TNG 2023/10/19 11:06

キャラクターの日常05

【ある終礼前の風景】


今日の授業が全て終わり、終礼前の僅かな
休み時間。
私がお手洗いから教室へ戻ろうとしていた時、
階段の踊り場から声が聞こえたので、
何気なく覗き込んだ。

そこにはハルちゃんと、クラスの男子が1人
立っていた。
いつもハルちゃんにちょっかいをかけている
男子で、またやっているのかと思い、
そっと聞き耳を立てる。

「だからな、ハル。その、もう少し色々気を
 付けろって」
「そうかなぁ?ボク、これでも色々気を付けて
 いるつもりなんだけれどなぁ」

ああ、そちらでしたか。
あの男子はハルちゃんが大好きな癖に、
それを自覚していない。
だけど周りの男共にハルちゃんがエロい目で
見られるのは許せなくて、本人に注意を
促している……そんな所か。

私は興味を無くして踵を返したが、
ハルちゃんの言葉に足を止める。

「ほら、スカートが捲れても良いように、
 いつもハーフパンツだって履いてるし」

あ、この流れは……ダメな奴だ!!

私は急いでハルちゃんに駆け寄る。
案の定、ハルちゃんは両手でスカートを
持ち上げようとする所だった。

その上がっていく右手は
何とか押し止める事ができた。
左手も止めなきゃとソチラを見ると、
コケシちゃんがその手を止めている。

流石、コケシちゃん。
……あれ?
アナタ、どこに居たの?

「波流香ちゃん、ダメだよ」
「え?何が?」

ハルちゃんはワケが分からないといった
感じで私とコケシちゃんを交互に見ている。

男子は、そっぽを向いていたが、
耳が真っ赤になっていた。

これは……見ちゃったな?

「……スクワット100回」

コケシちゃんが呟くと、男子は姿勢を正し、

「イエスッ、マムッ!!」

そう言い残して教室へと走っていった。
何?この2人……。

気を取り直し、私はハルちゃんの目を見て、
静かに語りかける。

「ねぇ、ハルちゃん。朝にさ、女の子は
 こういう事しちゃダメって言ったよね?」

私の口調に少し動揺した様子を見せながらも、
ハルちゃんが反論してくる。

「でも、ハーフパンツ履いてるし、
 見えないから大丈夫だよ?」
「履いてるの?」
「……え?」
「3限目の体育でハルちゃん、
 転んで砂だらけになってたけれど、
 そのハーフパンツ、まだ履いてるの?」

私の問いかけにハルちゃんはしばらく
固まって、それから捲り上げたまま止まって
いた両手を勢いよく下げてスカートの前を
パタパタと直した。

「それに、見える見えないじゃなくて、
 スカートを自分で捲り上げる事が
 女の子としてダメなんだよ?」

茹でタコみたいに真っ赤になった
ハルちゃんは、素直にコクンと頷く。
何だかとても可愛らしい。

「ふぅ……。
 本当に~、気を付けてねぇ〜」

私は溜息を吐いてから、いつもの口調で
もう一度だけ注意を促しておく。
私の真面目モードは、長続きしないのだ。

「波流香ちゃん、教室に戻ろ?」

コケシちゃんに促され、私達は廊下を
歩いていく。
そして教室に入る直前、

「ありがとうね」

ハルちゃんに、遠慮がちな笑顔でお礼を
言われた。
ホント、可愛いなぁ。

「ふふ。い〜よ〜」

教室に入ると、さっきの男子が超高速で
スクワットをやっていた。
ホント、何なの……?


キャラクターの日常の5作目です。

今回は、キャラクターの日常02でちょっと
出てきた、ノンビリ口調の女子生徒視点です。

普段はノンビリ話しているけれど、
何かあると普通の口調になります。

髪の色を何色にしようか迷いましたが、
まぁ、アニメキャラ的に暗い緑色に
してみました。

それにしても、コケシちゃんが、だんだん
人間離れしてきている気がします。

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