投稿記事

2024年 03月の記事 (5)

市街地 2024/03/31 22:08

【小説サンプル】死にたがりの魔女と上位魔族2・第1話


※DL siteで販売中の作品の第1話サンプルです。
※文字数の都合により冒頭部分を省略しています。

あらすじ

逃げ出した魔女が上位魔族に連れ戻され、快楽責めによるお仕置きを受ける話。

全体を通したプレイ内容

人外(魔族)攻め・囚われ・無理矢理・肉体開発・しつけ・羞恥プレイ・子宮責め・快楽責め

・本編ではヒロインが攻め以外からお仕置き・性感開発を受けるシーンがあります。
・作中においてモブキャラの殺傷描写、流血描写がございます。



【第1話 捕獲】より


「長話が過ぎましたね。退屈させてすみません」

支配者の興味が自分に移りユキは身を固くした。

「さて……ユキ、お仕置きの時間といきましょうか」

「——っ」

ひゅっと息を飲み込む。

こんなぐちゃぐちゃに感情が入り混じった密室でそれを切り出してくるサファルが信じられなかった。

張り詰めた空気をものともせず、サファルは優雅にソファに深く腰掛け、ユキへと口を開く。

「本日の聖教会と聖都への奇襲は、もともとはそちらにいる男が計画したことです。なので下の広場に転がる聖騎士たちの死体については、ユキに原因はありません」

あえてそれを告げる意図を察したユキは、嫌だと泣きそうな顔で拒絶する。

罰を与えるために、わざわざ周りを巻き込む必要はないだろうに。

しかしサファルは容赦しない。ユキが最も嫌がることを、あえて的確に提示してくる。

「理解が早くて助かります。そうですね、これからこの場で起こる生殺与奪は、全てあなたの言動によって左右されます」

ただでさえ複雑なユキの心境を、サファルがさらに掻き乱してくる。

「あえて喚いて反抗的な態度を見せれば、あなたの憎しみの対象を葬ることも可能でしょう。これはゲームのようなものですので、どうぞ私を利用してください」

心理戦の提示に誰よりも戦慄したのは、はたで聞いていた聖女付きの侍女たちだ。彼女たちにはこれまでユキをストレスの吐け口にしてきた自覚があった。憎しみを持たれていても何ら不思議ではない。

対するユキは侍女への復讐心などかけらもなく、どうすればサファルの気を収められるかに必死だった。

侍女たちから受けた仕打ちを思い出している余裕はない。

他人ほどの縁しかない人間の命を無理矢理押し付けられたのだ。聖女たちやトオワタ、下の広場に集められた人間を人質に取られ、判断に窮する。

サファルはユキを精神的に追い詰めるのを目的としているのは明白だ。狙いが知れたところでこの場を凌ぐ最適解が見つかるはずもない。



皆殺しにしても問題ない、取るに足らない人間の命が予想外に役に立った。

ユキは生きたいと望む者の命を消されるのを厭う。そんな彼女が人間たち見捨てられないことなど、サファルはとうにお見通しだった。

下手に部屋の空気を刺激しないよう微動だにせず息を殺すユキの後ろから、目を潤ませた聖女がおずおずとサファルに歩み寄ってきた。

「あなたは下がって」

聖女は強引にユキを押し退けサファルの前に跪いた。

可憐な乙女を装う女は胸元で指を組み、神に祈るようにサファルを仰ぎ見る。

「ああ、誇り高き魔族のあるじ様。どうか……、どうか怒りをお鎮めください」

サファルが口を開かないのをいいことに、聖女の懇願は止まらない。

「この子が、ユキがあなた様になさったことをわたくしは存じません。……きっと許されぬ過ちを犯してしまったのでしょう。ですが、ユキはわたくしが手を差し伸べ、救うと心に決めた子なのです。おいそれと見捨てるわけにはいきません」

艶かしく身をくねらせ、聖女がサファルの足へ縋り付く。膝へ豊満な胸を押しつけた時、部屋の空気が数カ所で凍り付いた。

「ユキの罪は、主人であるわたくしに背負わせてください。罰はわたくしが甘んじて受けます。ですからどうか、この子にご慈悲をっ」

「ああ……聖女様……」

侍女たちが聖女の勇気に感極まって涙ぐむ。

茶番を放置してサファルはユキを盗み見た。

聖女側と魔族との温度差を正確に読み取っているユキは、とてつもなく居心地が悪そうだ。

眷属たちやサファルの友人の魔族が白けた視線を聖女に送るなか、部屋の隅でサウスがひとり壁に顔を向け、懸命に笑いを堪えていた。

聖女に振り回されてより一層複雑化するユキの心情が哀れでいて、とても可笑しいのだろう。サウスの心境は、主人であるサファルもまあまあ理解できた。

自分のことだけに精一杯になっていれば、混沌と化した部屋の空気で精神的ダメージを負うこともないだろうに。周囲に対して感受性が高すぎるのも考えものだ。

少々別方向にいじめすぎたかと苦笑し、サファルは足元で動く目障りな女に視線を戻した。

あわよくばユキの立場に成り代ってやろうという、野心が隠しきれていない。健気さを装った強欲な振る舞い、狙い通りに事が進むと信じて疑わない様相は、いかにも人間の権力者らしい。

「ひとつ訂正しますと、この子の主人はあなたではなく私ですよ。そうですよね、ユキ?」

「……え?」

きょとんとする聖女を無視し、サファルがユキに話を振る。

投げかけられた確認にユキは息を呑んだ。そして悔しさを滲ませた顔でサファルを見つめる。

ここで「違う」と否定すれば即座に聖女の首が跳ぶ。サファルの遊びを、ユキは的確に察していた。

そうやって悩んでしまうから自らを苦しめるのだろうと内心呆れつつ、サファルは聖女に向かって穏やかに微笑んだ。

「何を勘違いされているか知りませんが、貴女にはこの子の心を縛るための道具としての価値しかありません。ひとまず下がりなさい」

「えっ……ぁ」

「聞こえませんでしたか? そこにいては邪魔なので、離れなさいと言ったのです」

「そんな、魔族様っ……」

諦めの悪い聖女をノースが引き剥がす。始末するかと主人をうかがう配下に、サファルは首を横に振った。

サファルの意を汲み、ノースは聖女を侍女たちの元へ突き飛ばした。

「聖女さまっ」

「ああっ、なんておいたわしい」

侍女たちから熱い抱擁を受ける聖女に、ファルの関心は既にない。

「……さて」

小さく呟けばユキの体がびくりと跳ねた。

「ユキ、こちらへ」

ためらいを見せながらもユキは恐る恐るサファルの前に立った。

苦渋を滲ませ閉口する獲物に加虐性がそそられる。サファルの残忍な一面を感じ取り、ユキは無意識に修道服を握りしめた。

その手で誰にも縋ることができない。孤独で憐れな娘へとサファルは手を伸ばす。

「あんなものでも、あなたは見捨てられないのですね」

大きな手を頬に添えられユキは悔しそうに表情を歪ませた。

ユキに聖女たちへの特別な情はない。ただ彼女たちの死の原因に自らが関わることを忌避しているだけだ。

死にたがりの命の価値が、生を望んで懸命に足掻く命に優るはずがない。

我が身可愛さ故の葛藤に、サファルはとうに気付いていた。

「跪く必要はありません。あなたなりのやり方で、私に服従を見せてください」

具体性に欠けた無茶な要求にユキは眩暈に襲われた。

サファルはユキが困惑するのを承知のうえで命令を下している。

しんと静まり返った室内で皆がユキを注視して言動を待つ。舞台袖から突然、容赦なく舞台の中央へ引き摺り出されたユキは、向けられる視線よりもサファルの圧に慄いた。

「……っ」

できない、無理だと言いかけた口を閉じる。

「クライア……やめろ。そんなことしなくていい」

トオワタの訴えにユキの心がざわつく。

ここは鳥籠じゃない。自分を見ているのがサファルだけではないのだと、改めて思い知らされた。

それでもソファに腰掛けるサファルの前に立ち尽くして動けない。

ためらっていると、サファルが聖女たちを一瞥した。サファルの眷属たちが今にも動き出しそうな気配を感じ、ユキははっと顔を上げる。

「一度この部屋を血で汚し、また新たな証人を連れてきましょうか? それとも、私の所有物を自分の物だとほざく、そこの聖女に助けを求めますか」

「……やめて」

「聖女にこの危機を凌げると思いますか?」

ユキは否と首を振る。

聖女はいわば聖教会のシンボル的な立ち位置のマスコットにすぎない。生まれつき魔力を持っているというだけの、戦場を知らないどころか武器を持ったこともない貴族の娘だ。

「ここに集う人間の命を握っているのは神ではく、あなたです」

余計な命を押し付けてくる。

サファルの庇護下——鳥籠に居たならばこんなに悩む必要はないのだと、言外に、そして徹底的に知らしめられているのだ。

迷った末に、ユキは支配者に助けを求めようとした。

「何をすれば……」

「クライア!」

聖女が黙ればトオワタが騒ぐ。

ユキにとってはトオワタも聖女たちと同じく他人の位置にあり、同郷という共通点は仲間意識に反映されることはない。もとよりこの男の意見に耳を傾ける義理はないはずだ。

煩わしさを覚えるユキに構わず、トオワタは嘆かわしげに訴える。

「駄目だ、クライア。お前がこんな奴らのために犠牲になるな」

「なっ……」

聖女付きの侍女たちが絶句する。

教会の下働きごときがなんて無礼なと、彼女たちはトオワタを睨みつけた。

東方大陸の人間と、聖教会。新たな火種の燻りに、ユキはとうとう唇をきつく噛んで頭を抱えた。

立場や価値観が違う者たちの感情がぶつかり合い、摩擦でどろどろになった部屋の空気に頭痛がして、胃がキリキリと痛む。

「目の前の主人を置いて気をそぞろにするなんて、そんな無礼は教えてはいはずだよ」

「唇も、噛むなって何度言えばわかるんだ。やーっと癖が取れたのに、また覚え直しか?」

いつの間にかユキの斜め後ろに移動したノースとサウスが、左右それぞれの耳元で囁いた。

頭痛や胃痛がすっと消え、代わりにぞくぞくと背筋に悪寒が駆け抜ける。

「教育の不手際は悔悟しております。少しばかり補助をお許しいただけませんか」

「そうですね。こちらは構いません」

サファルの許可を貰い、ノースが後ろからユキの下唇を薬指でつぅ……と触れた。ユキの口が自然と開かれる。

サウスは主人に披露するように、ゆったりとした修道服の上からユキの体のラインをなぞる。

世話役である双子の助け舟に困惑しながらも、ユキは彼らを拒めなかった。

「ほら、しっかり思い出せ。いただいた魔力が抜けきっていたとしても、体はあの時の快楽を忘れていないはずだ。夢に見るほど焦がれて、本当はずっと欲しかったんだろ? ここに……」

「あっ……、ゃっ」

下腹部をぐぅっと押され、ユキの頬に赤みがさす。

ノースは唇に触れていた指を横に滑らせ、髪を掻き上げてユキの片耳を塞いだ。そしてもう片方の耳へと唇を寄せる。

「君の主人が誰なのか、ちゃんとその可愛い口で言ってごらん?」

「——っ!」

浅く速くなった自身の呼吸音に混ざって、はっきりと脳に響いた中性的な声音に、ひゅっと息を吸い込んだ。

ノースは魔術でユキを操っていない。しかし何度も教え込まれ、体に染み付いた服従の精神は鮮明にユキの心に呼び起こされた。

鳥籠で受け続けた、恥辱の記憶と共に——。

「…………っ、サファルさま」

紅い瞳を見つめ、気づけばその名を読んでいた。

クライア、駄目だと。叫んでいるはずのトオワタの声が遠い。

サウスが揉むように指圧する下腹部が、じくじくと熱を持ち始めた。

体が欲しているのは外ではなく、ナカを抉る熱い刺激なのだと自覚させられる。

「さあ、自分からサファル様に口付けて、甘えた声でおねだりしてごらん。周りなんて気にせず、ただ主人のことだけを考えればいい。これは君だけに許された特権だ」

疲弊しきった精神にノースの甘言が染み渡る。

優しく背中を押され、サファルへと足を進めてしまう自分の弱さに煩悶しながらも逆らえなかった。

靴を脱ぎ捨てたユキはゆっくりとサファルの膝の上に身を乗り上げる。

「クライア!」

トオワタの声に羞恥心を煽られながら、瞳に涙を潤ませてサファルに顔を近づけた。

思考を放棄し抵抗を諦め、楽な道へと走るユキに、トオワタは焦りを増幅させた。

自分がどれだけ一緒に東へ帰ろうと説得しても靡かなかったユキが、こうもあっさりと魔族に懐柔される。こんな不条理があってたまるか。

「やめろ、……やめてくれっ」

トオワタにはこの場にいる誰よりもユキを理解しているという自負があった。

ユキは東方大陸を襲った地獄のような厄災を共に乗り越え、同じ憎しみを背負う仲間なのだ。

西方大陸で奇跡のような再会を果たした彼女を、ここで見捨てることなどできようか。

「魔族よ、彼女は教会の人間ではない。俺と同じ、東の大陸から来た者だ」

ノースの言葉に従いサファルへ口付けようとしていたユキがぴたりと止まる。

「クライアは、勇者の召喚に何一つ関わっていない。むしろ俺たちは西の奴らに食い物にされた被害者であって、お前たち魔族の報復の対象ではない!」

「……やめて」

お前の憎悪にわたしを巻き込むな。

感情の波に流されそうになるのを俯いて耐える。ユキは手首にできたあざを服の上から握るように強く指圧し、鈍い痛みこそが自身の感覚だと認識する。そうでもしないと、平静な自分を保てそうになかった。

ユキの苦悩をトオワタは気付けず、視線を向けてきた魔族達へと必死に捲し立てた。

「お前達の仲間を討った勇者の召喚に用いられた、膨大な魔力は、東方大陸の人間からかき集めたものだ。西の大陸に神などいない」

「そんなっ、虚言にしてもあんまりですわ!」

聖女の反論にトオワタは激昂し瞳孔が開く。

「黙れ! 俺たちの大陸を地獄に変えておきながら、何も知らずにのうのうと富を貪る極悪人どもが! お前たちのほうがよっぽど悪魔だ。クライア! お前がこんな連中を助ける必要はないはずだろう!」

「違う。……そうじゃない」

情があって助けたいわけではないのだ。

トオワタが当然のように向けてくる仲間意識が気持ち悪い。

ユキの背中にサファルがそっと手を回した。ごわついた服越しにほのかな体温を感じ、ユキははっと手首の指圧を離す。

物言わぬ、静かな温もりにぼろぼろと目から涙がこぼれた。

「自分を犠牲にして、なぜそうまでしてこいつらを助けようとするんだっ」

「うるさい!」

叫び声は思いのほか部屋に響いた。罵詈雑言は長く続かず、歯を食いしばって嗚咽を堪えるユキをサファルが慰める。

「その男を黙らせなさい。ユキが集中できません」

サウスがすかさずノースより受け取った猿轡をトオワタに噛ませる。

サファルがこの人間を煩わしく感じつつも始末しない理由を、眷属達は把握済みだった。

「無力だなあ。求めた女がてめえ以外のモノになる様を、そこからよーく見てろ」

言葉を成さないくぐもった声をあげるトオワタに、サウスがこっそり耳打ちしてやる。

顎に指をかけられ、サファルの瞳を食い入るように見つめるユキにサウスの声は聞こえていない。

「あれが、あなたの心を頑なにする原因ですか?」

「……違うっ」

「そうですか。では改めて、続きをどうぞ」

先を促され、涙で濡れたユキの頬が真っ赤になる。

目を見開き、口をぱくぱくさせたと思えば眉をへにゃりと下げてうろたえて。戸惑いながらもユキはサファルから離れようとはしない。

やがていじらしくサファルを見上げ、男の肩に手をつきゆっくりと腰を上げた。

ノースに言われた通りに自らサファルへと口付ける。唇を触れ合うだけで済ませてはいけないのは散々教え込まれてきた。

ユキはそっと舌を伸ばし、サファルの上唇と下唇の境目を遠慮がちに舐めた。

微かに開かれた口におずおずと舌を差し入れる。サファルの舌へと自らのそれを絡めた。

生暖かさと同時に舌にじんとした痺れを感じ、それはサファルの魔力だと瞬時にユキは思い出した。

「ふぁっ……ぁ……」

久しぶりの感覚に全身がカッと熱くなり、力が抜けていく。

唇を離しかけたユキはサファルに後頭部を押さえられた。

ユキの引っ込んだ舌を追うように、サファルが口腔を蹂躙する。ユキは口を開いて何の抵抗もなくサファルを受け入れた。

鼻で呼吸するとサファルの香りが鼻腔をくすぐる。雨上がりの森に漂う、懐かしい香りにユキの思考はとろけていった。

舌に乗せて与えられた唾液を迷うことなく嚥下する。

「ん……んぅっ……」

腹の奥にじわりと熱が溜まりだし、無意識に腰が艶めかしく揺れた。

理性を溶かすように体が欲情していく。その実感に、ユキは絶望と歓喜を同時に味わった。

「……っ、うぅ——っ!」

遠くからトオワタの呻き声が聞こえるも、そちらに意識に留めていられない。

ちゅっと舌を吸われ、サファルはようやくユキとの口付けを解いた。

力の抜けた体をサファルの胸に預け、短い呼吸を繰り返す。

サファルはトオワタに一瞥をくれた。

「見当違いもいいところです。人間の諍いなど我々にとってどうでもよい。……ユキ」

名前を呼ばれ、ユキは微かに反応を示す。

「あなたの罪は、そんなところにありませんよね?」

罪。追い詰める目的ではなく、服従するための言い訳として使われた単語に思考がこんがらがる。

かつての仲間であるトオワタがいて、西方大陸に生きる聖女がいて、目の前には支配者が——。この密室は、まるでユキを取り巻く世界の縮図だ。

罪を償うのは当然として、ユキにとって何よりも重い罪はなんだ?

過去から目を背けることか。生き残った分際でのうのうと生き続けていることか。——支配者の元を、逃げ出したことか……?

置かれた状況に混乱を極めるユキに構わず、サファルは丈の長い修道服の裾をたくし上げた。

「いやっ」

「抵抗したいならお好きにどうぞ」

「————っ」

体が震えたのは足が外気に晒されたからじゃない。

逃走は無意味で、力では到底敵わない。

非力なユキなど容易に好き勝手にできるというのに、サファルはあえて選択の自由を与えてくる。

自由ではあるが、逃れられぬ明確な理由もまた、支配者はユキへと示していた。従うのはやむを得ないことなのだと言い訳できる逃げ道が、この場では唯一正しい選択なのだと錯覚してしまう。

陵○を阻止しようと咄嗟に掴んだサファルの手首から、ユキは無言で手を放した。

ソックスを脱がされる。靴擦れで膿んだ踵に外気が当たり、開放感と共にひんやりとした冷たさが足を包んだ。

ユキの生脚の、ふくらはぎから膝の側面にかけて浮かんだ靴跡の形をした痣が人目に晒される。

サファルは笑みを消してため息を付いた。

「認識を改める必要がありますね。この体はあなたの物ではなく、私の所有です。他者が傷を付けようとするならば、あなたにはそれを回避する義務がある」

「——っ、わたしはっ」

誰の物でもないと言おうとして悔しげに口を閉じた。沈黙すると、突き刺さるような視線を四方から感じ、改めて置かれた状況を思い出す。

人の目から逃げるようにサファルの胸に顔を埋めればかつての淫らな記憶が鮮明によみがえり、秘所がじんと疼いた。

傍からすればサファルに甘えているような仕草だが、ユキは気にしていられなかった。

丈の長い修道服の裾から差し入れられた手が、太腿をまさぐる。筋に沿って膝から脚の付け根へと指が通り、触れられてもない下腹部が切なさを訴えた。

「んっ……ぅ……」

呆気ないほど簡単にユキの体に淫欲の火が灯る。

これが欲しかったのだと、久しぶりの愛撫に歓喜し、更なる刺激を求める自分自身に止まりかけていた涙があふれた。

ショーツのラインをなぞられて上体が艶めかしくくねった。

着衣の上からだと微かに体が揺れただけでしかない。しかしユキの悩ましげな吐息に、見ている者たちは修道服の中の淫らな行為を想像し、顔を赤く、もしくは青くした。

サファルが与える触覚的な情報が先行し、観客を意識することがユキには叶わない。

「ふ、ん……っ」

下着の布越しに指がクリトリスに触れた。付近を往復し、気まぐれに押され、爪を立てられるもそれは強い快楽には遠く及ばずもどかしさが積もる。

かりかりと、爪を遮る布地が恨めしい。

もっと、もっととねだるように立て膝になり、同じタイミングで腰に回されたサファルの手がくっとユキを引き寄せる。

前屈みに倒れ、ユキはサファルに抱きついた。

右側腰骨付近のショーツと肌の隙間にサファルが二本の指を入れた。指を曲げて生地を引き伸ばした途端、ぴりっとした魔力が流れて生地が裂けた。左側も同様に。腰の緩い締め付けがなくなり、布きれとなったショーツがはらりと落ちる。

覆うものが消えた秘裂にサファルが浅く指を沈めた。

「——っ、ぁ……」

指の滑らかな動きに秘所のぬかるみを知り、顔がカッと熱くなる。

クチっ、クチュ……と。今にも水音が聞こえてきそうだ。

「んぁっ」

愛液をまとわりつかせた指が一本、膣の中へと侵入してきた。狭く閉じた膣道が押し広がる感覚に、ユキの腹部に力が入る。サファルの長い指を、膣壁がぎゅうぎゅうときつく締めつけた。

その動きは異物を拒むのではなく、まるで歓迎しているかのようだった。

「外へ出て以降、こちらに誰かを許しましたか?」

「……っ、ないっ、ぅ……だれも……」

検分するように、そしてそこでの快楽を思い出させるように。中に埋まる指が狭い膣壁を押しながらゆっくりと動く。

「ふぅ、んっ……は、あっ……」

肉壁を拡げるように指でくるくると円を描かれ、徐々にあの狂気的な悦楽が蘇ってゆく。

指ひとつ程度では済まされない。膣をぎちぎちに広げる熱くて硬い熱棒を。指先が触れているその先へも及ぶ、絶対の支配を——。

淫欲が腹の底から沸き上がる。このままではいけないと危機感が募るも、回避する方法などありはしない。

焦って呼吸が速くなるユキを落ち着かせようと、体を支えるサファルの手が背中をさすった。

「ゃあぁ……、うぅ……」

この状況を敷いている男に縋るしかない。無力感すらもじわじわと快楽がかき消してゆく。

「こうして、自分で慰めたことは?」

膣に中指を入れられたまま親指でクリトリスを押される。

「んんぅっ、やぁ、あっ……、な、いっ」

びくびくと腰を震わせながら、ユキは必死に首を横に振った。

ユキは自分が潔癖だとは思っていない。しかし快楽を求める行為の先にサファルの存在を思い出すのが怖くて、自慰をすることができなかった。

どうせ一人では満足できないと、心のどこかでわかっていたのかもしれない。

毎晩、過去の悪夢を曇らせるほど鮮明で淫らな夢が脳裏を駆け抜ける。

今ここで感じている快感は、夢でなく現実のものだ。

「あっ、ん、んっ……っ。んくっ、んん……うう」

親指の腹がクリトリスの頂をこねる。つんと主張する肉芽の裏筋を押し上げられ、膣道がきゅうっと締まった。

しかしユキが次なる刺激に身構えるより先に、サファルの親指はクリトリスから離れてゆく。

「……んっ、あ……あっ」

膣に入る指が二本に増やされる。痛みはないが圧迫感が増した。

「あ、やぁっ……、そこ、は……っ」

「覚えていますか。好きなところでしょう?」

「ちがっ、やっ、あ……あぁっ……」

腹側の浅い部分をくちゅくちゅと指で押し擦られ、快楽の波が高くなる。

愛液の水音が微かに耳に届き、ユキは羞恥にうろたえた。

ここは鳥籠じゃない。多くの人が見ている場所で、自分ひとり何をしているのかと我に返るも、すぐに新たな快感が上乗せされて冷静さをかき消す。

「んぅ……っ」

三本目の指が挿入された。膣道を広げるように進んだ指は、最奥の肉壁をこりこりと押し、鉤状に曲げて戻ってゆく。

指先が入り口近くへ到達すれば、浅い位置にある腹側の感じる部分を数度押し、再び膣奥へ。

「やっ……、あんっ、んぅう、やだっ、あっ……ぅ」

徐々に指が奥に留まる時間が長くなる。

三本同時にぐにぐにと肉壁を押し広げられたかと思えば、一番長い中指がポルチオを集中して責める。

サファルが気まぐれに動かす指は予測ができず、そちらに気を取られては周囲を意識する暇もない。

子宮の入り口は快感の源泉だと散々教え込まれた体だ。

しばらく性的な事象とは無縁な生活を送っていたとしても、ポルチオで味わった強烈な快感を忘れられるはずがない。

いとも簡単に呼び覚まされた快楽に悶え、次のステップへ昇り詰めるため膣道は貪欲に指を咥え込む。

「気持ち良いのでしょう? どのような状況であっても快楽を拾える、淫らな体です。絶頂する姿をここにいる皆に見てもらいましょうか」

「やっ……いや、やだあっ……ぁっ」

サファルが耳打ちするものだから気が逸れて絶頂には至れない。

理性を押し流す大波をはぐらかされ、解放への欲求は蓄積される一方だった。

羞恥ともどかしさのはざまで、ユキはなすすべもなく腰をくねらせる。

最初の口付け以降、サファルはユキに魔力を与えていない。

しかしサファルの魔力は呼び水となってユキの性欲を煽り立てた。

もっと……もっとと、本能が理性を磨り潰す。さらなる強い刺激を、そして絶頂を望んでしまう。

「いぁ、あっ、あ……、いやぁあ……」

人に見られているのが嫌なのか、達せないことが嫌なのか。もはや口走るユキにも判別がついていない。

「いや、じゃないよね。気持ち良い時はなんて言えばいいんだった?」

「んうぅ——っ」

後ろからノースに囁かれ、ユキが背中を丸くする。

——きもちいい。否定しようがない事実を突きつけられて一層思考の混乱が悪化する。

「……いぃ……、いいっ、…………っ」

「そうだね。愉悦は恥ずかしさを凌駕する。痛みなんかよりもずっと、他人の感情を遮断して、君を君でいさせてくれる。今その身に受ける感覚に、もっと素直になりなよ」

「はっ、あぁ……、あんっ、ううぅ」

ユキはノースの囁きから逃れようとして、サファルの肩口にぐりぐりと額を押し付けた。

甘えるような仕草にサファルはしがみつくユキの背中を軽く叩いてあやした。

この舞台を作り上げた元凶に縋るしかない、憐れな獲物が愛おしい。

ユキが二度と逃走を企てないように。徹底的に拠り所を潰し、己の手の内でしか生きられぬようトラウマを植え付けることをサファルは一切ためらわない。

ノースも主人の意図を汲み取ったうえでユキを追い込んでいる。

淫らな肉体を自覚させ、主人が望む精神状態へとユキを導く。

「あうっ、あっあぁっ、あ、んん……っ」

サファルの指がポルチオを突く。しかし絶頂へと昇り詰める前に膣の締めつけに逆らい指は抜け、またもや迫りくる大波をはぐらかされた。

「はぁ……、ああっ……ぁっ」

「指だけで満足できますか?」

「あぅ……うっ」

するりと抜けた指が膣口をくるくるとなぞる。ナカへの刺激を望む膣道のうごめきをユキは嫌でも自覚させられた。

足りない。これだけでは満たされない。

指よりも長大な肉棒が体の奥を制圧する充足感を、ユキはとうに知ってしまっている。

「…………サファル、さま」

「どうしましたか、ユキ?」

だめだと理性が警鐘を鳴らして訴えてくる。

サファルの魔力に染まりきっていない体は自由が利く。僅かに残る冷静な思考で、男の思惑に反して嫌だと抵抗することもできた。

しかし同時に理性は周囲の人間たちを意識してしまう。言動を間違えれば囚われた彼女たちの首が飛ぶ。ならば従うしかない。

安直に導かれた答えが支配者の思惑の一部だと、ユキに疑ってかかる余裕はない。たとえ疑えたとしても、抗うことはできなかっただろう。

「……抱いて……ください」

懇願は敗北の宣言だ。

「サファル様ので……、イキた……い」

どのみちこの男に見つかった時点で、屈服は時間の問題でしかなかった。

自らサファルに屈したことを苦心する反面、諦めからくる解放感にユキは心の片隅でほっとしていた。

「いい子だね。ちゃんとおねだりできた」

後ろからノースに褒められる。サファルにも頭を撫でられて、ユキの中で安堵はより一層強まった。

頬を赤くして潤んだ瞳で上目遣いにサファルを見つめる。

うっとりとしたユキの横顔に焦ったのはトオワタだ。男は魔族の拘束を解こうと必死にもがいた。

「ん——っ! んんっ……!」

駄目だ。魅入られてはいけないと。ユキに向かって叫びたいのに噛まされた猿轡が発言を許さない。

ソファに腰掛ける魔族の脚に跨り、甘えるように身を寄せるユキからは、これまでにない色香が漂っていた。

——お前はもっと、何事に対しても頓着がなく、誰に媚びない孤高の女だろう!

トオワタにとってユキはずっと憧れの存在だった。縁が巡りに巡ってようやく自分のモノに出来るチャンスが来たというのに。

いずれは強気な瞳を蕩けさせ、自分だけに甘えるように仕向けたいと何度も妄想したことを、人間でもないパッと出の魔族に横取りされた。

本来サファルの立ち位置に居るのは自分だったはずだ。こんな状況、納得できるはずがない。

ユキの恥じらいながらも喘ぐ姿に、トオワタは鼻息を荒くし涙を流した。

魔族に拘束されてなおももがくトオワタを、サウスは冷たい視線で観察していた。

トオワタがユキへと寄せていた一方的な支配欲が、ユキが他人のモノになったことでより一層強まった。——といったところだろう。

遅えよと、サウスは心の内でトオワタを嗤う。

トオワタ自身では魔族に太刀打ちできないからと、ユキにサファルへの反抗を促す様子はあまりにも滑稽だった。

独善的な主張が愛する女を追い詰めていることにも気付けない、独りよがりな男だ。

「騒がずに黙って見てろ。てめえは愛した女ひとり守れない……、いや、守らせてもらえない、ただの雑音だ。恨むならあの子じゃなくて、自分の無力を恨むことだな」

「——っ!」

サウスの煽りにトオワタはもがく力を強める。しかし人間が魔族の力に敵うはずもない。

「余計なことをするな」

トオワタを拘束する仲間に面倒そうに文句を言われ、サウスは悪びれることなく謝った。

そんな視界の片隅で起こるやり取りが耳に入るわけもなく、ユキの視線はサファルの手を追いかけた。

寛げたボトムより取り出された、そそり立つ剛直に子宮がきゅんと訴える。これが欲しいのだと膣がうねり、淫らな渇望に僅かに残る理性がみるみる溶けていった。

裾から服の中へと潜り込んだ手が腰に添えられると、ユキは自ら膝立ちとなる。修道服の裾がたくし上がり、ユキの脚部が人前に露わになった。

無駄な肉のないしなやかな脚は、肌に浮かぶ傷やあざが痛々しい。

溜め息を吐きたくなる気持ちを堪え、ノースは周りに目をやった。

顔を赤くしながらも行為を食い入るように見つめる聖女たち。興奮を抑えきれないのはトオワタも同じようだった。ふうふうと鼻息を荒くして、男の視線はユキを捕らえて離さない。

トオワタの衣服越しでも判別できるほど盛り上がった股間を、おそらく本人は自覚できていない。

空気を壊しかねないので失笑したくなるのをノースは視線を逸らすことで耐えた。

「自分で挿れてごらんなさい」

久方ぶりに目の当たりにした長大なペニスに怖気付くユキへと、サファルは容赦なく命令を下した。

ユキは怯えながらサファルをうかがい、有無を言わさぬ笑みに逃げ道はないと悟る。

ごねればその分、また性感を煽られてしまう。ここまでくれば道はひとつしかない。

意を決して、サファルのペニスに両手を添えた。

指先に当たる肉棒の熱さに出かかった悲鳴を飲み込む。同時にそれが胎内に埋まるところを想像してしまい、どくりと心臓が高鳴った。

膝に力を入れて腰を持ち上げ、ペニスの先端を自らの蜜壺へと誘う。

ぬちり……。

強烈な圧迫感を覚悟してきつく目を閉じ、ユキはゆっくりと腰を落とした。

指とは比べものにならない質量と熱が、膣口をゆっくりと広げていく。

「あっ……んうっ、んんー……っ」

際限なく開くかのように思われた入り口は、先端の膨らみを迎えて落ち着いた。引き攣る痛みに、じわじわと快楽が混ざる。連動するように膣奥が切なく収縮した。

亀頭が膣に収まったところでサファルはユキの腰から手を離した。捲れていた修道服の裾が脚を隠す。

「は……あ、うぅ、ぐっ……」

熱がぎちぎちの猥路を押し進む。挿入はスムーズとはいかなかった。

「う、あ……」

「やみくもに体重をかけてはいけません。……そう、落ち着いて、ゆっくりと……」

誘導する声の穏やかさが安心をもたらし、力んでいた体が弛緩する。浅く速い呼吸がだんだんと落ち着いていてきた。

「……ぁっ、あ、んっ……あぁう」

ゆっくりと時間を掛けてユキの腰が沈む。ペニスが膣奥へ近づくにつれ、体が深い快楽を思い出していく。

「んっあ、あぁ……っ、また……、……あうっ」

熱が胎内を埋め尽くす悦びと、腹の奥から湧き上がる悦びに思考が蕩ける。

サファルの腕の中、体を震わせるユキの頬に涙が伝った。

やがて肉棒は子宮口に突き当たる。

「ああっ、はぁ……っ、んうぅ、あっ」

自重で肉壁にペニスが当たりユキの腰が引けた。

「そこで終わりではないでしょう?」

サファルは怖気付くユキに告げ、腹部にそろりと触れる。言わんとしていることを理解したユキは瞠目して首を横に振った。

「むり、できなっ」

「では少し慣らしましょうか。脚に力を入れて」

否とは言わせず、サファルがユキの腰を支えた。

「……いや……、そんな……入らない」

ただでさえペニスは強烈な圧迫感をもたらし、限界まで膣道を広げている。前回の性行為から時間が空きすぎた体では以前のようにはできないと訴えるも、サファルは赦してくれない。

「大丈夫です。あなたのここは、とっくに私を受け入れられるように作り変わっています。間隔が空いたところで、その身が戻ることはありません」

「……なっ、やあっ!」

腰を掴まれ、ぐりぐりと奥の肉壁に先端を押し付けられる。体を突き抜ける深い快感にユキは目を見開いた。

「ああっ! あっや、あぁっ、きゃうっ!」

追い討ちをかけるようにサファルは裾から手を差し入れて、クリトリスを指で押し揉んだ。ポルチオの刺激も緩められることはなく、ユキの腰ががくがくと揺れた。

「こんな淫らな体で、よく逃げ出そうとしましたねえ」

「あっああぁ! ごめっ、なさ……っ、ああっ——ぁんっ」

ユキが達する直前でサファルはクリトリスから手を離した。

ペニスの先にある、肉壁のさらに奥が支配を欲して劣情を強める。

「あ……、や……っ、はぁ、ぁっ……」

目一杯にペニスを咥える膣があと一歩の快楽を拾おうと懸命に収縮を試みる。

破滅を望むユキの精神とは裏腹に、肉体は性的な行為に貪欲だった。

「達したいなら自分で動きなさい。お仕置きは終わっていませんよ」

「……っ、うぅ……あっ」

促されるままにユキはゆっくりと体を持ち上げた。少し腰を浮かしては脚の力を抜いて、奥にペニスの先端を押し付ける。

「あぅっ、うっ、ん……くっ、あっ、ああぁっ!」

繰り返すうちに、かつて味わった快感が呼び戻される。

固く閉じた肉壁の先、膣の奥の奥を埋め尽くすサファルの支配と、灼熱を。そこに行き当たらない現状に焦らされ、もどかしさばかりが腹の奥に溜まっていく。

自ら腰を振り、よがるユキをトウワタは呆然と眺めている。しかし過去を知る男の視線すら、サファルがもたらす悦びの前では些細なことに思えてしまう。

「やぁ、あっ、……っくぅ、……いっ、くうっ……あぁっ!」

散々はぐらかされた絶頂の波が押し寄せる。

切羽詰まった声で鳴くユキの下腹部に、サファルが服の上から手をかざした。

するとユキの腹の中にじわじわと熱が灯り、薄い腹がびくびくと震えた。

「あっ! ああぁっ、やっ、ああ!」

腹の熱は徐々に下がり、ポルチオの快感を増幅させた。

ちかちかとユキの視界が明滅する。

ひと突きごとに子宮口が緩む。直接の熱い肉棒を既に知っている子宮は、この程度では足りないとペニスの到達を待ち詫びた。

「ああっ、あっ! まっ……、さふぁ……さっ……ああぁ!」

苦しい。でも、気持ちよくてたまらない。

抽送に合わせて子宮口が広がり、腰の沈みが深まってゆく。

「やっ、あ、ああ——っ!」

快感の波にのまれ、ユキの視界に火花が散る。絶頂に達するのと同時にサファルはユキを抱き込むように抑えつけ、軽く腰を突き上げた。

ぐっ、ぬう——っ。

子宮内にペニスの先端が侵入を果たす。

ユキの肉体はかつてのようにサファルの魔力に完全に染まりきっていない。そんな状態であっても、ユキはその身に快楽を感じ、サファルのペニスに支配される悦びを享受していた。

「あう、うっ、……うぁあ……、あっ、あんっ……んんぅ……」

びくん、びくんと体が跳ね、なかなか絶頂から降りられない。

サファルはユキの背中を優しくさすり、余韻が落ち着くのを待った。

しばらく動かずにいると、徐々に喘ぎが小さくなる。

ひくんっ、ひくんと体が跳ねる間隔が長くなるのを見計らい、サファルがユキの腹部に手を置いた。

「今、どこに何が入っているのか、ここにいる者たちに教えて差し上げなさい」

「んんぅ——っ、やぁっ……」

下腹部を押されて上半身がぎゅうっと縮まった。

奥に嵌まった熱をありありと思い知らされる。はくはくとユキの口が開閉し、声にならない吐息がこぼれた。

サファルの余裕が滲む表情を目の当たりにしたユキは、命令に従うまでこの淫蕩な行いが永遠に続くと察した。

羞恥にまみれながら言葉を探す。

「…………わたしの、子宮に……んぁあっ、……サファル様の、ペニスが……ぁっ、……入って…………ます」

蚊の鳴くような声は静まり返った室内中にはっきりと届き、人間たちはどよめいた。

聖女は顔を真っ青にして口を手で覆いながらユキを凝視する。聖女を囲む侍女たちは自身の未来をユキの身と重ね、魔族に陵○される己の末路を想像して泣いた。

「気持ちいいのでしょう?」

「…………は、ぃ……」

サファルの問い掛けに、ユキは時間をおいて首肯した。

トオワタは興奮を隠しきれず、吐き出す息に耐えず呻きが混ざった。

普段の冷たい態度からはおおよそ思い描けない、ユキの蕩けた表情から目が離せない。彼女にそんな顔をさせるのは、魔族ではなく自分であるはずだった。他人に奪われてしまうと殊更にユキが惜しくてたまらない。

なぜもっと早く、無理矢理にでも東の大陸へ連れ戻さなかったのか。

そうしていれば、ああしてよがるユキを自分のモノにできたというのに……。

「諦めろ。てめえじゃあいつは満足させられねえ」

サウスが跪かされたトオワタの前にしゃがみ、ユキへ向けられた視線を遮る。

「いい加減に自覚しろ。お前が今ここで生かされているのは、ユキがお前に対して何の愛情も持っていなかったからだ。でなきゃとっくに……、今日を迎える前にお前は消していた」

嘘だ。そんなはずはない。

トオワタとユキはかつての東方大陸で、地獄のような厄災を乗り越えた仲間なのだ。

ユキとの付き合いの長さはここにいる誰よりもトオワタが勝っている。

魔族の言葉など、信じるに値しない。何度も自分に言い聞かせるが、そんなことで現状は変わらない。

聞こえてくるユキの喘ぎ声に、トオワタの目からぼろぼろと涙が流れた。

真っ赤な頬に水滴が伝う。トオワタの悲痛な面持ちをサウスは鼻で笑った。

「ったく、他人のモノに執着してんじゃねえぞボケナスが」

周囲のやり取りをユキは気にしていられない。

サファルがユキのお尻を下からすくうようにして体を持ち上げ、小刻みに揺さぶった。振動は体の奥にまで届き、子宮にさらなる熱が溜まる。

「やあ! あっ、あうっ! ……はっ、んあっ、あっ、ああぁ!」

引きかけた絶頂の波はすぐに呼び戻され、たまらずユキはサファルの肩にしがみついた。

自重が合わさり子宮の奥壁へ押し付けるように当たる熱は際限がなく、体の内側からユキを責め立てる。

もうやめてほしいと望む一方で、無意識に腹筋にぎゅっと力が入り腹をへこませてしまう。サファルが与えてくる次の刺激を求め、圧倒的な支配を示す熱棒を胎に受け入れたまま、ユキの視界は真っ白に染まった。

「ああっ、やぁあ————っ!!」

二度目の絶頂に上り詰めるのは早かった。

切羽詰まった悲鳴が上がるのと同時にサファルは揺さぶるのをやめて、自らもユキの胎内に白濁を放つ。

「は、あ……っ、あ、——これっ!」

口付けで与えられた時とは比べ物にならない、サファルの膨大な魔力が子宮から全身を駆け巡る。

魔力の侵食が進むにつれてユキの体の強張りが緩んだ。

強烈な快楽はなおも秘所に留まっている。しかし体の自由が利かない。

発散させたくても、動けないのだ。

「……ぁ……あぁ……うっ……ぅ」

主導権を明け渡すがごとく、ユキはくたりとサファルに身を預けた。

子宮が熱い。四肢の力は抜けていくのに、膣壁はなおもうごめきペニスに奉仕を続ける。それがまた苦しいぐらいに感じてしまう。

腹の奥から頭の先、——思考まで。自分という存在が書き替えられる。

恐怖が掻き消えて、支配されることへの喜びが心を埋め尽くす。

こんな感情はまやかしだと、わかっていても抗えない。

「自分が一体誰のものなのか、思い出せましたか?」

サファルの声が耳から脳に届き、精神に溶け込んでいく。

体の内側でこれが答えだとばかりにサファルの魔力が呼応して、頭が沸騰しそうなぐらいに熱くなった。

「……っ、あ、う……」

圧倒的な魔力に溺れて思考することもままならない。

そんなユキにサファルはさらなる罰を下す。

「勝手にどこかへ行ってしまっては、こちらも肝が冷えます。あなたが反省できるまで、暫くは行動を制限するとしましょう」

膣内にペニスを咥えたユキは股を広げて膝でサファルの腰を挟むような状態にある。ペタンと膝を折って座る体勢の両足は、左右それぞれ体の外側へ投げ出されていた。

黒い修道服の裾から覗くユキの足に触れ、サファルはグラダロトに目配せした。

命令の言葉はなくとも主人の意図を察知して、グラダロトはユキの背後に立つ。靴擦れで膿んだ踵の上、細い足首を掴んだ彼は親指の鋭い爪を立て、腱に突き刺した。

「——っ!」

ユキが感じた鋭い痛みは一瞬だった。

体は依然として動かずもがくことができない。

足首の裏側を襲った衝撃はすぐにじんとした痺れに変わる。痛覚は消えても、違和感が尾を引いて残った。

反対の足首にも同様に激痛と痺れが施される。

何をされたのか。混乱するユキを意に介さず処置を終えたグラダロトはその場を離れた。

「な、に……? 今の……っ」

「すぐにわかります」

サファルの親指が足首をこすると痺れるような違和感も消えてしまった。

意味のないことだとは思えない。嫌な予感がするのに、サファルが望んだならば仕方がないと認めてしまう自分もいて、危機感が持続しない。

「……さあ、少し眠りなさい。お仕置きの続きは鳥籠でするとしましょう」

「…………ゃ……ぁ」

嫌だ。駄目だ。聞いてはいけない。

下腹部に留まる熱に快楽を拾いながらも、瞼が重くなる。

「——おやすみなさい」

支配者の言葉に逆らえず、ユキは意識を闇に沈めた。





◇  ◇  ◇





気を失ったユキを自身にもたれさせ、サファルは血の滲んだユキの足首を再度指先でなぞる。

枷はつけた。もうどこにも逃がさない。

修道服の袖口から見える力無く垂れた細い手首を掴み手のひらを上に向ける。ユキの手は節々のアカギレから血が滲んでいた。少し目を離しただけでこれか。

呆れ混じりにじっとユキを見つめた。すぐに治せる傷であっても、安易に体を痛めつける行為は早急にやめさせなければならない。

溜め息ひとつ、サファルはユキの胎内からペニスを抜き去った。

「あっ……うぅん」

悩ましげな声が溢れるも、ユキが目を覚ます気配はない。

ノースより棒状の器具を受け取ったサファルはそれをユキのナカへと入れた。

つるりとした硬質な器具は難なくユキの膣道へと侵入を果たす。

指で奥へと押し込み、子宮内の精液がこぼれないよう栓をした。

「は……あぁ……んっ」

器具が子宮口に当たるとユキは眉を寄せて甘い喘ぎを漏らした。

膣より指を引き抜き、サファルはユキを横抱きにして立ち上がった。

「さあ、帰るとしましょうか」

ユキへかける声はどこまでも優しい。しかし慈しみ微笑むサファルの瞳は冷たく、二度とユキを逃さないという強い意志が垣間見られた。

「えぐい執着だな」

一部始終を傍観に徹したサファルの長年の友——ミスガルムが、呆れを隠さず顎でユキを示す。

「人間の身でお前の魔力に順応するとか、どんだけ時間をかけて書き替えたんだ」

「これがなかなかに優秀な子でして、そう苦労していません」

「ほう……。お前と奇跡的に相性が良かったのか、そいつの体質が特別なのか……試したくはないか?」

暗に自分にもユキを抱かせろとせがむ友人に、サファルは余裕のある笑みを返した。

「生憎と、この子は私の独占です」

だろうなと、答えを予想していたミスガルムはあっさりと諦めてソファへ深くもたれかかった。

「それで、気は済んだのか?」

「ええ。ご協力感謝します」

状況が変わる。依然として呆然とユキを見つめる聖女を置いて、彼女を取り囲む侍女たちは身構えた。

「……ああ、そういえば」

存在を忘れていたとでも言いたげな口ぶりで、サファルは聖女たちに体を向ける。

「ご苦労様でした」

部屋の一部の空間が歪む。ねじ曲がり、かき混ぜられ、瞬きをする間も無くそこにいた人間を肉片に変えた。

サファルの労いは、聖教会の者たちの耳に届くことはなかった。——ただひとり、聖女を除いて。

「ひいぃっ!」

「おや、残りましたか」

血を吸った絨毯に聖女が腰を抜かして尻餅をついた。恐怖に引き攣る聖女に、サファルは穏やかな笑みを讃えた。

「聖女というのは、偽りでなかったようですね。人間たちにとって特権階級の身分である故に、そちらを手にすることができたのでしょう」

「やっ、やめっ! お願い助け——っ」

懇願は聞き入れられず、先程よりも強い力が聖女を襲う。

骨も肉塊も磨り潰され、床におびただしい量の血が広がった。

絨毯の繊維では吸収しきれず生じた血溜まりに、円錐形の物体が残された。

ノースがそれを手に取り、血を拭き取ってサファルに差し出す。

黒色の、ヒビが入った硬質な物質からは西方大陸の人間たちに魔王と恐れられた末に討たれた、サファルの友人の魔力を感じられた。

サファルはそれを受け取らず、ソファで寛ぐミスガルムへ渡しておくよう指示を出す。

人間たちが利用している友の破片はこれだけではないはずだ。今回取り戻せたものはミスガルムの元に集められ、二度と人間の手に渡らぬよう彼がまとめて消し去るだろう。

西方大陸にもう用はない。

「邪魔をしてすみませんでした。最後にあれだけ貰っていきます。もう少し、聞きたいことがありますので」

この場を支配する圧倒的強者二人に視線を向けられ、トオワタは震え上がった。

「話の流れ的に、お前の腕の中にいるのと同郷じゃねえのか? 東の大陸のことならそいつに聞けばいいだろう」

「困ったことに、頑固な子ですからねえ。そこも可愛いのですが」

「……まあいい。勇者に関する情報はこっちにも寄越せよ」

「そのつもりです」

血で変色した足元を見て、サファルはやれやれと息を吐く。

人間たちの生きることへの執着に、彼女も少しは感化されて欲しかったのだが……。

ユキが他者の感情に敏感ならあるいはと考えたものの、そう上手くはいかないようだ。

「あとはお願いします」

ユキを回収したサファルは眷属たちを連れて北方大陸へ戻った。





ーーーーーーーーーー
続きはDL siteにて販売しています。
気になった方はご購入いただけますと幸いです。

市街地 2024/03/31 22:00

【小説サンプル】死にたがりの魔女と上位魔族2・えっちシーン抜粋

『死にたがりの魔女と上位魔族2』のえっちシーンのサンプルです



あらすじ

逃げ出した魔女が上位魔族に連れ戻され、快楽責めによるお仕置きを受ける話。

全体を通したプレイ内容

人外(魔族)攻め・囚われ・無理矢理・肉体開発・しつけ・羞恥プレイ・子宮責め・快楽責め

・ヒロインが攻め以外から性感開発・お仕置きを受けるシーンがあります。
・作中にモブキャラの殺傷描写、流血描写がございます。




【第2話 しつけなおし】より


目蓋の裏に届く光が眩しくて、ユキはうっすらと目を開けた。

ドーム状に嵌め込まれた透明度の高いガラス越しに見える空は嫌味なほどに晴れ渡っている。

鳥籠の中で正確な時間は知れないが、どうやら随分と長く眠ってしまったようだ。

気怠い体は寝返りを打つのも億劫で、寝過ぎたからか頭が重い。こんなに眠れたのはいつ以来だろう。随分と長い夢を見ていた気がする。

鳥籠から逃げ出して、捕まり、人前でサファルに仕置きを受ける。

散々な目に遭う夢だった。

おまけに勇者召喚の魔法陣まで壊されてしまった。この先何を目標に生きればいいのか。命がまだ続く事実に落胆し、ユキはひとり途方に暮れた。

とことんわたしは悪運が強い。そろそろ終わらせてくれてもいいのでは……。

体にかかった毛布を顔まで引き上げようとして、違和感に気づく。掴んだ手のひらに毛布が引っかかるのを感じたのだ。

きっかけひとつでユキの脳は寝ぼけた状態から一気に覚醒した。

体から毛布を跳ね除ける。着ているのはいつもの白いワンピースだけど、いろいろとおかしい。

節々の肌が裂け、アカギレだらけの荒れた両手。手首や腕、身体中に残る痣も……。

——夢なものか。

鳥籠を逃げ出してから、西方大陸で聖女に拾われた。教会で暮らしながら勇者召喚の魔法陣を破壊する機会を狙っていたが、魔族の襲撃にあい、サファルに見つかり……。

次々と記憶が映像となって頭の中を流れていく。最悪だ。焦燥に駆られて起き上ろうとするも、上手くいかない。

足を体のほうに曲げて引き寄せることができず、シーツに肘をついてどうにか上体を持ち上げた。

「——んぅっ⁉︎」

ベッドに座ったユキは驚き自身の下腹部を見下ろす。体勢の変化に伴い、胎内で何かが動いたのだ。

気のせいなどではない。

膣奥の違和感は情事の後だけでは片付けられないぐらいに鮮明だった。今も痛みのない圧迫感をユキに与えてくる。ともすれば悦びになりかねないそれを苦々しく思いながらも、考えないように別のところへと意識を逸らした。

膣奥の異物も、腹の奥に残る熱も——。不用意に気にしてはいけない。

そんなことよりもと、ユキは自身の足へと目を向けた。

痛みなどの触覚的な異変はないのに、足が動かせない。

両足はシーツの上に縫いとめられたまま、まるで重りを付けられたかのように引きずることも叶わない。

足首の裏、腱の周りの空気が陽炎のように歪んでいて、何かをされたのは明白だった。

ユキは膣奥を刺激しないようにゆっくりと身を屈めた。

腱へと手を伸ばし施された術を解析しようとしたまさにその時、鳥籠の空気が揺れた。

隙間風が吹くように、体の中に残るものと同質の魔力が漂う。

ぎくりと体を硬直させてユキは顔を上げて鳥籠の一点を見つめた。

じっと身構えていると視線の先にサファルが現れる。赤い瞳の魔族は穏やかな笑みをユキに向けた。

いつもと変わらぬ態度が癪に障る。

ユキは閉口して目を背け、破裂しそうな憤りをどうにか堪えた。当たり散らしたところで、事態が好転するわけでもない。

「おはようございます。よく眠れましたか?」

歩み寄る男にユキは顎を引いて身を固くした。警戒心から離れようとするも、足が動かせずサファルとの距離は縮まるばかりだ。

サファルがベッドの縁に腰掛け、ユキの右足首へと手を伸ばした。

「お仕置きが済めば重りは外しますが、足は当分治すつもりはありません」

「……っ、まだっ」

人前であれだけ辱めておいて未だに気が済まないのか。言葉を失うユキにサファルが当然とばかりに鼻で笑う。

「あの程度で終わるとでも? どうやら自分がしたことの重大さを理解できていないようだ」

「…………っ!」

軽々と抱き上げられ、サファルと交代するようにベッドの縁に座らされる。

つま先が床につくも体を支えるには至らず、お尻に体重がかったことで膣奥の異物が奥の壁をぐっと押した。声が漏れそうになるのを必死に堪える。

実体のない足枷に重みはない。故に両足を床に引っ張る力は足自体の重さと重力だけだ。

それなのに、ユキの足首から親指の先にかけては自由にならず、膝や腿に力を入れて足をたぐり寄せることもできなかった。

「不便はかけさせません。私も世話役たちも、いくらでもあなたの足になれます」

床に片膝をつき、サファルはユキの手をとった。ユキの指の節々にできたアカギレを丁寧に指先でたどる。

「これでも心配していたのですよ。無闇に生き急いでいないかと、気が気でなかった」

「……っ、う……くっ」

サファルの魔力が皮膚を通して浸透していく。指の節々に感じていた痛みがすっと消えた。反対の手も同様に。一瞬にして皮膚の裂傷はおろか手のかさつきひとつなくなった。

滑らかな手のひらにサファルは口を寄せた。

「決してその身は丈夫でないのですから、無茶な行為は控えなさい」

「無茶なんて……」

したつもりはない。

手荒れは労働に従事する者ならあって当然の傷だろう。

魔族と比較されたら人間は誰もが脆弱だ。しかし日々の生活で死ねるほど極端に貧弱でもない。

サファルはユキの身体に傷が出来るのがとことん嫌らしい。

所有物の価値が下がるのを厭うからか、支配者としてのプライドの問題か。ユキには判別がつかなかった。

「無茶でないなら、間接的な自傷行為を認めると?」

揚げ足を取られユキは押し黙る。痛みを精神の安定に使っている自覚はあるので反論できない。

ふう、と。サファルの吐いた息が手のひらに触れる。

「ようやくこちらの生活に慣れてきたかと喜んでおりましたが、また逆戻りとは」

ベッドの外に足を投げ出したまま、肩を押されて上半身をシーツの上に倒される。起きあがろうとするもサファルに乗りかかられて身動きが取れない。

「いつになれば、あなたは心を許してくれるのでしょう」

「……そんな日は来ない」

顔の左右に両手をついたサファルと近距離で見つめ合う。

サファルが真剣なのはその表情からも明らかで、ユキはなぜ自分にそんな顔を向けるのかと泣きたくなった。

「甘え上手な人間が欲しいなら、そういうのを探せばいい」

「勘違いしないでいただきたい。私は甘える人間を欲しているのではなく、あなたに甘えて欲しいのです」

大きな溜め息ひとつ。安穏とした男から笑みが消える。

「なんにせよ、以降は際限のない自由を与えるつもりはありません。精霊避けを施しましたので、異界の者を鳥籠に喚ぶことも不可能だと、先に教えておきます」

「……どんな状況であっても、それはわたしが服従する理由にはならない」

閉じ込められてひどい仕打ちを受けようが、ユキの自我はユキのものだ。

生き様を変えるつもりはないし、命の終わりを目指すのも止められない。歩みを止めようものならば、それこそ心が壊れてしまうだろう。

ユキの頬にサファルの手が添えられる。

「長期戦をお望みでしたら、いくらでも付き合いましょう。どれだけ意地を張ろうが、私はあなたを諦めたりはしません」

「どうしてっ」

なぜ執着の対象がわたしなのかと言いかけて口を閉ざす。

答えを聞いたところでどうせ納得できるはずがない。無意味な問いかけだと途中で気づいたからだ。

理不尽な事象に理由を求めても仕方がない。互いの主張が並行している時点で、ユキとサファルに歩み寄りは発生しない。

少なくともユキはサファルのもたらす待遇を受け入れるつもりはさらさらなかった。たとえ力では叶わないと理解できていてもだ。

怯えながらも支配者を睨む。そんなユキの頬に軽く口付け、サファルは己の下唇をゆっくりと舐めた。

「抵抗したいならお好きにどうぞ。嫌だと泣きながらも快楽に悶えるあなたはとても愛らしく、嗜虐心がそそられる。この手でもっと泣かせたくなります」

「——っ!」

両手でユキの頬を挟むように固定したサファルに口付けを受ける。

覆いかぶさる男を突き返そうとするも、思うように力が入らない。

体内に溜まるサファルの魔力を思い出し、ユキははっと目を見開いた。

「んっ……うんぅ……っ」

気付いた時にはもう遅い。

こじ開けられた口にサファルの舌が侵入した。

歯列の裏側を舐められ、舌を絡め取られる。舌が痺れて脳が蕩けた。

サファルに魔力を口腔から体内へと送られ、それは元から子宮に留まる魔力を呼び覚まし、下腹部に欲情の火種を灯す。

サファルの肩を押していた両腕がぱたりと力なくシーツの上に落ちた。

弛緩して投げ出された四肢に焦りが芽生えるが、どうすることもできない。

「……っ、いやだ……」

「せっかく馴染ませた私の魔力も、時間が空いては体から抜けて当然です。西方大陸では加減しましたが、もうその必要もありません。もう一度と言わず何度でも、その身を染めて差し上げます」

「いやっ、……やめて」

「心配なさらずとも、あなたならまたすぐに動けるようになりますよ」

サファルがユキの下腹部に手をかざす。

「あっ……っ!」

腹の奥の熱が暴れて、膣が締まった。異物を嫌でも意識してしまう。

膣壁が収縮を繰り返し、緩い快感を拾うさまはまるで異物を用いて自慰をしているかのようだ。

「うぅっ、やだっ……」

体の自由が利かないなかでも膣壁はうごめき、ユキの羞恥を増幅させる。

淫らな生き物だと言われても否定できそうにない。

サファルはユキのワンピースを脱がせた。体にできたアザや傷に舌を這わせる。

「やっ……ぅっ」

サファルの手指が、舌が肌に触れるたび、じんとした熱が浸透して体の痛みが消えていく。むず痒さに身をよじろうにも力がこもらず、ユキは漏れそうになる嬌声を堪えるしかできなかった。

「……んぅっ」

痛みに対しては耐性がある。反して全身に与えられる悦びは耐えようがない。

足を持ち上げられ、見せつけるようにサファルがねっとりと脛を舐める。

膝付近の、聖女付きの侍女が踏みつけたことによって変色した部分を甘噛みされて、微かに足が揺れた。

サファルがユキをベッドの中央へ運び、うつ伏せにする。背中に残るおびただしい折○の痕が曝け出され、呆れた溜め息が降り注いだ。

「少し目を離しただけでこれとは……、教会の後始末を友人に任せたことを後悔してきました」

「……んっ……やめっ」

「あなたはこれを付けた者たちに、同じ痛みを与えたいと思いませんか?」

「知らな……っ、どうでもいい」

こんなことでいちいち腹を立てても仕方がない。疲れ以外に得られるものがないのに、無駄なことに心力を注げというのか。

聖教会での生活は、仕事が遅いと鞭を振るわれるのは日常だった。

修道女に関係なく、聖騎士たちからもつねられたり殴られたり、あそび感覚で石を投げられたりと、髪や目の色が違うユキを異質者として排除しようとする空気は教会の中で常態化していた。

ユキには幻覚系の術が通用しないから素性を知れたが、おそらくトオワタは認識阻害のアイテムを使い容姿を変えていたのだろう。

聖教会では唯一ユキだけが邪教からの改宗者と見なされ、それ相応の扱いを受けていた。

聖女はユキを表面上は気にかけていたが、下の者が懲罰と称して暴力をふるうのをやめさせようとはしなかった。

罰を受け続け、皆に許された時、初めてユキは真の信者になれるのだと、本気で信じている節さえあった。

この程度で死ぬならユキの信心が足りなかっただけ——と。ていのいい言い訳を持つ聖教会の人間たちはユキに容赦がなかった。

そしてたとえ味方がいなくても、どれだけ周囲から虐げられようと、ユキにも聖教会に留まる目的があった。

勇者召喚の魔法陣を潰せるまで体が保てばそれでよかったのだ。だから酷い扱いを受けてもさして抵抗する気になれなかった。

結果としてユキが命を落としてでも成し遂げたかったことはサファルに横取りされてしまったわけなのだが。ユキがあそこで終われていたら、サファルがこうして憤ることもなかっただろうに。

「……まあ、あなたが他者に無関心であっても、私もそれに倣う必要はありませんので。これからはあなたに向けられる害意については私の好きにさせていただきます」

静かに宣言し、サファルは背中の傷跡を消していく。

かさぶたになっていた部分にも滑らかな肌が戻り、そこをきつく吸われては新たな鬱血痕が残った。

体中の傷が消えていくにつれ、ユキはさらなる熱にうなされる。うつ伏せの状態で胸がシーツに擦れるのがもどかしい。

「うっ……ん、……やぁっ」

シーツと腹部の間に手を差し入れたサファルが、へその下辺りをすくうようにして揉み込む。

子宮が圧迫され、余波は膣奥にまで及んだ。腹を押されるとその都度膣内に埋まる異物が僅かに位置を変え、嫌でも存在を意識させられる。

「やっ、待って……っ、そんなっ」

腹筋に力を入れることも叶わず、外から子宮を揺さぶられて訳もわからず感じてしまう。指の腹でぐにぐにと押されるたびに無機質な異物を飲み込んだ膣が今以上に大きな質量を求めて切なく収縮した。

「ふぁっ、あっ、あっ、……っ、んああっ」

「こんな身体をして、これまでよくひとりで我慢ができましたね」

サファルの魔力に侵されたユキは、悶えることすらできず、与えられるままに快楽を受け続けるしかない。

「治療は終わりです。改めてお仕置きと参りましょうか」

ユキが達してしまう前に、サファルは腹部を押すのをやめた。

「はぅっ……ぅう……、ぁぁ……っ」

熱を持ったユキの体をサファルは軽々と持ち上げ、自らに背中を預ける形でベッドに座らせた。

膝裏をすくわれ、足を外側へと大きく広げられる。

見えない枷のついた両足はユキの力で移動させることができない。膝を内側に倒そうとするも秘所を隠すことはできなかった。

「正面をご覧なさい」

背後から耳打ちされ、ユキは恐々と顔を上げた。

空中に生成された水が集約し、眼前の空気に波紋ができる。ゆっくりと波が消えていくのに合わせて、透明だった水から光の透過がなくなった。

奥の光景が遮断され、銀色になった水の板は光の屈折が起こし、正面にある物をありのままに映す。

「——なっ、こんなっ」

足を広げて秘所を晒す自身の姿を見せられ、ユキは顔を真っ赤にして慌てた。

「顔を背けてはいけません。この淫らな肉体を、その目でしっかりと受け止めなさい」

「……いや、……やだぁ……っ」

眉を寄せて首を振れば、鏡に映るユキも寸分違わぬ動きをしてくる。

映るものがユキの目で見えているということは、これは幻覚でない。まごうことなくユキの痴態だ。

サファルがユキの左足を持ち上げる。ぱくぱくと刺激を欲する膣口に、自由な手の中指が挿れられた。

「こんなに濡らして、それでも嫌、ですか?」

「やっ……ぁあっ」

膣はすんなりとサファルの指を咥え込む。

奥へ進む途中で遭遇した異物を、サファルはぐっと中へ押し込んだ。

「ん——っ、……ああっ、あん、んっ、……やあぁっ」

細長い異物が膣奥の壁をぐにぐにと押してくる。

「やっ、ああぁ——っ! いや、……やだっ! あっ、あうっ、うぅ……」

羞恥に耐えかねたユキが目を閉じる。

つるりとした異物は子宮口をこじ開け、奥に侵入を果たそうとしてくる。怯えながらもどうにか首を振ると、異物を押す力が緩められた。

目を開けば鏡越しにサファルと目が合った。優しく微笑んだ支配者はユキの視線を釘付けにした状態で膣に侵入する指を二本に増やし、中の異物をコツコツと小突いた。

「はぅっ、あっ、や……っ、あぁっ、おく……おくの……っ、もぅっ、抜いてっ」

「なぜ? ナカは私の指と一緒に、こんなにも締め付けてくるのに?」

「ああぁっ、やだっ! 押し込むのっ、だめっ……うあっ、あぁ、やだぁ!」

子宮の入り口がぬぅっと広がりかけるのを腹の奥に感じて、ユキは思わず泣き叫んだ。

そこにサファル以外を受け入れるなど、考えたくもない。

サファルが膣を責める指を微かに後退させる。しかし依然として異物は膣奥に当たり、ユキは緊張に呼吸を早くした。

「嫌なら鏡を見続けなさい。自分がどれだけ快楽に弱い、淫らな体をしているのか、記憶に焼き付けるのです。わかりまましたね」

嫌だと言った先の未来が安易に想像でき、ユキは震えながら小さく頷いた。

膣内で異物の外周を指でくるくるとなぞっていたサファルが、二つの指で異物を挟んだ。部分的に膣道を広げながら入り口へと指が引かれていく。

「はあぁ……っ、あっんん、……あぅ……」

やがてサファルの指が愛液を伴いながら抜け出た最後に、透明でつるりとした長細い異物が膣口より姿を現した。

「ぅあっ、……ぁ、やぁ……っ」

ぬぽぉ……っと、ぬるぬるの愛液をまとった硬質な物体がナカからゆっくりと出てくる様子があまりにも卑猥で、耐え切れずユキは鏡から目を逸らしてしまう。

刹那、サファルは外に出かかった異物を再び膣奥へと押し戻した。

「あうぅっ、や、やだっ。んん——っ!」

膣道は難なく異物を奥まで通す。柔らかく緩んだ奥の肉壁をぐにぃ……と先が押し上げた。

「ああっ、ごめっ、……なさ、いっあぁ! ……んっあぁ、い……言い付けっ、を……まもれなくっ……て。んぁっ、やあぁっ、奥は……っ、やだぁっ」

得体の知れない無機質な物体が子宮に入り込もうとしている。拒否感がひどく、体に力が入らないながらもユキは必死に逃れようともがいた。

ポルチオでの快楽は拾えているのに、腹の底からは不快感が込み上げてくる。

なぜそれほどまでに嫌なのか、ユキ自身もはっきりしない。その場所を○すのはサファルだけだと、徹底して教えられたからかもしれない。

鏡の中で、自分自身が眉を寄せて苦悩の表情を浮かべている。

だらしなく開かれた口。汗ばんだ肌。はしたない姿を目の当たりにし頭がくらくらした。

「……えっ、あっ」

異物に触れるサファルの指先がじんわりと熱を帯びる。それが魔力だと知覚するのは早かった。

「ああっ、や、なにっ、これ……っ⁉︎」

異物に触れる膣奥がじんと痺れる。まるで電気が流れているようだ。

「あっ、あっ——っ、きゃあぁっ!」

びくんっ。動かないはずの体が大きく跳ねた。

ちりちりと異物全体に蓄積された電気に似た力が、膣奥に触れている箇所で弾けたのだ。

確かな質量をもって膣奥を蹂躙していた異物は肉壁の締め付けから逃れるように、余韻を残して跡形もなく消え失せた。

一瞬の出来事にユキの目の前が真っ白に染まった。

びくびくと膣がうねり、ナカの物を締め付けようとする。しかし刺激は長く続かず、達しかけた体は新たな征服を求めだす。

「……うぅ、ぁ……ど、して……ぇ」

混乱するユキのナカから指を抜き、サファルは持ち上げていたユキの片足をシーツに下ろした。

小刻みに震える腹を圧迫される。

「物足りませんか?」

「うっん……っ、やだ……あっ」

質量を欲して膣が切なげにうごめく。サファルが腹の上から与える振動が膣奥の疼きに拍車をかけ、ユキの欲求は際限なく高まり続けた。

「あぅっ、う、あぁ……」

栓が消えたことにより、子宮に溜まっていたサファルの精液が膣道を下る。膣口からどろりと愛液と精液が混ざった白濁色の液体が溢れた。

サファルはユキの腹部を押していた手を下へ移動させ、溢れた精液を膣に戻すように指を挿入する。

「あっ、やっ、ああぁ! あんっ、んやぁっ」

ぐちょぐちょと秘所から響く卑猥な水音がユキの羞恥を煽る。

ナカを抉る指は精液を膣壁に塗り込むように敏感な箇所を刺激した。

喘ぐ自身の姿に涙を流しながらも、ユキは正面の鏡から目を離そうとはしなかった。

「——んぅっ」

異物によって遮られていた膣奥にサファルの長い指が到達する。

「んあぁっ! あっ、や……っ! やだっ、一緒は……やあぁっ!」

子宮口を小刻みに押しながら、サファルは親指でクリトリスをぐりぐりと転がした。もう片方の手はユキの胸を揉みしだき、つんと立ち上がった乳首を軽く引っ掻く。

「あぁっ、あっ、——っく、イク……、イっちゃ……っ! あ、ああ——っ!」

羞恥と快楽に悶える自分自身を見つめながら、ユキは絶頂を迎えた。

「やああっ! イった……、からっ、もっ、おくのっ、だめっ、あっ! またっ……、——やああぁっ!」

一度の絶頂で責めは止まらず、ユキは立て続けに何度もイカされた。

鏡越しサファルと目が合う。涙で歪む視界の中、笑みを深くした男の表情に快楽責めがまだ終わらないことを悟る。

「——っ、やぁっ、……もう、きもちいいの、やだぁ。あっ、やぁ——っ!」

絶頂の波から降りられず膝が震えた。膣口から止めどなく溢れる愛液がサファルの手とシーツを濡らしていく。

「苦しいですか?」

「んぅっ、うっ、うぅ……」

耳元で囁かれ何度も首を縦に振った。ポルチオとクリトリスの責めが止まる。

サファルは胸をいじっていた手を下腹部へと移動させた。反対の手は親指をクリトリスから離し、中指を膣のさらに奥へと押し込む。

ぬうぅ……。

「——っ!」

鈍いながらも確かに感じる圧迫感。子宮口がこじ開けられる感覚に、ユキは目を見開いた。

「はっ、あっ……あぁ……、ぁ……」

「そんなに怯えなくとも、こちらは何度も私を迎えているでしょう」

「ぃや……っ、でも……」

そこは本来、外から何かが入るような場所じゃない。サファルのペニスを受け入れるのだって、本当はおかしいはずなのだ。

「抵抗があるというなら、無理に入れるのはやめておきましょう」

「んあっ!」

子宮口を指の腹で引っ掻き、サファルは膣奥を抉っていた指を抜いた。

ユキの背後を退き、腰を掴んで持ち上げる。四つん這いになったユキは目の前に接近した鏡に映る上気した自らの顔に驚き、反射で目を逸らした。

「顔を背けてはいけません。お仕置きはまだ終わっていませんよ」

「んあっ、やっ……」

クリトリスをきゅっと摘まれ、ユキはどうにか前方へと顔を向ける。

おしりの丸みを弄られると背中が反り返った。

「はぁ……ぁ、あぁ……んっ」

鏡の中のサファルが着ている衣服を脱ぎ捨ててゆく。

褐色の肌。引き締まった肉体。聳り立つペニスを目の当たりにし、腹の奥がきゅんと疼いた。

膣口に熱が当たる。これからもたらされるであろう強い快楽に期待して、熱い吐息がこぼれた。——そして鏡に映る恍惚とする自らの顔を目の当たりにして、ユキは愕然とした。

「やっ、うそ……っ、そん、なっ。あっ、あぁ——っ!」

しかしそんなまごついた心も、強烈な快感によっていとも簡単に押し流される。

膣道を○すペニスは難なく奥の肉壁へと到達し、ピストンを開始した。

「あっ、ああっ! や、あっ……、あうっ、ん、んんぅっ……ああぁ!」

感じる自分に恥じて声を抑えようにも、膣奥を穿つペニスによって簡単に表情が蕩け、口が開いてしまう。

灼熱が子宮口をごつごつと抉り、咄嗟に逃げようとしてユキはベッドに肘をついた。

泣いて喘ぐしかできない無力な自分を鏡で見せられる。

屈辱的な格好で獣のように交わる、それでもなお感じてしまう体に嫌悪するも、ポルチオをぐりぐりと突かれると苦い気持ちは呆気なく快楽に流れていった。

「あぅっ、うっあ、……んっ、ああっ」

ユキがシーツを握りしめる。絶頂の予兆に子宮が熱を期待して、ひくひくと腹がへこむ。突き上げにより緩んだ子宮口はペニスに合わせて何度も口を開きかけた。

しかしサファルは自らの肉棒を奥の奥まで押し込もうとはしなかった。

「ああっ、やっ、イク……、くぁっ、いっ——、ああぁっ——っ!」

手加減された抽送によって、ユキはポルチオの刺激で達した。

「やあっ! イクっ、また、あっ……、いっ——、ああっ!」

絶頂の余韻に浸る間を与えず、サファルはピストンを再開した。

強引に与えられる強烈な快感に、ユキの視界に火花が飛んだ。

気持ちいい。気持ち良すぎる。それなのに最奥が満たされない。

感じながらももどかしさに当惑するユキに対し、サファルは容赦なく快楽を送り続けた。

「ああっ、やっ、もうっ……、それはっ、やめっ……っ、やだぁ——っ」

なりふり構わず泣き叫ぶ。ユキの腰を押さえつたサファルが、ぐりぐりと子宮口にペニスを突き立てた。

「……っ」

「あっあぁ——っ!」

熱い飛沫が膣奥を満たす。その衝撃にユキも絶頂に呑まれた。

断続的に注がれる熱が子宮内に入り込み、じんわりと腹部が暖かくなる。しかし記憶に残る圧倒的な充足感には到底及ばず、虚しさが胸の内に湧き上がった。

欲求不満を訴えるかのように膣壁がペニスを締め付け、勝手に先をねだり出す。

「あぁっ、あっ、あんっ……うぅ……」

ユキの願いは届かず、サファルは呆気ないほどあっさりと膣からペニスを抜いた。

絶頂の余韻が冷めない体はびくびくと痙攣を繰り返す。なんとか呼吸を落ち着けるも、腰がの震えが治まらない。

蜜口より流れ出た液体が太腿を伝う。

発散しきれなかった最奥の疼きに耐えながらゆっくりと顔を上げる。鏡越しにサファルが微笑んだ。

「人間の性交を真似てみましたが、その身は満足出来ましたか?」

「——っ!」

見透かしたような問いかけに息を詰める。サファルはユキの背中から腹へと手を移動させ、臍のあたりを優しくさすった。

「あなたから望ない限りは、こちらを○すのは控えるとします」

「なっ……」

「形ばかりの拒絶を示すあなたの本当の望みを、私が叶える理由がありますか?」

絶句するユキの身をサファルが起こす。逞しい腕の中に閉じ込め、ユキのこめかみに口付けた支配者は喉の奥でくっと笑った。

「先ほども申し上げましたが、こちらも好きにさせていただきます」

とびきりの笑顔で宣言され、背筋が凍った。

視界の隅で鏡が波紋を描き、蒸発して消える。映す媒体がなくなっても自身の法悦に染まった顔はいつまでもユキの記憶に残された。

足りない。満たされない。子宮が切なさを訴えるも、それを言葉にするにはいささか理性が戻りすぎていた。

うろたえるユキに口づけを施し、サファルは口腔から惜しみなく魔力を注ぐ。

「ふっ、ひゃ……ぁ……っ」

互いの舌を絡ませ、唾液に乗って喉を通る魔力はユキの全身に行き渡り、戻りかけていた体の自由を再びなくす。

サファルの魔力は腹の中に燻り、ユキの性的な欲求をより一層掻き立てた。

「うぅっ、あ……、あぁ……」

「敏感な肉体を恥じることなどありません。もっと淫らに、欲しいままに求めていいのですよ」

「——んっ」

耳元で吹き込まれるように言葉を紡がれ、むず痒さにユキは肩をすくませた。

「意地を張ったところで、私があなたを手放す日は訪れません。根比べがしたいなら望むところですが、辛いのはあなたです」

「……っ、うそっ……」

必死で首を横に振ると、サファルは抱きしめる腕の力を強めた。

「偽りだと思われるのは心外ですね。……さて、どうやってあなたの信頼を得ましょうか」

優しい口調にユキの思考がぐちゃぐちゃになる。

サファルを否定する自分がおかしいのか。無理矢理ここへ連れてきて、好き勝手に体を暴き、自由を奪う。そんな行為を容認できる訳がないのに。

確固たる正義を心の軸に持たないが故にユキは揺らぎ、苦悩してしまう。

ただひとつ。サファルが与えようとしてくう幸せだけは、自身には不要なものだと、ユキにははっきりと断言できた。

安息に身を置けば過去の記憶が悪夢となって精神が蝕まれてしまう。

ユキが苦々しく顔を顰めたタイミングで鳥籠の空気に揺れた。

サファルとは違う気配を感じてユキは身を固くする。サファルが顔を上げると、視線の先にノースとサウスが現れた。双子はサファルへと深く頭を下げる。

「下の準備が整いました」

ノースの報告にサファルは鷹揚に応じた。

「すぐに向かいましょう」

サファルがユキをそっとベッドに寝かせて、名残惜しげに頬を撫でた。

「所用があるので私は一度退散します。足りないならば彼らに可愛がってもらいなさい」

「——っ、いらないっ」

「ご冗談を。腹の奥が物足りないのでしょう?」

慌てるユキに冷笑し、サファルが双子へと向き直る。

「後は任せます」

「承知いたしました。……しかし、本当によろしいのですか」

「ええ、構いません。あなたたちに委ねます」

意味深にユキを見下ろし、サファルがベッドを下りる。

ノースとサウスは深々と頭を下げて主人への敬意を示した。

「必ず、ご期待に応えてみせましょう」

「意欲的なのは結構ですが、ほどほどになさいね」

配下に苦笑しつつ、サファルは裸体のまま転移で鳥籠から姿を消した。

大きな魔力の余韻が消えたところで双子が同時に頭を上げ、ユキへと体を向けた。

「……どうやら君には、以前の調教だと甘すぎたみたいだね。僕たちも加減を学び直す必要がありそうだ」

ノースのにこやかな笑顔と、サウスの野生味がある笑い顔。両者の属性の違う笑みの中に共通する嗜虐性を察し、ユキは身を強張らせた。

思わず震える手で掴んだシーツをたぐり寄せた。

「お許しをいただけたことだから、躾け直しといこうか」

「——っ!」

接近する双子に怯え、ユキは不自由な体を、それでもぎゅっと縮こませた。





【第3話 支配者の腕の中】より


ユキが鳥籠で過ごすのはベッドか三人掛けのソファに限定されていた。

だからソファのある位置と反対側の壁に長方形の台座が置かれているのは知っていたが、それに触れたことはこれまでにない。

たまには趣向を変えてみるかと言い出したのはサウスだった。

終わりのない愛撫によってまともに思考が働かなくなったユキを抱き上げ、ベッドを避けてあちら側へと移動する。

腰ぐらいの高さの診察台のようなそれをノースが引いて壁から少し離し、そこにユキは仰向けに寝かされた。ベッドのようなスプリングはない。上部の面は体が沈むことがないクッション性の低い素材だった。

台の幅は中央に寝ていても、仰向けからうつ伏せへ寝返りを打てば落っこちてしまう程度にしかない。

大した高さはないのだから、転げ落ちたところで怪我をすることはないだろう。それでも不安定な場所にいる心許なさからユキは上体を持ち上げた。

羽織っているだけとなったバスローブの合わせを胸元に引き寄せて握る。

「そんなに不安そうにしなくても、苦しいことはしないよ」

自然な流れでノースはユキの足を両サイドにそれぞれ落とす。枷によって動かない足は台の上に自力で持ち上げられず、ユキは股を大きく開いた状態で固定されてしまう。

「——っ、なに、を……」

おかしいと、不審に思った時にはもう遅い。

背後からサウスに目隠しをされ、焦る間も無く台に体を倒される。

「怖がるなって。力を抜いて、俺たちの与える感覚にだけ集中してろ」

「手は邪魔だから、まとめておくよ」

両手を頭上で固定された。バスローブの帯を解かれ、合わせが左右に広がる。汗ばんだ肌に外気が触れて総毛立った。

「ひっ……や、……手、解いてっ」

「はいはい。また後でね」

ノースに適当にあしらわれ静止の訴えは無駄だと悟る。

鼠蹊部をなぞる指はどちらのものか。脇腹に触れていた手が胸へとたどり着く。敏感な頂に軽く触れたかと思えば膨らみを下り脇をくすぐられた。

「ふぁっ、あぁ……んっ、もっ……ゃあっ、あぁっ」

欲情が鎮まりきっていない体はどこに触れられても気持ちよく、最終的に愉悦は腹の奥へ蓄積されていく。

物足りないわけじゃない。感じているのに、最後まで満たされない。

戸惑いは最初だけで、ユキは次第に二人の施しに翻弄されていく。

「やっ、な……に? はうっ、あっ、やぁあっ……。なにを、して……っ」

乳首とクリトリスが同時に摘まれ、くにくにとこねられる。左右から挟まれているようだが、敏感な部分に触れているのは指じゃない。滑りを帯びた、舌のような柔らかさがある。

「……んあ、や……やだっ、だれ? 目隠し、解いてっ」

「怖がらないで。僕とサウスしかいないから安心して。……乳首、こうやって吸われるの、気持ちいいよね?」

胸の頂を口に含まれ、ちゅうーと吸い上げられる。つんと立った乳首を舌で押して、転がし、歯で軽く甘噛みされた。

「ああんっ、んんっ、あ……っ、あ、やっ、みぎ、ばっかり……っ」

「ああ、ごめんね。こっちが寂しかったね」

「ちがっ、やあっ……あっ、うぁ……っ」

ノースが左の胸へと移動する。

右と同様に吸い付かれては乳首を舌で遊ばれ、自分で触れても何とも思わない場所が敏感な性感帯へと変えられてゆく。

「こっちも、うんと可愛がってやろうな」

水気を帯びた柔らかな感触がクリトリスを包む。

「きゃっ……あっ、ああっ、それ、な……んっ、ぐにぐに、しないで……っ、やだっああっ!」

クリトリスを摘まみ、左右交互に小さな突起を上下していた柔らかなそれが、二股の根本でクリトリスの裏筋を押しながらゆっくりと登る。

たまらずユキの背中が弧を描いた。

「サウス、やりすぎ」

「はいはい」

双子は軽い絶頂に見舞われたユキから手を離した。

「はっ、あ、ああっ、……んあっ、あっ……、う……ぁ…………」

ひくひくと揺れていた腰が次第に治まってゆく。呼吸が安定してくると、ユキは塞がれた視線をさまよわせて頭を動かした。

「やっ……、ぁ、どこ……? ……っ、やだぁ……」

近くに気配はあるのに、ノースもサウスも話さないし、触れてこない。

ぽつんとひとりで取り残されたような孤独感にうろたえていると頬に吐息がかかった。

「そんなに不安そうな声を上げなくても側にいるよ。ほんとに……、本当は怖がりで寂しがり屋のくせに、素直じゃないね」

するりと頬を撫でるのはおそらくノースだ。彼はユキの頭上に移動して耳を揉み、顔の輪郭を指でなぞる。

同時にクリトリスをちゅっと吸われ、びくりと体が跳ねた。強い快楽に突き落とされる前に、おそらくサウスであろう口は離れていき、つぅ……と舌が秘所を下方へと辿っていく。

「いっ、あぁ……っ、やっ、それは……、やめっ……、んぁっ……」

「感覚でわかるよね? サウスは今、君の膣口を舌でゆっくりと舐めている。穴に沿って丸くなぞろうとしているだろうけど、君がぱくぱく動かしてしまうから、うまくいかないみたいだね」

「いやっ、言わないで。あっ、あぁ、もぅっ……、やめてっ」

目隠しで見えないはずが、くすぐるような刺激とノースの説明によって秘所の情景が鮮明に思い浮かんでしまう。

「やめてじゃなくてもっと、でしょ? サウスの口元、君の愛液にまみれてびしょびしょだよ」

「も、やだあっ、んぅ——っ」

ジュッ、ジュル……、ジュルル……、ズズゥ——ッ。

ノースの言葉を証明するかのように、サウスが膣口から溢れる蜜を吸い上げた。

卑猥な水音にユキの顔が真っ赤になる。ノースはそんなユキの額に浮いた汗を優しく拭った。

「いい子だね。些細な快感でも拾える、敏感な体だ。とてもいいことないんだから、恥ずかしがる必要はない。感じるままに声を出して、気持ちいいって言ってごらん」

「あっ……、ん、んあぁ……っ、あっ、あう、……うぅ」

「うん? 刺激が足りないのかな? もっと強くしてほしい?」

「ちがっ、う……んっ、……いい……。んっ……、きもち、いい……からっ」

「そう、よかった」

「いっ、あ、あぁっ」

膣道へと舌が侵入し、舌先でぐにぐにと肉壁を押し上げてくる。

予測不能の動きに翻弄されて、ユキの腰が上下に揺れた。

「これも、気持ちいいんでしょ?」

「ん、あん、んっ……ぃいっ、……きもちいいっ……あぁっ、あうっ……いい……」

意識が蕩けて、自分で何を口走っているのか把握できない。

「……っ、きもちいい……、気持ちいい、の……、んっ」

くっと、サウスが笑ったような気がしたが、膣道に再び舌が突き入れられては思考を巡らせている余裕もない。

絶頂に至ることのない緩やかな快感が延々と続く。ユキが少しでも昇り詰める気配を見せると、サウスは膣から舌を抜いてしまう。不思議と焦らされているという感覚はなかった。

達することは望まないものの、時間が経過するにつれて別の欲求が深まっていく。

「あ……うぅ……、ど、して……。気持ちいい、のに……、おかし、い」

「どこもおかしくないよ。とても可愛く鳴けている」

上から降り注ぐノースの声に、違うのだと首を横に振った。

感じれば感じるほどに虚しさが積み重なってゆく。

激しい刺激を求めているわけではない。与えられる快楽は十分すぎるほどに心地よく、ユキを淫らに染めている。

しかし、サウスやノースでは、本当の意味で欲望を満たすことはできない。愛撫を受けるほどに子宮が寂しさを覚え、征服者の熱を切望する。反動で膣壁がきゅっと締まった。

「…………っ、サファルさまぁ……」

ここにいない男の名前が、自然と口から出た。

欲しくてたまらない。子宮の中まで、余すことなく満たされたい。

望みを自覚してしまうと、切なさはより一層強まる。

「……っとに、可愛いなぁ」

呟きが聞こえ、秘所の責めが強まった。膣道を舌で押されるのと同時に指がクリトリスをこねる。

「あぁっんっ、あっ、も、いいの、やぁ……っ」

「一回イっとけ。その方がお前も楽だろ」

膣口の間近で低音の声を出され、ユキはむず痒そうに身をくねらせた。

サウスはすぐに膣への刺激が再開する。長い舌で愛液を掻き出すように膣の腹側を奥から膣口へと舐められ、その間もクリトリスを指で摘まれて腰がびくびくと跳ねた。

ノースが両頬に手を添える。

「ほら、イクときは何て言うんだっけ?」

「ああっ、……ぃっ、く……、いく、イクっ、あぁっ、あっ、いっ——!」

ぎゅうっと体に力が入り、膣がナカの柔らかな舌を締め付ける。僅かに浮いた腰が、体の弛緩によって台座に小さくバウンドした。

「はっ……あうぅ……、んっんん……っ。あっ……はぁ……」

脚の付け根からサウスが離れていく。絶頂の余韻に震えるユキの頭に置かれたのはどちらの手か。腹部を軽く押してくるのは……?

「教えたことを忘れずに守れていて偉いね。……でも、どんなに達したところで、体は満足できない。違う?」

「あっ、あうっ、うんっ、ぅ……っ」

腹の上から子宮を軽く圧迫され、欲求がさらに強くなる。全てノースの言う通りだった。

「欲しいんだろ? サファル様に、子宮の中まで満たされたい。体の奥から、主人の熱を感じたいって、本当はずっと願ってるんだよな?」

顔の近くでサウスが囁く。違うと、否定することができなかった。

「お前の性に貪欲で淫らな体を、サファル様もさぞお喜びになられるだろう。そのままもっと、何もかも忘れて乱れたらいい」

「君が淫乱になるのは喜ばしいことなんだよ。だからサファル様がお戻りになられるまでに、もっともっと、敏感になろうか」

左右の耳元で言葉を注がれ、元々あった価値観を見失う。

羞恥を感じ、快楽に怯える自分の感覚よりも、彼らの言っていることが正しいのだと錯覚してしまう。

「あぁ……、あんっ」

脇腹をまさぐられ、ユキは甘い声で鳴いた。

「……っ、……ぁっ、サファルさまっ、サファル……さまぁ……っ」

視界は奪われたまま、双子の施しはまだ終わらない。

いくら絶頂を迎えたところで、最奥が満たされることはない。虚しさばかりが蓄積され、それがただ一人の男を求める焦燥感に変化するのはすぐだった。

焦りと並行して、もたらされる愉悦はぬるま湯に浸るような甘い世界へ精神を沈めていく。

抵抗の意思を掻き消され、ユキは穏やかな快楽の波に囚われていった。




ーーーーーーーーーーーーー

全編はDL siteにて販売してしています。
気になった方はご購入いただけますと幸いです。

市街地 2024/03/31 15:07

【小説サンプル】奴◯として売られかけた娘が魔族に助けられて、えっちで幸せな日々を送る話


あらすじ

奴◯として売られるはずだった娘が、商人を襲った魔族にお持ち帰りされて身も心もどろどろに甘やかされる話。

全体を通したプレイ内容

甘々・愛撫・睡眠中の肉体開発・潮吹き・正常位



『奴◯として売られかけた娘が魔族に助けられて、えっちで幸せな日々を送る話』


仕入れ帰りの荷馬車は狭くてとても暑苦しい。中では商品である人間が手足に枷を嵌められ、膝を抱えて俯いていた。

隅にいるカリンも例外ではない。両隣の女たちが窮屈そうに睨んでくるので、カリンは背を丸めて極力身を小さくする。
馬車の揺れで隣と肩がぶつからないように体に力を入れながら、目的地への到着を待った。

自分と同じく奴○となった者たちの、カリンに向ける視線は冷たい。
どこへ行ってもこんなものだと、小さく息を吐いて膝の間に顔を埋める。この先にどんな不幸が待ち受けていようが、もはやカリンにはどうでもよかった。

荒野を進む馬車が不意に停車した。
馬のいななきが聞こえ、外が騒がしくなった。不穏な気配にカリンを始めとした奴○たちもざわつきだす。

直後、耳をつんざく断末魔が突風と共に聞こえてきた。

ごうごうと唸る暴風が荷馬車を軋ませ、幌を吹き飛ばす。
ガタンと、カリンたちの乗る荷台が傾いた。車軸が折れたのだろうか。
日除けの布がなくなり目の前が急に明るくなる。日光と土埃にカリンは目を細めた。

そして数秒後。光に慣れた目に飛び込んできたのはカリンを商品にした、奴○商人たちの惨状だった。
カリンを味見と言って蹂躙した肥えた商人の男も、その護衛たちも。運び役の馬までも——。
荷馬車の外にいた者たちは皆が鋭利な刃物によって切り裂かれ、荒れ地に血を流し伏していた。

呆気に取られるカリンの鼻腔を、甘い香りが掠めた。果実の甘さではない、僅かに金属質な印象のある独特な香りを不思議に思っていると、荷馬車の前に男がひとり、どこからともなく突然現れた。

薄い青色の髪に、メタリックブルーの瞳を持つ、黒のコートを着た若い男だ。年齢は二十代前半ぐらいか。
奴○商人の仲間にあんな男はいなかった。
一瞬、精霊の祝福により体の色素に青を与えられた者——、精霊術師に会ってしまったのかとカリンは身を固くした。彼らは関わり方を間違えると、精霊に食われてしまう恐れがある。

しかし精霊術師であそこまで鮮明な色味が身体に出るとは聞いたことがない。さらに彼らはカリンの故郷である、東の大陸独自の存在だったはず。その精霊術師が西の大陸にいるとは考えにくい。

そもそもあの男の髪や目の色は本物なのか。人間はおろか、獣人でもあのような色味を持つ者をカリンはこれまで見たことがない。

——そうなると、彼は亜人なのかしら?

西の大陸には亜人という少数種族がいると聞いてはいたが、未だに見たことがなかった。亜人はカリンと同じく、西方大陸の人間からしたら見た目に大きな違いがあるため迫害を受け、今ではほとんどお目にかかれないと奴○商人が言っていた。

正体不明の男は足元に転がる死体を全く意に介さず、カリンたちのいる荷馬車へと目を向ける。
あどけなさが残る大きな瞳からは退屈の感情と、「まだいたのか」という呆れがありありと伝わってきた。

「つまらないな。やっぱり人間は弱いままか」

その呟きは風に乗って、甘い香りと共にカリンの元へ運ばれた。

「…………え?」

人間、とは。どういう意味か。
男の言葉に興味を示したのは、荷馬車にいる者ではカリンひとりだった。

「………………魔族だ」

カリンの近くで誰かがぼそりと呟く。それを皮切りに、奴○たちはパニックに陥った。
皆が我先にと男の立つ場所とは反対方向へと馬車を降りて逃げようとする。枷で手足の動きが制限されるにも関わらず近くの者を押し退けて、とにかく必死に。

逃げ惑う奴○たちにもみくちゃにされながらも、カリンは男から目が離せなかった。

——魔族。聞いたことがある。北の大陸に住まう、人型の種族の名称だ。
確か、西の大陸の人間たちにとっては、信仰の対象となっている神が、滅ぼすべく敵と定めている存在で……。

「君は逃げなくていいの?」

記憶を掘り起こし知識を集めていると、魔族の男が荷馬車に座るカリンを覗き込んだ。面白そうに笑う男の表情には、人間たちが逃げ惑う様子を楽しむ弑逆性が垣間見える。

逃げる、と言われても。
手足の自由が利かない状態で、どこへ逃げられるというのか。カリンがきょとんと首をかしげると、つられて男も同じ方向に首を傾けた。

目が覚めるような鮮やかな青色の瞳に、カリンの顔が映る。

「あなたは……魔族、なの?」

「そうだよ。初めて見る?」

カリンは素直に頷きながらも、男を興味深く観察した。
目の色と髪の色以外、男の姿形は人間とそう変わらない。……いや、顔のパーツの左右対称具合や整い方は、人間よりも遥かに美しいものがあった。
きめ細かい肌や髪の艶も、全てにおいて人間の質を上回っている。造形の美しさは触れるのをためらう、一種の禁忌を感じるほどだった。

さらには彼からプレッシャーとしてびりびりと人間とは桁違いの魔力が伝わってくる。
それは危機感を増幅させながらも、カリンの心を惹きつけた。

「魔族と人間では、どのような違いがあるのかしら?」

カリンは食い入るように男を見つめる。すると彼の表情に驚きが浮かび、大きく目を見開いた。

「保有する魔力量は、人間のそれを軽く凌駕しているわね。これはあなたがすごいだけで、魔族の中でも個人差があるのかしら。肌の質感はわたしたちとそう変わらないみたいだけど、それだけの魔力があるなら、耐久性は人間より優れていたりするの?」

カリンの好奇心は人より強い。研究者だった義父の影響というよりも、カリンに探究心があったから、義父はカリンをそばに置き研究を手伝わせた節が強かった。
魔族の男は面白そうにカリンを見返した。

「君も、変わった目と髪の色をしてるね。初めて見たけど、人間種に近い亜人か何か?」

「違うわ。東の大陸の人間は、みんなこういった見た目よ」

「へえー、東方大陸かあ。さすがに行ったことがないな。かなり遠いし、存在は知られていてもあんまりよく分かってない土地だから」

それを言うならカリンにとっての北方大陸も未知の領域だ。

カリンと顔を近づけた男が、己の頬を指差す。

「触ってみる?」

「……いいの?」

「いいよ。お好きにどうぞ」

恐る恐る、カリンは鎖で左右を繋がれた手を持ち上げ、男の顔にそっと触れた。

滑らかな肌。頬の柔らかさや弾力も、人間と変わらない。片方の手で自分の頬に触れて触り心地を比較するが、感じる体温から肌の質感に至っても、魔族と人間に特筆するほどの差異は見当たらない。

唯一、彼とカリンに違いがあるとすれば——。

「……すごい。これは、あなたの魔力でしょう?」

甘い香りに乗って感じる魔力はカリンの肌を侵食し、体の内側で直接感じることができた。
アルコールを摂取した時のように体が熱い。魔族の魔力とは、近くにいるだけでこれほどまでに強烈な影響をもたらすのか。

カリンは好奇心に目を輝かせながらも、口からほうと熱い吐息をこぼした。

「…………へえ」

魔族が目を細める。たったそれだけの動作に、なぜか背中がぞくぞくと痺れた。

「裏切り者の邪教徒がっ!」

背後で怒声がしたと思ったら、背中でぱんっと何かが弾ける。
カリンが首を後ろに向けると、こぶしぐらいの大きさの石が荷馬車に転がっていた。

さらに顔を上げた視線の先では、荒野に立つ人間たちが怒りを露わにしてカリンを睨んでいる。両手、両足を鎖で繋がれた、カリンと同じ奴○に落とされた者たちだ。

裏切り者。邪教徒。言われた言葉が頭の中でくるくる回る。

邪教の信者とは西の大陸の人間が、東の大陸の人間を蔑む際によく使われる言葉だ。聖教会の信徒でない、まやかしの神を信仰する者を愚者として蔑む意図がある。

彼ら西の人間からすれば、聖教会の崇める女神を信仰しない者は誰であろうと邪教徒という扱いになる。
裏切り者が表すのは、聖教会の女神が定めた人間の敵である魔族と、カリンがこうして話をしているからかだろうか。

カリンが自分の中で答えを見つけている間に、魔族の男は顔を上げて他の奴○たちへと視線を移した。
ひぃっ、と。男女入り混じった人間の悲鳴が上がる。

「ま……、魔王は、勇者様が葬ったはずじゃっ」

カリンに石を投げた男が尻もちを付きながら叫んだ。
それに対し、魔族の男がぷっと吹き出す。

「馬鹿じゃね? 君らが魔王って言ってるのは、俺たち魔族が住まう北方大陸で、ここ西方大陸と地続きになってる領土を統治していた領主のことでしょ? 彼を殺しただけで、北方大陸の魔族全員が死んだみたいな喜び方するのって、流石にどうかと思うけど」

くつくつと、彼は人間の愚かさを嘲笑う。

「むしろ北と西の緩衝材になっていた、君らの言うところの『魔王』が死んでしまったからね。俺みたいにふらっと西まで遊びに来る魔族は、今後もっと増えるんじゃないかな」

まあそれはどうでもいいと、絶句する人間たちを置いて魔族の男はカリンに向き直った。

「どうも君たち人間の信じる神様は、俺たち魔族のことが大嫌いみたいだね」

「……神様」

カリンにはいまひとつピンとこない。これまで何かを信仰する習慣がなかったからだ。
生まれた家はその日一日を生きるのに精一杯な環境で、父母に神の教えを説かれた記憶はない。

カリンを買った義父も、神という不確かな存在に関心がなかった。
研究者だった義父は奇跡を何よりも嫌い、観測による結果と数字のみを信じていた。

カリンが信仰に深く触れるようになったのは、西の大陸に渡ってからだ。

「その神様は、わたしを救ってくれると思う?」

信じる者の心にしか存在しないその漠然とした存在は、魔族という圧倒的強者を前にしたカリンを、果たして守ってくれるのだろうか。

「俺がそうだって言ったら、君はどうする?」

試すような魔族の問いかけに、カリンは迷うことなく口を開く。

「生殺与奪の権利を握るあなたが言うことだもの。ひたすらに信じて、救いを求めて神様に祈るわ」

どのみち自分は逃げられない。
なんの気まぐれか。この魔族に殺されずに済んだとしても、おそらくカリンは他の奴○たちによって始末される。確信があった。

「そう。君は救いが欲しいんだ」

——どうだろう。わたしは、何を求めているの……?

自らに問うたカリンが答えに辿り着いたとき、目に涙があふれた。それは止まることを知らず、彼女はぼろぼろと泣き出した。

「……当然よ。わたしは、生きて、救われたい……」

暖かい場所で眠れて、その日のご飯を心配しなくていい。カリンが憧れるのは、そんな生活だ。

労働が安息への対価になるならいくらでも払う。
贅沢はいらない。ただ安らかに過ごしたい。救われたい。

誰にも憎悪を向けられず、脅かされることのない日々を過ごしたいのだと、カリンは泣きながら魔族に訴えた。

「——そうだね。この大陸の神様は、その程度のものすら人間たちに与えてくれないんだもんね」

魔族がカリンにぐっと顔を近づける。甘い香りが頭を埋め尽くし、不思議と嗚咽が落ち着いた。

「君の名前は?」

「……カリン」

正直に答えると、魔族はいい子だとカリンの髪を指ですくように撫でた。

「じゃあカリン、俺が君の神様になってあげる」

「……神様に?」

「そう。暖かくて、ゆっくり眠れる場所も、美味しいご飯も俺がカリンに与える。安らかな生活を保証するから、俺と一緒においでよ」

そう言って魔族が差し出した手を、どうすれば拒むことができようか。
甘い香りがカリンの思考を鈍らせる。深く考えるより先に体が動いた。

彼の手に自らの手を重ねた瞬間、カリンは頭に大きな衝撃を受けて意識を失った。




  ※省略




体の中で、行き場を失った熱が燻る。
思考を溶かし、腹の中に切なさが溜まる。
発散できない衝動に身をよじろうとしても、体はちっとも動いてくれない。
それがまたもどかしく、助けを求めた先で、自分じゃない誰かの熱を肌に感じた。
不自由な身を、しっかりと受け止めてくれる。

もう大丈夫。安心感がカリンを包み込んだ。
夢と現実の間でそんな感覚が繰り返され、やがて少しずつ、朧気だった意識が覚醒していった。

カリンが次に目を覚ました時も、魔族の男は側にいた。
人好きのする笑みを浮かべる男は、虚ろだったカリンの焦点が自分に合うとさらに笑みを深くした。

「……ここは……?」

「ここは北方大陸の——俺の領地の、俺の屋敷の俺の部屋。カリンを脅かす者はいないから、安心して休んで」

視線はあちこちに移動できるが、体は動かせそうにない。やきもきしながらもさまよわせた視界の端に、カリンは何本も並ぶ細くて固そうな黒い柱を捉えた。
ぐるりとカリンの眠るベッドを囲むそれは、まるで檻のようだ。

目を見張ったカリンの見つめる先を、魔族の男の視線が追いかける。

「……ああ。この檻は鳥籠って言って、カリンを守るためにあるものだよ。北方大陸の環境は人間が生きるのに適してないからね。カリンの体が馴染むまではここにいてもらうことになる」

鳥籠内には人間が過ごすのに適した室温と湿度を保つ結界が張られているのだと、彼は加えて説明した。

そんなものがあるのかと感心し、カリンの興味はすぐに別のことに移った。
気まぐれにカリンを連れて帰り、生きる環境を整えてくれた男の元へだ。

「……あなたの、名前は……?」

「俺? ルーゼベルグだよ」

ルーゼベルグ、ルーゼベルグ……と。何度も頭の中で繰り返して脳に叩き込む。
絶対に忘れない。忘れてはいけない。カリンを救ってくれるという、神様の名前。

「ルーゼベルグ様、でよろしいですか?」

「呼び捨てでいいよ。無理に敬語で話す必要もないよ。……なんていうか、敬語で話しかけてくる人って、すっごい圧を感じてしまうから苦手なんだ……。だから、カリンは最初に会った時みたいな喋り方をしてくれた方が、俺は嬉しいかな」

「……分かった」

ルーゼベルグが望むならと了承すれば、彼は嬉しそうにカリンの頬に口付けを落とす。

「ん、いい子」

ルーゼベルグに触れられると、そこがじんわりと暖かくなった。よしよしと撫でられた額から耳のあたりが熱を持ち、思考もぼんやりと蕩けていく。
気持ちよくて、口から熱い吐息がこぼれた。

「…………んっ……ぅ」

次第にカリンの瞼が下がってゆく。

「いいよ。そのまま眠ってしまいな。じきに馴染んで、もっと気持ちよくなるよ。……大丈夫。時間はたっぷりあるからね……」

ルーゼベルグが何を言っているのか、カリンはぼんやりとして聞き取れない。
耳をくすぐる彼の声は、とてもとても、心地良かった。



安心できる甘い香りを肺一杯に吸い込む。
夢心地にふわふわと意識を漂わせていると、次第に腹の奥に熱が溜まってゆく気がした。むずむずと、もどかしさが膨れ上がる。

緩慢な動きで身を捩るも、所詮は焼け石に水。その程度では冷める気配がない。
この熱は快楽を欲する疼きなのだと、カリンが自覚するのは早かった。
理解した途端、下腹部の疼きに連動し、秘所が緩くうごめいた。

よかった。体が動くようになってきた。
そんなことより、この昂った体をどうにかしなければ。

カリンは無意識に己の秘部へと手を運んだ。しかし臍のあたりで手首を掴まれ、欲の発散は叶わなかった。

「いやぁ……、ぁ……ぅ……」

「だめだよ。自分でしたらつまらないでしょ」

耳元でした声に意識が覚醒しかかるも、下腹部の熱とは別の、痺れを伴った熱がカリンの思考を妨げる。
夢の中でルーゼベルグの声を聞きながら、カリンは苦しげに首を横に振った。

右胸の頂に軽い痛みが走る。じんとしたそこに今度は柔らかく滑ったものが這った。左の乳首も同様に。

「あっ、うぅ……ん……」

むず痒さは性的な欲求に変換せれて胎内に蓄積されてゆく。解放を求めるも自分ではどうすることもできない。
もどかしさに耐えかねて、カリンは内腿を擦り合わせた。

「……凄い。もうこんなに欲情してる」

「あぁんっ」

こりこり……っ。
クリトリスにもたらされた刺激に身をしならせる。

「んっ、あっ、あぁ……」

「ここもぐちょぐちょだ。ねえカリン、これまでどれだけの人間に、ここを許してきたの?」

「ひうっ、んっ」

ぬかるんだ膣に異物が侵入を果たす。それは膣奥をくるくると掻き回して、あっさりと抜けていった。

「あっ、はぁ……、あ……」

膣道のうごめきが強くなる。刺激を求め、ぱくぱくと開閉を繰り返す蜜口を、何かがくちゅくちゅと往復する。

「ほら、答えないといつまでもこのままだよ」

「……こた、え……?」

「さっき言ったでしょ。カリンはこれまで、何人と性行為をしてきたの?」

ルーゼベルグの問いかけに、質問の目的や意図を考える余裕もなくカリンは記憶を辿った。そして何のためらいもなく、導いた答えを告げる。

「……ふたり」

「ふーん。誰と誰?」

不穏な空気に、カリンの体がぶるりと震えた。
正直に答えなければいけないと、急に焦りが芽生える。

「あっ……、義父と、奴○商人の、男」

カリンの初めてを奪ったのは義父だ。酒に酔って、彼の愛する妻とカリンを間違えた末の行為だった。
娘とはいえ買われた身のカリンには義父を拒むことができず、明け方酔いの覚めた義父は何も覚えていなかったので、そのまま何もなかったことにしていた。
記憶の底に封じ込めても、いつになっても完全には忘れられない出来事だった。

二度目の性行為は、カリンを捕らえた奴○商人に味見と言って貫かれた。
二回とも快楽は皆無なただ痛いだけの時間だった。

カリンを犯した人間は、もう二人とも死んでいる。
義父は自殺したし、奴○商人はルーゼベルグによって葬られた。

「——そっか。じゃあここの気持ちよさを、カリンはまだ知らないんだ」

「知らなっ、あっ……あぁっ、やあっ」

頭に響く問いかけに、うわ言のように答える。正直に告げるたび、膣に刺激がもたらされた。
次から次に快楽が上乗し、記憶に伴うカリンの苦しみをいとも簡単に押し流していった。

「……もっと苦しめて殺したらよかったな」

物騒な言葉すらも、与えられる快楽の前では意識に留めていられない。

「イったことはあるの?」

「あっ、んぅう……、じぶん、で……」

「ここで?」

ぐにぐにと膣道の浅い部分を押される。

「んんっ、ちがっ……っ」

「じゃあ、こっち?」

「ああぁっ!」

膣の刺激が消えて、今度はクリトリスをぐりぐりとこねられた。

「あっ、んんっ、うんっ、……んあぁ……っ」

悶えながらもカリンは何度も頷く。

「なるほど。雌のここが敏感なのは、人も魔族も変わらないみたいだね」

ぶつぶつと呟く間もクリトリスの刺激は止まらない。

「はぁ、う……、あ……っ。あぁ、んっ、あっ、ああっ」

「いいよ。そのままイってごらん」

「ああぁあっ、……んっ、だめっ、あっ……、ああぁ——っ!」

膣にぎゅうーっと力が入り、カリンは腰をびくつかせて達した。

思考に霞がかかり、すぐそばでしていたルーゼベルグの声も聞き取れなくなる。なんて淫らな夢なのだろう。

暑さに耐えかねてカリンが目を覚ますと、眼前にルーゼベルグの美しい顔が広がった。

「眠い?」

軽く息を乱しながら、カリンは瞳を潤ませてルーゼベルグに首肯する。

「う、ん……、……ぁっ……ん」

「だったらもう少しお眠り。大丈夫。カリンが心配することは何もないよ」

目元を大きな手で覆われ、視界が暗くなる。すぐに眠気が襲ってきて、カリンは導かれるままに深い眠りについた。

ルーゼベルグが心配ないと言うのなら、自分が憂うことはひとつもない。





  ※省略




また淫蕩な夢を見る。

あの甘い香りに包まれ、彼に全てに身を委ねる、幸せな夢。
鼻腔をくすぐるその香りに、カリンは自身の唾液までもが甘くなったように錯覚した。

口の中の液体を嚥下すれば、とろりみが胃に落ちて体に吸収されていく。すると肉体の内側が、じんわりと熱を帯び始めた。

「う……んんぅ……、あっ……」

燻った熱はいつも下腹部へと溜まり、カリンの性欲を煽る。

夢だと分かる夢の中。
不埒な自分を冷静に俯瞰できる理性がまだ微かに残っていて、起きなきゃと思うものの、どんなに焦っても夢は一向に覚めてくれない。

「はぁ、あぅんっ……、あぁ、ああんっ」

我慢ができず寝返りを打って横向きになり膝を曲げる。脚の付け根に手を伸ばし、自ら慰めようと試みた。

「自分でやって満足できるの?」

「んうぅ——っ」

どこからか聞こえてきた愛しい男の問いかけに、カリンは必死に否定した。
夢の中とはいえ、ルーゼベルグにこんな自分を見られたことが居た堪れなくなり、羞恥に顔が火照った。

欲情した姿をルーゼベルグが見ている。

呆れられた? 失望された? たとえこれが現実でなかったとしても、怖くて彼の表情を伺えそうにない。

怯えたカリンは横向きのまま背中を丸め、さらに体を小さくした。

「ふふっ、かわいい……」

「んっ……」

急に耳元で囁かれ、びくりと肩が跳ねた。

「怖がらないで。さあ、いつもみたいに俺に任せて」

恥ずかしいと思っても、ルーゼベルグの言葉には不思議と逆らう気分にはなれなかった。
これは夢だからと、カリンは自分を納得させて仰向けになる。

「あ……、あぁ……ルーゼ……、ベルグ……」

「なあに? カリン……」

名前を呼べばルーゼベルグは応じてくれる。それがたまらなく嬉しかった。

カリンの頬を、首筋を。そして胸に脇腹と——。ルーゼベルグに触れられた箇所がじんわりと発熱する。
暑さが心地よくて、自然と顔がほころぶ。

そういえば、と。カリンは気づく。初めて会った時は強烈に感じていたルーゼベルグの魔力が、いつの間にか全く気にならなくなっている。

それは夢の中でも、起きている時でも同じだった。
あれほどまでにびりびりと感じていたプレッシャーはどこに行ったのか。疑問に思うと、カリンは確かめずにはいられない。

これは夢だからと言い訳し、自身に覆いかぶさるルーゼベルグへと手を伸ばす。
彼をぎゅうっと抱き寄せ、肌を密着させた。

「どうしたの、カリン?」

囁きがくすぐったい。でも、やっぱり彼に威圧的な気配はなかった。
むしろこうして密着していると、ルーゼベルグの鼓動をカリンの体内でも感じられて、とても安心できる。
ルーゼベルグが身じろぐと、カリンの胸の膨らみが擦れて甘い疼きがもたらされた。

カリンの腕の力が抜ける。彼は微かに体を起こし、カリンの内腿に指を這わせた。
その手が秘所に近づくたびに、期待で胸が高鳴る。

「だいぶ馴染んできたね。ほら、ここを刺激すると……」

「きゃあっ! あっ、あっ、ああっ!」

敏感なクリトリスを押してはこねられる。
いつもの夢と一緒なら、これはカリンが達するまで終わらない。

「あっ、はぅ……っ、んぅあっ! ……ルーゼっ、い、くぅ……っ、イっちゃっ——っ!」

淫らに喘ぎカリンは絶頂を迎えた。そこで一度、ルーゼベルグの手はクリトリスから離れていく。
いい子いい子と頭を撫でられ、乱れた息が整うのを待って口付けが落ちる。

「ふ……むぅ……、んっ」

互いの舌が絡み合う。口内に溢れたどちらのともいえない唾液を飲み込めば、夢うつつだったカリンの意識はさらにどろどろになって蕩けていった。







ーーーーーーーーーー
続きはDL siteにて販売しております。
気になった方はご購入いただけますと幸いです。

市街地 2024/03/31 14:17

【小説サンプル】死にたがりの魔女と上位魔族・第1話ノーカット


『死にたがりの魔女と上位魔族』の第1話をノーカットで掲載しています。

あらすじ

大陸をさまよっていた魔女が上位魔族に気に入られ、執着される話。

全体を通したプレイ内容

人外(魔族)攻め・監禁・無理矢理・肉体開発・躾け・羞恥プレイ・子宮責め・快楽責め

・本編ではヒロインが攻め以外から性的な肉体開発を受けるシーンがあります。
・快楽責めによる躾けシーンはありますが、魔族側はヒロインに痛いことはしません。



【第一話 死にたがりの魔女と上位魔族】



瞬きをする間もなく、肌に触れる空気が変わった。
踏み締める感触は硬い石の床から、毛足のある絨毯へ。寒空の下、壁の裂け目より容赦なく吹き付けていた風がぴたりと止んだ。

ユキが今立つ場所はシープペコラの教会でない。焼け焦げた死体も、割れたステンドグラスも。あそこにあったものはどこにも見当たらない。
目の前に立つ、褐色の肌をした紅い瞳の魔族を除いて……。

——ここはどこだ。

転移魔術を使われたのはユキにも理解できた。
しかし術に入るための予備動作がなく、発動も速すぎて移動した方角や距離が全く把握できなかった。

ユキの認識では空間と空間を繋ぐには膨大な魔力が必要で、なおかつ転移には微細な魔力操作が求められる。転移魔術は単独で発動できないというのが人間の常識だ。それを魔族は、いとも簡単にやってのけた。
しかも術者自身だけでなく、他者をこうもあっさりと呪文もなしに同行させられるとは。魔族は保有する魔力量だけでなく、魔術の技量も人間を遥かに上回っているらしい。

ユキは魔族を詳しく知らない。
生まれ育った東方大陸に魔族はいなかった。魔族については、強い魔力を有する人型の長命な種族が、はるか北の大陸には存在していると伝え聞いていた程度である。
ユキが実際に魔族をこの目で見たのは、西方大陸に渡ってからだ。

個体の持つ魔力は人間とは比べ物にならないほど膨大で、敵に回していい種族じゃないと、当時物陰から一度見ただけで理解した。聖教会はこんな連中に喧嘩を売ったのだから、愚かとしか言いようがない。

その魔族が今、ユキの前にいる。
己のテリトリーにユキを連れ込み、優雅な微笑みをたたえているのだ。
どんな手を使っても勝てる気がしない。
どうにもならない状況で、なかば諦めを抱きつつユキは左右に視線を走らせた。

自分たちがいるのは重厚な焦茶色を基調にした、落ち着いた造りの広い部屋だ。ソファとローテーブル、書物机に、ちらりと後ろをうかがえば天幕付きのベッドがあった。どれもが深みのある艶を放つ木製で統一されている。
部屋の壁には淡い光を放つ球体が等間隔で浮遊する。人間の社会では見たことがない光源だ。

まさかとは思ったが、嫌な予感しかしない。
ユキは頭ひとつ高い位置にある魔族の顔を見上げ、慎重に口を開いた。

「……ここは?」

魔族——サファルは警戒心を露わにするユキに悠然と答える。

「北の、私の屋敷です」

——北。そのひと言に顔が青くなる。
この魔族は本当に、一瞬で北方大陸まで移動したというのか。
カーテンが束ねられた大窓を横目に見た。窓の外ではよく晴れた月夜に、高くそびえる塔が幾重にも並んでいた。窓の一面だけでは建造物の全体像が把握しきれない。
ここは屋敷というよりも、ユキからすれば城に近い規模がある。「私の屋敷」ということは、目の前の魔族はこの城の主人なのか。
部屋には窓が二つ。扉もある。出口を見つけたところで、部屋から逃げられる気がしない。

「……目的は? なぜわたしをここに」

生殺与奪の権限を握る魔族に問う。
魔族は微かに首を傾げた。銀色のさらりとした男の髪が揺れる。

「なぜでしょう? 特別深くは考えていませんでした」

返ってきたのは非常に厄介な答えだった。
ただの気まぐれか、それとも暇つぶしか。明確な目的がないとなれば、これから受ける扱いに予測ができない。
全てが魔族の気分次第。先の不透明さを、ユキは何より嫌がった。

「そう怯えなくとも。いい子にしていれば、悪いようにはしません」

サファルはユキの腰まである長い髪を手ですくい、口付ける。

「……信用しろと?」

唸るように言い放ち、魔族との距離を取る。
髪を引けば、サファルはあっさりと手を広げて解放した。

「人間の従順な駒が欲しいなら、さっさと始末して他を当たるべきでは? 少なくとも、わたしはあなたの期待に答えられそうにない」

死は覚悟している。そうはっきり告げたユキへとサファルは静かに距離を詰めた。指でユキの顎を持ちあげ、上を向かせる。

「あなたが期待通りか否か。それを判断するのはあなたでなく、私です」

ユキは抵抗しない。しかしサファルを見つめる藍色の瞳には反抗心を隠しきれていなかった。
近づくほどに魔族との力の差を痛感する。勝ち目がないどころの話ではない。サファルからしてみればユキは赤子も同然だろう。

「聡明な子ですね。私も無駄な足掻きは好みません」

「…………」

「名前をお伺いしてもよろしいですか」

「………………好きに呼べばいい」

おやおやと。困ったようにサファルが苦笑する。

「名付けによる支配は、できれば避けたいのですが……」

サファルの手がユキの頭部へとまわり、髪の流れにそってすくように撫でてきた。
ユキは不動を選択し、唇を噛み締めた。
抵抗は無駄だ。この男が側にいる状態では逃げ出せない。ならば受け入れて耐えるしかない。
いずれ飽きれば殺されるだろう。
かつては東方大陸の戦場で生きたユキの身体には無数の傷痕があった。お世辞でも美しいとは言えない身だ。これを見れば魔族もすぐに興醒めする。

自死はしないと心に決めているが、終わり方にこれといったこだわりはない。
実験、玩具、陵○……、好きにすればいい。

諦めた様子のユキにサファルは目を細める。そして紳士的とも言える所作でローブの袖口に隠れるユキの手を取った。
指先に口付け、手の甲をつぅ……と舐められる。

「……っ」

予想外のサファルの行動に小さく肩が跳ねた。
顔を顰めそうになるのを、下唇を噛むことで堪えてユキは平静を装う。
強がりを、サファルはふっと笑った。そして長旅で荒れたユキの手のひらに魔族は大きな手を合わせ、見せつけるようにゆっくりと指を組んだ。
握られた手に熱がこもる。それだけでない。触れ合った箇所にじんと痺れを感じ咄嗟に離れようと手を引くも、支配者は拒絶を許さなかった。
もう片方の手をユキの背中に回し、サファルは華奢な身体を自らの元へ抱き寄せた。

「……どうして」

手のひらの痺れに当惑する。肌に感じるこれは、サファルの魔力だ。
ユキの手の節々にできていたアカギレが消えていく。治療を受けていると理解できても、意図がわからず戸惑った。

「働き者の手は好ましいですが、今後のあなたには不要ですので、治してしまいましょうね」

「なっ……」

だったら元より美しい手をした好みの人間で遊べばいいものを。
この手は綺麗とは言い難いが、実用性には優れていた。長年武器を持ち、要所の皮が固くなった手をわざわざ戻すなど、まるでこれまでの自分の生き方を否定されているかのようではないか。
憤りのぶつけ先に困り言葉を失うユキに構わず、サファルは好き勝手に事を進めた。
ローブの留め具を外される。ぱさりと床に落ちる黒いローブを目で追って、俯いたユキの耳元にサファルは自らの口を寄せた。

「顔を上げてください」

囁きが耳を通して思考を揺さぶる。頭の中に霞がかかり、警戒心が和らいだ。
自分がここで何をしているのか。それすら曖昧になって混乱しかけるも、頭に触れる手の感触にはっとする。

そうだった。頭を、上げないと……。

ゆっくりと見上げたすぐそこに、顔を覗く紅いふたつの瞳がある。瞬きを忘れて宝石のような瞳を凝視する。
頭のどこかで微かな違和感を抱くが、それもこの美しさの前では無に等しい。
身体の力が抜けてよろめくユキを、サファルは難なく抱き止め、軽々と片腕で支えた。
ユキは自身の状態が異常だと自覚していた。しかし眼前にいるサファルが満足そうに微笑んでいるから、これで正しいのだと、すぐさま思考が上書きされる。

「どうやらとても相性が良さそうですね。人間の器でここまでとは。あなたほどの者は、魔族でもそういません」

「……あい、しょう……?」

「はい。互いの魔力の相性です」

頷かれても、いまいちピンとこない。
きょとんと首を傾げたユキはふっと笑うような微かな吐息を聞いた。

「口を開けて」

疑問もなく言葉に従う。
小さく開かれた口に、サファルが口付ける。軽くユキの唇を啄み、咥内で舌を絡め、唾液を送る。
うっとりとされるままになったユキは、喉の奥に溜まった唾液をこくりと嚥下した。

「……ふっ……、んっ」

鼻から息が抜ける。サファルはますます口付けを深めた。
上顎を舌で舐められ、脳が蕩けるようなむず痒さを覚えた。飲み込んだ唾液が喉を通り、胃に落ちる。
身体の内側が熱を発している。この熱は、自分に由来するエネルギーじゃない。

「んっ、んんっ……!」

理性が溶けるのに比例して、本能的な恐怖が駆け巡った。

おかしい。何かがおかしい——。

どくどくと脈打つ心臓の鼓動が加速する。
脳裏に警鐘が響き、ユキは我に返って自身の置かれた状況を思い出す。

「……ぁっ…………、いやっ……」

心地よい流れに逆らい、水底に押し込められ隠れた自我を引っ張り出す。口付けを逃れて顔を背けたのは、もはや意地だった。

「……はぁ……はぁ。……なに、を……」

正気に返ったユキは横目で驚きに目を見開くサファルを見た。男はすぐに表情を戻し、穏やかに笑う。

「これはこれは」

くっくっ……と。喉の奥で笑われてユキの頬がカッと熱くなる。手の甲できつく口を拭った。
精神干渉だ。しかも、魔術と呼べるほど魔力操作が行われなかったにも関わらず、思考を奪われかけた。
確かにサファルとユキの魔力の相性は良いのかも知れない。性質が同じだからこそ、摩擦が起きずにすんなりとより大きな力に流されてしまう。
しかしそれはユキにとって、想定してなかった最悪の事態だった。

体内に入ったサファルの魔力に力が抜けていく。たとえ少量であってもユキの力では到底対抗できない。
魔族の有する魔力の純度は、人間の魔力とは比べ物にならないほど濃厚だった。
内側を他人に支配される。慣れない感覚によろめき、立っていることがままならなくなったユキを、男は支えて当然のようにベッドへと導いた。

「あなたならすぐに慣れて、自由に動けるようになりますよ」

ベッドの縁に腰掛けたユキにサファルが囁く。
荒い呼吸を繰り返し、軽い眩暈に耐えながら、ユキは首を横に振った。
慣れるまでこの魔力に浸るなど、狂気の沙汰でしかない。
身を屈めたサファルが何をしているのか、確認する余裕もない。やがて足の締め付けが緩み、ブーツがするりと抜けた。
朦朧として抵抗できないのをいいことに、見せつけるように服を脱がされる。シャツのボタンを上から順に丁寧に外し、肩にかかった布が落ちた。

「や、め……」

何とか阻止しようとするも全身に力が入らず、男の行動を妨げるには至らない。
シャツの袖が腕から手首へと外れる。胸を押さえる下着の編み込みも解かれた。
脱がせる工程は至極丁寧なのに、サファルは奪った衣服をユキの目の前で燃やし、跡形もなく消してしまう。まるでお前に服など必要ないと言わんばかりの暴挙だ。
絶句していると肩を軽く押され、逆らえずに背中からベッドへと倒れた。

パンツとショーツも同時に脱がして生まれたままの姿になったユキを、サファルは軽く横抱きにしてベッドの中央へと寝かせる。
部屋の壁際にあった光の玉がベッドの近くに集まってきた。明かりの下に裸体を晒し、ユキはうろたえ身を横向けにして羞恥から逃れようとするも、それを肩に乗った大きな手が拒む。
サファルの顔から笑みが消えた。

「いっ、やっ……」

肉体に刻まれた傷跡を見れば遊びもそれまでだ。少し前までそう思っていた自分がいかに楽観的だったかユキは思い知らされる。
羞恥が勝り、堂々と開き直れない。こんなにも自分は弱かったのか。
サファルはユキをじっと見下ろす。
見られている。視線が居た堪れなかった。
興醒めを期待していたが、男にその気配が全く感じられないのもユキが惑う原因となった。
真顔のサファルに全身を余すとこなく観察される。侮蔑や落胆を見せない男が、次にどんな行動に出るか予測できない。
身構えるユキの脇腹にサファルの指が這った。

「随分と深い傷ですが、誰がこれを?」

触れられた部分を思い出す。
そこには……何があった?
そうだ。脇腹は刺し傷が残ってる。
……けど、それを付けたのが誰かなんて——。

「……知らないっ」

サファルが目を細めた。
身体に流された魔力にどくりと心臓が呼応する。肉体の内側を走る痺れに身震いした。

「……そんなの、覚えてない。……たぶん、……わたしが、しくじっただけ……」

本当だ。身体にできた傷など、いちいち記憶していても意味がない。
脇腹にある刺し傷にサファルが顔を近づけた。柔らかい舌で舐められ、じんじんとそこが熱くなる。

「な、にして……?」

魔力を通されているのだとわかっても、目的が知れない。
未知の恐怖に声を震わすユキに、支配者となる男は淡々と告げる。

「まずは全身の傷跡を消し去ります。この先あなたの身体に印をつけるのは、私だけでいい」

ぞっとした。そんなこと、してほしくない!

「いっ、や!」

なけなしの力でもがこうとするユキの手を取り、サファルは手のひらに口付ける。マメやアカギレの影響で指の関節を動かすときにあった、ガサガサとした感触が瞬く間に消える。先ほどされた片方の手と同様に。
ユキの焦りが強くなる。

深窓の令嬢ならいざ知らず、薄い皮の手は脆弱過ぎて不便でしかない。長年かけて生きるために出来上がった利便性を、この男の嗜好だけで簡単に消されるなんて。
抵抗は無駄。わかっているが、諦め切れない。
力の入らない身体でなおも逃げようとするユキに、サファルが覆い被さった。
治しかけだったもう片方の手もサファルが捕らえる。手の甲を舐められて背中がしなった。

次は耳たぶを吸われ、耳の入り口を柔らかい舌が押し入ろうとする。くちゅくちゅと水音がダイレクトに伝わり、肩に力が入った。
身を固くしたユキの胸元へ、サファルは手をかざす。
濃密な魔力がじわりと胸部より体内に浸透してきた。

「————っ!」

体内、という表現では生ぬるい。
身体の中のさらに内側。魂の器とも呼ばれる魔力の貯蔵部と、その魔力を全身に送る魔力回路を侵食されかけ、全身が総毛立つ。
既にぼろぼろな状態のユキの魔力回路が、外から加えられた魔力によって焼き切れる。——寸前で、サファルが魔力の流入を止めた。

「……やはり人間は脆い」

「かっ……ぁ、はっ、はぁっ……」

肉体の最奥を引きちぎられる痛みが引いていく。
あと少し遅ければ、サファルの魔力によって潰されていた。

「無理をさせましたね。今後は、契約なしにここに触れるのは止めておきます」

傷付いた魔力回路では、魔族の有する強力な魔力は受け入れられない。それほどまでに、人間と魔族では種族としての魔力の質が違いすぎるのだ。
今後なんてあってたまるか。なんならこのまま殺してしまえばよかったものを。
苦痛に喘ぎながらも恨みがましく睨むと、申し訳なさそうに苦笑された。そんな顔は望んでいない。
呼吸を邪魔しない程度に唇に軽いキスが落ちてきて、頬に手が添えられる。

「来たる日のために、じっくり馴染ませていきましょう」

それはユキにとって絶望的な宣告だった。




右の耳たぶがおかしな形なのは、過去にピアスを耳ごと引きちぎられたから。左手首の裂傷は、顔面に放たれた攻撃をいなしきれず、咄嗟に庇ったから。
たぶんそうだった。
傷を負わせたのは当時の葬るべき敵で、顔や名前まで把握していない。

「……っ、ぅ……」

深く刻まれた傷跡にサファルの魔力が通されるたび緊張が走る。
依然として身体の自由は効かないが、時間の経過とともに意識は鮮明な状態を維持できるようになってきた。単にサファルが精神の支配を望んでいないゆえだと、ユキもとっくに気付いている。だからといって、どうにもならなかった。

「魔力の浸透がとてもスムーズな、濁りのない良い身体です」

「んぅっ……っ」

耳元で囁かれ、びくりと全身が跳ねた。
過度な反応は相手を煽るだけだ。ユキは唇を噛んで異常をやり過ごした。
痺れて動けない肉体が緩やかに熱を持ち始める。部屋の空気は冷たく、汗ばんだユキは寒さに身をよじった。
ユキの華奢な身体をサファルがうつ伏せに返す。背中を目にして、男の動きが止まった。

自分で見る機会がないその部位に、かつての仲間が浴場で痛ましそうに顔を歪めていたのを記憶している。いろいろと、残ってしまっているのだろう。
ユキの想像通り、肩口には獣の噛み跡。背中には無数のミミズ腫れが痛々しく刻まれていた。
身体中の傷跡に、サファルは躊躇いなく舌を這わせる。

「んっ、……っんぅ」

舐められた部分がぞくぞくと痺れた。

「これはどちらで?」

度々の質問に、ユキは常に沈黙を選んだ。
ユキにとって過去をほじくられることは、未来を奪われるよりも苦痛だった。苦々しいかつての出来事など誰にも言いたくないし、安易に思い出したくもない。
そのまま動かずにいると、サファルの吐いた息が背中に掛かる。とろみのある液体を背中に流された感覚がして、思わずシーツを握りしめた。
実際に流れたのは、サファルの魔力だ。

「これまで大変な苦労をされたようですが、それにしては……」

背中に手を軽く置かれ、まるで検分するかのように男は呟く。

「最近の人間は魔力を得るために薬を使う者が多い。薬は一時的に使用者の魔力を増やしますが、使用する魔術は綻びが多くなり崩れやすい。外から取り入れる魔力は、その身に合わなければ己の魔力を濁らせてしまいます」

知っている。だから東方大陸では、誰もが魔力の譲渡に慎重だ。
一生を添い遂げる夫婦か、それと同等に仲を深めた者にしか、魔力を渡すことはしない。

「あなたのように、ここまで澄み切った肉体は珍しい。これなら私の魔力もすぐに馴染むでしょう」

「——っ、よ、けいなっ…………んっ……」

余計な真似を。そんなことは必要ない。

「人間の脆さは承知しています。心配なさらずとも、無理はさせません」

まったくもっていらない気遣いだ。優しさがありがた迷惑の領域に振り切れている。
そんなことをするぐらいなら、その桁違いな魔力でさっさと潰してくれた方が百倍マシだ。全力で訴えたいのに、力の入らない身体は寝返りを打つこともままならない。
焦るユキのうなじに軽い口付けがもたらされた。
身を起こしたサファルは動かぬ身体に苦労する獲物の頭を慈悲深く撫でた。

「焦らずとも、そのうち自由に動けるようになりますよ」

くるりとユキの身が返される。眼前に現れた余裕のある男に、出かかった拒絶の言葉を飲み込んだ。
代わりに大きく目を見開き、サファルの顔を凝視する。ユキが首を横に振れば、困り顔で苦笑された。

サファルの施しは丁寧すぎた。
ユキの顔にかかった髪を払う手つきも、肌を滑る唇も。全てが優しく、労わりに満ちている。
痛みの伴わない支配が、ユキにとっては辛かった。
与えられた魔力に身体がむずむずして落ち着かない。
サファルに胸の膨らみを緩く揉まれる。乳首に指が掠めた。
返す反応がなくじっとしていたら、乳首を指で摘まれ不快感に眉が寄る。微かな痛みはそこまでで、サファルはすぐに胸をいじるのをやめた。
なるほどと頷く男の余裕が癪で、ユキは悔しそうにして微かに顔を背けた。

サファルが足元へと移動するのを、自由が利かず頭を上げられないユキはベッドの沈みで理解した。
足首を掴まれ、持ち上げる。ユキの視線を釘付けにして、サファルはつうっ……とふくらはぎの裂傷跡に舌を這わせた。
治療なら手でも十分できるだろうに。あえて口を使い、ユキの羞恥を煽ってくる。

「あぅっ……、くっ」

声を抑えようと我慢するが、吐息と共に漏れ出てしまう。
触れられているのは足だというのに、なぜか下腹部が熱を持ち始めた。
脚を割り開き、そこに陣取ったサファルが股の間に指を軽く沈めた。
くちゅり……、ちゅく……。
膣口の表層よりもたらされる粘着質な音にユキが戸惑う。

「やっ……。な、んで……」

身体が持ち始めた熱は他人の魔力の浸透によってもたらされる、いわば拒絶反応だ。間違っても快楽と結びつくはずがない。
結びついて、いいはずがないのだ。
言うことを聞かない身体に不安が増幅する。
愕然とするユキに、蹂躙者はさらなる衝撃を与えた。
股の間に身を屈めたサファルがクリトリスに舌を這わせたのだ。

「んあっ、やめっ……、くっ、んぅ」

信じられない。支配者として悠然と構える男が起こす行動とはとても思えなかった。

「いやっ! そんなっ、んっ……!」

指で皮を剥かれ、ぷっくりと顔を出した芽を柔らかい舌の先端で転がされる。

「んうっ、ん——っ」

ユキが重たい手を持ち上げる。自らの口を塞いだのは意地だった。
多少の無理をしてでも、自分自身のよがる声など聞きたくなかった。
舌で刺激されたクリトリスを口内でちゅう……と吸われ、動けないはずの腰がびくびくと揺れた。

「…………っ」

親指の付け根を強く噛んで、痛みで刺激を紛らわす。
そんなユキを見て、サファルはクリトリスから顔を上げた。

「それはいけませんね」

「…………?」

何がいけないというのか。口から手を離し微かに首を傾げる。
ユキにならうように、サファルも困り顔で微笑みながら首を横に傾けた。

「後ほど、教えて差し上げます」

言って再び、男はクリトリスを口で食む。

「あんっ、……んっ、うぅ……」

主張する肉芽を舌で丁寧に刺激され、あるいは押しつぶすように舐められた。サファル自身の性処理を目的とせず、ただ獲物の肉欲を高めるだけの行為にユキは理解が及ばず、焦りながらもひたすら耐えた。

「あっ、んんっ! ……やあっ」

刺激によって濡れた膣に、サファルの指が難なく侵入を果たす。
ぬかるんだ膣道に違和感はあるも痛みはない。奥で軽く曲がった指が膣壁を押しながら抜けてゆく。
何度も何度も、角度を変えて繰り返されるそれはまるで触診のようだ。

入り口に近い腹側の部分を中から押されて、ユキは顔を顰めた。そこはユキにとって数少ない性交の経験において、唯一快感を拾える場所だった。
微かな反応に目敏く気づいた男が、重点的にそこを攻める。指を二本に増やされ圧迫感が増した。
いつの間にか、サファルは身を起こしていた。
ベッドに腰掛け、ユキの表情を観察しながら、ユキの性的な感度を確かめていく。

「んっ……、……っ」

三本の指が膣道を押し広げて侵入した際、引き攣るような痛みがあった。
不快そうに睨むユキに、サファルは愉悦の笑みを浮かべた。

「処女ではないが、性行為に慣れるほどの経験はない、といったところでしょうか」

「……興醒めしたなら殺せばいい」

処女性を尊ぶならユキは完全に傷モノだし、男を悦ばせるような経験や手練手管は持っていない。

「とんでもない」

否定しながらサファルは膣奥の壁をゆるく引っ掻く。

「とても教えがいがある。先がとても楽しみです」

「なっ、んぅー……っ、ん、やぁっ」

三本の指が膣内でばらばらに動く。それに気を取られていると、サファルが親指でクリトリスをいじり始めた。

「あっ、あっ! んっ……、うぅ……っ!」

ぷっくりとした肉芽を軽く引っ掛かれる。もう片方の手がクリトリスを両サイドから摘み、強○的に立ち上がった頂を指の腹で転がしてきた。
強烈な刺激に膣を締め付けてしまい、ナカを蹂躙する三本の指を嫌でも意識させられた。

「今はこちらが一番敏感なようですが、少しずつ、気持ちいいと感じられる場所を増やしていきましょう」

「い、やっ、……ぁんっ」

ユキにとっては絶望的な言葉を言い放ち、サファルは再びクリトリスへと顔を近づけた。
窄めた口で吸い上げ、突出した肉芽を舌で扱く。

「ん、くぅ……っ、うっ、んんぅっ」

悔しそうに唇を噛み締めるユキに、男は楽しそうに目で笑った。

「んっ、ん、——っ!」

軽い絶頂にユキの腰がびくびくと揺れる。しかしサファルは動きを止めない。
ユキが落ち着くのを待たず、ついには膣を埋める三本の指が抜き差しされた。

「んっ、あっ、あぁっ。……やめ……っ、とめてっ」

終わるはずだった、その先へ。膣がきゅうきゅうとサファルの指を締め付ける。何度絶頂へ上り詰めても終わらない。
クリトリスの刺激と膣の快感を連動させようとする、その責めはどこまでも執拗だった。

「——くっ……、ん……っ、んっ」

訴えは聞き入れられない。ユキは否定を口にするのを止めて、手の甲をきつく噛むことで快楽に耐えた。
頼みの綱は自身がもたらす痛みだけ。快楽に流されたら最後、どうなってしまうかわからない。

「んぅっ! ……はっ、あっ……ぁ」

ナカを弄っていた指が抜ける。同時に軽い吸い上げを最後にクリトリスも解放された。

「あっ……、はっ、はぁ、……んっ」

サファルが余韻に打ち震えるユキの手を取る。ユキ自身が付けた噛み跡を支配者は指でさすった。
ユキの手をじんわりとした熱が包み、痛みが引いていく。
笑みを消した男の視線に身震いし、ユキは無意識に身を起こそうとした。

肉体の自由が戻りつつあると気づいたのはその時だ。
サファルの魔力は依然として体内に留まるものの、身体が慣れ始めている。
それが良いことなのか判断がつかないながらも、動かせるようになった手はサファルから逃れた。少しでも距離を空けようと、ユキはベッドをずり上がろうとする。
そんなユキに構わず、サファルは自身のボトムスを寛げた。

覆いかぶさるサファルの、顔から腰へと視線を落としたユキはみるみる顔色を青くした。
寛げたボトムスから取り出された、そそり立つペニス。人間のものよりも長く、明らかに太いそれを目の当たりにし、さっと熱が引いていく。

「…………どうして」

硬さを持ったペニスに、困惑を隠しきれない。男がこんな貧相な肉体に興奮しているなど、到底認められなかった。
ペニスに釘付けとなったユキの頬に、サファルが優しく手をかざす。ユキの視線がゆっくりと男の顔に戻された。

「そんな姿を見せられたら、こうなりますよ。悶えるあなたはとてもいやらしく、素敵です」

顔を引き攣らせ、必死に首を横に振る。

「……むり……、そんな……」

そんなもの、入るはずがない。

「無理なことはありません。確かにあなたのここはとても狭いですが、じっくり慣らして、ちゃんと受け入れられるように変えていきますので、安心なさい」

不穏な言葉に拒絶を示す余裕もない。
怯えるユキにサファルが口付けた。啄むように浅い口付けが、徐々に深いものに変わっていく。

「ふっ、ぁ……」

途中にこぼれた吐息すらサファルに飲み込まれた。魔力が口腔を通して体内を駆け巡る。
再び力が抜けて持ち上げられなくなった頭の下に、柔らかい枕が差し込まれた。
サファルの舌がユキの舌に絡まる。飲み込みきれない唾液が口の端から顎を伝った。

「ふぅんっ……、はぁ……っ」

次第に頭がぼうっとして、恐怖が薄まっていく。
口付けが気持ちいい。他人の体温に心地よさを覚えるのと同時に、ユキは下腹部の甘い疼きを自覚した。
眼前にあるサファルの紅い瞳は、ユキを捕らえて離さない。口付けの合間にサファルが見せる微笑みに、さらなる快楽を期待してしまう。
この男は、望み通りに与えてくれるのか。
散々クリトリスの刺激で絶頂へと追いやられ、今もなお余韻が燻る下腹部が新たな快楽を求め出す。

脚が開いたのは無意識だった。
サファルのペニスがぬかるんだ秘裂をなぞった。熱を帯びた肉が緩やかにクリトリスをさする。

「んっ……、ふぅっ、んぁあっ」

ナカからじわりと蜜が溢れた。
さらなる快楽を期待するように、ゆるゆると腰が動いた。ユキの身体の力が抜けるのを見計らい、ペニスの先端が膣口に押し入る。

「……ひっ、……っ! ぁ……いっ、やあっ!」

めりめりと膣道をこじ開けられる。快楽だけでは済まされない衝撃に、ユキは我に返った。
なけなしの力を振り絞り逃げようとするユキを落ち着けようと、サファルは額にそっと口付けを落とし、髪を撫でた。

どのみちユキの身体は言うことを聞かない。ベッドと支配者に挟まれた状態で、どこに逃げるというのか。
サファルがじわじわと侵入する膣は、大きく広がり引き攣るような感覚はあるも、想定した痛みが全くない。ナカが裂けることはなく、熱はゆっくりと奥へと進んでいく。
ユキの額から口へと、サファルは唇を移動させた。口内に舌が差し入れられ、喉の奥に流し込まれた唾液を嚥下する。
じわりとサファルの魔力が体内に広がった。

「……ぅんっ……、んあっ」

溶けていく。
身体の中に、自分でないものが、たくさん。

「……そう。ゆっくり、馴染んでいく感覚を味わいなさい。内側から……変わっていくのが、わかるはずです」

「あんっ……」

また少し、膣道が開かれペニスが奥に進んだ。
口腔からの魔力付与に合わせて、下腹部にも手が当てられた。
サファルは慎重にユキの腹部へ魔力を通し、己を受け入れやすい肉体へと作り替えていく。
おかしいと。ユキが気づいた頃にはもう遅い。
自身の身体であるにも関わらず、支配者の魔力に主導権をいとも簡単に奪い去られる。

「やっ、いや……、……やめてっ、…………っ、変えないで……」

「はい。もう少し、頑張りましょうか」

懇願はあっさりと流された。
痛みが欲しい。ペニスに膣奥を拡げられるたびにそう願わずにはいられなかった。
いっそのことただの肉人形として、こちらを気にせず容赦なく穿ってくれた方が楽なのに。
ただサファルの享楽のための、消耗品として。ユキの肉体が壊れたら終わり。そんな扱いだったら、こんなに焦ることもなかった。

サファルは慎重にユキの身体を開発していく。無理のひとつもさせてくれない。

「……ぅうっ、くぅんっ、んんうっ」

膣奥の行き止まりにペニスが到達した。
腹の奥を内側から押し上げられているのに、痛みがない。中を広げる強烈な圧迫感があるだけだった。
膣壁が勝手に肉棒を締め付けて、熱さと大きさをユキに教えてくる。

じんわりと腹の底から燻ってくる快楽に気付かぬよう、どうにか意識を逸らした。
早く——、早く満足して終わってほしい。
ユキの願いを知ってか知らずか。サファルは口付けを止めて上体を持ち上げた。男の顔が遠ざかる。

「んっ、あっ……」

愛おしげに腹部を撫でられると、嫌でもナカに埋まる肉棒を意識してしまう。
ユキの腹の奥が不自然に痺れた。皮膚の上から腹を押す男の手が、微かな光を発していた。
サファルは浮かべていた笑みを消し、真剣な表情で腹部を見下ろす。

ユキにぞっと悪寒が走った。どう考えても、喜ばしいことが起こるとは思えなかった。
腹部の表層にあった痺れが、腹の内部へと落ちてゆく。正確には、サファルがペニスで埋め尽くす、膣奥の先へ——。

「……な……に?」

熱を帯びた痺れは徐々に治まり、尾を引くような違和感だけが残った。

「痛みや苦しみは?」

「…………ない、けど……」

何かがおかしい。
肉体の内側の異変を上手く言葉にできず、ユキは困惑した。

「ならば問題ありません。続けましょう。初めてでこうもあっさりと浸透できるとは、あなたは本当に、優秀な子ですね」

ユキの腰を両手で掴んだサファルがゆっくりとペニスを引いた。膣口に亀頭が引っかかったところで、再びナカへと侵入してくる。
緩やかに進む肉棒の熱は、膣の最奥に到達して止まった。

「んっ……、んう」

ゆっくりとした抽送が何度も続き慣れてくると、次第に律動は膣奥に集中しだす。
抜き挿しの幅は狭まり、ぐ、ぐぅっ——と。ペニスが子宮口に加える力は徐々に強くなっていった。

「ぐっ、……うぅ、んっ」

最奥の肉壁への執拗な押し上げは、内臓全体が上へとずれる錯覚をもたらした。
ユキの腹の上を、サファルが指でつぅっとなぞる。肉棒の先端があろう位置だ。するとその部分が、突如として熱を持ち始めた。

「え……あっ、……な、に……?」

膣と、そしてナカに埋まるペニスを覆うように、下腹部がじんわりとした温もりに包まれる。
ペニスは突き上げる動きを変え、ぐぅ……と亀頭が子宮口を押した。すると膣奥の壁が壁でなくなり、熱がさらに奥へと進む。
異様な感覚を受けて、目に見えない胎内の状態を、ユキの脳は勝手に想像した。

おかしい。だってその先にあるのは、男を受け入れる器官じゃない。
膣の奥、本来なら固く閉じているはずの入口がこじ開けられる感覚に、恐怖が込み上げた。
恐る恐るサファルを見上げれば、紅い瞳と目が合った。微かに細められた目にユキは男の目的を確信し、焦った。

「いやっ! ……やめてっ。そこはっ」

なけなしの力を振り絞って暴れてもサファルはユキを離さない。
ペニスの突き上げと押し付けを繰り返し、ゆっくりと秘された場所を暴いていく。

「やだぁっ、……あっ、ぐっ、ぅ……」

やがて刺激を受けて緩み始めた子宮口は、サファルのペニスを自ら迎え始めた。
接近に合わせて窄まった中心が口を開き、サファルが離れるその瞬間まで吸い付くようにペニスの先端にまとわりつこうとする。
心を置き去りにして、奥へ奥へと誘う。自らの内側で起こる動きにユキは打ちのめされる。

「あっ、うぅ……。どうして……? ちがうのに……、んぅ——っ!」

引くべき場所で引かず、サファルがぐぅ——とペニスを押し入れる。侵入する亀頭に沿ってゆっくりと子宮口が広がり、征服者を子宮へと招き入れた。

「う……そっ、……そん、なっ……」

「入りましたね」

腹の奥へ当たる他者の熱に愕然とする。
痛みはない。最奥をこじ開けられる強い圧迫感があるだけだ。

「あ、うぅ……んっ」

心なしか膨れ上がった腹をサファルがさすり、ユキの意識をそこへと誘導する。

「短時間でここまで順応するとは、私も驚きです。痛みはないようですが……、苦しいですか?」

「うぅっ……、もっ、ぬい、てっ」

ゆるゆると子宮の肉壁を突き上げられる。
痛みや苦しみ以前に、ユキの理解が追いつかない。
一体この身体はどうなってしまったというのか。

「あぅっ、んぁっ……、それっ、やぁ!」

指でクリトリスをいじられると、否応にも膣を締め付けてしまう。
征服された熱に悶え、逃げようとのたうつがサファルは緩い抽送を止めようとしない。

「拒む余裕があるなら、大丈夫そうですね」

子宮の壁にぐりぐりと熱が押しつけられた。

「うぅ——っ!」

痛覚はないが快感もない。ただ腹の奥がじんじんと痺れた。
サファルの魔力を、胎内に感じているのだ。

「いや……、いやっ! もっ……、やだあっ」

「まだここでは思うような快感は得られませんか。いずれは奥の刺激が欲しくてたまらなくなります」

ありえない。
ユキは子宮を押し広げる感覚よりも、クリトリスにもたらされる刺激に追い詰められていた。
どちらにせよ、感じていることに変わりはない。

「あっ、あっ、……やぁ……、んっ、うぅ……」

こんな自分を、認めたくなかった。
与えられる快感から逃れるため、必死に気を紛らわせる痛みを探した。
両手で口を覆い、声を抑えながら、上に重ねた手で下の手の甲に爪を立てる。

「ふっ、ん……、……んぅっ」

責め苦は終わらない。サファルはどうにか堪えようとするユキを冷然と見下ろし、無駄な抵抗だと言わんばかりに絶頂へと導いてゆく。
クリトリスをキュッと摘まれ、投げ出した足が大きく跳ねた。同時に子宮を強く深く突き上げられる。背中が弓形にしなった。

「あっん……、あぁ、はっ、ああっ、……も、やめてっ!」

「イキなさい」

「——っ、んぅ————っ」

声を上げまいと咄嗟に手の甲に噛み付いた。
びくびくと腰が揺れる。
膣壁が痙攣し、締め付けにサファルも果てた。
熱い精液が子宮を満たす。

「……はぁ、はぁ、……んっ、やぁ……」

ペニスが埋まる子宮に痺れが走る。じんじんと、微弱な電流が流れているようだ。
サファルの魔力に内側が侵食されている。理解できてもなすすべがない。
子宮に溜まる精液により膨らんだ腹をサファルが愛おしそうに撫でた。
子宮口にみっちりと埋まるペニスが栓となり、精液はこぼれず胎内に留まり続ける。
身体の中心で、熱がとぐろを巻いていた。

「あっ、……うぅ……っ」

サファルがユキの手を取る。歯型に血が滲む皮膚を舐められ、治癒の魔力が手を覆った。
今しがた爪でつけた傷も念入りに。治った後もしつこく舌が這う。

「んっ、んぅ……ぁっ」

ねっとりとした舌の感触に、膣壁が連動するようにうねった。絶頂の余韻が収まるより先に、サファルはユキの手を放した。

「あっ、うぅっ——!」

腰を掴まれる。互いの身体の密着が離れ、子宮が内側から下へと引っ張られた。
狭い子宮の入り口より、サファルがごぽりとペニスを外す。そのままずるずると肉壁を刺激しながら膣を通り、ペニスはユキのナカから引き抜かれた。

全身の痺れが頭にまで達し、思考が整わない。荒い呼吸を繰り返しながら、ユキは虚にサファルを見上げていた。
ベッドを降りた男を目で追う。衣服のボタンを外し、纏うものを脱ぎだしたサファルに身が震えた。
恐怖だけでない。じんじんと熱を帯びる腹部に戸惑いながらも、男の素肌から目が離せない。
サファルの体格は、引き締まった無駄のない肉付きをしていた。魔族も人間と骨格は変わらないようだ。
褐色の肌に紅い瞳をした魔族は、裸体を食い入るように見つめるユキに微笑みかけ、再びベッドへと戻った。

まだ終わらない。察したユキは静かに瞳から涙をこぼした。
サファルはそれを優しくぬぐい、ユキの背中とシーツの間に手を差し入れる。
力の入らない身体はベッドに座るのも難しく、ユキはサファルの胸に身を預ける形となった。

「はぁ……、ぁ……、やっ」

サファルはユキを軽々と持ち上げ、ベッドに座る自らの脚の上に乗せる。安定するように抱き寄せると、小さな身体はあからさまに怯えた。
あやすように大きな手が背中をさする。ユキの中に未だに燻るサファルの魔力は、元々の持ち主と肌を密着させることで暴れるのを止めた。痺れが消えて、徐々に安心感が強まっていく。

おずおずと、ユキが頭上にあるサファルの顔をうかがうと、紅い瞳と目が合った。
気まずくなり直ぐに視線を逸らす。
忘れかけていた緊張を思い出し、身体がこわばった。同時に先ほどの行為を思い出し、下腹部に力がこもる。

「……んぅっ」

腹の奥に注がれた精液が、重力に従い膣道を下る。やがて膣口から溢れる感覚にユキは身を震わせた。

「ああ、気になりますか?」

サファルがユキの膣口を指でなぞる。浅い部分を抜き差しされるたびに、ちゅくちゅくと水音が嫌でも耳に入った。

「やめっ、んんっ」

液体が太腿を伝うのが不快で眉を寄せる。まるで粗相をしているみたいで、仕方なく膣口に力を込めようとするがサファルの指がそれを阻む。

「不快なら掻き出しましょうか」

「やっ……」

犯した張本人に世話をされるなど、どんな仕打ちだ。だったら自分でどうにかした方が遥かにマシだと、ユキは拒絶を示して首を振った。

「……そうですか」

困り顔で微笑んだサファルは、ユキの両脇に手を入れて痩身を持ち上げる。
そしてゆっくりと、未だに硬さを保ったペニスの上へとユキを落とした。

「なっ……、うぁ、あっ!」

膣口に当てがわれた肉棒が、自重で体内に沈んでいく。

「ならば栓をしてしまいましょう」

精液と愛液でぬかるんだ膣は難なく征服者を迎え入れ、収縮を繰り返し奥へと導いてゆく。

「あ……、また、……なか、に」

膣壁が押し広がるのをダイレクトに感じてぞくぞくする。
いくら上体を捻って逃れようとしたところで、サファルはユキから手を離そうとしない。

「んんっ、あっ、やだ! ……——っ」

膣奥の壁にペニスの先端が到達する。俯けばユキのナカに収まり切っていないサファルの肉棒が見えてしまい、言葉が消えた。
あれが全て入ったとき、わたしの子宮に……。
歓喜か、期待か。本人の意思に関係なく、腹の奥がきゅんと疼いた。

「ちがう……、そんなの、やめてっ」

両脇から手を離し、サファルはユキの背中へと腕を回す。緩い拘束の中で、ユキは膣に広がる甘い快楽に身悶えた。腰が勝手に動き、ペニスが子宮口に押し付けられる。
ユキ自身の体重も合わさり、図らずしてぐりぐりと窄んだ奥の入り口に刺激を及ぼす。

「そう……、ゆっくりと、広がっていくのがわかりますか?」

「あっ、あぁ……、いや、いやぁ……」

身体が沈むにつれて、目線が下に落ちてゆく。
どうにかサファルの両肩にしがみつくも、焼け石に水だった。先程までペニスを受け入れるために口を開いていた子宮口は、再びの訪問者を拒まずに通す。
その身のどこに力を入れても、そこを閉じることは叶わなかった。
亀頭の最も太い部分が子宮に侵入を果たすと、後は早い。

「まって、いやっ。————あぁっ」

ずちゅりと子宮にペニスが埋まる。先ほどよりも抵抗が少なかったのは、おそらく気のせいではない。
子宮の内側の壁に直接熱を感じ、ユキの呼吸が浅くなった。
びく、びくっ……と。腰が跳ねるたびに貫かれた子宮口が揺さぶられ、振動は子宮にも及んだ。
ユキは男の腹部に手をついて、どうにかペニスを抜き去ろうと力を込めた。
そんなユキを跨らせたまま、サファルは上半身を後ろに倒してベッドへと肘をつく。

「あっ、んっ……、いゃっ」

下からの緩い突き上げに、ユキの背中が丸くなった。それでもどうにかペニスを引き抜こうと膝に力を入れるが、亀頭が楔になって、窄まった子宮口につかえてしまう。
腰を上げようとするたびに内側が刺激され、無意識に膣を締め付けた。
圧迫感と痺れと熱が腹の中で混ざる。それらを徐々に快感だと身体がみなしはじめ、ユキはうろたえた。

「ゃだっ、あっ、あぁーっ、……んっ、やぁ……っ」

奥に嵌った楔は外せない。
湧き上がる多幸感を認めたくない一心で、強く首を横に振った。
ひとり淫蕩なダンスを踊っていたユキの脚は、疲労と快楽によって徐々に力が入らなくなっていった。
自重で子宮深くの肉壁にペニスが強く押しつけられ、感じた圧迫感に全身が総毛立つ。引き抜きたくても、足を立てて身体を持ち上げる余裕がない。

「はっ、あ……。うぅ……」

やがて身を起こすのもままならなくなり、ユキの意識は朦朧としてきた。
ふらふらの身体は手首を掴んで少し引くだけで、簡単にサファルの胸へと倒れた。

「んっ、うぅ……っ」

ペニスが膣や子宮を刺激する位置を変える。呼吸によって腹がへこむたび、子宮を占領する熱を鮮明に思い知らされた。

「……はぁ、はっ、あっあぁ……っ」

ありえない。これに苦痛を感じていないどころか、下腹部を満たす熱さを受け入れ始めた自分に困惑する。
この身体はどうしてしまったのか。
上体を起こしたサファルがユキの顔にかかった髪を優しい手つきで避けた。

「うっ……あぁ」

ベッドの上でユキと向かい合って座った男は、ユキの顎に手を添えて上を向かせた。
目を潤ませるユキにサファルが口付ける。自然とユキの口が開き、自ら支配者を迎え入れた。
下からと上から。容赦なく注がれるサファルの魔力に頭が痺れ、無意識に下腹部に力が入った。

「んっ……、ふっ、うぅ、あ、あっ、あんっ」

口付けの最中も腰が揺れる。動きに合わせてサファルが突き上げるものだからたまらない。

「あぁ……、うんっ、ぁあ——……っ!」

悶える様子を赤い瞳に間近で見られていることに気づき、ふと正気に戻る。
流されずに残った理性が頭の中でがんがんと警鐘を鳴らし、猛烈な羞恥に襲われた。

「やっ……っ、んぅっ、——んっ」

口付けから逃れようと顔を背け、僅かに残った正気を保つために再び自分の手の甲に噛み付く。

「その癖は直しましょうか」

「んぅっ」

耳元で囁かれ、肩がびくりと跳ねた。

「——んあっ! うぅ——っ!」

サファルがユキの腰を持ち上げる。子宮口より亀頭が抜けかけたところで手を放した。

「うんぅ——っ!」

加わった衝撃に手の甲の皮膚を噛み切り、口の中に血の味が広がる。
サファルは手を止めなかった。何度も身体を縦に揺さぶられ、その度に子宮の最奥をペニスが叩きつける。

「うんっ、んっ、やあっ!」

突き上げが止まったかと思えば、腰に回った手によってより互いが密着し、ぐりぐりと子宮の奥を刺激された。そこにもう片方の手がクリトリスを弄り出したからたまらない。

「——っ、ん————っ!」

強○的に絶頂へと導かれたのと同時に、サファルも達した。再び熱い飛沫が子宮を満たす。
熱を帯びた腹が痺れ、魔力が全身を駆け巡る。
一連のサイクルでもたらされる、流れるような身体の書き換えに、回数を重ねるごとに順応していた。

「……いや……、もぅ……」

現実を受け止めきれず俯くユキの手を、サファルが捕らえる。男はユキが自らの歯で傷つけた、血の流れる手の甲を丁寧に舐め上げた。

「その程度の痛みでは、快楽からは逃げられません。無駄な抵抗はお止めなさい」

サファルが顔を上げた時にはもう、傷は完全に消えていた。

「……ぁ、……んぁっ、はぁ……」

血のついた唇にも舌を這わせる。薄く口を開けるユキは、もはや抵抗する気力が残っていなかった。




    ◇  ◇  ◇



「……うっ、あぁ…………」

ずるり……と。ペニスが膣を抜ける感覚にユキは背中をしならせて小さく鳴いた。
サファルはユキをベッドへ寝かせて頬に唇を寄せる。振り払う気力がないのか、ユキはぼんやりと視線を向けてくるだけだった。

過ぎた快楽に混乱するが、発狂はしない。多少ひどく追い詰めたところで意識を失うこともない。
体中に残っていた傷から察するに、戦場か、それに準ずる命懸けの環境に身を置いた経験があるのだろう。自分を軽視し死にたがるのはいただけないが、脆そうに思えて、ユキの精神はしなやかで簡単には折れない。
窓の外では空が明るくなり始めていた。

「疲れたでしょう。眠りますか……?」

サファルが囁けば、ユキはいやいやと首を振って意識を保とうとする。
素直な肉体に反して精神はなかなかに頑固で反抗的だ。そこがまた面白く、サファルの興味を煽っているのだと、おそらく彼女は自覚していない。
苦笑してサファルはユキを撫でるのをやめた。

「お休みなさい」

手で目元を覆い、軽く誘導するだけでユキの意識はあっさりと落ちた。
とっくに限界は超えていたのだろう。ユキはサファルの支配を嫌がるが、魔族そのものへの嫌悪感は最初から見受けられなかった。
これは聖教会の勢力域に住む人間ではあり得ない価値観だ。
西方大陸の真っ只中で拾った猫は、一体どこから迷い込んだのか。俄然として興味が湧いた。
本人の口から身の上を聞ければいいのだが……、彼女が懐くにはまだまだ時間がかかりそうだ。
ユキを愛でていたサファルだったが、ふいに手を止めた。

「サファル様」

音もなく部屋に現れたグラダロトは主人の前で跪き、首を垂れる。
姿を見せたのはグラダロトひとりだが、部屋の外には複数の気配があった。

「全員、帰還が完了しました」

「ご苦労様です。報告は後ほど聞きましょう」

「はっ」

手早く去ろうとしたグラダロトをサファルがとめる。

「仕事の前に、この子に着るものを用意してあげてください」

サファルの言葉に応じ、グラダロトとは別の気配がすぐさま動いた。

「あと、……そうですね。鳥籠の準備もお願いします」

「承知いたしました」

胸に手を当て、深々と頭を下げたグラダロトは来た時と同様に音もなく消えた。部屋の外にあった気配も散っていく。


サファルはユキへと向き直り、そっと指で唇をなぞる。
まずはどうにかして自傷癖をやめさせなければ。たとえユキ自身であったとしても、この身に傷を付ける行為を許すつもりはない。

どうやって教え込むかと思案したサファルは、ほんのりと色づくユキの頬を見て口の端を上げた。


遠征に赴いていた分の、仕事が溜まっている。
ちょうどいいからこの娘も一緒に連れて行くとしよう。





ーーーーーーーーーー
続きはDL siteがるまに にて販売しております。
気になった方はご購入いただけますと幸いです。

市街地 2024/03/31 14:16

【小説サンプル】死にたがりの魔女と上位魔族・えっちシーン抜粋

『死にたがりの魔女と上位魔族』のえっちシーンのサンプルです。


あらすじ

大陸をさまよっていた魔女が上位魔族に気に入られ、執着される話。

全体を通したプレイ内容

人外(魔族)攻め・監禁・無理矢理・肉体開発・躾け・羞恥プレイ・子宮責め・快楽責め

・本編ではヒロインが攻め以外から性的な肉体開発を受けるシーンがあります。
・快楽責めによる躾けシーンはありますが、魔族側はヒロインに痛いことはしません。



【第2話 配下の前で犯される】より抜粋


泥沼に沈んだ夢の中に、次第に温度が入り込む。
温かいと感じるのは自分の身体か。それともぬかるむ泥水か。

朧気な思考で探っても、答えには一向に辿り着かない。
熱を帯びているのは、この身の内と外の両方だと結論に至るのに、しばらくの時間を要した。

「……んっ…………、はぁ……」

腹の奥が熱い。熱はそこだけにとどまらず、体内を駆け巡り肉体の隅々まで広がっていく。
なおも冷たい指先を、外の温もりがやんわりと包んだ。

もう寒くない。
それは果たして自分の望んだ安堵なのか、ユキはしばし答えに迷った。
救いなど求めていないにも関わらず、身体を暖める緩やかな温もりには抗えない不思議な力があった。

もっと、もっと……と。救われることに悲鳴を上げる理性を置き去りに、本能がねだる。
もっと熱を感じたくて腹に力がこもった。
熱の根源をぎゅうっと抱きしめるように、膣が締まる。

「ふぅ……、んんっ」

微睡みのなかで、それの存在を気付かされる。
身体の奥に感じていた熱が、甘い疼きに変わるのは時間の問題だった。

知らない。こんな感覚、初めて……。

「はぁ……、はぁ、んっ……」

身体を支える安定感は凄まじく、安心して身を預けられた。
倒れる心配のない肉体は欲に忠実に、膣の内部を占める熱の感覚を貪る。
他者の気に染まり、自分が消えていく。
夢だからこそ許される、背徳感がもたらす悦びがあった。

このまま何も考えず、深く眠りたい。
……でも、もっと……。もっとこの熱を感じていたい。

「あっ……んんっ……、んぅっ」

相反する二つの欲望がせめぎ合い、悩ましげに首を振る。
その間も、肉体はさらなる快楽を求めて高ぶる一方だ。

どうすればいいの……?

「——さあ、そろそろ目を覚ましましょうか」

耳に吹き込まれた声が、頭に直接響いた。
水中をゆらゆらと漂っていたのを、無理矢理陸地へ引き上げられるように。聞こえてきた声によって鳴らされた理性の警鐘が本能を凌駕し、ユキの意識は覚醒した。

「……んっ、あっ……、はぁ、はっ、……ぇ……?」

視界いっぱいに広がる一面の黒に瞠目する。驚き顔を後ろに引けば、軍服と思しき胸元部分が見えた。

「……は? …………っ?」

訳がわからず上を向くと記憶に新しい魔族の男が、悠然とこちらを見下ろしていた。
ユキの顔の横をするりと長い髪が落ちる。
サファルは癖のない黒髪を指ですきながら、肩の後ろへと流した。髪を引っ張ることもなく、どこまでも丁寧だ。頬を撫でる手つきも優しい。

「あっ……ぅ……?」

状況を理解しきれず、ユキは戸惑いながらも左右に視線を走らせる。
今自分がいるのは最初に転移魔術で連れて来られた、あの部屋ではない。

ここが明るいのは、朝を迎えたからなのか?

時間の間隔が曖昧だ。自分はいったいどのくらい眠っていた?

あれからわたしは、どうなった——?

「……っ! んぅ————っ!」

冷静になろうとしたはずが、とあることに気付いてしまった。

瞬時に顔が赤くなる。
ユキは椅子に腰掛けるサファルと向かい合い、脚を開いてサファルを跨ぐように座らされている。しかも膣の中、子宮口のさらに奥にまでペニスを受け入れたまま。
胎内に埋まる熱棒を自覚した途端、腹部にぐっと力が入った。

「なにっ、してっ! ——っ!?」

慌てて身を離そうとしたユキは、しかし直後に息を呑んで口を閉じた。
自身の背後に何者かの気配を感じ取ったのだ。それも、ひとつやふたつではない。

「うっ…………」

急いで発しかけた声を抑えた。淫らに喘ぐ声など、誰であっても聞かれたくない。
ユキは息を潜め、視覚によってもたらされる情報を整理する。そうすることで、少しでも下腹部の熱から意識を逸らしたかった。

服は着ている。簡素なキャミソール型の白いワンピースだ。下着は上下ともなく、下を見ると膨らんだ胸の頂がぴんと主張する様子が生地の上からうかがえて、忌々しげに舌打ちしたくなった。
サファルは黒い軍服らしきデザインの服を着て、艶を帯びた木製の椅子に腰掛けている。ユキはその男の上に座っているわけだ。

自分の体勢を俯瞰的に考えただけで眩暈がした。
ちらりと後ろを振り返れば、すぐそこに執務用であろう机と、視界の隅に開きっぱなしの両開きの扉が見えた。
無数の気配は扉の向こうからしている。耳を澄ませれば、微かに話し声も聞こえてきた。

しかしいくら情報を整理しても、この身に起こっている事態を説明できそうにない。困惑しつつサファルを見上げれば、彼はユキに穏やかに微笑み、何も告げずに書類へと目を移した。
信じられない。ユキはひとり焦ってきょろきょろと視線をさまよわせた。

背後の事務的な話し声にユキは息を殺そうとするも、膣に埋まる圧倒的な存在感に呼吸が乱される。
紙をめくる音。ペンが紙を走る音。部屋に届く、淡々とした会話。
真面目な空気は室内も扉の外も同じ。そこに一切の淫蕩さはない。

「んん——……っ」

意図せず膣を締め付けてしまい、甘い疼きに顔を顰めた。どう考えても、この場にそぐわないのはユキの方だ。

「……ぅっ、——っ」

背後に近寄る気配に身を固くした。

「こちらにお目通しをお願いします」

硬質な印象を持つ男の声だ。

「ああ、そこに置いておいてください」

応えるサファルの声音も感情のない、事務的なものだった。
俯き動けずにいるユキの背を支え、サファルが身を乗り出した。
ナカに埋まるペニスが微かに肉壁に擦れ、甘い疼きがもたらされる。

「ぁんっ……っ、……ぅっ」

上がりかけた嬌声は両手で口を塞ぐことによって何とか押しとどめた。
サファルがユキの斜め後ろに立つ男へと書類を渡す。

「下に戻しなさい。数字の根拠が乏しすぎるのでやり直しです」

「かしこまりました」

何事もなかったかのように男の気配が遠ざかる。
まるでユキが見えていないような扱いだ。そんなことはあり得ないだろうに。
一体何がどうなっている。ここではこれが日常なのか。
困惑してサファルをうかがえば、彼はすぐにユキの視線に気付き小首を傾げて返された。

「どうしました?」

おかしなことでもあるのかという口ぶりだが、サファルは絶対にユキの狼狽に気付いている。
こちらが慌てる様子を楽しんでいるのがありありと感じ取れ、ユキは悔しそうに唇を噛んだ。

「急用に出ていたおかげで少々仕事が溜まっておりまして、終わるまで待っていてください」

まるでそれが当然だという自然な言い方だったが、ユキには到底納得できる説明でない。
この男の仕事など知ったことではないし、この場にユキが居なければならない理由なんて、微塵もありはしない。

サファルは戸惑う獲物をいたぶって楽しんでいるにすぎない。ユキからしたらただの嫌がらせだ。
そう結論付けたところで、依然としてユキの子宮にはペニスがめり込んだまま。状況を打破することは到底叶わない。

「……っ、……ぅぅ……っ」

ユキにできることといえばじっと動かず刺激を最小限に抑え、ただ時間が過ぎるのを待つだけだった。
サファルが新たに机の書類を手に取り目を通す。時折紙にサインをし、魔力で刻印を施していた。主人に支持を求めて配下が部屋に踏み入った際には、その都度端的な会話が交わされた。

私語が許されない雰囲気の執務室では、絶えずぴんと張り詰めた空気が漂う。
配下たちもサファルも、膝の上で置物のように固まるユキを気にする素振りがない。

「……っ、んっ……」

しかし当のユキは声を抑えるのに必死だった。
膣と子宮を埋め尽くすペニスに、一時も休まらない。
ペンを走らせる音。魔族たちの話し声——。意識を外に向けて気を紛らわそうとはするも、その度に自分の置かれた状況とのギャップを思い知らされた。

ワンピースの広がった裾でかろうじて隠れているが、そこで何が行われているのかは側から見ても明らかだろう。
わたしひとり、何をやっているのか。
サファルのペニスに貫かれ、動こうにも動けない。一縷の望みをかけ膝に力を入れて身体を持ち上げようとしたが、それも無駄な足掻きに終わった。
微かな動きに快楽の源が反応し、さらなる刺激を求めてペニスを咥える膣が収縮を繰り返す。
ねだるようにうごめく膣壁に、ユキのなけなしのプライドが打ちのめされる。

腰を浮かそうにも子宮にはまった亀頭が楔となり、サファルの上から離れられない。いや、たとえ肉棒から逃れたとしても、逃げ場などどこにもない。

書類を取ろうとサファルが少し動くだけで、下腹部に刺激がもたらされ、はしたない声をあげてしまいそうになる。
注意しなければ、ユキ自身も腰を揺らしてしまいかねなかった。

「……んっ、…………うぅ……、……っ」

サファルがまるで愛玩動物を愛でるように、腰まで伸びたユキの髪を撫でた。

「教えなくても仕事の邪魔をしない、とても賢い子ですね」

耳元で囁かれる。協力する意図は全くないというのに、とんだ解釈があったものだ。
抗議の意思が込み上げて、サファルの胸元の服を掴んだ手に力が入る。

「まだかかりそうですが、このままいい子にしていられますか?」

絶望的な問いかけに、顔を上げて慌てて否定した。

「……むり。いやっ」

おや、とサファルはわざとらしく目を見張る。

「それはすみません。退屈させてしまいましたか」

「ちが……、んっ!」

ワンピースの裾にサファルが手を差し入れた。大きく開いた内腿にそっと指を這わせ、次第に触れる部位が脚の付け根へと上がっていく。
クリトリスを指ですくうように弄られ、腰がゆるゆると揺れた。

「んっ! うぅ——っ!」

声を我慢できない。
直接的な刺激に容赦なく快楽の高みへと押し上げられる。
背中をぎゅっと丸め、身体をこわばらせた程度ではどうにもならない。
びくんっ、びくんと身体が跳ね、そのたび膣の肉壁にサファルのペニスが押し付けられた。

「ふっ、んっ、んんぅーっ。んっ……!」

快楽に抗えず、ひっきりなしに溢れる声を殺そうと手の甲に噛み付いた。犬歯が皮膚を破る。
ユキが達する直前で、サファルは攻めるのを止めた。

「それは駄目だと、言ったはずですよ」

「はっ、……あっ……っ」

すっと笑みが消え、冷徹な視線を注がれる。背筋に悪寒が走った。

怒らせた? でも、どうして——?

サファルが気分を害した理由が、ユキにはわからない。
サファルの呆れのこもったため息に、熱を帯びた身が一気に冷める。

「身体に教えなければなりませんね」

「あぁっ、——んぅっー」

クリトリスをぴんと弾かれ、背中がしなった。
駄目だと言いながら、サファルは自分の手に歯を立てるユキを自由にさせた。
しばらくして快楽の波が鎮まり、ユキは手の甲から口を離した。妨げるものがなくなり、荒い呼吸を繰り返す。
ユキが落ち着き、息が整うのを待ってサファルは執務室の外へと顔を上げた。

「グラダロト」

サファルの呼びかけると、瞬時に音もなく部屋にひとつの気配が現れた。

「お呼びでしょうか」

背後に聞こえた感情のこもらない低い声に、ユキは身を硬直させた。
側から見れば身体は停止していたが、膣壁はきゅう……っと意思に反してペニスを締め付ける。
羞恥と困惑で涙目になるユキの頭を、サファルが撫でて慰めた。
優しい手つきはそのままに、支配者の男は配下に命じる。

「自傷癖があるようなので、傷つけないよう手を掴んでいてあげてください」

「承知しました」

背後より伸びてきた手が、ユキの手首を握った。

「なっ……」

驚いて振り向く。
表情のない魔族はユキの手を背中でひとつにまとめた。
この魔族には見覚えがある。西方大陸、シープぺコラの教会で、サファルと一緒にいた男だ。
思い出せたところで、この状況にその記憶は微塵も役に立たない。

クラダロトは後ろ手にユキを拘束し、主人の命令を待った。
ユキは自由になろうともがくが、人間の腕力ではどうすることも叶わない。

「お仕置きです。そのままイキなさい」

「——んあっ」

スカートの下で、サファルがクリトリスを指で摘んだ。
びくんと腰が揺れて、膣から子宮の壁に至るまで、あらゆる場所に熱をともなう強い衝撃を受ける。

「やだっ、あぁ、あっん、んんっ! は、なしっ、んあっ……っぁ、ああっ!」

手首の拘束は外れない。サファルの攻めも止まらない。
クリトリスの刺激に連動し、ペニスを咥える蜜口がぎゅうぎゅうと開閉を繰り返す。
甘い快楽が苦痛に変わるのは早かった。
気持ち良過ぎて、苦しい。

「いやっ、やっ、いやぁあっ」

口を塞ごうにも自らの手が使えず、あられもない声を発してしまう。
部屋に響く自身の喘ぎに耳を塞ぎたくても叶わない。
敏感な部分を押さえつけるようにぐにぐにと捏ねられたかと思えば、根本を摘まれる。くりくりとしごかれ、つんと突き出た先っぽを指の腹で転がされた。

「あっ、あぁあんっ……っ、ああ——!」

ぎゅうーっと全身に力が入った直後、ユキは一気に脱力した。

「上手に絶頂できましたね」

余韻に打ち震えるユキの耳元でサファルが囁く。
サファルはクリトリスを虐めた指で、己のペニスを咥える入り口をなぞった。ぎちぎちに広がったそこを意識させられ、ナカに快感が滲む。

グラダロトは依然としてユキの手首を掴んだままだ。
人前で淫らな声をあげて達してしまった。羞恥で顔が、耳の先まで熱くなる。
周囲が淡々と職務をこなす中でひとり享楽に喘ぐ自分が信じられなくて、ユキは顔があげられなかった。

「あっ、……ぁっ、……っんぅ……」

快楽の余韻が消えない。声を抑えようとして口を閉じると、息苦しさから全身に力が入り、結果膣を締め付けペニスの存在を感じてしてしまう。

悪循環から抜け出せず、それでもどうにか息を整えるユキはあることに気付く。
先ほどまで耳に入っていた、事務的な会話が聞こえない。
背後の異様な静けさに、顔から血の気が下がった。

……まさか、大勢に声を聞かれていた?

「……ふっ、……はっ、あっ……っ」

ユキの顔にかかった髪を耳にかけ、サファルはうろたえて涙目になったユキを覗いた。恐る恐る見上げると、紅い瞳と視線が交錯する。

「自ら傷を作ればどうなるか、わかりましたか?」

言い聞かすようにゆっくりと告げられる。

「これからは自傷の度に、眷属たちにはしたない声を聞かせることにしましょう」

「んやぁっ」

サファルがクリトリスを指で押し、軽く引っ掻いた。
服の生地を挟んで施される責め苦は予測ができず、ユキは怯えて首を横に振った。








【第3話 世話役たちの務め】より抜粋


パチンと後頭部で留め具が固定され、視界が黒に包まれた。

「視覚による情報は、今は必要ないからね。僕たちよりも、自分の身体の感覚に集中して」

「ひっ」

内腿をソフトタッチでさすられ、ぞくぞくとした感覚が全身を駆け巡る。
身を起こそうにも肩をベッドに押さえつけられ、ずり上ろうとして足が宙を蹴った。

リリィが掴んでいたユキの手首を放す。自由にされても、周囲を彼らに囲まれている事実は変わらず、見えないとわかっていてもきょろきょろと周囲に顔を向けてしまう。
己の非力に苛立ちこぶしをきつく握り締める。しかし短くなった爪は手のひらに食い込むことはなかった。

「だーから、自分で傷つけようとすんなって。言われてんだろ?」

ユキの自傷に目敏く気づいたサウスとリリィに片手ずつ、指を絡められる。
身体の両サイドに手を縫い止められた。右手はサウスのごつごつとした大きな手に。左手と組んだのは滑らかで節くれ立っていない、リリィの手だ。
触覚によりもたらされる情報で、誰がどの位置にいるのかわかってしまう。

「——唇も、噛むならこっちにしとけ」

半開きだったユキの口にサウスの指が入ってきた。

「はっ、……ひゃ……、へっ……ぅ」

追い出そうとするユキの舌の表面にサウスは指を滑らせ、さらにもう一本増やしてくる。
口内を弄ぶ指に翻弄されていると、愛液でぬかるんだ膣に異物が侵入してきた。

「ひゃっ、やぁ——っ」

「こっちも、素直に快感を受け入れられるようになろうね」

脚元からノースの声がする。見えないけど、秘所をいじっているのは位置的に彼だ。
把握できたところで、どうにもできない。
蜜口を少し入ったところの腹側を指でとんとんとノックし、ぐぅーっと強めに押し上げられる。少しずつ位置を変えては、同じ作業が繰り返された。
まるでそこに眠る快楽を呼び覚ますように……。

「あっ、ふぅ……、ふっんぅ、んぁ、……ぁっ、うんぅ……、あぁっ」

「君が一番敏感な陰核は、外に顔を出しているところだけじゃなくて、実は大部分が身体の中に埋まってるんだよ。大体は膣に沿うように存在しているから……、ほら、こうやってナカから押してあげると……」

「あっ、んんっ、……んっ、くぅ……んっ、んぅ……。やあぁーっ!」

油断していたらクリトリスをきゅっと摘まれた。

「このクリトリスと同じ部位を、膣内の指も刺激してる。剥き出しじゃない分感覚は鈍るけど、もとをたどれば快感は同じだよ。——さあ、しっかり感じてごらん」

「やぁっ! ふっ、……うあっ、あっ……あぁ……。…………っ、ん、ぐ……っ」

ふぅ……、と。左の耳に吐息が吹きかけられた。

「ふふっ。ノースの指は、今どんな風に動いているのかしら? どこに触れた時が一番感じるの? わたしにも教えてちょうだい」

「ひゃぁ……、や……っ」

「ここでしょ?」

「んんぅ————っ!」

ノースがとある位置を重点的に責める。
はぐらかされていた刺激が一点に集中し、膣壁が勝手にうねりだす。
明らかにユキの反応が変わった。

「しょこっ……、やめっ、やっ、やぁ! あっ、やりゃっ、あぁっ、あ——っ」

「嫌がってもやめないよ。しっかり達して、ここが気持ちいい場所だってことをちゃあんと覚えないとね」

「んぁっ、やっあぁっ!」

リリィの滑らかな手が下腹部をぐ、ぐぅと押してくる。

「いいのよ? 我慢せずにイってごらんなさい。わたしたちが見ていてあげる」

「んっ、あっあっあぁっ! はっ、あぅんっ……、きっ、いやっ——、ああ————っ!」

膣壁の責めにクリトリスの刺激が加えられ、ユキは呆気なく絶頂を迎えた。

「……そう、上手よ」

「——っ、ぅん——っ」

達して感度が増したところに耳元で囁かれ、むず痒さに身を捩る。
リリィを押し退けようにも両手はシーツに縫い止められたままびくともしない。

ノースはユキが達しても膣に入れた指は抜かず、さらに奥へと進めた。
きゅうきゅうと膣壁が喜んで指を食む様をまざまざと感じて、そわそわと落ち着かない。ユキの息が整うのを待って、挿入された指は動き出した。

「んっ、……ふぁ、あ……」

膣の奥壁をこりこりと弄られ、甘い疼きが下腹部にもたらされる。

「まだ奥はそこまで敏感じゃないみたいだね」

「……はっ、あっ、……あぁ……っ」

「まあ素質は十分だから、根気強く頑張ろうか。リリィ、囁くのをやめて。今はここだけに集中させてあげて」

「はぁい」

リリィが身を起こし、下腹部から手を離した。
膣奥で指が動く。痛みはなく、触れられている感覚と僅かな圧迫感があるだけだ。それなのに、膣道がうねり奥の子宮がきゅんと疼いた。
神経の鈍い部位から、ユキの肉体は快楽を拾い上げようとしている。

「はっ……、あぁ、や、にゃっ……っ、ん、んんっ」

「中の、ノースの指を意識してみろ。どこに触れられているかわかるか?」

「ひらなっ、うぅ——っ!」

否定を口にする前に舌を押さえつけられた。

「はっ、嘘つけ」

サウスが鼻で笑う。
その間もこりこり、こりこり——……。膣奥の刺激する指は止まらない。じわじわと。腹の奥から波が立つ気配がした。

「はっ、あ、んん……、んぅっ、ぅ——っ!」

次第に波は大きくなり、ユキを快楽の海へと引き摺り込もうとする。

「……っ、ふんぅっ、あうっ、あっ、……ああっ! や、ひやっ、あ、ああっ! やぁ……っ」

真っ暗なはずの視界が明滅する。がくがくと腰が揺れた。
湧き上がる強烈な快楽に怯えてどうにか膣奥に触れる指を別の場所へと外そうとするが、いくら動いてもノースはその一点を責め続ける。

「んあぁっ、あっ、あぁ……っ! やっ、やぁ、あ、あっっ!」

快楽の波に呑まれ、ユキが絶頂に上り詰める寸前でノースが指を止めた。

「————っ、んぁっ……、あっ……」

締め付けて追い縋る膣道をものともせず、指はあっさりと引き抜かれた。
はぁ、はぁと、荒い呼吸を繰り返し、ユキはもどかしさに耐える。
膣奥が刺激を欲して疼き、入口がぱくぱくと刺激を求めてうねった。

「ふっ……、ん、あ…………、はぁ……、んぅ」

リリィが乳輪をくるくると指がなぞり、気まぐれに乳首を引っ掻く。
緩やかな刺激は下腹部に熱となって溜まり、さらに焦れた感覚をもたらした。

「んっ……っ。……ぅ」

快楽の波が引き切る前に、ノースがユキのクリトリスに触れた。押すわけでも、捏ねるわけでもなく。ただ触れているだけの指に嫌でも意識が向いてしまう。

「唇を噛むのと、爪を立てるのと二つ」

言われたのが自分の自傷癖についてだと、ユキはすぐに理解した。

「イキ続けるのと焦らされるのと、お仕置きはどっちがいいのかな」

「——っ、やぁっ!」

クリトリスに鋭い衝撃が走った。指で弾かれる映像が脳裏に浮かんだ。

「そうだね、どっちも試そうか。ついでに奥も、もっと感じられるようになろうね」







ーーーーーーーーーーーーー

全編はDL siteにて販売してしています。
気になった方はご購入いただけますと幸いです。

月別アーカイブ

限定特典から探す

記事を検索