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キャラ日常話の記事 (12)

TNG 2024/06/20 01:40

キャラクターの日常12

【ある神社での風景】


『おめでとうございます。
 貴殿は最年少で特級調査員に昇格
 しました。
 管理者権限を付与します』

そんな言葉に、僕はニンマリと笑う。

天才の僕には他愛もない事だったけれど、
それなりに達成感というものはあった。

今まで貯めに貯めたNNPを使って、
早速、色々と遊んでいたら、気が付いた
時には随分と時間が経ってしまっていた。

ハル>「あ~!!菊ちゃん、見つけた!!」

そんな声に顔を上げると、お婆ちゃんの
お店にいつも来てくれる少女が草を
かき分けながら、こちらに歩いてきて
いた。

どうやら、僕を迎えに来てくれたらしい。

「にゃ~ん」

嬉しくなった僕は一鳴きする。

さて、そろそろ帰ろうか。
でもその前に、この少女の今後の運命でも
覗いてみるか。

そんな軽い気持ちで見た光景に、僕は愕然と
した。

何匹もの雄に乱暴される少女の姿が
そこにあったから。
その後、塞ぎこんだ少女は、この土地を
離れる……そんな未来が表示されていた。

少女の事が大好きだった僕は、そんな未来が
許せなくて、管理者権限を行使する。

先程、遊び過ぎたせいで随分と少なくなって
しまったNNPを駆使し、事象変更を行おうと
何度も試した。

でも、色々と条件を変えて何度もシミュ
レートしてみたけれど、凄惨な結末を
変える事が出来ない。

過去からの改変を試みるも、大きな分岐点と
なる事象を変えるも、やはり多くの結末は
変わらない。

それでも、少女の幸せな未来の可能性が
ゼロでは無い事を確認した僕は、すぐに
その可能性の発生確率を最大限に変更し、
あの胸糞悪いワンカスにも直接通信して、
少女の気を引く様に依頼する。

『警告。確率操作により、対象の不幸
 遭遇率上昇、及び、対象周辺人物の
 存在・性質に揺らぎが発生しています。
 修正を推奨します』

システムからのアナウンスに、チラリと
NNP残量に目をやると、既にゼロを示して
いた。

ハル>「さぁ、帰るよ。お婆ちゃん、すごく
    心配してたよ~?」

「にゃ~ん」

今やれる事は全てやった。

この少女に訪れる未来が幸せなものとなる
様に祈りを込めて、僕はもう一鳴きした。


このゲームの全ての始まり。
でも、この内容はゲーム本篇に何も影響しません。

この猫さんが色々弄ったお陰でハッピーエンドが
生まれましたが、その反面、ハルが不幸になる
未来も格段に増えてしまいました。

ちなみに、NNPというのは
「にゃんにゃんポイント」の略でして……。

……あれ?
また誰か、いらっしゃったようです。
この話は後で……。

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TNG 2024/05/11 01:14

キャラクターの日常11

【ある移動中の風景】


学校帰りに連れの家に寄った、その帰り道。
鼻歌交じりに自転車を漕いでいた俺は、
ふと前方に、道端でうずくまる小学生を
発見した。

俺(ん?大丈夫か?)

腹でも痛いのかと思い、自転車を止めて、
その後ろ姿をよく見る。

ハル「ねぇ、猫さん。菊ちゃんの所まで、
   まだかかるの?」

猫「にゃ~」

ハル「そっか~。じゃあ、タクシーでも
   呼ぶ?
   あれ?タクシーって猫さん乗せても
   良いのかな?
   それに、今月のお小遣いも厳しいし。
   あっ!?スマホ家に置いてきた!!
   ムムム……」

猫相手に話し込んでいる変なのは、
小学生などではなく、俺が良く知っている
奴だった。

俺「おい、ハル。こんな所で何やって
  んだ?」

ハル「え?……あ、タクシーが来た!!」

猫「にゃ~ん」

ひと鳴きした猫が、俺の自転車のカゴに
飛び乗る。
そして後ろの荷台にはハルが横向きに
ヒョイと座った。

俺「……は?」

突然の事で驚いたが、一つだけ確かな事が
ある。
俺は今から、コイツラを乗せて自転車を
漕がなくてはならないらしい。


ハル「本当にゴメンね~。
   荷物まで持って貰っちゃって」

俺「構わねぇって」

猫「にゃ~ん」

俺「お前も気にすんな。
  で、どこまで行けばいいんだ?」

俺の問いに、帽子を押さえながら乗っている
ハルが答える。

ハル「多分、この先の神社だと思う」

猫「にゃにゃ」

俺「了~解!!」

ここから神社までは、まだ結構な距離が
ある。
俺はペダルを漕ぐ足に力を込めた。

俺「でもハル、お前、あそこまで歩こうと
  してたのか?」

ハル「ん~、正直、そこまで遠いだなんて
   思って無くてさ。君が通りがかって
   くれて、本当に助かったよ~。
   あ、また今度、何か奢るね」

顔は見えないが、きっといつもの笑顔を
浮かべて言うハル。

俺「いいって。
  それより、帰りは大丈夫なのか?」

ハル「うん。神社で菊ちゃんを見つけられ
   なかったら、今日の捜索は打ち切りに
   して帰るから大丈夫だよ」

俺「ふ~ん。あ、それなら帰りも乗せて
  いってやろうか?」

ハル「そこまでは悪いって。
   神社で菊ちゃんを探すのに、時間が
   かかるかもしれないし。
   ……ん?って、あれ?
   よく考えたら今日って、おばさんの
   お店の買い出しを手伝う日じゃ
   なかった?」

俺「……あ、ヤベッ。完全に忘れてた!!」

今日は母ちゃんがやっている商売の買い出し
に行く日で、男手が欲しいとかで、俺はよく
駆り出されていた。

ハル「あ~あ。おばさん、怒ってるよ~?」

俺「ハル、お前、スマホ持ってたよな?
  悪いけど母ちゃんに連絡させて
  くれないか?」

ハル「え~と、ゴメンね。
   そうしてあげたいのは山々なんだ
   けれどさ。
   スマホをうっかり家に置いて
   きちゃったんだよねぇ」

俺の頼みに、ハルはとても申し訳無さそうに
返事をする。

俺「あ~。んじゃ、しゃ~ね~な」

ハル「じゃあ、ボク達はここで降りるね」

そう言って、走っている自転車からポンと
飛び降りるハル。
前カゴに乗っていた猫も同時に飛び降りた。

俺「お、おい!!」

慌てて自転車にブレーキをかける。

ハル「ここまで乗せてきてくれて、
   ありがとうね。
   本当、凄く助かったよ。
   もう神社はすぐ目の前だから、
   ここからは歩くから大丈夫だよ?」

そう言って、ハルは笑顔で右手を差し出して
きた。

猫はその足元で大人しく待っている。

これ以上は、きっと意地でも再び自転車には
乗らないであろう事が俺には分かったから、
持っていたハルの荷物を下ろし、それを
差し出されたその小さな手に渡した。

俺「んじゃ悪いけど、俺は帰るわ。
  後は自力で頑張れ」

ハル「うん。頑張るよ!!」

そう、元気に答えるハルに、俺は何故かは
分からないが、ふと嫌な予感を覚える。

俺「なぁ、ハル。
  日が暮れる前には、家に帰れよ?」

ハル「ん?うん。そのつもりだよ?」

俺「あ~。……そか。うん。そうだな。
  くれぐれも気を付けてな。
  んじゃ、また明日な」

ハル「うん、ありがとね。
   君も気を付けて。
   ハイバ~イ!!」

自転車を方向転換させ、急いで帰り始める
俺に、ハルはその手をブンブンと大きく
振っていた。

それから、母ちゃんに小言を言われた時も、
荷物を運んでいる間も、俺の頭から嫌な
予感が消える事は無かった。

俺はいつからこんなに心配性になったんだ?


キャラクターの日常の11話目です。

「とりあえず完成を目指す」から
「出来る限り作る」に方針を転換した
関係で、登場人物が一気に増えました。

ハルの男友達である彼は、日常4話に
出てきた彼と同じですが、本編では現在、
一瞬しか出番がありません。
(もちろん、今から増える可能性も
 ありますが)
そんなキャラが沢山出てきてしまって、
色々と整理が必要です。

それは次回の報告の時にでも……。

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TNG 2024/04/19 13:57

キャラクターの日常10

【ある休憩中の風景】


僕は学校帰りに、悪友とラウ3へと向かっていた。
ラウ3とは、ゲーム・ボウリング・カラオケ等の
総合施設で、二人で良く遊びに行っている。

そんな時、急に立ち止まって何かを見つめていた
悪友が言った。

悪友「……おいあれ、穂樽じゃね?」

指差された方向を見ると、公民館らしき建物の
庭の片隅で、座り込んでいる人影。
そしてその側の黒い物体。

僕「あ、ホントだ」

僕達は、何となく穂樽の側へ歩いていく。

ハル「あれ?奇遇だねぇ」

座り込んで建物にもたれかかり、水筒のお茶を
飲んでいた穂樽さんは、僕達に気が付いて
笑顔で手を振ってくれた。

悪友「よぅ、穂樽。こんな所で何やってんだ?」
ハル「えっとねぇ……あれ?」

無遠慮な悪友の問いかけに応えようとした穂樽さんが、
隣を見て固まった。
僕もそちらに目を向けると……目がまん丸で、
尻尾がボンボンに膨れ上がった黒猫がいた。

黒猫「シャーーーッ!!!」
僕(これは確か……臨戦態勢じゃなかったっけ?)
悪友「何だこの黒猫……って、うわぁ!!」

不用意に近付いた悪友に、黒猫が飛びかかる。

ハル「え?え?猫さん、どうしたの!?」
悪友「てめぇ、この野郎!!よぅし、やって
   やろうじゃねぇか!?」

そう叫んで、黒猫と本気で戦い始める悪友。

ハル「どうしよう?止めたほうが良いかな?」
僕「あ~、遊んでるだけだと思うよ?」

だけど、ある事に気付いてしまった僕は、すぐに
悪友の事はどうでも良くなり、適当に返した。

穂樽さんは、僕にはちょっと、いやかなり
刺激的な格好をしていた。

すっかり暖かくなった気候の中、黒猫を追って
走ったのだろうか?
全身が汗で濡れていて、それが黄色のブラウスを
ほんのり透けさせていた。
また最初からそうだったのか、それとも緩めたのか、
第一ボタンを外されたブラウスの襟首が開かれ、
肌着が僅かに顔を覗かせている。
足を立てているせいでハーフパンツの裾も少し
下がっていて、健康そうな太腿も見えていた。

ハル「ん?あ、あははは。ゴメンね?こんな、
   だらしない格好で。暑くってさ」

言いながら、手元にあったタオルで、その細い
首や鎖骨に浮かんだ汗を拭う穂樽さん。
その度にブラウスの襟が更に開き、僕は目の
やり場に困ってソッポを向く。

その視線の先では、宙を舞った黒猫に蹴られる
悪友の姿があった。

僕「穂樽さんは、ここで何してるの?」

内心ドキドキしながら問いかける僕。

ハル「ボクはね。猫探しをしているんだけれど、
   あの黒猫さんに聞いたら知ってるって
   いうから、案内して貰ってたんだ。
   ちなみに、今は休憩中だよ」

そこで穂樽さんはゴクリとコップのお茶を飲む。

ハル「君達はどこかへ遊びに行く途中?」
僕「あ、うん、ラウ3へね」
ハル「あ~、あそこって楽しいよね!!」

他愛もない会話を楽しそうにしてくれる穂樽さん。
僕は、視線を彷徨わせたまま、少しだけ幸せな
時間を過ごしていた。

ハル「あ、ゴメンね。ゆっくり休憩している
   場合じゃなかったんだった」

会話が途切れた所で、そんな事を言った穂樽さんは、
コップのお茶を飲み干してから水筒とタオルを
カバンに入れ、リュックの蓋を閉じる。
そしてブラウスの第一ボタンを閉じ、ネクタイを
キュッと締めてからリュックを背負って立ち上がると、
最後に帽子を目深に被ってコチラを見た。

ハル「じゃあ、ボクはそろそろ行くよ。
   お話してくれて、ありがとうね
   楽しかったよ。バイバ~イ。
   また明日、学校でね」

笑顔でそう言い残し、黒猫の方へ走っていく。

ハル「ねぇ、猫さん。そろそろ案内を再開して
   もらっても良いかなぁ?」
黒猫「にゃ~ん♪」
悪友「あ、コラ!!待ちやがれ!!」
ハル「じゃ~ね~」

穂樽さんの言葉に、戦う事をやめて走り出す黒猫。
その後を、穂樽さんは僕達二人に手を振ってから
追いかけていった。
僕は小さく手を振り返し、その元気な姿が見えなく
なるまで見送った。

悪友「はぁっ、はぁっ……。あの黒猫野郎!!
   今度会ったら尻尾捕まえて振り回して
   やる!!」

物騒な事を言いながら、こちらへ戻って来る悪友。
その腕には引っかき傷が何本も出来ていた。

悪友「……なぁ、穂樽はここで何してたんだ?」
僕「猫探しの途中で、休憩してたんだって」
悪友「はぁ?」

よく分からないといった様子の悪友だったが、
それ以上は言わなかった。

先程の楽しい時間の余韻を、もう少しだけ
噛み締めていたかったから……。


「キャラクターの日常」も10作目となりました。

ゲームの構成を色々考えていたのですが、
今まで投稿した分も含めて全部、ゲームに収録
しようかと考えております。
もちろん、その際には絵も文章も修正を加えますが。
この内容がゲームに大きく関わり始めているので。

「とりあえず完成を目指す」

ここから離れ過ぎないようにしようと思いつつも、
色々と詰め込んでしまいがちな今日この頃です。

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TNG 2024/03/15 14:35

キャラクターの日常09

【ある調査中の風景】


『データ受信、確認完了。問題ありません。
 引き続き任務を続けて下さい。以上』

その言葉を最後に通信が途絶する。

前足を突っ張り、背中をグッと伸ばす。
本日の定時連絡は、これにて終了。
吾輩は足を折り畳んで丸くなり、先程から
下で騒がしくしている人間へと視線を
移した。

「ねぇ、そこの君~。ねえってばぁ。
 ……あ、やっとコッチ向いてくれた。
 ねぇ、この子、知らない?」

これから一休みしようとしている吾輩に、
自分で描いたであろう猫の絵を突き出して
その所在を問うている者が一人。

とりあえずセンターへと接続し、
この人間……少女のデータを閲覧する。

(ふむ……今は家庭の事情で無理だが、
 将来、猫を飼う可能性大……といった
 所か)

ちらりと少女の方へ目をやり、絵の特徴から
対象の所在地を検索する。

(これは……ああ、婆さん所のハチワレか。
 今は、あそこで寝ておるな)

位置を確認してから仮想マップを閉じ、
もう一度、少女の方に目をやる。

「ねぇ?知ってるかな?」

無邪気に問いかける少女。
まぁ、将来性を買うという事で、
今回はひとつ案内してやるとするかの。

吾輩は立ち上がり、もう一度ゆっくりと
伸びをして、それから数歩進んで少女を
振り返る。

「にゃ~」

ひと鳴きして前へ向き直ると、

「え?もしかして案内してくれるのかな?
 ありがとうねぇ~」

意図を察したらしい少女が、塀の下から
嬉しそうに着いてくる。

(聡い少女だが、ホイホイ着いてくる
 無用心さは少々心配だの)

「菊ちゃんっていうんだけどさぁ。
 たまにお婆ちゃん家からお散歩に
 出たっきり、数日帰らない事が
 よくあるんだよ。
 お婆ちゃん、心配しちゃうから……」

(あと、少々騒がしいな)

こちらの気など知らず喋り続ける
少女の話を聞き流し、吾輩は目的地へと
急ぐのだった。


良い子は知らない人に着いて行っては
いけません。

ところで、上で猫さんがアクセスして
いるのは
「Nyan Nyan Network」
通称「NNN」といいまして、
猫さん達が情報を世界規模で……おや?
誰かお客さんが来られたようです。
このお話は、また後程……。

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TNG 2024/01/16 01:33

キャラクターの日常08

【ある駄菓子屋の風景】


暖かな昼下がり。
駄菓子を並べた静かな店先から明るい声が響く。

「おばあちゃ~ん、こんにちは~。
 菊ちゃん、帰ってきた?」

ウツラウツラと船を漕いでいたワシは、
ゆっくりと顔を上げて声の主に目をやる。

「ハル坊か、よう来たなぁ」
「うん、こんにちは」

ハル坊は昔からよくウチに駄菓子を買いに来る
近所の子供の一人だ。
ちょっと前までは幾人かと一緒だったけれど、
今は一人でしか来ない。
いや、あの中ではこの子しか来なくなっていた。

「おばあちゃん、これ頂戴」

そう言って冷蔵庫からラムネ瓶を取り出すと、
お代を置いて帽子を取り、長椅子に腰を掛ける。
慣れた手つきでラムネ瓶のビー玉を落とし、
口を付けて瓶を大きく傾けた。

「んぐっ、んぐぅ!?げほっ、げほっ!!」

一度にラムネを口に注ぎ過ぎて咽ている。
そうだった。そうだった。
この子はいつも、ラムネを飲むのが下手だった。

「大丈夫かい?」
「ごほっ……うん、大丈夫!!」

涙目になりながらも元気に返事をするハル坊。
その笑顔を見ていると、こっちまで元気が出て
くる気がする。

「ハル坊も大きくなったねぇ」
「そう?そうかな?……へへへ。
 あっ、でも、学校のクラスでは一番
 ちっちゃいんだよ?」
「そうなのかい?今の子は大きいからねぇ」

取り留めのない話をしばらく続けていたけれど、
ハル坊は、ふと思い出したようにワシに問い
かける。

「そういえば、菊ちゃんは帰ってきた?」

菊千代……去年から居座っている雄猫は、
ふらっと出かけてはしばらく帰らない事が
度々ある。

「帰ってないねぇ。あのバカタレ、どこを
 ほっつき歩いているんだかねぇ……」

雄猫は縄張りが大事だと聞くから、きっと
遠くまで見回りにでも行っているのだろう。
それに元々、自由気ままな野良猫だ。
帰らなかったら帰らなかったで、あの子の
好きにすれば良い。

「そっか~、心配だねぇ」
「そんな心配はしとらんがよぉ。
 まぁ、また見かけたら帰ってくるように
 伝えておくれ」
「うん、分かったよ!!」

そう言ってハル坊は残ったラムネを飲み干すと、
帽子を被って立ち上がる。

「ご馳走様でした」

ラムネ瓶を置き場に挿し、こちらにお辞儀する。
そうだった。そうだった。
この子は昔から礼儀正しい。

「おや、もう行くのかい?」
「うん。ちょっと、お散歩でもしてくるよ」

少し残念な気持ちになったが、引き止めるのも
何だから、それは口には出さない。

「そうかい。そこの飴玉、一つ持っていきな」
「いいの!?おばあちゃん、ありがとう!!」

ハル坊は嬉しそうに言い、めっきり売れなく
なった飴玉を一つ手に取った。

「じゃあ、行ってくるよ」
「ああ、気を付けてなぁ」
「うん!!」

小さく手を振ってから去っていくハル坊。

(あの子はいつまでウチに来てくれるかねぇ?
 先にワシの方がポックリ逝っちまうかもなぁ)

そんな事を考えていると、また眠気が
やってきて、ワシはゆっくりと目蓋を閉じ、
そして、ふと思う。

(今の子は男の子だったかねぇ。
 そうだった。そうだった。
 ハル坊は女の子だったねぇ)

今しがた店に来た子の顔が、早くも思い出せなく
なっていたけれど、それは、きっと些細な事に
違いなかった。


キャラクターの日常の8作目です。
今回は駄菓子屋という事で、色々なお菓子や
玩具をそれっぽく並べてみました。

今は個人で営業している駄菓子屋なんて
見ないけれど、自分が子供の頃は、知っている
だけでも4軒あって、それぞれに特徴が
ありました。
ここは玩具が豊富にあるとか、くじ引きが
あるとか。
それらを自転車に乗って巡るのが大好き
でした。

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