になって
背中合わせで交互に身体を背負っている。
「担ぎ合い」という名前らしい運動をする
その中で、何となく短髪の彼女に目が
止まる。

「あはは!!
 こうしていると、空がよく見えるねぇ~」

オカッパ髪の幼馴染に背負われて、のんきな
セリフを口にしている彼女の事を、私は少し
苦手だと感じている。

天真爛漫で、誰にでも優しくて、困った人が
居たら率先して助けようとして。
でもドジで、調子に乗りやすくて、男子達
からの目に無頓着で。

今朝だって、スカート全開で登校して
きたし、見ているこっちがハラハラする。
彼女は可愛いし、小さいけれど何だか
目立つのだから、もっと警戒するべきだと
常々思っている。そんな彼女の無防備な
行動がいつも目に付いてしまい、正直、
とても疲れる。

「あ、飛行機雲発見!!」

今も相方の背中の上で騒いでいるけれど、
下にいる子が今にも崩折れそうになって
いる事に気が付いていない。
また、何だか嫌な予感がする。

(あ、バランス崩した)

「わわ、フラフラしてるけれど、
 大丈夫!?」
「もう……ダメ……みたい……」
「ごめんね?とりあえず降りるから……って、
 うわわ!!」

(ああ、そんなに動いちゃダメだって!!)

自分を支えている子がフラフラ動き出し、
何とかしようと身体を動かして状況が
悪化し、そしてあっけなく崩れた。

「ふぎゃっ!!」

どちらが発したかは分からないけれど、
珍妙な声が響き、周囲の注目が集まる。

倒れた彼女の姿を見た私は、急いで立ち
上がり駆けつけながら叫ぶ。

「ハル!!前、隠して!!」
「痛たたぁ……。え?何?」
「いいから!!シャツ、捲れてるって!!
 見えちゃってるから!!」

私の声に、彼女は自分の胸元に視線を
落とし……。

「ひゃあっ!!」

ガバッっと起き上がると、両手で胸元を
抱きかかえるように押さえ、それから
シャツの裾を掴んで腰まで引き下げた。

ようやく側に辿り着いた私は、とりあえず
周囲を睨みつける。それと同時に男子共が、
一斉に不自然な動きでサッと横を向く。
深い溜息を付いてから、蹲ったまま真っ赤な
顔をしているハルに問いかける。

「アンタ、キャミソールはどうしたのよ?」
「え、あ、あはは。暑いから脱いじゃった」
「もう、この馬鹿ハル!!」
「ううっ、ごめんなさい……」

シュンと俯く彼女。

「本当に、もう少し気を付けなさいよ」
「ハイ……。気を付けます」
「で、いつまでその子の上に乗っている
 つもり?」
「え?あっ、上に乗っちゃっててゴメンね?
 ……えと、あれ?大丈夫?」

何故か四つん這いで移動する彼女。
そして、倒れたまま、いつまでも起き
上がらない相方に、彼女が少し心配そうに
問いかける。
彼女側からは見えなかったのだろうが、
その子は乗られている間、何故かとても
幸せそうな顔をしていたから大丈夫だ。

ふと彼女が、地面に書かれた文字に気付いて
声を上げる。

「これはダイニングメッセージ!?
 犯人は……ボクだ!!」
「ほら、アンタも馬鹿な事やってないで、
 さっさと起きなさいよ」
「委員長の言う通りだぞ~?
 そろそろ授業、再開させてくれぇ~」

いつの間にか近くに来ていた体育教師兼、
担任の教師が、少し泣きそうな声を出す。
朝に引き続き、本当にお疲れ様です。

「お前ら、ふざけてやってると本当に怪我
 するぞ?」
「「はい、スミマセンでした!!」」

担任の少し真面目な声のトーンに、二人は
サッと立ち上がって頭を下げる。

「ああ、それとな、穂樽」
「はい?」
「それはダイニングメッセージじゃなくて
 ダイイングメッセージ、な?」
「あ……あはははは……」

彼女達を担任に任せ、休憩を再開すべく歩き
出した私は、後ろから駆け寄ってくる足音に
気付いて振り返る。何となく予想がついては
いたけれど、そこにはやはり彼女が居た。

「……何?」
「えっと、さっきは本当にありがとね」

彼女に礼を言われ、私はもう一度深く溜息を
吐き出して、それから彼女の頭に手を置き、
その柔らかい髪を優しく撫でる。

「本当に、気を付けなさいよ?」
「うん!!」

とても良い笑顔で返事をする彼女に、
私は何だか母親か飼い主にでもなったような
気持ちになる。

「じゃあね〜」

手を振って走って戻る彼女を見送る自分が
笑顔になっている事に気付き、私は両頬を
2回、軽く叩いた。
いつもこちらのペースと気持ちを乱して
くる彼女の事を、私は少し苦手だと感じて
いる。


主人公の日常の第三弾です。

今まで、同一人物を何回も描くといった
経験がほぼ無い為か、毎回違う顔になって
しまいます。
同一人物である事を、自分はどうやって認識
しているのだろう?
調べてみると目・鼻・口のサイズと位置も
さる事ながら、眉毛と目の幅も結構重要ら
しい。
現実世界で、メガネを掛けられたり髪型を
変えられたりすると、同一人物と判断する
のが難しくなってしまう自分には、同一
人物を描く事自体が難しいのかもしれない
なぁ……。

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

記事のタグから探す

月別アーカイブ

限定特典から探す

記事を検索