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市街地 2024/04/08 08:13

【小説サンプル】境界の向こう側で私を犯したはぐれ魔族が、私のマスターになるまで

※DL siteで販売中の作品のサンプルです。

あらすじ

仕事で渡った人間界で、記憶を失った「はぐれ魔族」に犯された。
私を泥棒と勘違いした男は情け容赦なくこの身を蹂躙する。さらには彼の魔力のみなもとである、核のカケラを子宮内に入れられてしまった。

快楽に悶えながらもどうにか核の本体を彼の器に戻すことに成功して、魔界へ戻ることができた。それからしばらく何事もなかったかのように職務に明け暮れる毎日を送っていたけれど、ある日、魔王様からお呼びがかかる。
向かった王城の執務室で、私は彼と再会した。

私が人間界で遭遇したはぐれ魔族は、大昔に天界との戦争で死んだとされる大魔族だった。

未だ子宮に残る核のカケラが、本来の持ち主の魔力に呼応する。
耐え難い疼きに襲われて発情した身体を彼に抱かれ、強すぎる快感に逆らえず眷属へと堕とされる。

全体を通したプレイ内容

無理矢理・指責め・ポルチオ責め・異物挿入・連続絶頂・快楽堕ちetc.

※ ヒロインに名前のないネームレス小説です。
※文体はヒロイン視点の一人称です。

『境界の向こう側でマスターに愛され、囚われる』と同じ世界設定ですが、作品は単体でお楽しみいただけます。

※時間軸は、
前:『境界の向こう側で遭遇したはぐれ魔族が、私のマスターになるまで』

後:『境界の向こう側でマスターに愛され、囚われる』
となっています。



『境界の向こう側で私を犯したはぐれ魔族が、私のマスターになるまで』


「お戻りの時間はいつもと同じですか?」

「そのつもりです。もしも朝になっても戻らなければ、あちら側に連絡してください」

「かしこまりました。どうかお気をつけて」

カロンカンパニーの船員に見送られ、私は人間界に足を踏み入れた。

「あぁー……、きつ……」

相変わらずこちらの世界は空気が薄くて息苦しい。

人間界には魔族の生命維持に必要な魔素がない。この空気に慣れていない魔族だったら一時間も生きられないだろう。

かくいう私もこっちで活動できる時間はそう長くなかった。経験を積んで人間界の空気に身体を慣らしてきたとはいえ、半日もとどまってはいられない。

トラブルにみまわれて足止めをくらえば、目的が達成できないどころか命が危うい。しかも人間界は退魔師や巡回中の天使など、敵との遭遇率が思いのほか高かった。

そんな危険な世界に単身潜り込んだのは、ひとえに仕事のためである。

魔王様直属の軍において、私は人間界に関わる任務を遂行する部隊に所属していた。





船着場から駅まで歩き、人間の乗り物を使って目的地を目指す。終電間近の電車内には、私のほかにもスーツ姿の女性が何人かいた。座席にぐったりと疲れきった表情で腰掛けている彼女たちに、人間社会の世知辛さを垣間見る。

私も、帰りのフェリーではあんな感じになっていることだろう。

終点のひとつ手前の駅で電車を降りた。改札を出たら住宅街に背を向けて真っ暗な遊歩道を進む。向かっているのは郊外にある博物館だ。





あそこに魔界由来の「何か」があるのは明らかだった。

敷地内に植えられた無数の木々に隠れるようにしてぽつんと建つ、一軒の建物。近づくにつれてそこからあふれ出る魔力の影響を受け私の身体は軽くなり、呼吸が少しだけ楽になった。

この魔力の発生源こそが、上から回収を命じられた目標物だ。

博物館の入り口扉をすり抜け、地下へと続く長い階段を下りる。収蔵室のドアも難なく突破した。

本来人間界で壁などの物質をとおり抜けるにはかなりの集中が必要なのだけど、充満する魔力のおかげで楽に入り込めた。

収蔵室は奥行きがあり、天井まで積み上げられた引き出し式の棚が列になってズラリと並んでいた。照明は入り口のドア上に非常灯が付いているだけで、奥は真っ暗だ。空調の唸るような低音がやけに目立っていた。

古い物が集められた場所に、曰くつきのモノが紛れ込むのはよくあることだ。

しかもこんなに強い魔力を発しているのだから、追加で変なものを惹き寄せているかもしれない。

何が起こるかわからない、未知への期待にドキドキしながら一歩一歩、魔力の発生源に近づく。

天井に届く無機質な棚がズラリと並んでいるのは、なかなかに威圧感がある。ありがたいことに目標物はハシゴを使わなくていい高さの引き出しに収納されていた。

それはこぶしほどの大きさをした、鉱石だった。水晶の原石のように根本からいくつもの角張った柱が突き出ている。視覚に頼らなくても、黒い部分と透明な部分がまだらに混ざり合っているのが、脳に直接届く情報で理解できた。

鉱石を両手で掬うように持ち上げると、強力な魔力の鼓動を手のひらに感じた。まるで心臓がドクンドクンと脈打っているようだ。

「すご……」

鉱石の正体は、魔族の魔力のみなもととなる核だった。しかも、魔力の純度の高さからして、大魔族のものだ。

よくこれほどの力を宿す物質が人間に利用されずに残っていたものだ。

今までに回収した遺物は、原石の状態ではなく、退魔によってアイテムに加工された品がほとんどだった。

「あなたはずっと、見つからないように眠っていたの? だとしたら、あなたの魂は今もどこかで生きている……?」

鉱石に問いかけたところで当然ながら返事はない。

もしもこの核の持ち主が生存しているなら器に返してやりたいが、探すとなるとまた別の準備が必要になる。

ひとまず目的の物は手に入れたから、今夜は魔界へ帰ろう。持ち主を捜索するかは、上司や魔王様が決められることだ。ひとりで勝手に動いてはいけない。

呼吸するたびに肺に入り込む魔力の濃さに魔力酔いを起こしながらも来た道を戻ろうとした。

そのとき——。

「それをどこに持っていくつもりだ?」

背を向けた収蔵室の奥から人の声が聞こえた。

「————っ」

反射的に攻撃に移ろうとした自分を、我に返って寸前で抑えた。

違う。無暗に殺してはいけない。魔界の魔力が満ちた場所で気配を察知できなかったことからも、潜んでいるのは天使や退魔師ではなく、同族の可能性が高い。

「誰なの? 名乗っていただけないかしら」

返事はなかった。

注意深く細い通路の先を凝視しつつ、出口へと後ずさる。

相変わらず何者かの気配は探れなかった。

刺激しないように、足音を立てずにゆっくりと。まるでこちらに目を光らせる猛獣を相手しているみたいだ。

回収した核を胸元で強く握る。これがなかったら、不審な行動をする同族を無力化すべく全力になれたのに。

私は魔王様の忠実なしもべ。人間界で裏切り者に遭遇しても、任務を最優先して動かなきゃいけない。そう自分に言い聞かせて、衝動を抑えた。

棚に挟まれた通路の終わりに辿り着いた。身を翻して走り出そうとした私の正面に、あるはずのない壁が現れる。

「……っ!?」

ドクンッ。

壁にぶつかったのと同時に、手に握る魔族の核が呼応した。室内に満ちる魔力が濃さを増して、軽いめまいに襲われる。

——この感覚は、まさか……。

よろけた足を踏み締めて顔を上げる。出口を照らす非常灯の光が逆光となり、ぶつかった壁の輪郭がぼんやりと見えた。

そこにいたのは、白衣を着たボサボサ頭の大男だった。男の鋭い視線が私の胸元で握る手に向けられる。

「コソ泥か。こんな寂れた施設ご苦労なことだな」

若干の嘲笑が混ざった低い声に慌てて否定する。

「ち、違うっ! これは」

「言い訳はいらねえ。泥棒に説教したところで意味がないだろからな」

この感覚、間違いない。

完全に私の失態だ。潜んでいる相手を警戒しすぎて、敵だと思い込んでしまっていた。

彼は魔族の核を横取りするためじゃなくて、取り戻すために現れたのだ。

それにしても、この鉢合わせはタイミングが悪い。

「ごめんなさい! まさか行き当たるとは思ってなくて……。これはあなたに返すから」

観念して核を差し出す。今後のためにも大魔族の不興は買いたくない。

「ずいぶんと変わり身が早い奴だな」

彼はつまらなそうに私から核を受け取る——が、あろうことかポイっと床へ投げ捨ててしまった。

「ちょっと!」

さすがに焦る。自分の物だからって、ぞんざいに扱いすぎだ。

「あんなもんどうでもいい」

「よくないわ。あれはあなたの」

「それに盗品を素直に返したからといって、お前が不法侵入した事実は変わらないだろ」

「話しを聞いて!」

懇願はあっさり無視された。

逞しい腕が腰にまわって抱き寄せられる。

「……なんでだろうな。お前見てると、胸がざわついて落ち着かねえ」

男が耳元で囁く。それだけで意識にかすみがかかり、ふにゃりと脚から力が抜けた。

「なんだ、お前もその気になったか」

「ちが……離して……」

異常の原因は魔力酔いだ。記憶を失って魔力の制御を忘れてしまった大魔族はタチが悪いって聞いていたけど、まさかこんなに酷いとは。

彼がジャケットの裾から手を入れて、背中をまさぐるように撫でてくる。シャツの生地越しに感じる男の体温と魔力のせいで、身体がじんわりと熱を帯びた。

「やめて……ゃっ、あなたは……んぅっ」

必死で訴えかける私の口を、彼が塞ぐ。分厚い舌が唇を強引にこじ開けてきた。

口内に男の舌が侵入する。これがただの人間だったら噛み切ってやったのに、彼の正体を知ってしまったからには、そうもいかない。

顔を背けて逃げようとしたら、先回りされて後頭部を掴まれた。ならばと口内を好き勝手に動く舌を自らの舌で押し出そうとするのだけど、うまくいかない。

「……ぅ……っ、……ん……ぅぅっ」

ブランデーのような濃厚な魔力にあてられて、身体がバランスを崩してかたむく。

「おっと」

倒れそうになったところを彼に支えられる。

「キスしただけで腰砕けとか、お前相当の淫乱だろう」

「……ちが……ぅ」

「まあいい。お前に事情あるってなら、いくらでも弁明すればいいさ。こっちも好きにさせてもらうが、耳だけはかたむけといてやるよ」

そう言って、男は私を床に組み敷いた。




※省略




ぐるぐる、ぐるぐる。快楽に抗いながらどうにか組み立てた思考は、胎内を穿つ衝撃によっていとも簡単に砕け散った。

「……っ、や……んっ、くぅ……あぁっ!」

熱い肉棒が膣内を隙間なく埋め尽くしながら際奥に到達して、子宮口を抉る。ナカを強引にこじ開けられているというのに、痛みはほとんど感じなかった。

「はっ……こんだけ手酷くされてもよがっていられるとか、とんだマゾメスだな」

「ち……ちが、ぅ……んぁ、あっ……。もぅっ、……抜い、て……、おねが……っ」

「何言ってんだ。まだ挿れただけじゃねえか」

私の腰を両手で掴んだ男が腰を引いた。上向きにそり返った肉竿にねっとりと膣壁を擦られる。背中に甘い痺れが走ってじっとしていられない。

「どうした? 物欲しそうに自分から腰浮かせて、抜いてほしいんじゃなかったのか?」

言いながら、男は面白そうにカリの出っ張りが膣口に引っかかる感触を楽しんでいた。浅い位置で抜き挿しを繰り返し、時々亀頭が入り口を大きく広げる。

床まで腰を下げれば、凶悪なペニスから解放される。そうしなければいけないのに、膣は肉棒を逃すまいいと必死にうねり、締め付けを強めた。

「……や……ちが、これは……っ」

「お前は『違う』ばかりだな」

——ゴチュンっ。

奥まで一気に突き上げられて重い快感がはじけた。

腰がビクンと激しく打ち震え、膣道がぎゅうぅっと肉棒にしゃぶりつき、思考が快楽一色に染まる。

こんなことをしている場合じゃない。時間だって限られている。

何より今は仕事中だ。職務を忘れて快楽にふけるなど、あってはならない。

駄目だとわかっていながら身体は言うことをきかず、気持ちばかりが焦る。

そんな私を嘲笑うように、彼は容赦なくペニスを膣奥に打ちつけた。

あれだけ目立っていた空調の音は、私の嬌声と、男の荒い息遣い、そして卑猥な水音にかき消され、今では聞き取ることも難しい。

硬い床の上でスーツのボトムスとショーツを乱暴に脱がされたものの、上半身の服は袖を通したままの状態だった。

ただし、ボタンがとんではだけたブラウスも、フロントホックが外れてズレたブラも本来の役目を果たすことはなく、彼の律動に合わせて押さえつける物を失った胸がタプタプと揺れた。

ぷっくりと勃起した乳首が、私の興奮を彼にありありと伝えている。それが恥ずかしくて、咄嗟に前が開いたブラウスを胸の中心で握り肌を隠した。

——が、すぐに男がそれに気づき、私に覆い被さった。

「ん、ぐ……うぅっ」

膣の奥深くでペニスの先端がポルチオをぐぐぅと強く押して、そこでとまった。

腰を秘部に密着させたまま、男は私の両腕をひとまとめにして、床に抑えつける。あえてブラウスの上から、薄い生地を突き上げる乳首をカリカリと爪で引っ掻いた。

「ぁっ……ぅ、んぁ……、ゃ……、ぅっ、んんっ……はぁ……」

ゆるい刺激に腰がヒクヒクと震えてしまう。

膣道のうねりに彼は気をよくして、ブラウスを割り開いた手で直に胸を鷲掴む。

角張った長い指の加減に合わせて、柔らかい乳房が形を変えた。胸全体をまさぐっていた手は、やがて乳首を重点的に愛撫しはじめる。

親指の腹で優しく頂上をクニクニされ、私がその動きに慣れてきたら粒をきつく摘まれた。

「きゃぅ、んっ……あっ」

チリリとした痛みに身を固くしたのは一瞬のこと。ジンジンと痺れる乳首を親指で撫でるようにして慰められ、痛覚はすぐに甘い快感へと変わった。

「痛みにも感じてるのか。俺のをギチギチに締め付けて、酷くされるのがそんなにイイのか?」

違う——と。言いかけた否定の言葉を封じるように、奥をゴチュゴチュと穿たれる。途端に頭が真っ白になって、口からは言葉にならな喘ぎがひっきりなしにあふれた。

セックスで身も世もなく乱れて、自分がわからなくなる。こんな経験初めてだ。

彼の魔力に酔っているのもあるが、原因はそれだけじゃない。

最悪なことに、この男と私は、身体の相性が最高なのだ。

彼のペニスは、気持ち良すぎる。

「やっ、あっ、あぁっ……だ、だめ……っ、イッ……、や……ああぁっ!」

膣内がビクビクと痙攣して身体が甘イキを繰り返す。その間も彼は腰を止めないから、積み上がる快感は際限を知らず、腹の奥には熱が溜まる一方だ。

膣奥ばかりを責めていたペニスが徐々に律動を激しくする。イキっぱなしの私に、彼は容赦のない快感を送った。

自由を奪われ身悶えることもままならない。そんななかではっと、彼の熱い吐息が首筋にかかった。涙で滲んだ視界に、自身を○す男の笑みを見た。

彼はこの行為を楽しんでいる。サディスティックな一面は人間としての性格か、それとも魂に刻まれた、彼の本性なのか。

「やっべ……、すんげぇ……気持ち良い……、お前、……なんつー身体してやがんだ」

思わずといったふうに囁かれた低い声に、肉体だけでなく精神までもが犯される。圧倒的強者の支配に密かな悦びを得ていた私は、彼がこの身に満足している事実に嬉しさを感じているのだ。

——こんな感情、本来あってはいけない。

「ひぃんっ、あっ、やだ……っ、やだぁあっ」

愉悦を消し去るために必死でもがく。

流されちゃいけない。私は、職務に忠実な、魔王様の猟犬なんだから……っ。

ゴチュッ、ゴチュッ、ズヌヌゥ……ズチュン——っ!

あがく私を嘲笑い、暴力的な快感が、使命感をすり潰す。

ダメだダメだと自分に言い聞かせているうちに、何が駄目なのかがわからなくなっていく。

「やぁあっ、あっ……もぅ……ゆ、ゆるじ、……でぇ……、ああっ」

プライドを捨てた懇願に、膣内に埋まる肉棒が太さを増した。ギチギチに締まる肉路を、愛液と先走りのぬめりを借りて勢いよく押し入ったペニスが、最奥でドクリと脈打つ。刹那、お腹の中が灼熱で埋め尽くされた。

「ぅあっ、あっ、あっ、…………っ!」

これ以上ないほど子宮口へ密着したペニスの先端から精液が放たれた。

ビュクビュクと注がれる熱に、子宮が歓喜する。あまりの快感に逃げを打つ腰を抑え込まれ、射精中のペニスでグニグニと奥をこねられた。そんなことされたらいつまでも絶頂から降りられない。

イキっぱなしで呼吸もままならない私をたっぷりと楽しんで、ようやく彼は膣からペニスを引き抜いた。

肉杭が外れた膣口から精液があふれて秘部をつたう。重力に従い肌を滑り落ちるねっとりとした感覚に、ふるりと背中が震えた。

そうして身じろいだことで、背後に当たる床の硬さを思い出す。快感以外の感覚に意識が向くと、肉悦に奪われていた使命感がよみがえった。

いつまでも絶頂の余韻に浸ってはいられない。

自由になった身体を起こし、彼に背を向けて立ち上がろうとしたところ、寸前で足首を掴まれた。体勢が崩れ、両手が床につく。

「逃げんなよ」

「うぁ、……くっ」

諦めきれず、うつ伏せになって床に転がる彼の核へと手を伸ばした。アレを彼に戻せたら、魔族としての記憶を思い出させることができるのだ。

もう少しで指が鉱石に触れる。それを見計らったかのように足首を引っ張られた。床に爪を立てるも無駄な抵抗でしかなく、指先が魔族の核から遠ざかる。

「犯して中出し決めた俺は眼中にナシか。あんな石ころの何がいいってんだか」

口調から呆れ混じりの憤りを感じ、ぞくりと悪寒が走る。

「放して! ……もう、いいでしょ!」

床にへばりつく私のナカに、彼が指を挿れてきた。無遠慮に奥まで侵入した指に、先ほどさんざんペニスに責められたポルチオをいじられる。

「ひっ、だめっ! ゆび、ぃっ……あっ、やだぁっ」

快楽の熱が冷めきっていない肉体に新たな快感を加えられてはひとたまりもない。

彼は自ら放出した精液を子宮口へと執拗に塗り込み、ポルチオの刺激によがる私を見下ろし笑う。

「よがっていていいのか? 目的のブツはすぐそこだぞ」

「あぁ、やっ、おく……こねるのっ、だめだかりゃぁあっ!」

「……って、聞いてねえのな。隙なくスーツ着込んで、最初は真面目一辺倒みたいなお堅い顔をしてたくせに、中身はマゾの淫乱とか、人の性癖煽るのもいい加減にしろよ」

「しりゃ、しりゃな……っ、やっ、イ……イク、イッちゃうからっ、あっ……ああぁっ、——っ!」

ポルチオを指でいじられて、あっけなく快感の大波に呑み込まれた。

「ぅあ……あ、おぅ……っ」

絶頂のさなか、長い指の先がにゅうっと子宮口をこじ開ける。少し入れては媚肉を押しながら後退して、角度を変えて、また……。子袋へ繋がる狭い場所を、揉みほぐされている。

「……っ、……あ……うっ、や、あっ……ぁっ」

激しい動きではない。だけどじぃんと重く深い快感に絶えずみまわれ、身体は一秒たりとも休まらない。

腹の奥底から湧き上がる極上の愉悦に身がしなり、下腹部の痙攣が止まらなかった。

こんな状態で核へと手を伸ばすのは、とてもじゃないけど無理だった。

「……ぅっ、ぁあ……、…………っ!」

身体がぎゅうっと力んだ直後に大きく跳ねた。しかし何度ポルチオで深イキしようが、彼の指責めは終わらなかった。

ヌゥ……。

「ふぅんっ、んっ、んぁあっ……っ」

子宮に入れられた指が、入り口近くの肉壁をすりすりと撫でながら抜け出ていく。

「ひっ、いいっ、ぐぅ……、おっ、ぅ、あ……ああっ!」

今度は狭い入り口に指を含ませ、小刻みに指先を揺らされる。

「……っ、だめ、あっ……ぁ……も、それ……っ。だめだからぁ……っ、やっ、あぁ……っ」

どれだけ腰を左右にひねって逃げたところで、彼の指は子宮口から離れてくれない。床にうつ伏せになって、彼の気が済むまで、ポルチオの刺激を受け入れるしかなかった。

「こんなもんか」

「……、ぁ……ふぅ……っ、は……ぁ」

快楽に溺れて喘ぎ声もあげられなくなったころあいで、ようやく彼はナカから指を引き抜いた。しかし執拗にこねまわされて熟れたポルチオはジンジンと熱を発し、おかしな感覚が尾を引いて残った。

立ち上がった彼が大股で横を通り過ぎる。

「あっ……」

私の目と鼻の先でかがみ、足元に転がる核を手にする。彼はそれを私に見せつけるように掲げた。

「そんなにコレが欲しいのか?」

両手を床について上半身を起こした私はゆっくりと首を横に振る。

欲しいのではなく、それを、あなたの器に返したいの。

今の彼は魔族だったころの記憶が失われていて、自分のことを人間だと認識している。そんな状態の人に、魔界のことを話しても信じてもらえないだろう。

どうしよう。ここはいったん退却して、魔王様の指示を仰ぐのが正解か。

——こんな強烈な魔力を放つ核と、脆い人間の肉体でいる彼を置いて魔界へ帰っていいの? 天使や退魔師に見つかったら、今の彼じゃ太刀打ちできないというのに。

立ち去るならせめて、核を彼の器に戻してからにするべきだ。……私だったら、それができる。

相手が大魔族だからといって、格上の魔力に萎縮している暇はない。多少強引な手段を取ってでも、彼の動きを封じよう。

深い呼吸を繰り返して息を整えながら、まっすぐに彼を見上げた。

視線を受け止めた男はニヤリと口端を持ち上げる。

「否と意思表示しておきながらそれはなしだろ。まだ諦めてねえって、顔に書いてあるぞ」

「……そうね」

「ああ、その目、たまんねぇな。視線でこんなにゾクゾクするのは初めてだ」

うっとりと呟かれた言葉に眉を寄せる。

気分を害したのが伝わったのだろう。「褒めてんだから怒んなよ」と彼はフォローにもならない物言いで私を宥めた。

「あなたに褒められても嬉しくないわ」

「わかった、悪かったって。詫びといっちゃなんだが、コレはお前にやるから、機嫌なおせよ」

しゃがんだ彼が私へと核を差し出す。

魔族にとって、核は力のみなもとだ。こうもあっさり他人に渡すなんて、本能的にもするはずがない。

甘い言葉は偽りだ。

警戒心をむき出しにする私に、男は満足そうに笑みを浮かべた。

「——やっぱお前、最高だよ。本気で欲しくなる」

「こっちは願い下げよ」

「そう言うなって。俺は自分で言ったことは守る男だぞ。お前にこの石をやるっつったのは本当だ。……ま、全部ってわけじゃないけどな」

意味深な呟きに眉を寄せる。

真意を探り当てるより先に、目の前の男が信じられない行動に出た。

彼は手にした核の、いくつも突き出た多角形の柱のひとつを指でつまみ、まるで木の実をもぐように、先端を折ってしまったのだ。

——パキッ。

歯切れのいい音が室内に響く。

開いた口が塞がらなかった。

「な……は、え……? ……嘘でしょ」

ありえない……ことはないか。

あの核の主人は彼だから。持ち主が望めば鉱石は形を変えるし、分離だってするだろう。でも、それを人間の器でやってのけるって、いったい何がどうなっているの。

「ほれ、こっちはお前にやるよ」

核の本体を壁際の机に置いた彼が、カケラを指で摘んで見せつけながら近づいてくる。

彼の意図が謎すぎて呆然としてしまい、反応が遅れた。

正面で立て膝になった男に身体を起こされる。彼と同じく床に膝をついた状態で向かい合い、抱きしめるようにして身動きを封じられた。

密着したことで相手の体温が伝わってきて、どきりと心臓が鼓動を強めた。突き放したいのに、身体が思うように動かない。

「大事なもんは、誰にも盗られないようにしまっておかなきゃいけねえよな」

「んっ……」

耳に直接注ぎ込むように囁かれ、肩がビクンと跳ねる。

鼓膜を揺らす低音ボイスに腰が砕けそうになったが、腰にまわった逞しい腕に抱き込まれていては床に崩れることもできない。

核の破片を持つ彼の右手が、下方へと移動する。太腿の内側押し当てられた鉱石が、肌の上をすべりながら秘部へと近づく。

「んっ……ぁ、あつ……ぃ」

冷たさを感じたのは最初だけで、膣口からこぼれつたう精液に核が触れると、その場所がカッと熱くなった。

男の手が、脚の付け根に到達する。熟れた陰唇をゆったりといやらしくなぞり、やがて硬いモノが膣口へとあてがわれた。

膣内にかすかな異物感をおぼえた次の瞬間、下腹部に痺れをともなう強烈な快感が襲った。

「——っ、や、やめて……あっ、や……そんなっ」

嘘だ……。——まさか。

男の凶行に理解が追いつかない。

混乱しているうちに、胎内へ魔族の核を押し込められる。

つい先ほどまで極太ペニスで犯されていたソコは、小さな核の破片をすんなり膣奥へと通してしまった。

「はっ、ぅあっ、あ……ぁ……だ、め……おく、いれちゃ……ぁっ、あぁっ」

魔力酔いってレベルじゃない。圧倒的強者の濃厚な魔力に身体の内側を侵食されて、思考がドロドロに溶けていく。

せっかく思い出した使命感はあっけなく崩れ、力が入らなくなった身体を彼の胸に預けた。

ナカに残る精液が核に反応して熱を持つ。ドロドロにぬかるむ卑猥な肉路は快感を求めて核の破片と、彼の指にしゃぶりつく。

「あぅっ、あ……きもち……ぃ……んぁっ」

「おいおい、やってる俺も俺だが、異物挿れられて興奮するとか、とんだヘンタイじゃねえか」

「ち……が、そうじゃ、な……っ、あにゃ……りゃ、ぁっ、まりょく、がぁ……あっ、……んあぁっ!」

膣道の最奥に核が到達した。

ペニスでガン突きされ、さらには指で徹底的にほぐされたそこは、硬い異物からも敏感に快楽を拾った。刺激に歓喜して分泌された愛液が、精液と混ざって膣口から流れ落ち、彼の手を濡らす。

「ぃ、ひぁ……あ……、あぁ……っ、あっ……やらぁ……」

快楽に喘ぐしかできなくなった私を無視して、膣奥の攻略は続けられた。

「いい子だ。そうやって力抜いて、俺に全部を捧げてろ。どうなっても、責任は取ってやっから」

「はっ……はひ、ぃっ……うぅ……」

硬い石が、少しずつ、子宮口に埋まる。

媚肉の隙間にめり込んだそれを、男の長い指が軽く小突き、くるくると輪郭を撫でまわした。

中途半端な位置に留まるそれに、子宮が強烈に疼いた。もっと奥深くで彼の魔力を感じたくて、暴力的なまでの灼熱に身を委ねたくて、下腹部が切なく震えている。

「欲しいか?」

「あ……ほし……っ、ほしぃ、欲しいのっ、……おく……っ、奥まで、いれ……てっ」

必死になって懇願する私は、どう考えても正気じゃなかった。

体内を染める上位者の魔力に抗えず、彼の望むままに声を発してしまう。魔族としての本能が、彼を支配者と認めてしまったのだ。

「そうだな。ココに入れてしまえば誰にも……お前にも手出しできないだろうからな」

ググ、グウゥ——。

膣に挿入された指に力が入る。子宮口がカケラの形に沿ってじわじわと開き、子宮内へ魔力のみなもとが潜り込んだ。




※省略





執務室に足を踏み入れた途端、漂う魔力に全身から汗が噴きだす。子宮の中で核が魔力に呼応してさらに熱くなった。

ふらふらとおぼつかない足取りで、先を行く上司の背中を頼りに室内へ。

重厚な雰囲気が漂う魔王様の執務室に、彼はいた。

執務机の手前にあるソファスペースで、ひとりがけのソファに足を組んで腰掛ける魔王様の後ろに、控えるようにして立っている。

ボサボサだった髪は後ろに流して整えられ、着古した白衣ではなく、魔王軍の軍服を着込んだその御仁に、人間界にいたときのみすぼらしい印象はどこにもない。でも、間違いなく、そこにいるのは、人間界で遭遇したはぐれ魔族の彼だった。

元はぐれ魔族……アガレス様の猛禽類のような鋭い目が私をとらえる。薄い唇がかすかに弧を描き、両端が吊り上がった。

ただ見つめられただけだというのに、背筋にゾクゾクと電流のような快感が駆け抜ける。

崩れそうになるのをかろうじて踏みとどまり、魔王様に挨拶を述べた上司に倣い深々と頭を下げる。しかし前のめりになったことで平衡感覚が狂い、身体が倒れてしまった。

「おいっ」

「構わん。そいつは俺が預かる」

支えてくれた上司から、彼は私を引き取った。

ああ、そういえばこんな声だったなと、なかば現実逃避気味に思い出していると、アガレス様に抱えられた。彼に触れられると、身体の疼きがますます強まる。

「……っ、もうしわけ、ございません……っ」

「すげえな、まだ正気でいられんのか」

「……く、ぅ……っ」

耳の近くで告げられた感嘆の声に、ぶるりと身体が震えた。

出かかった喘ぎを必死で噛み殺す。魔王様の御前でみっともない姿をさらしてたまるか。

「閣下……よくぞご無事で」

上司は私の心配よりも、アガレス様と再会したことへの感動が勝ったようだ。感極まって言葉が続かない上司に、アガレス様はゆったりとうなずく。

「ああ、お前の育てた部下のおかげだ」

「もったいなきお言葉……至極光栄にございます」

上司の涙ぐんだ声とか、初めて聞いた。というか、庇ってくれるんじゃなかったの。

お腹がジンジンして、苦しい。もう耐えられそうにない。

「はぅ……ぁ、ぅ……んぁっ……」

吐き出す息に喘ぎが混ざる。

アガレス様と上司は感動の言葉を交わし、再会を喜びあっている。そこに魔王様がひと言、二言、短く話しに加わって、私は完全に置いてきぼり。

息を殺して、気配を殺して、この場は上司たちを邪魔しないのが正解だ。頭では理解できている。でも、淫らな欲望に支配された私は、アガレス様の意識が自分に向いていないことが悲しくて、甘えるように彼の肩に額を押し付けた。

はやく、もっと……身体の隅々まで触れてほしい。身体の奥深くまで、アガレス様で満たされたい——。

欲望の肥大に歯止めがきかない。

彼を捕縛することになるなら、ぜひとも志願したいとか……自分の考えがいかに甘かったかを思い知らされる。

大魔族に抗うなんて、最初からできるはずがなかったのだ。

「……っ、うぅ〜〜……っ」

「さすがに限界か」

背中にまわった大きな手に撫でられる。それだけで心臓がドクドクと高鳴った。おかしい、こんなのは私じゃない。

「ご厚意に甘えて、これは連れて行きます」

「好きにしろ」

魔王様は発情する私に見向きもせず、いつもと変わらぬご様子で淡々と言い放った。

状況が飲み込めていない上司が戸惑いながらアガレス様をうかがう。視線を受け止め、アガレス様が上司へと口を開いた。

「悪いな、お前の部下は俺がもらうことになった」

決定事項とばかりに告げられても、上司はさほど驚かなかった。

しかし了承の意を伝えながらもほんの少しの逡巡をみせ、複雑そうに言葉を紡ぐ。

「閣下、その者は取り扱い要注意の猛犬なのですが……」

進言に、アガレス様は声をあげて笑った。

「昔のお前みたいじゃねえか」

「当時は私も、まだまだ若造でしたので……お恥ずかしい限りです」

「大事に育てるから心配すんな。壊したりしねえよ」

魔王様と上司を残し、私はアガレス様に抱えられて執務室を退出した。





広い王城の内部をどう移動したのか、全部は覚られなかった。

城勤めでも限られた者しか立ち入ることが許されていないエリアにある豪華な部屋に入ると、アガレス様は私をベッドへ降ろした。

「久しぶりだな。俺のことは忘れてないな?」

「は……ぅう……、はい……ぃんっ」

深くうなずく。あんな経験、忘れるはずがない。

ベッドのふちに座った彼に顔を覗き込まれ、頬に熱が集まる。

「人間界で探し回っても見つからないわけだ。まさか魔界から単身であちらに出向いていたとはな。とんだ命知らずがいたもんだ」

アガレス様が喉の奥で笑う。

「人間の器だと核を持ち主に返す、あのレベルの魔術は使えないと失念していた俺も俺か」

「……ん、ぁ……か、閣下……ふぁ……ぁっ」

彼の長い指が頬の輪郭をすべるように撫で、唇に触れた。

「こんなことなら、もっと早く戻るべきだった。お前もお預けくらってつらかったろ」

唇から喉へ、胸の谷間へと移動した大きな手が、服の上から下腹部にあてられる。次の瞬間、子宮内に埋め込まれた核が活性化して、身体の内側で彼の魔力が暴れだした。

「は、ひっ、あ……あぁっ、や……、ぁうっ」 

「それでも、しばらく待った甲斐はあったな。うまい具合になじんでいる」

「や、ぁ……、おなか、揉むの……っ、だ、め……です……くんっ、あっ……へんに、なっちゃ……ぅ」

「どこがだ、これが正常だろ? というあまだしゃべる余裕があるのか。俺の核を胎内に留めて、なおかつ魔力に器を侵食されても壊れないとか、とんでもない逸材だな」

腹部が圧迫されて、子宮の内壁に核が押し付けられると、じゅわりとアガレス様の魔力が体内に浸透していく。

気持ち良い……でも、外からの刺激だけじゃ、ぜんぜんたりない。——違う。私が、良くなってる、場合じゃなくて……。

「それっ、しきゅう……の、だして……カケラ……ぁっ、お、返し……しなきゃ……っ」

「なぜ? 取り出す必要はないだろ」

「ふぁ、あっ、だっ……て……んああぁっ!」

グニィ——。

子宮を腹の上から強く押され、身体の中心で快感がはじける。秘部を直接いじられてないのに、軽くイッてしまった。

「コレはお前にやると言ったろ。返すとか言うなよ」

スリ、スリ、ググゥッ、グニ、グニィ……。

彼の手のひらが、下腹部をいやらしい手つきで撫でまわす。気まぐれに子宮を強く押したり、揉み込んだり……。

「ああっ、それ、……だめっ! しきゅ……押しちゃ……あぁっ」

外側から圧迫されて、核が子宮の肉壁にめり込む。そこから彼の魔力がぶわりとあふれ、理性が焼き切れる。

ひとときもじっとしていられずベッドの上で身悶えるが、アガレス様の大きな手は私の下腹部を離れない。

「まあ……お前がなんと言おうが、今から二度と取り出せないようにするんだが」

低い声に不穏な響きを感じて背筋がぞくりとわななく。だけど芽生えた危機感は、彼の魔力がいとも簡単に消し去ってしまった。




※省略



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ご覧いただきありがとうございます。

全編はDL siteにて配信中です。
気になった方はご購入いただけますと幸いです。

市街地 2024/04/07 09:04

【小説サンプル】二柱の愛にこいねがう・2〜4話(抜粋)

※DL siteで販売中の作品のサンプルです。

※当記事は2話以降のサンプルとなります。
第1話のサンプル記事はこちらからお読みいただけます。
【小説サンプル】二柱の愛にこいねがう・第1話

あらすじ

とある依頼を受けて遥香が探っていた二人組は、とても彼女の手に負える存在ではなかった。
正体がバレて捕まって、無理矢理身体を開かれて——。与えられる快楽に溺れ……、やがて遥香は、自らの意思で彼らのもとへと堕ちていく。

全体を通したプレイ内容

快楽責め・無理矢理・焦らしプレイ・アナルプレイ・複数プレイ・3P・二穴責めetc.

【!ご注意!】

本編には下記のシーンがございます。

・無理矢理系の性描写。
・アナル責め
・複数プレイ(3P)


【第2話】


意識が覚醒し、遥香はベッドから跳ね起きた。

見覚えのある部屋。ベッドと壁際のデスクが床面積のほとんどを占領しているここは、遥香がワザオイの二人と宿泊しているビジネスホテルのシングルルームだ。

自分はいつ戻ってきたのか。

夢幻境で辰臣たちと話しているうちに睡魔に襲われて……、二人がここまで運んでくれたのだろうか。

深夜にホテルを抜け出したところから、何もかも夢だと思いたかった。しかしながら秘部の違和感が遥香の願望を否定する。

あの淫らな時間は……二人に犯されたあの出来事は決してなかったことにならない。

——どうしよう、どうしたらいい……?

時計を見ると、朝の六時をすぎたところだった。

ホテルのすぐそばに駅があるのは知っている。二人が起きる前に、ここを離れないと。

氷雨さんもオミ先輩も、私がどうにかできる相手じゃない。

「……ぅぅ」

腰の鈍痛に耐えながら遥香はベッドから這い出た。

彼らの正体を神括連に報告するかどうか、いろいろ考えるのは後回しだ。

床に置いてある小型のボストンバッグを肩に担ぎ、急いで靴を履く。壁の差し込み口からカードキーを引き抜いたら照明が消えた。

勢いよくドアを開けた瞬間——背後に強烈な気配を感じた。

驚きの悲鳴をあげる前に口を塞がれ、振り返る間もなく遥香は部屋の中へと引き戻される。

パタン。ひとりでに部屋のドアが閉まった。

「朝っぱらから元気だな」

辰臣が遥香からカードキーを奪い、壁の挿入口へ差し込む。暗かった部屋に明かりがついた。

「オミ、先輩……っ、い……、いつから⁉︎」

などとついうっかり聞いてしまったが、答えはとうにわかっていた。ほんの数秒前まで、室内にこんな強い存在感はなかった。辰臣は遥香の逃走を察知して瞬時にここまで移動してきたのだ。

昨日の夜まで普通に人間をやってたくせに。本性を知られたからっていきなりこれは反則じゃないか。

「そんなにビビんなよ。つーか腹減ってねえか? コンビニでパン類適当に見繕ってきたから食えよ」

遥香を抱きしめるように片腕で拘束しながら、辰臣はワザオイのオリジナルグッズであるトートバッグを掲げた。

そんないつもと変わらない辰臣の態度に遥香の反発心が強まる。

「のんきに朝ごはんなんて食べてる場合じゃないでしょう」

自分たちの関係はもう、以前と同じとはいかない。

遥香は神括連の手先であって、ワザオイの辰臣と氷雨に近づいたのは、彼らを探るためなのだから。

気まずさと寂しさと——様々な感情がせめぎ合って泣きそうになる。感傷に浸る遥香とは対照的に辰臣はあっけらかんとしていて、彼女の立場を気にする素振りをみせなかった。

「なんだいらねえのか。せっかく買ってきてやったのに」

などとわざとらしくぼやきながら、デスクの上にエコバッグをぞんざいに放り投げる。

そして軽々と遥香を抱きかかえ、ベッドの上に押し倒した。

「きゃ……っ」

「だったら先にお仕置きしとくか」

辰臣のまとう空気が変わった。

「……っ!」

昨夜を思い出させる不穏な気配に遥香の身体が硬直する。そんな彼女と顔を突き合わせ、辰臣は悪どい笑みを顔に貼り付けた。

「チェックアウトまで時間はある。それまでに俺たちから逃げようなんて、二度と考えないようにしとかないとなあ?」

宣告に、頭からさっと血の気が引いた。まずい……。本能的な恐怖から、脳内で警報が鳴り響く。

そんななかで、なぜか遥香の子宮は雄を求めてキュンと疼いていた。





泊まったビジネスホテルの客室の壁は薄い。昨日の晩は、隣の宿泊客が視聴するテレビの音が、遥香の泊まった部屋まで漏れ聞こえていた。

防音は完璧でない。隣の部屋で宿泊客が寝ていることも知っている。叫んで助けを求めれば、誰かが駆けつけてくれるかもしれない。

だけどそれをしてしまうと、自分はこの痴態を他人に晒すことになって、辰臣が社会的に殺される。……その前に、一般人が辰臣のいるこの部屋に立ち入るなんて、果たしてできるのだろうか……。

「考えごととは余裕だな」

「んっ、く……ぅ、ぅう……ぅっ」

こぼれそうになった嬌声を、枕に顔を押し付けることでこらえた。

服を脱がされた遥香はベッドの上で後ろから辰臣に犯されていた。最初は四つん這いになっていたが、枕を手繰り寄せたときに上半身がベッドに沈み、そこからずっと、掴まれた腰を高く掲げる体勢で貫かれている。

ズリィ……——ドチュンッ。

遥香が必死で声を抑えるのを嘲笑うように、辰臣はじわじわと腰を引き、膣口にカリが引っかかったところで、勢いをつけて奥を叩いた。

「——っ! んんぅっ……うぁっ」

パンっと肌がぶつかる音とともに子宮口をペニスの先端で容赦なく抉られ、全身に電流のような快感が駆け巡る。

おかしいおかしい。昨日はこんなに気持ち良くなかった。

許容を超えた質量に肉壁が引きつる痛みはなく、遥香のナカは愛液を分泌しながら剛直を咥え込み、与えられる快感に歓喜し収縮を繰り返す。

「ぁっ……身体、おかし……ぃの……っ。わたしに、なに……したんですか……っ」

「なんもしてねえよ。もとから素質があったんだろ。自分が淫乱なことを俺のせいにするのは、さすがにまだ早いんじゃないか?」

「なっ、ぁぁっ……っ! ……だめ……っ、ダメだから……っ」

クリトリスをクニクニとこねられる。不自由な体勢でなんとか振り向き静止を乞うも、彼が聞き入れるはずもなく。

肉芽の裏側を膣のナカから亀頭でズリズリと擦られ、遥香はあっけなく絶頂した。

「……あっ、やぁ……んっ、もぅ……っ」

「まぁ、お前がこんなに感じやすかったってのは、俺らにとって予想外だったが……嬉しい誤算だ。これからもっとエロい身体にしてやるからな」

「なに、ヘンタイみたいなこと、言ってんですかっ」

息を乱しながらも言葉で噛みつく。たとえ彼の正体が神格であろうと、辰臣は辰臣。彼があまりにもいつも通りだから、遥香は畏怖の念からくる恐怖心を抱けない。

強がりな後輩の一面が復活してきた遥香に、辰臣はおもしろそうに笑みを深めた。快感に耐え、必死で平静を装う彼女に加虐心が湧き上がる。そんな顔をされたら、もっといじめたくなる。

膣道の浅い位置に留まっていたペニスが動く。肉壁のうごめきを楽しむようにじわじわと奥に到達して、辰臣は遥香の背中に被さった。

「——ひんっ、んっ……ぁ」

「俺がヘンタイなら、お前はなんだ? 昨日の今日でこんなに感じて……」

「ゃ、耳元で……しゃべらないで……っ」

くすぐったさに肩が跳ねる。男の低音ボイスから逃げるように、遥香はきつく目を閉じた。

グジュ……ググ、グゥ……。

「……っ、ぅ……う……」

視界の情報を遮断すると、ペニスが埋まる膣内の感覚がより鮮明になる。辰臣は何もしていないのに、遥香の腰がわずかに揺れることでナカが刺激され感じてしまうのだ。

膣奥にペニスの先端が当たる。気持ち良いけど……もどかしい……。

「腰、動いてんぞ」

「……っ、やぁ……っ」

「ナカもぎゅうぎゅうに絡み付いてきやがる。これで嫌だなんてよく言えたもんだ」

「んんぅっ! うっうぅ——っ、……くっ……んぁっ」

辰臣が腰をグラインドしてきて、子宮口をこねまわされる。

重い刺激に腹の奥底から痺れるような快感が湧き上がった。腰の痙攣が止まらない。

自分の肉体がおかしくなっていく。危機感に足をばたつかせるも、それで蹂躙者をしのげるはずがなかった。

切羽詰まった遥香が顔を上げ、涙のにじむ目を辰臣に向けた。

「もぅ……やぁっ、……からだ、おかしく……しないでっ」

「はっ——、嫌に決まってんだろ」

「……っ、オミ……先輩っ、も……ほんと、やだっ!」

これ以上辰臣を嫌いになりたくない。遥香にとってはそんな意味のこもった拒絶だったのだが、それに辰臣はがらりと空気を変えた。

「にしても……ずっと俺たちのそばで影響を受けてたってのに、堕ちきってないのはすげえよ。さすがは遥香チャン……だが、そろそろ自分の立場を理解しようか」

無邪気な笑顔に不穏さを察知して遥香の背筋が凍りつく。対照的に、下腹部が燃えるように熱くなった。

「ひっ……あ、や……っ」

ベッドの上部にずり上がろうとした身体は辰臣に引き戻され、容赦のないピストンが始まった。

抉るように肉壁を擦りながらペニスが膣道を往復する。最奥に衝撃が加えられるたびに、遥香の口から上擦った嬌声が押し出された。

「やっ、だめ……っ」

咄嗟に手にした枕を辰臣に奪われ、ベッドの下へと放り投げられる。

「抑えようとすんな。感じてる声、ちゃんと聞かせろ」

「……ゃ、ちがっ……ぅっ、となり……聞こえちゃう、からぁっ」

「どうせ聞かれたところで、相手は朝っぱらから盛ってんなぁぐらいしか思われねえよ」

そんなわけあるか。

恨みがましく辰臣を睨むも、鼻で笑って軽くあしらわれた。しかも遥香は掴まれた両腕を背中にまわして固定されてしまったため、手で口を塞ぐこともできなくなった。

後ろに手を引かれて背中がそり返り、肩甲骨がきゅっと中心に寄った。拘束をとこうともがくものの、膣道をペニスで穿たれると身体から力が抜けてしまう。

「やっ、あっ……あん、あ……っ、やぁっ」

剛直にポルチオを突き上げられるたびに、子宮に快感が溜まっていく。頭の中が快楽に染められ、他のことが考えられない。

「あぅっ、あっ……あぁんっ」

喘ぎ声が艶を帯びたものに変わったのを、辰臣は聞き逃さなかった。

「……気持ち良いか?」

「ぁっ……だめっ、あ……いぅっ……せんぱいっ……やっ」

それでもまだ、享楽を認めるのは恥ずかしいらしい。うわ言のように拒絶の言葉をもらしながら、遥香は首を横に振った。

そのくせ膣は辰臣のペニスを締め付けて快楽をむさぼり、射精を誘ってくる。身体のほうが正直だとはよく言ったものだ。

嫌がったところで誰が放すか。

天邪鬼な後輩に辰臣はいっそう執着を強くする。彼女が自分たちのものだと周囲に——そして遥香自身に教え込むためにも、行為を止めるつもりはさらさらない。なにより辰臣自身が、彼女のナカで達したいと強く望んでいるのだ。

「あぁ……、俺はすんげぇ気持ち良いんだけどなあ……。お前のナカが良すぎて、すぐにイってしまいそうだ」

不穏な言葉に遥香がハッとした。何も考えなくても膣内の剛直に意識が向いた。

熱い、硬くて、大きいのが……イイところを、ズリズリって……っ。さっきより太くなって、ドクドクしてるっ。

膣の感触を鮮明に感じたことにより快楽が増幅する。ビクビクと腰が小刻みに跳ねて絶頂を迎えるも、辰臣はピストンを止めなかった。

「んん——っ、ああっ、やあぁっ……っ!」

イった直後の余韻に浸れず、遥香の頭は真っ白になった。激しい抽送による強烈な快感に全身が痙攣を起こす。

「やめてっ、イッ……イったのっ、あっあぁ、……あっ! ……もう、いやぁ——っ」

悲鳴に近い喘ぎ声を聞きながら、辰臣がズチュンッと一際深く膣奥を叩いた。そして子宮に己の精を注ぎ込む。

「————っ!」

胎内に熱い飛沫が叩き付けられる。熱い……熱くてとても、気持ち良い……。

絶頂に絶頂が重なり、精神がとろける。全身が震えるなかで自ら秘部を辰臣の腰に擦り付けたのは、まったくの無意識だった。

膣道はペニスから最後の一滴まで精液を搾り取ろうと収縮を強める。それにまた、遥香はたまらないほど感じてしまうのだ。

「はぅ……あっ、……あぁ……っ」

ぐぬ……ぐぅ……っ。二度ほどたっぷりと媚肉を擦りながら膣道を往復して、辰臣は名残惜しそうにしながらもペニスを引き抜く。

「はっ、なんつう顔してんだ」

涙で瞳を潤ませ恍惚とする遥香の頭を撫でる辰臣の手つきは、どこまでも優しかった。





※省略




言葉の応酬のさなか、辰臣は薄紫の棒を指で挟み、遥香の目の前で見せつけた。

「……なんですかそれは……」

どう考えてもいい予感がしない。

「まあそう怯えるな。お前が寝てるあいだにひとっ走りして買ってきてやったんだから」

「どこに⁉︎」

「いやあ田舎でもこういう店は探せばあるもんだなあ。最近のは小さくても高性能なのが増えたらしいから、ひとつ試してみような」

話が微妙に噛み合ってない。絶対にわざとだ。

詳しくはなくても遥香だって大人のオモチャの存在ぐらいは知っている。辰臣の口ぶりから道具のおおよその使い道を察した途端、下腹部にきゅっと力が入った。

「……っ」

逃げなきゃ……嫌がらないといけないのに……。ソレが膣内に入れられるさまを想像してしまい、トロリと愛液が膣口からこぼれた。

パステルカラーのバイブが秘裂を往復して、本体に愛液をまとわせる。

クチッ、クチャ……クチィ……。

「……ぅ、ふぅんっ、……ゃっ」

光沢を帯びたバイブの膨らんだ先端で膣口を押される。辰臣の剛直よりも細くて小さなソレを、入り口は簡単に呑み込もうとする。しかし辰臣はなかなか奥へと入れてくれず、焦れた遥香は腰を揺らした。

チュプリ……ヌポッ……。

膣口に嵌るも、すぐに抜かれてしまう。じれったさに膣がきゅうっと締まった。

もっと奥まで挿れてほしい……。自分の淫蕩な欲望を自覚させられ、うろたえながらも遥香は無意識に自ら膝を開いた。

「……せんぱい……っ」

「奥をいじめてほしいか?」

問われて羞恥に目を泳がせる。

「これがナカでぶるぶるーってなったら、きっと気持ち良いぞ」

「んぅ——っ」

耳元でささやかれて肩が跳ねた。

求める気持ちは自覚していても、素直に伝えられるまで遥香の心は陥落していない。

かたむいていた精神は些細なきっかけで正気を取り戻す。一瞬でも快楽に身を委ねようとした自分を恥じて遥香は反射的に脚を閉じた。しかしその程度のことで辰臣のイタズラを阻止することなどできるはずもなく——。

「まあお前が嫌がってもするんだけどな」

辰臣がほんの少し力を込めただけで、ヌチリとバイブは遥香のナカへと呑み込まれた。

直後、異物に広げられた膣道を振動が襲う。

「いぅん……っ、……やっ、……なにっ? 動いてる……っ」

「そういうオモチャだからな」

「これ、や……あっ……はいって……くぅっ、止めて……いやぁっ」

バイブの振動と膣の収縮によって、異物が勝手に奥へ奥へと進んでいく。たまらず秘部へ伸ばされた遥香の手を、ストラップに指がかかる寸前で辰臣が掴んだ。

「——っ、放してっ!」

「ダメに決まってんだろ。なに勝手に抜こうとしてんだ。これがお仕置きだってこと、忘れてんじゃねーよ」

「……ぁっ」

「良い子だから手は横に……な?」

ことさらゆっくりと告げて、辰臣は遥香の手を放す。

強力な力に逆らえず、遥香は両手をベッドにつけた。

「……ぅっ、あぁっ……あんっ」

単調な振動が下腹部に甘い疼きをもたらす。呼吸が乱れてひとときも休まらない。

辰臣がストラップを引っ張り、バイブの位置を調整してくる。先端の膨らみでGスポットをピンポイントで狙われた。

カチリと小さな音がして、異物の振動箇所が先端部分のみに切り替わる。

「あぅっ……あっ、あ……っ、んぅっく、んぁっ」

快楽の波は静かに高まっていった。身体を手で支えるようにして腰が浮き、へこへこと上下に揺らしてしまう。

「良さそうだな」

「んっ、い……いぃっ、気持ちぃ……っ、あっ……い、イきそ……ぁっ」

「そうか。じゃあここまでな」

遥香が絶頂の気配を感じた途端、バイブの振動が止まった。

「え……あっ……」

「簡単にイかせたらお仕置きになんねぇだろ」

戸惑う遥香にあっさり言ってのけ、辰臣は指でバイブを膣奥へと押し込む。

「あぅんっ……ゃあっ」

媚肉を擦る刺激に身悶えるも絶頂感はほど遠く、どかしさがつのる。

「続きはあとでな」

「……オミ先輩、あ……あの……」

熱のこもった視線を向けて呼びかけても、辰臣はあっさりとベッドを降りてしまった。



※省略



【第3話】


ワザオイが拠点としているマンションに帰ってきて、地下の駐車場に車が止まった。

「お疲れさま。よく我慢したね」

「……は……っ、ひゃ……ぃっ」

氷雨に頬を撫でられ、嬉しさで胸がいっぱいになる。遥香は甘えるように自ら氷雨の手に顔を寄せた。

運転席を降りた辰臣が遥香の横側のドアを開ける。

「大丈夫か?」

「ぅっ、……い……ぁっ、せんぱい……ぃん、あぅ……っ」

「これだとさすがに歩けねえか。ほら、運んでやっからこっちにこい」

氷雨にシートベルトを外される。遥香は背中を向けた辰臣の両肩に手をかけて身体を預けた。

遥香をおぶって膝裏に腕を絡めた辰臣が、体勢を整えるために軽く身をはずませる。

「きゃぅんっ!」

「あ、わりぃ」

落下の衝撃でナカのバイブが媚肉を擦りながら下方へと移動して、腰がビクビクと痙攣を起こした。地下駐車場に嬌声が響くも、遥香に周囲の目を心配する余裕はもはやない。

「ぅ……あぁ、んっ、せんぱい……はぁうっ、や……とまらない……っ」

少しでも快感を得ようと辰臣の腰に秘部を押し当ててしまう。はしたないとわかっていても、やめられなかった。

辰臣の背中で落ち着きなくもぞもぞと動く遥香へと、氷雨が自身のジャケットをかけてやる。

「家に帰ったら、たくさん気持ち良くなろう」

耳元でこっそり囁かれた。そのときを期待して子宮がきゅんと疼きを強める。

涙で顔をくしゃくしゃにしながら、遥香は何度もうなずいた。




※省略





唾液で濡れた唇に、氷雨がキスを落とす。自然とそれを受け入れて、薄く開いた唇から口腔へ入り込んだ氷雨の舌を、遥香はちゅっと吸った。

「……ぅ、……んぅっ」

「キスは好き?」

「……だと思います」

氷雨とのキスは安心する。……辰臣も。

夢中になっていると頭の中がふわふわして、幸せを実感できるから。

恋人でもなんでもない。自分たちの関係性を考えるとこの幸福感はまやかしなのかもしれないけど……それでも、二人の優しさに触れられるひとときを、遥香は嫌いだとは言えなかった。

「うん。——俺も好きだ」

——好き。それは口付けのことであって、自分に言われたわけじゃない。わかっていても、顔が赤くなってしまう。

優しく微笑みかけてくる氷雨は、相変わらず綺麗だった。

甘い空気に気恥ずかしさをおぼえてうつむいた遥香を、ソファに深く腰掛けた氷雨が抱き寄せる。

「はぅ……ぁあんっ」

体勢が変わったことで下腹部に快感が走り、咄嗟に氷雨へと抱きついた。

「そのまま、じっとしていられる?」

「……はい……ぅっ、んん……」

ナカの快感は耐えられないほどじゃない。うなずいた遥香の耳に、氷雨が唇を寄せた。

「良い子……」

中性的な声音が頭に直接響き、身体からくたりと力が抜ける。

快楽に浸りながらも脱力した遥香の背中に腕がまわされた。氷雨のもう片方の手は、二人の結合部へと降りていく。

「すご……ギチギチに広がって、俺のを咥え込んでる」

「へ……? ……やっ、そこダメっ、あっ……ゃっ」

膣口とペニスの境目を指でなぞられ、小さく腰が跳ねた。ソコを意識した途端に膣壁がうごめき、剛直のカタチを体内で鮮明に感じ取ってしまう。

「ひぁっ、やぁ……んっ」

氷雨は些細な刺激にも反応する遥香を楽しんだあと、膣口からあふれた愛液を指ですくい、イタズラをやめた。そして愛液で濡れた指は遥香の後ろに移動して——。

「ひ……ぇっ? 氷雨さんっ⁉︎」

「うん。じっとしていて」

後ろの穴に指の腹が押し当てられ、遥香がはっと正気に返る。理解が追いつかず戸惑うあいだも、氷雨はきつく窄んだ小さな孔に指を食い込ませてきた。

「だっ、ダメですっ! そこは……そんなとこっ」

「なんにも駄目じゃない。遥香ちゃんならこっちでもすぐに感じられるようになるよ」

「うそっ、……む、無理です……やぁっ」

どうにか逃げようともがくものの、膣を氷雨に貫かれた状態では前にも後ろにも進めない。腰を上げて引き抜こうとしても、背中を抱きしめる腕がそれを許してくれなかった。

「やっ、ホントに、ダメ……っ、んっ、ゆび、やめっ……んぅ」

後ろのふちに愛液が塗り込まれる。孔をパクパクと開閉させてしまうのが自分でもわかった。

これは反射であって、断じて期待しているわけではない。

アナルプレイなんて無謀すぎる。普通のセックスだって昨日が初めてだったというのに、いきなりこんなハードなことをさせるとは何事か。……経験を積めば良いってもんじゃないけど……。

ここは流されちゃいけない。

爽やかに笑いながらなんてことしてるのこの人は⁉︎」

快楽に染まっていた思考に理性的な考えが混ざる。

そうだった、いくら品行方正に見える好青年であっても、氷雨さんはあのオミ先輩の相方なんだ。ただ優しいだけの人なはずがない。

そもそも品行方正な人間はこんな無理矢理な行為はしない。それ以前にそういや彼らは人間でもないのか——とか。

遥香の頭はたとえ正常に回り始めたとしても、現状をどうこうできる妙案は浮かんでこなかった。

「氷雨さん、ほんっとうに、……その、そこで……」

するんですか? とは、怖気付いてしまって最後まで聞けなかった。

「うん、するよ。裂けないようにじっくり慣らしていこうね」

氷雨は遥香の言えなかった部分を察して言葉を拾ってくれた。しかしそんなのはなんの慰めにもならない。

前側で愛液を追加した指がまた後ろへと戻る。後孔に指先が埋められた。慣れない異物感に、遥香は背中を縮こませた。

「やっ……キツいの、だめっ……」

「だからゆっくり拡げてるんだけど……俺の指が嫌なら専用の器具で拡張しようか?」

さらりと言われたとんでもない単語に勢いよく首を横に振った。

「そっか、指のほうが良いんだね」

「……そういうわけじゃなくて……」

どっちも嫌なんです……と、もごもごと口の中で呟いた言葉は氷雨に届いていておかしくないのに、さらりと流されてしまった。

「強引に入れたり、痛いことは絶対にしないよ。それにこっちでも快感を拾えるようになったら、遥香ちゃんはもっともっと気持ち良くなれる」

「そんな、とこで……感じるなんて……」

「お尻が性感帯になるって、知らなかった?」

「……っ、別に知らなくてもいい、ことのはずですよっ」

「知ってしまって、戻れなくなるのが怖い?」

心の内を見透かされたような指摘に言葉が詰まる。

氷雨の目つきがかすかな冷たさを帯びて、遥香は身をすくませた。

「まだ俺たちから逃げられると思ってるんだ」

「や……ちが、う……」

「だったらなおさら、ここはしっかりと開発しないといけないな。普通じゃ満足できないぐらいが遥香ちゃんにはちょうどいい。心配しなくても、俺とオミがいつでも君を満たしてあげるから」

「んぅ……っ」

後孔の上を撫でていた指が、少しずつ窄まりにめり込んでいく。

痛みはないけど……やっぱり怖い。

きつく目を閉じた遥香は、暗闇の中で膣内に埋まるペニスの熱を感じ取り、無意識に腰をくねらせた。快感が、下腹部にじわりと広がる。

「あっ、……あんっ、んぁあっ」

「嫌がってるわりには、甘い声が漏れてるけど……」

「ち……ちがうのっ……、ナカ、と……氷雨さんの、声が……っ」

「耳でも感じてるんだ。——ホントに敏感な身体をしてる」

「んん——っ」

耳元でいつもより低めの声で囁かれ、耳穴に舌を差し入れられた。

グジュリ……クチャ——ッ。

頭の中にダイレクトに響いた水音に脳が痺れ、ゾワゾワと肌が粟立つ。上半身が力んだのは数秒のことで、すぐに身体からふにゃりと力が抜けた。

その瞬間を見計らい、後孔に氷雨の中指が第二関節まで侵入を果たす。

「ひっ……」

お尻に力を入れたが、遅かった。

アナルへと入り込んだ指に抜け出る様子はなく、そのまま指先にやんわりと肉壁を押される。わずかな動きにも強烈な違和感があって、遥香の息が詰まった。

「も……やっ、抜いて……っ」

「苦しい?」

「わ、かんない……、へんな感じ……っ、お尻、熱くて……」

狭く閉じた肉路をこじ開けられて、身体の内側が広げられる、今まで体験したことのない感覚だ。

違和感がとてつもない。これが快感に結びつくとは到底思えなかった。

「……でも、遥香ちゃんの腰、さっきから揺れてるよ?」

「え……んんぅっ」

アナルを○す指がぐるりとまわされる。

「前のほうで、奥を突かれるのは気持ち良いよね? こっちからも子宮をズンズン押し上げて、二本のペニスで境目の壁をずりずりぃって同時に擦ったら、どうなるかな?」

後孔を開発する指が膣側の肉壁をクニクニと揉み押す。氷雨の言葉とその指の動きに、膣道でめいっぱい咥え込んでいるペニスへと意識が向いて、カッと下腹部に熱が灯った。

「はぁ……ん……っ」

脳裏に浮かんだ淫らなイメージが膣の快感を増幅させる。背中をしならせて悶える遥香から、氷雨は指を抜いた。

「んんんっ……ぁあっ」

強烈な異物感から解放された瞬間、背筋に痺れるような感覚が走り抜けた。ほっとしたのも束の間、愛液を追加でまとった指は再びアナルの攻略にかかる。今度はもう少し、奥まで……。

「いっ……ぐ、うぅ……」

「そう力まないで、力を抜いて、リラックスして」

そうしてしばらく指は動きを止める。遥香が戸惑い、アナルの違和感に慣れたころあいをみて、拡張の作業を開始した。

「やっ、氷雨さん、動かしちゃダメっ」

「やっぱり抜くときが一番感じるみたいだな」

「違います! そんなこと、ないっ……ぁっ」

「ないことないでしょ。ほんの少し引き抜いただけで、膣が俺のをぎゅっと締めてくる。解放感と快感が結びついてるって、自覚できてないのかな」

自覚もなにも、それこそありえない。アナルから指が抜けたときに感じたあのゾクゾクは、快感ってわけじゃなくて……。

「もっと奥からずるずるぅって、中の壁を擦りながら熱くて硬いモノが抜け出ていったら、どんな感じがするんだろうね」

言葉を模して、氷雨がアナルから指を引いた。

「……っ、ふぁ……あんっ」

ひくんっと遥香の身体が小さく跳ねる。

後孔に入り込む圧迫感は苦しいけれど、出ていく感覚は、なんだかクセになりそう……。アレが、もっと奥から、ズルズルゥってなったら……。




【第4話】


※省略



氷雨に見下ろされ、不穏な空気にごくりと唾を飲み込む。

「今日はさすがに疲れただろうから、俺もオミも、朝までゆっくり寝かせてあげようと思ったんだよ? それなのに……遥香ちゃんの元気には驚かされるよ」

「元気なわけないでしょう! 疲れてます。はっきり言って疲労困憊です! だから自宅に帰ってゆっくり休もうと……」

「そっか、家に帰るだけの体力があるなら問題ないかな」

「ちょっ——、待って!」

胸元で握りしめていたスウェットのトップスを奪われ、ボトムスもショーツと一緒に脱がされてしまう。

「視聴者とオミを待たせてるから、手早く済ませようか」

「だったらこんなことしてないで、帰るなって一言命令して、とっとと戻ればいいでしょう!」

「急にどうしたの?」

「……そもそもお二人が忙しくしてるなら、私はここにいなくてもいいはずです」

「夜道は危ないのに、ひとりで帰らせたりはしないよ。魑魅魍魎だけじゃなくて、生きてる人間も油断ならないってのに」

「バカにしないでください。これでも多少は生きてる人間対策にも鍛えてます」

挑むように睨むと、氷雨はへぇと気のない返事をして、遥香の内腿をするりと撫でた。

「……ゃっ」

「なんにしても、君がそれだけ動けるなら、こっちの予定も変わってくる」

「…………ぁ……」

墓穴を掘ったことに、遥香は今になって気がついた。ヤバい。さっと血の気が失せて慌てふためく。

「ち、違うっ……本当に、もうムリっ」

「そんなことはないでしょ。ひとまず手は頭の上……ね?」

両手首をひとまとめに掴まれ、頭上でシーツに押し付けられる。氷雨が離しても、遥香の両手はベッドに縫い止められたまま動かせなかった。

縛鎖の術だ。それも、恐ろしく強力な。

「これっ! といてください!」

こんなの暴漢よりもよっぽどタチが悪い。

「せっかくだし足も縛っておこうか」

ついでと言わんばかりに、肩幅に開いてゆるく膝を曲げた状態の左右の足も、その状態で固定されてしまった。

遥香のしなやかな裸体が氷雨の前にさらされる。氷雨は己の成果に満足し、ヘッドボードの棚に備え付けられている引き出しから、ローションと怪しげな道具を取り出した。

黒々とした道具の素材がシリコンなのかプラスチックなのか、遥香には判別ができなかった。氷雨が先端にある輪に指を通したそれには、ビー玉ほどのサイズの黒い球体がいくつも連なっていた。輪っかの持ち手に一番近い部分の玉だけは、他の球体よりも大きい。

遥香の腹の上で、ボトルのローションが真っ黒な玉のひとつひとつにたらされる。

「な……んですか、それ……」

「後ろを開発するためのオモチャだよ。暇してるならこれを咥えておこう」

秘裂にもローションを流され、冷たさにうっと息を詰めたのも一瞬のこと。どろりとした液体を塗りつけるように、後孔のふちをフニフニと押され、お尻にぎゅっと力がこもった。

「やめて……、やだっ」

「嫌がってるわりには、ここは物欲しそうにヒクヒクしてるよ。昼間の感覚を忘れていないうちにおさらいしようか」

「ひっ……ぃ……っ、や、やめ……っ」

プツ、プツ……と、アナルの入り口を押し広げて球体が中に入り込んでくる。ひとつの球体が入ると口が窄まり、また球体に沿って広がって……その繰り返し。

「んぁっ……ゃっ……やだぁ……っ」

ゾリゾリと腸壁を擦りながら奥へ奥へと侵入する球体の連なりは、ついに指では届かない未開の場所まで攻略し始めた。

どうして……。

あらぬ場所を異物に占拠される感覚が不快でないことに、遥香はうろたえた。尾てい骨の奥あたりがぞわぞわと甘く痺れて、膣道がこっちにも刺激が欲しいと切なくうごめくのだ。

氷雨は貪欲に快感を求める肉体に困惑する遥香に構わず、小さな球体を遥香のアナルに押し入れる。

「すんなり入りきった。……これが最後」

「やっ、ん、いたっ……ぐ、ぅ……っ」

持ち手と直接繋がったゴルフボールに近いサイズの球体が後孔を広げる。このときだけは引きつる痛みに遥香がうめいた。しかしそれも球体が半分を越えるまでのこと。後半は氷雨が何かをする必要もなく、口の窄まりとともにオモチャはすんなりアナルの中へと呑み込まれていった。

アナルから生えた持ち手の輪を氷雨が軽く引く。

「ぃうんっ」

孔からわずかに覗いた黒い球は、ふちがきゅっと閉じたことにより見えなくなった。まるで外に出すのを拒むような遥香の反応に満足して、氷雨は先端の輪から手を離した。

「じゃあ、あっちが終わったら続きをするから、それまで良い子にしていてね」

額に軽くキスされて遥香は慌てた。

「やっ、氷雨さん、待って……これ取って。手のやつ、といて。……お願いっ」

「風邪ひかないように暖房つけておくよ」

懇願はあっさりと無視される。自身のスマートフォンを使って空調を操作した氷雨は、遥香の頭をひと撫でして、そのまま部屋を出て行ってしまった。

バタン——。無情にもドアが閉められる。

「——っ、あの人は!」

込み上げた怒りに任せて叫ぶ。こんな状態で放置するとか鬼畜すぎやしないか。

「……ぅあっ、ゃ、……もうっ」

無意識に浮き上がった腰が揺れる。アナルの異物感もさることながら、何もされていない前側が刺激を欲して疼く。どうにもじっとしていられなかった。

ひとり全裸で腰を振って、私は何をやっているのか。自分を客観視できる理性が残っているだけに、この状況に羞恥心を抱かずにはいられない。

本当は、家に帰ろうとせず、ここでワザオイの配信が終わるのを待っているのが正解だったと、遥香だってとっくにわかっていた。

知っていながら彼らの望んだとおりにできなかったのは、自分の子供じみた嫉妬心が原因だって……それぐらいちゃんと自覚している。

でも……だからってこの仕打ちはあんまりじゃない!?

「……氷雨さんのバカ……っ」

——氷雨が馬鹿なら自分は何だ——?

悪態には常に感情の矛盾が付きまとった。

処女を奪われ、逃げることを許されず二人に良いようにされている現状。当然納得はできないでいるものの、遥香はこんな扱いを受けても氷雨と辰臣を嫌いになれなかった。

ワザオイとして活躍する、二人のパフォーマンスも大好きだ。これからも続けてほしいと思うし、神括連なんかに潰されたくない。

この身を無理矢理犯した相手だというのに、悲観にくれることのない自分の図太さに驚かされる。二柱の神に強烈な畏怖の念を抱くことはあっても、遥香は精神を強○的に屈服させられてはいなかった。

その証拠に、こんなことになっても遥香は彼らに軽口を叩けるし、文句も言える。辰臣と氷雨も、遥香のそんな態度を咎めず、当然のこととしていて——。

「……なんなのよ、もう……」

明らかに歪んでいる関係を、神様だったら仕方がないかと受け入れている自分も結局のところどこかおかしい。

ねじ曲がっているのは彼らに向ける好意か、はたまた自分の性癖か。

「……ぅっ、く……ぅ」

腰をくねらせると体内の異物を鮮明に感じ取ってしまう。

「ぐっ、うぅ……んぅっ」

どうにかしたいのに、手前の大きな球体は、多少力を入れたくらいではアナルから出ていきそうになかった。

「も……いやぁ……」

壁にかかった時計を見る。時刻は二十三時をまわったところだ。辰臣たちが配信を終えるまであと三十分もある。

期待した快感が得られないもどかしさは記憶に新しい。というか、今日車の中で体験したばかりだ。あのときはずっと、ナカにバイブを挿れられた状態で氷雨にじらされて……。

「んぁっ……ぁっ……」

思い出したら下腹部がことさら疼き遥香を追い詰める。

あのときとは違い、そこは何もされてなくて、代わりに、後ろの穴を変なオモチャに犯されている。痛みはない。それどころか、よくわからない異物感を、遥香は快感と認識し始めていた。

……たしかに気持ち良いのかもしれないけど、秒針の音と自分の吐息や喘ぎ声しか聞こえないこの空間は、ただただむなしかった。

こんなオモチャなんかより、熱い肉棒がいい。……ううん、そんなことよりも……彼らに傍にいてほしい。

「……氷雨さん……オミ先輩っ」

名前を呼ぶと、求める気持ちがよりいっそう強くなる。応える声はなく、寂しさに拍車がかかった。

カチ……、カチ……。

時間を気にするほどに、秒針の進む速度は遅く感じた。




※省略



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気になった方はご購入いただけますと幸いです。

市街地 2024/04/07 08:54

【小説サンプル】二柱の愛にこいねがう・第1話

※DL siteで販売中の作品のサンプルです。

あらすじ

とある依頼を受けて遥香が探っていた二人組は、とても彼女の手に負える存在ではなかった。
正体がバレて捕まって、無理矢理身体を開かれて——。与えられる快楽に溺れ……、やがて遥香は、自らの意思で彼らのもとへと堕ちていく。

全体を通したプレイ内容

快楽責め・無理矢理・焦らしプレイ・アナルプレイ・複数プレイ・3P・二穴責めetc.

【!ご注意!】

本編には下記のシーンがございます。

・無理矢理系の性描写。
・アナル責め
・複数プレイ(3P)



【第一話】


バレてたと、知ったときにはもう遅い。氷雨(ひさめ)と辰臣(たつおみ)に対して遥香(はるか)が畏れを抱き、「勝てない」と悟った時点で、支配と隷属の関係性はできあがってしまった。

精神を強○的に屈服させられたともいえる。



——私は何をしてたんだっけ?

かすみがかかっていた思考が、少しずつはっきりしてきた。

——そう、大学の学費を稼ぐために、土地神消失事件の調査することになって……、疑われている、先輩たちに近づいたんだ……。

それで、どうなったんだっけ……?

——オミ先輩と氷雨さんに捕まって、夢幻境に引き込まれて……。

「……っ、……ぁっ……んぅっ」

バラバラになった思考がゆっくりと組み立てられていくも、秘部に感じる快感が核心にたどり着くのを阻害した。

よくわからない。だけど、身体の中心が気持ち良いのだ……。

——……二人の活動の、ライブの手伝いをしてたの。オミ先輩が……バイトに誘ってくれて……。ホテルに泊まって……あれ?

だんだんと、記憶に残る出来事の時系列があやふやになっていく。そうして思考が混乱の渦に流された先でようやく「現状」へと意識が戻った。





クチュリ……。

ぬめり気のある水音と共に、身体の中心が甘く疼いた。

腹の奥底に感じる切なさにたまらず遥香は身をよじるも、背後からまわされた腕に抑えられ、体勢を変えることは叶わない。

「はぁ……ぁっ、ぅ……え……?」

「ふふっ、混乱してるね。でもやっぱり、力のある子は醒めるのが早そうだ」

後ろで楽しそうに笑っている、これは氷雨の声だ。

「それでもこんだけよがってんだから、起きてももう逃げられないだろ。感じやすい良い身体だ」

辰臣の声が、近くて遠い場所から聞こえてきた。出どころを探ろうと意識を向けたら、またあの甘い感覚が腹の底から湧き上がってくる。

「ふぁっ、あっ、あぁ……んあぁっ」

「軽くイったか? かわいいなぁ……」

喉の奥で笑われる。なんだかとても恥ずかしくなって、イヤイヤと首を横に振った。

何があった。何が起こっているの。どうしてアソコがジンジンしているの……?

次から次へと疑問が浮かぶ。

芽生えた危機感に対応するかのように、聴覚に次いで、ぼやけていた視界が徐々に鮮明になっていった。

「は? ぇ……んぅっ、な、にが……?」

「おはよう、遥香ちゃん。時間的にはこんばんはが正解かな?」

「んんぅっ」

背後から耳に直接流し込むようにささやかれ、くすぐったさに遥香は思わず首をすくめた。

大げさな反応に氷雨がクスクスと笑う。後ろから伸びる手が、服を着ていない遥香の乳首をキュッとつまんだ。

チリリと感じた痛みに、遥香の肩がまた跳ねる。

「いっ……! あっ、なん……で、氷雨さんっ」

後ろにいるのは氷雨だ。むき出しになった背中に、彼の体温が感じられた。

首をまわした視界のすみで、浴衣姿の氷雨が美麗な微笑みを浮かべている。

御簾(みす)のかけられた、木造の建物の、どこかの部屋。

床に置かれた燭台には蝋燭が立てられ、室内を淡く照らす。

そんな部屋の中央で遥香は服を脱がされた裸の状態で、氷雨に背中をあずけて座らされていた。お尻に当たる感触はふかふかしていて、床には布団が敷かれているようだ。

視線が上から下へと移動する。遥香の脚元には、辰臣がいた。

辰臣は大きく開かれた遥香の脚のあいだに片膝を立てて陣取り、彼女の恥ずかしい部位に触れている。秘部に指をそえた状態で困惑する遥香と目が合い、辰臣がニヤリと口端を持ち上げた。

急に遥香の意識が覚醒する。

「なっ、なにして——っ!?」

後ずさって辰臣から離れようとしたが、背後に腰を落ち着ける氷雨によってはばまれた。

「こらこら、邪魔してはいけないよ」

秘部をいじる手を払いのけようとするも、氷雨に両手首を捕えられ、みぞおち部分に押し付けるようにして拘束される。相手は片手しか使ってないのに、どんなにもがいても手は自由にならなかった。

ならば脚を閉じてしまいたいのに、膝のあいだでは辰臣の身体が邪魔をしていた。しかも辰臣は遥香の膝に手をかけてさらに開脚させ、羞恥心を煽ってくる始末だ。

「オミ先輩……どうして……」

「今は理由なんざ考えるな。俺と氷雨が与える感覚だけに集中しとけ。——賢い遥香チャンならできるよな?」

目を合わせて、ゆっくりとした口調で辰臣が言い放った言葉が耳の奥に響く。意味の理解には、強烈な畏れが伴った。

得体の知れない圧倒的強者の言うことに本能的な恐怖が芽生え、遥香から抵抗の意思をかき消してしまう。

怯えながらも小さくうなずく遥香を、辰臣と氷雨は「良い子だ」と褒めた。

「心配しなくても取って食いやしないって」

「……ほんと、に……」

異形に屈した術者の末路はたいがい悲惨なものだ。異形の糧にされるか、精神を蝕まれて生き地獄を味わうか。実家でそういった話を頻繁に聞いていた遥香は、目に涙を溜めて辰臣の顔色をうかがった。

「当たり前だろバーカ。つーか死ぬのが怖いなら、俺らを探る依頼なんか受けてんじゃねえよ」

「だって……」

そうでもしないと、お金がもらえない。大学に通えないどころか、生活だってままならなくなってしまう。

それにワザオイを調査する依頼を受けたときは、二人がこんな大物だなんて知らなかった。

こぼれかけた涙を氷雨にぬぐわれる。そして頭をポンポンとあやすように軽く叩かれた。

「オミの言うことは聞き流していいよ。アレはただの八つ当たりだから。本当は君が神括連と接触するより先に、こちら側に引き込みたかったんだけど……叶わなかったのは俺たちの力不足が原因だからね。でも……ようやくここまでこられた」

口ぶりからして、遥香の行動を二人は逐一把握していたのだ。そのことに顔を青くする一方で、遥香は別の部分に引っかかりを覚える。

——こちら側に引き込むって、どういう……。

恐々と見上げた先で、氷雨はうっとりと見惚れるほどに美しい笑みを向けてきた。

「もう、ほかに目移りしてはいけないよ。といっても、そんな余裕は与えるつもりないけど」

目をぱちくりさせて告げられた言葉の意味を探そうとした遥香だったが、秘部に快楽が走りそれどころではなくなった。

辰臣が愛液でぬかるんだ膣口に指を挿入したのだ。

「や……、いやっ、やめて……オミ先輩っ」

「濡れているとはいえ、やっぱり狭いな。俺らの知らない野郎にここを許したことはあるのか?」

「なっ……ない、……ないですっ」

真っ赤になって否定する。

遥香は処女だ。中学時代に交際経験はあるものの、当時の彼氏とはキス止まりで肉体関係にはいたらなかった。

高校ではいろいろなことがあって周囲から浮いてしまい、誰かと付き合うなんて夢のまた夢だった。大学に入ったあとは、勉強とバイト、それに映像制作という趣味にであってしまい、恋愛はそっちのけになっていた。

そんなところに、憧れの先輩からあっけらかんと男性経験を尋ねられたのだ。恥ずかしくないはずがない。

辰臣は慌てふためく遥香に気をよくして、膣内で指を動かし腹側のザラザラした部分を軽くひっかいた。

「……っ、ぅ……ん」

「ならいい。手間が省けて助かるよ」

——お前を先に食った奴がいたなら、そいつを始末しなきゃいけなかったからなあ……。

ボソリと漏らされた独り言は、声量が小さすぎて遥香の耳には届かなかった。

そんなことよりも。膣壁を押す指の存在に遥香は戸惑った。よくわからない不思議な感覚が腹の奥に溜まってくのを自覚して、理解が及ばず無意識に膣を締め付けてしまう。

クチッ、クチャリと辰臣の指の動きに合わせて秘部からはいやらしい音が聞こえてくる。

「ぁ……ゃあ……っ、先輩、こんなの……もうやめて……っ」

「ああ、やっぱりナカよりも、今はこっちのほうが感じるか」

懇願はあっさり流され、辰臣は膣に指を挿れたままもう片方の手の親指でクリトリスをぐりぃと押した。

途端に鋭い快感が遥香を襲う。

「ひぅんっ! あっ、なっ……それ、やだぁっ」

「嫌じゃなくてイイ、でしょ? これからもっと良くなっていくんだから、こんなことで音を上げていては身がもたないよ」

そう言った氷雨に胸を揉まれる。やわやわと下からすくうようにして乳房をゆらされ、大きな手のひらに二つの膨らみを包まれる。

「大きくて柔らかいね。いつも隠しているのがホントにもったいない」

「や……むね、だめっ、……っ! ソコも、あっぁあ……ぁ……っ」

二人がかりで責められては、遥香にはどうすることもできない。

辰臣は親指と人差し指で挟むようにしてクリトリスの皮を下ろし、むき出しになったピンクの肉芽を指で撫でこする。途端に遥香の両膝がビクビクと揺れた。

クリトリスに刺激が走るさなかに、膣を攻略する指を一本増やされた。膣道の広がりに遥香は一瞬息を詰めたが、愛液を纏った指でクリトリスをぬるぬると擦られてすぐに口から甘い嬌声がこぼれた。

奥から手前へ、辰臣は柔らかい肉壁をゆるく押しながら指を引いていく。膣道は遥香の意思に反して異物を歓迎し、愛液を分泌させてうごめいていた。

「んっ……あん……うぅ、ぅあっ、ああぁっ」

Gスポットを重点的に揉み押されるのと同時に、クリトリスを指で挟んでしごかれる。まるでクリトリスで得られる快感に、膣内の感覚を連動させるように。今はまだ眠っている快楽の根幹を、強引に呼び覚ますように。

「やっ、そこ……っ、いっ、きちゃっ……ぁっ……っ!」

執拗な責めに遥香の身体は抗えず、絶頂へと追い上げられた。

ぎゅっと身体に力が入る。ビクンとひときわ強く膝が痙攣して、氷雨にあずけていた背中が仰け反った。

氷雨は荒い呼吸を繰り返す遥香の背後からしりぞき、彼女を敷布に寝かせた。

仰向けになって身体が安定し、絶頂の余韻に身を委ねる遥香の様子を観察していた辰臣が、膣に挿れる指を三本に増やす。

快楽に引きつるような痛みが加わりはっとするも、氷雨によって両手を敷布に縫い止められ、身を起こすことができない。

「やっ、氷雨さん……放してっ」

「オミの邪魔をしてはいけないよ。大切な準備だから、もう少しがんばろうか」

口調は優しいが、彼らは決して遥香の懇願を聞き入れてはくれなかった。

「なるべく痛い思いはさせたくない。トラウマになられても嫌だからね」

「ま、お前が痛くされるほうが好きってのなら、それはそれで良いんだが」

加虐心を隠そうともしない辰臣の空気に、遥香の背中がぞくりとわななく。

「ひっ、……ゃ……いやぁ」

「だーからすぐにはしねえって。どんなことで気持ち良くなれるかは、これからじっくりと見つけていこうな」

ぐじゅり……。膣奥の壁を押し上げられ、子宮がかすかに疼いた。

「遥香ちゃん」

呼ばれて視線を上げると、身を屈めた氷雨の顔が眼前にせまってきた。口元を舌先で舐められ、ちゅっと唇を吸われる。

……キス、されてる。遅れて気づき、遥香はどうしていいのかわからず目を泳がせた。

初々しい反応に氷雨が目を細める。

口腔内に侵入してきた舌に口蓋をくすぐられ、遥香の身がすくむ。反射的に顔を背けると、氷雨はあっさりと口付けをといた。

「逃げないで、舌を出して」

頭の中に命令が反響する。遥香の力では逆らうことができず、薄く開いた口からおずおずと舌を差し出す。

「……よくできました」

氷雨の薄い唇が、遥香の舌を挟んで吸い上げる。ちゅっという音は口からか、それとも秘部からだったのか。

舌を口内に押し戻すようにして、氷雨が遥香に深く口付ける。今度は顔を背けて逃げる気が起こらなかった。

口内で逃げようとする舌を絡め取る、氷雨の舌に翻弄される。初めてディープキスに気を取られていると頭がぼうっとしてきた。

清涼感のある甘い香りは氷雨のつけている香水だろうか。うっとりとする遥香から、次第に力が抜けていく。

「ふ……むぅっ、……んっ」

左右の手が自由になっていることに、遥香は気づけない。たとえ自分の意思で動けたとしても、その手で氷雨たちを拒絶することはできそうになかった。

リップ音をさせて氷雨が唇を離した。

至近距離で微笑まれ、胸の中が喜びでいっぱいになる。

どうしてこんなにも嬉しいのか。自分の感情に思考が追いついてくれない。

「氷雨さん……っ、私」

この不思議な感覚の正体を知りたくて、支配者へと伸ばした手は、指を絡ませるようにして握り返された。

「大丈夫、怖いことなんて何もない」

言葉に疑う余地はなく、すんなりと腑に落ちた。元々正体を知る前から尊敬し、慕っていた相手だ。そんな彼が大丈夫というなら、何も心配しなくていいと思えてくる。

とんっ……と、遥香の手は敷布の上へと戻される。眼前で微笑む氷雨に魅入っていると、秘部に熱の塊があてがわれた。

ぐじゅり。

愛液がこぼれる膣口に突き立てられたソレは、狭い肉路を広げながらゆっくりと遥香のナカに押し入る。

「いっ……ぃた……っ、ぃやっ、やあぁっ」

「……っ、くそっ、まだキツいか。……まあでも裂けることはないだろ」

亀頭がナカに収まりきったところで、辰臣は遥香の腰を掴んだ。

「苦しいか? にしてはナカは俺のを柔らかく包み込んでくるぞ」

ズ……グウゥ……。

また一段と深く剛直が入り込む。

膣内に痛みはあるが、それ以上に膣道を強引に広げられる圧迫感が強かった。

しかしそんな肉体の感覚よりも、辰臣に犯されている事実に遥香は愕然とする。

「……ゃっ、オミ先輩、そんな……ダメっ」

「はっ、今さらだろう。なんのための準備だと思ってたんだ」

「でもっ……ぅっ、くぁ……っ」

「落ち着いて。オミに任せて、身体の力を抜いてごらん」

「むりっ……むり、ですっ」

首を振ってもがく遥香を困った子だと氷雨は苦笑して、赤く色付いた頬をするりと撫でた。

「ゆぅっくりと呼吸してごらん……そう。……身体のナカにあるオミを意識して。どんな感じか、俺に教えて?」

繊細なタッチで氷雨の指先が唇に触れる。

「あ……」

目の前の青年を凝視しながらも、遥香は秘部の感覚に集中した。

「あ、あつい……ぃっ、んぅ……」

「熱い、だけ?」

「……ぁっ、熱くて、……いっぱい、広がって……おなかが、ぞわぞわって……」

剛直が膣内に埋まるほどに、腹の奥から痺れのような、それでいて疼きに近い不思議な感覚が湧き上がってくる。

「うん、えらいね。ちゃんと快感を拾えてる」

快感? ……これが?

「今は違和感のほうが勝っているかもしれないけど、すぐにほかのことなんて考えられないぐらいに気持ち良くなれるよ」

うそだ。こんなのが良いだなんて、とてもそうは思えない。

ズンッ——。

「…………っ」

「……入りきったな」

身体の内側を侵略され、遥香はうっと息を詰めた。

快感とかそんなことよりも、辰臣に犯されているショックが大きくて、きつく閉じた遥香の目から涙がこぼれた。

「こんなことで泣くなよ」

グリリと奥を強く抉り、辰臣が遥香の腰から手を離した。

「氷雨だけじゃなくて俺も見ろ」

目蓋を持ち上げると、ぼやけた視界に辰臣が映った。大学に入学したときから慕っていた青年の顔だ。容姿は同じなのに、彼が放つ気質は人間のものではなく、強烈な畏怖の念を遥香に抱かせた。

「どうして、……こんなことっ」

振り絞った声は自分でもわかるぐらいに震えていた。

怯えて泣く遥香に、辰臣は不機嫌そうに眉を寄せた。

「これから何が起こるのか、なーんもわかってないって顔だな」

「それに関しては仕方がないことなんだから、この子に当たるんじゃないよ」

氷雨の口出しに辰臣はフンと鼻を鳴らし、口端を吊り上げる。

「……まあ、先のことはどうでもいいか。今は俺を感じろ」

宣言と共に、亀頭が膣奥——子宮の入り口に押し付けられる。

「んぅっ、う……ぅあ、や……ぅ」

辰臣が奥を穿ったままゆっくりと腰をまわす。

深い場所をこねられて、胎内がじわじわと熱を孕んだ。ペニスの動きに呼応して、もどかしさが腹の奥に溜まっていく。

ペロリと、辰臣が遥香の首筋を舐めた。唇は肌の上をつたって胸元へ移動し、そこに赤い所有の印を残す。

「そろそろ動くぞ」

再び遥香の腰を掴んだ辰臣がゆっくり後ろにさがる。ずるずると肉襞を擦りながらペニスが引き抜かれ、遥香は背をしならせて悶えた。

開放感と喪失感が一緒になって押し寄せる。感情に折り合いがつかず混乱していると、膣口に引っかかった亀頭がまた膣内に侵入してきた。

ゆっくりと、確実に、狭い肉路をほぐされる。

最初に感じていた体内を強引にこじ開ける強烈な拡張感は次第になくなり、それと共に抽送がスムーズになっていく。

辰臣が微妙にペニスを挿れる角度を変えてきた。それはまるで遥香の感じる場所を探しているかのような動きだった。

「……っ、オミ先輩……んぁっ、あ……ぅっ」

身体の奥深くから湧き上がってくる、確かな快楽に遥香が身震いする。それを目敏く見つけた氷雨は彼女の秘部に手を伸ばし、クリトリスをいじりだした。

「ひあっ、あっ、やあぁっ!」

突然鮮明な快感を与えられ、膣道がきゅうっと締まって意図せず辰臣のペニスを感じてしまう。

「……おい」

「楽しむのはあとにしてほしいな。最初は譲ったんだからさ」

いつになく先を急がせる相棒に内心驚きつつも、辰臣は顔に出さずに肩をすくめてみせた。

「しゃあねえな、まあ遥香もだいぶなじんだろうから、いったん終わっとくか」

クリトリスの直接的な刺激に身悶える遥香の腰を掴み直し、辰臣はひときわ強く膣奥を抉った。

「あっ、いん……ぁっ、……っ」

衝撃は一度では済まされず、二度、三度とペニスの先端が子宮の入り口に打ち付けられる。

「はぁっ、あっ……あぅっ、んっ……ぁあ」

熱い。自らを○すペニスの熱が、下腹部だけでなく全身を飲み込んでいく。呼吸が早くなり、吐き出される息と共にうわずった声がひっきりなしに口からこぼれた。

「んっ、うぅ、……あっ……っ!」

ドクリと、膣壁がペニスの脈動を感じ取るのとほぼ同時。子宮口にめり込んだ先端から、熱い飛沫が噴き出した。

「あっ、そんな……」

辰臣が射精したのだと、遅れて理解する。

呆然とする遥香に構わず、ペニスの先端はなおも膣奥を押してきた。精液を肉壁に塗り付ける動きに子宮が反応し、遥香は痺れるような甘い刺激にみまわれた。

「は……ぁ、はぅ、あっ……うんぅ」

覆い被さってきた辰臣にキスされる。強引に口腔へと入り込んだ舌が遥香の舌をグニグニと押した。左右の内頬をぐるりと舐められ、縦横無尽に口内を蹂躙される。

息が苦しい。酸欠でぼんやりする頭の中、自分が思いのほかショックを受けていないことに遥香は困惑した。

慕っていた先輩に犯されているというのに。

遥香自身にも、彼らに後ろめたいことがあったから?

彼らが私を殺さないって、わかったから?

——二人と敵対するぐらいなら、こっちのほうが全然……。

この状況を受け入れるように、徐々に思考が順応していく。

「ふ、ぅ……ぁっ」

目の前にある辰臣の端正な顔に焦点が合うと、下腹部だけでなく頭までもが沸騰しそうなほど熱くなった。

「たまんねえな。ほんと、よく今までほかに喰われずに生き残れたもんだ」

「……え? ……っんぁ……」

キスをとかれて辰臣が身を起こすと肉杭が膣壁を擦り、その刺激に腰が揺れた。

止めたいのに、膣はきゅうきゅうと収縮を繰り返してはナカに埋まる肉棒のカタチを教えてくる。

熱い……熱くて、気持ち良い。

それを快感だと認識した遥香の目が恍惚にとろける。

「そうだね」

ほぅ……と、吐息がこぼれた口端からたれた唾液を氷雨に指でぬぐわれる。

「地獄の蓋が開ききる前に、君に出会えてよかった」

氷雨の言った言葉の意味を深く考える余裕は遥香になかった。

「ぃうっん、ぁ……」

名残惜しそうにごじゅりと一度、子宮口をペニスで穿ち、辰臣は腰を引いた。

「ぁ……っ、んん……ゃぁ……っ」

肉棒がずるずると抜け出ていく。

終わったことに安堵するよりも先に、おかしな焦燥感が遥香の心に湧き上がる。

たりない。欠けている。まだ……満たされない。

望んでいないはずの行為なのに、どうして……。

「オミ先輩……っ、氷雨さんっ」

どうしたらいいのかわからない。ただひとつ、今の自分はひどく脆く、不安定な状態だということだけは、漠然と自覚できていた。

ここが辰臣と氷雨が支配する空間だから、かろうじて正気を保っていられる。もし、このまま現世に戻されたら私は——……。

最悪の予想が頭に浮かび、恐怖で身がすくんだ。

「そんな顔すんなって。ここで終わりじゃねえから安心しろ」

羽織を肩にかけ直した辰臣が遥香の頭部まで移動して、彼女の髪をすくった。

「まだ半分だ。言われなくても自分でわかるんだから、やっぱり遥香チャンは優秀だな」

あやしているともからかっているともとれる口調だった。

「まだ……?」

終わりじゃない。そのことに遥香はほっと肩の力を抜いた。

次の瞬間、脚元へ移動した氷雨が愛液と精液がこぼれる蜜壺に指を挿れてきた。

「すっかりとろとろになって、いやらしいね」

「あっ、……あん……ぁあっ」

中からかき出した精液を、指で再び奥へと戻す。ポルチオをコリコリと揉み押し、膣壁を擦りながらゆっくりと氷雨は指を引き抜く。

遥香が反応しないところはそれなりに。余裕のない喘ぎが上がった部分はねちっこく——。

奥へ挿れては入り口まで戻っていた指は、次第に腹側の浅い部分を集中的に揉み始める。

グチュリ、グチョリとひっきりなしに響く水音に、遥香の口から切羽詰まった声が混ざりだす。

「あぁっ、あっ、あう……っ、氷雨さ、んっ……」

「うん、ここが気持ち良いんだ。ナカもうねって、健気に俺の指に絡み付いてくる」

「やぁ……あっ、……ぁあ……」

膣内の動きを説明され、恥ずかしさに耐えきれず首を横に振るも、ひくひくと腰が揺れていては説得力のかけらもない。

しかし絶頂の気配を感じ始めたところで氷雨はあっさり指を抜いてしまった。

「あ……え…………」

予想していなかったおあずけに、遥香は落胆の声を漏らす。近くでそれを聞いていた辰臣がくっと喉の奥で笑った。

「お前って、ホントわかりやすいよな」

「なっ⁉︎ ち、違いますよっ」

慌てて否定したらさらに笑われる。

「違うって、何がだよ?」

「そ、れは……っ」

私はイかせてもらえるって、期待していた、わけではない——、のではなくて……。それはつまり、……あれ……?

否定に否定が重なって、思考がこんがらがった末に自分が墓穴を掘ったことを悟り、顔が真っ赤になった。

そんな遥香を辰臣と氷雨は面白そうに眺める。

「いいかげん、隠し事が苦手だってこと、自覚しとけよ」

「そんなに残念そうな顔をしなくても、すぐに俺のでイかせてあげるから」

氷雨が浴衣の合わせをくつろげる。布生地のあいだからのぞかせたそそり立つ肉棒に、遥香はひっと悲鳴をあげた。太くて長い、男性の象徴。色白の氷雨からは想像できないグロテスクな色のソレを目の当たりにして、顔から血の気が下がる。

「……む、むりです……っ、そんなの、入りませんっ」

「入らないわけねえだろ。俺とヤったあとだってのに何言ってんだ」

「オミのときは見てる余裕がなかったんだね。遥香ちゃんのココはもう、俺たちのを受け入れられるようになってるよ」

「……うそっ」

怖気付いた遥香は肘を敷布について頭上へとずり上がろうとするも、それを辰臣が許してくれるはずもなく。背後であぐらをかいた辰臣の脚の上に背中を乗り上げ、軽く身を起こした体勢からはもう、後ろに下がれない。

「大丈夫だって。疑うならその目で確かめればいい」

耳元でした低いささやきに、ゴクリと息を呑んだ。

ぬぷり……。熱をもった氷雨のペニスが膣口に触れる。

「いくよ……」

前後を二人に挟まれて逃げ場を失った遥香のナカへと、氷雨はペニスを侵入させた。

「や……っ、んぅ……っ」

亀頭の膨らみが入り口を押し広げる。身を固くしたものの、想像した肉を内側から裂かれる痛みは襲ってこなかった。

「え……っ、あっ……ど、して……」

ずるずると奥に侵入してくる熱棒の、通りのよさに遥香自身が氷雨たちよりも戸惑いをみせた。

「だーから言ったろ」

言いながら辰臣は遥香の胸へと手をまわし、胸のいただきを指先でくすぐった。

「遥香ちゃんの気持ち良いところは……ここかな」

先ほどまで指で刺激していた感じる箇所を、氷雨がペニスで責め立てる。

ぞくりと遥香の背筋に電流が走り、下腹部にぎゅぅっと力がこもった。

「はぅ、んっ、あ……っ、氷雨さん、それ……っ」

「うん。良さそうだね」

「い、いい……の? わかんない、けどっ……」

ぞわぞわして身体が落ち着かない。これが快感だというのか。

「よかった。そのまま……もっと俺を感じて」

ズチュ、グチュ、グチュ……ズズゥ……。

激しくは動かず、遥香の様子を見て労わりながらも、氷雨は容赦なく快楽をその身に教え込んでいく。

膣道はそんな氷雨の剛直を喜んで迎え、愛液をこぼしながらうねった。まるでペニスを奥へと誘っているようだ。

「あっ、んくっ……ぅ、ん……、あっ」

「イきそう?」

「うんっ、い……く、……イッ、あ、んっ……っ!」

ひくんっと大きく膝が痙攣し、遥香は軽い絶頂を迎えた。

膝を曲げて敷布についた両足に力が入り、自然と腰が上下に揺れる。それはもっと快楽がほしいと、自ら膣内の感じる場所にペニスを押し付けるような動きだった。

自身の淫らな行動が信じられず、遥香は咄嗟に辰臣の手を掴んだ。

「どうして……っ、私、こんな……」

「ああ、氷雨ので上手にイけたな」

辰臣に手を握り返され、両手をそれぞれ身体の横へと誘導される。

「ほんとう、敏感で感じやすい良い身体だよ。さて、もっと奥でも気持ち良くなろうか」

氷雨に両手で腰を抱えられる。

遥香は胸の膨らみのその先に、膣に半分も入っていない氷雨のペニスを見てしまいはっとした。

ズググゥ——。

竿で感じるところを擦りながら、ペニスがさらに奥へと入ってくる。

「あ……うそっ、なか……んぅ……ぁんっ」

そんなに大きなもの、収まりきらないと思っていたのに……。膣道はペニスの形にそってじわじわと広がり、ペニスを呑み込んでいく。その様子をまざまざと見せつけられ、困惑するさなかもゆるやかな快感に身がしなった。

トチュン——ッ。

最後は少しだけ勢いをつけて、膣内にペニスが収まった。

「……これで全部。まだ少しキツイけど、ちゃんと入りきった」

「んっ、ぜんぶ……?」

……アレを?

嘘だと思いたいのに、目の前の事実がそれを証明している。

氷雨がわずかに腰を引いては戻すたびに、ペニスの先端に子宮口をこねまわされる。すると子宮にじわじわと甘い痺れがもたらされた。

「でも奥は開発が必要かな。もっともっと敏感になって、いずれはポルチオで深イキできる身体になろうね」

「……ゃ、だめ……あぁっ」

そんなことされたら、戻れなくなる。

「別にいいだろ? 他に目移りする余裕がないぐらい、たっぷり可愛がってやるからな」

辰臣が腹部をするりと撫で、へその下あたりをくにくにと押してきた。へこんだ腹の内側で、深く刺さった氷雨のペニスをまざまざと意識してしまい、拒絶はいともたやすく喘ぎに変わる。

些細な愛撫も快楽に変わり、膣はペニスを締め付けて解放を誘う。本人は無自覚のまま行われる雄への奉仕に、受け手である氷雨は大変満足し、お返しとばかりにポルチオをえぐった。

「ひぅんっ」

「動くよ」

短い宣言の直後、ずるずると剛直が引き抜かれる。

「や、あっ、待って……あっ、や、それっ、……ああぁっ」

膣の浅い部分を亀頭でゾリゾリと責められ、快感に膣が収縮したところを見計らい、奥を突かれる。

トチュンと、狭まった肉路を強引に開かれる感覚に、背中にゾクゾクと痺れが走った。

ペニスの先端が子宮口を叩く。重い衝撃に腰が跳ね、ガクガクと膝が揺れた。

トチュ、トチュッ、トチュンッ。……ズルゥ……。

二度三度と奥を突いたペニスが後退して、また膣口付近を重点的に擦られる。

「あ……やだ、もっ……ぅ、んん、あ……イっ——っ」

決して激しくはない。しかし感じるポイントを抑えた執拗な抽送に、膨れあがった快感がはじけた。クリトリスや胸には触れられず、正真正銘膣内だけの刺激で遥香は氷雨にイかされたのだ。

「イったか?」

「ああ、覚えの早い子だよ」

息を乱して全身を小刻みに痙攣させる遥香を、辰臣と氷雨は微笑ましげに見守った。そして遥香が絶頂の余韻から抜け出す前に、氷雨はペニスでナカを強く穿つ。

ドチュン——ッ。

「ああんっ! やっ、ま……まって、いまっ、やあぁっ!」

快感にさらなる快感が上乗せされる。底知れない恐怖から

逃れようともがくが、二人は遥香を離さない。先ほどのゆっくりとした抽送から打って変わり、氷雨に激しく膣内を蹂躙される。

強すぎる快感に悶える遥香を抑えながら、辰臣は遥香のクリトリスへと手を伸ばした。

ツンと突き立つ肉芽を親指と人差し指でしごかれる。

「きゃああぁっ——!」

不意打ちで加わった強烈な刺激に、遥香は背中を仰け反らせた。

「すご、また締まった……」

「やめ、もうだめっ、……もぅ、ムリっ……ああっ」

初めて感じる強すぎる快楽に泣き言を漏らす。そんな遥香の意思とは裏腹に、肉体は快楽に歓喜した。膣からは愛液があふれ、媚肉はもっと感じたいと言わんばかりにペニスをしゃぶる。

ダメだと言いながらも氷雨のピストンに合わせて腰が揺れているから、なんの説得力もありはしない。

膣道を埋め尽くす剛直がかすかに膨らむ。

「……っ、……俺もイきそう」

「ぁ……やっ!? だめですっ、ナカは……っ」

「今さらなに言ってんだ。俺が良くて氷雨はダメなのか?」

後ろから辰臣に笑われるが、遥香はそれどころではなかった。

「だって、…………できちゃう……っ」

「そんときゃ俺たち三人で育てればいいだろ。……まあ、本当にできるかは俺らもわかんねえけど」

「心配しなくても、君を捨てるなんて無責任なことはしない。どんな結果になっても、君を逃がすことは絶対にないから」

「や、ああっ、あっ……ぁっ!」

言葉の不穏さに芽生えた危機感ですら、膣奥を責められてすぐに快楽へと塗り替えられてしまう。

「つーかお前、まだ俺たちから逃げられると思ってんのか? 往生際が悪いな、さっさと諦めて溺れちまえっての」

辰臣が親指でクリトリスを押し潰す。強烈な快感を受けて、遥香は膣内を占領する肉棒を反射的にきつく締め付けた。

「……くっ」

氷雨が息を詰める。涼しげな彼の表情が一変して余裕のないものに変わった。

秘部と氷雨の腰がこれまで以上に密着し、子宮の入り口に亀頭がめり込む。

腹の奥底から内臓を押し上げられる感覚に、遥香の息が止まった。

次の瞬間、膣奥に熱い液体が注がれた。

神経が鈍い身体の奥で起こるさまを、具体的に想像するのは難しい。しかし腹の奥底にじわじわと温かいものが溜まっていく感覚は遥香にもわかった。さらには胎内の熱に歓喜して、もっともっとと精液をねだるように膣壁がうごめいている。

「あ……やぁっ、あん……ぁあっ」

「タイミングがズレてイけなかったか」

「ごめんね。俺ばっかり夢中になってしまって……もう一度する?」

「やっ、もう、これ以上はムリですっ!」

イったとか、イってないとか、自分の状態はよくわからない。ただ快楽の波はずっと続いていて、当分引きそうになかった。

これ以上されたら身がもたない。

泣きながら首を横に振る遥香に氷雨は苦笑し、あっさりとペニスを抜き去った。

「そうあせる必要はないか。これからじっくり慣らしていこうね」

遥香の額へと氷雨が軽くキスを落とす。

「安定した?」

「……安定?」

「欠けているような、嫌な感覚はもうしてないよね」

言われてみれば、氷雨に抱かれる前にあった強烈な焦燥感が消えている。

素直にうなずくと、二人に頭を撫でられた。

氷雨の羽織を肩にかけ、辰臣と氷雨に支えられるようにして敷布に腰を落ち着ける。

望んでいない淫らな行為の直後だというのに、遥香の心は思いのほか穏やかだった。

殺されないだけマシだったとか、そういった面の諦めもあるが、やはり一番の要因は相手がこの二人だったからなのだろう。

「……お二人は、何者なんですか……?」

動画サイトで世界的に人気を博しているダンスパフォーマー。「ワザオイ」として活躍する、氷雨と辰臣。

ワザオイの活動に専念するため辰臣が大学を辞めるまでは、遥香にとって彼は一緒のサークルに所属する頼れる先輩だった。

そんな二人が関東を中心に発生している土地神消失事件の容疑者になり、遥香に調査の依頼がまわってくるなんてどんな因果だ。

しかも、彼らは容疑者のままでは終わってくれなかった。

「いなくなった土地神は、いったいどこへ……」

わからないことが多すぎる。

唯一、この二人は人間ではないということだけははっきりした。しかし彼らの本性は妖なのか……、はたまた人に憑いた怨霊のたぐいなのか、遥香には何ひとつ判別がつかなかった。

そんな正体不明の存在に身をあずけているというのに、本能的な恐怖心を抱けないのも不思議だった。霊的なことで危険を感じた際に起こる、背筋に走る冷たい感覚がまったくないのだ。

するりと頬を撫でてくる彼らの手が気持ち良くて、自ら顔を寄せる。あんなことをされても、遥香は辰臣と氷雨を敵だとはどうしても思えなかった。

氷雨が遥香の手をそっと掴み、自らの胸へと導く。

「土地神ならここにいるよ。俺とオミに神力を託したあとは自我を手放し、穏やかに眠っている」

まるでいなくなった土地神たちがそれを望んだかのような口ぶりだった。

「忘却による消滅は、人間が思う以上に、神にとっても寂しくて怖いことだ。……人の祈りによってこの地に生じた神々にとっては、特にね」

その説明に遥香の心臓がどくりと跳ねた。

全国の土地神を管理する神括連は、過疎化や人口減少によって祀られなくなった神が自然に消滅することを、時代の流れとして受け入れている。しかしそれは土地神たちの望む終わり方ではないのだと、氷雨は主張しているのだ。

辰臣が遥香の腹部にまわした腕の、抱きしめる力を強くした。

「この国ははるか昔から、ありとあらゆる事象に対して、多くの神格が創られてきた。そして今も……。神を生めるのは、何も天津神や人間だけじゃないからなあ」

辰臣が言っているのは、二人の正体に繋がるヒントだ。

神括連が管理しているのは、天津神に与せず各地でひっそりと信仰されてきた土着の神々だ。かつては人々の祈りによって生まれ、奉られた土地神たち。

つまり……時代の変遷と共に信仰を失い、人知れず消滅していくかと思われた神たちの切実な願いが集い、辰臣と氷雨という——新たな神が発生した、ということ……?

「人が住まなくなった土地に神は不要だから……僻地で管理ができないならひっそり消えてくれなんて、自分たちで創っておきながら無責任だとは思わないか? せめて奉遷をサボらないでいれば、奴らも加護を失うことにはならなかったのにな」

皮肉そうに笑う辰臣がどこか悲しそうに見えたのは、気のせいだろうか。

「今の時代、土地神たちは人間になんの期待もしていない。俺たちが生まれたのが何よりの証拠だ」

「御神体の管理者が神社本庁に属しているならいざ知らず。祈りを受け、ただ祀られることを望む、そんな神は神括連がまとめるところにはもういないよ」

辰臣に続いて、氷雨も遥香の肩を抱く。

二人の体温を感じる遥香の心臓はどきどきと鼓動を速めた。

パズルのピースが組み合わさっていく。

ここにいるのは人間を知り、社会を理解し、自ら考え行動できる知恵を持った神である。

そんな二柱の神様が「ワザオイ」という名でダンスパフォーマーとして活動している理由は——。





いつの時代も、舞は人の心を魅了する。

切実な祈りには程遠くても、彼らのパフォーマンスによってファンが熱狂すればするほど、信仰の力を得ることができる。ワザオイの活動の合間に本来の役目である土地神の回収をしていけば、二人はさらに強力な存在になっていく。

「イマドキの神様は、自分から推しを集めるものだよ」

氷雨の答え合わせに納得して、遥香は今度こそ諦めたように身体の力を抜いた。

こんなの、私に敵うはずがない。





続きのサンプル記事はこちら
【小説サンプル】二柱の愛にこいねがう・2〜4話
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全編はDL siteにて販売しています。
気になった方はご購入いただけますと幸いです。

市街地 2024/04/06 09:16

【小説サンプル】村娘に捧ぐ悪魔の狂愛・第1話

※DL siteで販売中の作品のサンプルです。

あらすじ

国境近くの村に住むクレアは、魔女に間違われて村人たちに殺されかけたところを悪魔アドラスに助けられる。
アドラスはクレアを魔界へと連れ帰り、命を救った代価にクレアの身体を求めた。
助けられたことに恩を感じながらも悪魔の要求を拒絶するクレアに、アドラスはゲームを持ちかける。
「お前が自らねだるまで、処女を奪うことはしない。神に忠誠を誓っているというなら、俺の誘惑に耐えてみろ」
悪魔の提案を自らに課された試練とみなし、クレアはゲームを了承する。

——こうして肉体を淫らに開発されていく、淫蕩な日々が始まった。

全体を通したプレイ内容

快楽責め・無理矢理・焦らしプレイ・連続絶頂・歪んだ愛

【!ご注意!】

※本作は物語の展開に以下の嗜好が含まれます。

・無理矢理系の性描写。
・凶悪なマッチポンプ
・触手責め
・処女喪失までの焦らしが長め(1話と2話は本番なしの18禁)
・ヒロインの悪堕ち
・正義が不在



【第1話 契約の代価】


その男は意識をなくしたクレアから衣服をはぎ取った。

肌触りの悪い、粗末な代物だ。染料の色はとっくにあせてしまい、負荷がかかる部分は今にも穴が開きそうなほど生地がすり減っている。

村人から貰ったお下がりのワンピースを、クレアはとても大切にしていた。

あの村の秘密を知らずに、村人たちのかりそめの優しさを信じ続けた——あわれな娘だ。

人間の愚かさを男は嗤った。

少し容姿を変えただけで、娘の訴えに聞く耳も持たず、魔女と決めつけ焼き殺そうとする。村の連中にとって、彼女がその程度の価値しかないというなら、こちらでいただいても問題ないだろう?

クレア自身が「助けて」とすがったのなら、なおのこと。

年若い娘の胸元から臍へ、白い肌に男の指が這う。

毎日のように山に入り薬草を採っていたクレアの身体には、いたるところに擦り傷があった。

山には大型の肉食獣や魔物が潜んでいるというのに、それらに遭遇することなく今日まで無事に生きてこられた。必然によって生じた幸運を、当のクレアは知る由もなかった。

オグに殴られて変色した頬を、男がそっと両手で包む。

男はクレアの目元に滲んだ涙を親指で拭い、台座に寝かせて自身の着ている衣類を脱ぎ捨てた。

乳白色の石でできた広い浴場でクレアを清めていく。

配下に任せず、男は自らの手で愛する女から地上の汚れを取り去った。

クレアの指に自らの指を絡ませて遊び、彼女の細い指を口に含んだ。ちゅぅっと吸って、舐めしゃぶるが、クレアは反応を示さない。

手応えのなさをつまらなく感じ、早々に飽きて手を放す。男は娘のしなやかな腰のラインをなぞった。官能的な触れ方にこそばゆさを感じてか、微かにクレアが身をよじる。

「……ぅ……ん」

吐息とともに零れた声に気をよくして、クレアの首筋に唇を寄せた。

白い肌にぽつぽつと花びらが浮かぶ。それらを満足そうに指でなぞり、男はクレアを抱いて自室へと運んだ。

己にクレアの背中を預けさせ、二人密着した状態でベッドに座る。今にも鼻歌が聞こえてきそうなほど、男は上機嫌だった。

力の入っていない四肢を好きなだけ愛でる。内腿や鼠蹊部といった、際どい部分は特に入念に。

胸の膨らみを揉んだ時、クレアは痛みに眉を寄せた。ここはまだ性感帯として育っていないらしい。

男は触診するように娘の身体のあちこちに手を這わせるが、一番重要な部分は放置されていた。

これは優しさでもなんでもない。秘所を暴くのは、彼女の意識がある時にすると決めているからだ。

焦る必要はない。時間はたっぷりとある。

——ようやく手に入れた。

クレアの横顔を覗き見て、悪魔・アドラスは恍惚と微笑んだ。




◇  ◇  ◇




お願いやめて! わたしは魔女じゃない!

足元から迫る炎に汗が吹き出す。上がってくる熱気で息ができない。

たすけて、助けて——っ!

丸太に縛られて身動きの取れないなかで、ひたすらに天界の神に祈った。

死の恐怖に錯乱する。無実を訴える声が悲鳴に変わろうと、村人たちは誰ひとりクレアを助けようとはしなかった。

苦痛に叫ぶクレアを眺め、オグをはじめとした村の男たちは皆、狂気的な笑みを浮かべていた。

絶望に打ちひしがれたその時、誰かに抱きしめられた気がしたが、クレアの意識はそこで途切れた。



「……お願い……誰か、助けて……っ」

自身の声にはっとして、クレアは目を覚ました。

焦る気持ちのままに身を起こす。周囲を見渡すが、そこは見覚えのない場所だった。

どうやら薄い布が垂れる天幕付きのベッドで眠っていたらしい。

光沢のある肌触りの良い純白の寝具。ベッドを覆うレースの向こうに透けた広い部屋。僻地の村で育ったクレアにとって、全てが未知の代物だった。

戸惑いながらも視線を落とす。そこでクレアは着ている衣服が自分の物でないことに気づいた。

袖口がヒラヒラと広がった、しっとりとした肌触りの白いワンピースだ。胸元には柔らかいレースの装飾がされている。知識がないクレアでも、一目見て高級な素材で作られた服だと想像できた。

——これは……? どうして、わたしはここに……?



ここに来る前の記憶を思い出そうとして、クレアの全身が総毛立つ。

最後に覚えているのは、村人たちに燃やされかけた、あの情景だ。炎から立ち込める灼熱。優しかった村の人たちの、残酷な笑み——。

たまらず身がすくむ。クレアは震える自分を抱きしめた。

俯いて顔に落ちた髪が視界に入り、はっと息を呑む。クレアの髪色は、いつもの赤茶色だった。

そのことにほんの少しだけ安堵し、幾分か冷静さを取り戻す。

——わたしは魔女と誤解されて……そう、必死になって、助けを願ったの。

炎が近づくさなかに「助かりたいか」——と、どこからか聞こえた問いかけにすがった。そうしてクレアは今、記憶にない場所にいる。

あれから村人たちはどうなったのだろう。——リーナは……?

次々と疑問が湧き上がるも、ひとつとして答えには辿り着けない。

クレアには自分が助かったという実感すらなく、ここが死後の世界だと告げられてもすんなり受け入れられるぐらいに、目に見える物全てが現実離れしすぎていた。

「お目覚めかな?」

悶々と思考を巡らせていたところに声がかかり、クレアは小さな悲鳴をあげた。

驚き顔を上げると、いつからそこにいたのか。天幕の布を手で避けて、ベッドの横に男が立っていた。

短い漆黒の髪を後ろに撫でた、美しい男だった。琥珀のような神秘的な瞳。堀の深い目鼻立ちに、薄い唇。そして耳の上、側頭部に生えた二本の艶のある黒い角——。外見からして、明らかに人間ではない。

佇まいからも気品を感じるその男の、芸術的ともいえる容姿にクレアはぽうっと見惚れてしまう。

瞬きも忘れて凝視してくる少女に、男の口の端が微かに上がる。

「……天使様」

思わずといった感じでクレアが呟く。

次の瞬間、男はクッと喉の奥から出かけた笑いを噛み殺した。

「そうか、そうきたか」

男が愉快そうに肩を震わせる。破顔しても彼が美しいことに変わりはないが、気品はなりを潜めて一気に人間味が増した。

「まさかアレと間違えられる日が来るとは……」

上戸に入ったのか、呆然とするクレアの前で男はくつくつと笑い続ける。その合間に聞こえた独り言に、クレアは首を傾げた。

彼の声を……どこかで聞いた気がする……。

既視感が記憶と結びつくのは早かった。

「……リーナと、会っていたのは……」

そうだ。まどろみのなかで、夢かと思っていたけれど、リーナと話していたのは……きっと彼だ。それに——。

「あなたが、わたしを助けてくれたのですね。じゃあ……ここは天界……?」

こんなに豪華で素晴らしい場所が、地上にあるはずがない。

炎にくべられたクレアに「助かりたいか」と問うたのは、この声の主である彼だ。

リーナは教会で聖女になるべく教育を受けていた。天界との繋がりはクレアよりもはるかに強い。

——村の人たちに殺されかけたわたしのために、リーナが天界の神様に助けを乞うてくれたのね。きっとそうに違いないわ。

自ら導いた答えに感極まるクレアに、男は笑うのをやめて目を細めた。

「色々と勘違いしているようだから、ひとつずつ訂正してやらねばなるまいな。まずひとつ——お前が今いる世界は、天界などではない」

「……え?」

「ここは魔界だ」

断言に理解が追いつかず、クレアはきょとんと固まった。

そんなクレアの反応が面白かったのか、男は笑みを深くする。

蔑むような目つきで見下ろされ、背筋に悪寒が走った。

「俺はアドラス。魔界を統括する悪魔の一柱——と言えば人間にも理解できるか?」

男——アドラスは、悪魔という言葉にさっと青ざめたクレアを楽しげに見下ろす。

「…………そんなの……ありえないわ……」

「はっ、一体それは何を根拠にした否定だ」

「だって、わたしたちの生きる地上は、天界の神様に護っていただいているのよ」

人々に神の加護がある限り、悪魔たちは地上に手を出せない。

天界の恩恵は信仰によってもたらされる。

亡き父の影響で信仰心の厚いクレアは、自らが悪魔の誘惑に耳を傾けたとは到底信じられなかった。

「その神とやらの守護ではなく、俺にすがったのはお前だろう?」

「嘘よっ」

「嘘ではない。村の男どもに焼き殺されそうになった時、お前はなんと願った? ——死にたくない、助けて——と、そう言ったのはお前だ」

「……ちっ、違うの、あれはっ」

炎が迫るなか、確かにクレアは助かりたいと望んだ。しかしそれは天界の神に救いを求めたのであって、間違っても悪魔にすがったのではない。

必死に訴えるクレアであったが、それに悪魔が「はいそうですか」と納得するわけがない。

「なんにせよお前の願いを俺が叶えたという事実は変わらない。すでに契約は成された。今度はお前が俺に対価を払う番だ」

アドラスが寝台に身を乗り上げる。クレアの口から「ひっ」と悲鳴が零れた。

「待って、わたしはそんなつもりじゃ……っ」

「ではどういうつもりだったというのだ。助けてと叫び、熱い熱いと喚きながら、焼かれ死ぬのがお前の本望だったとでも言いたいのか?」

「ちがう……違うの……」

うわごとのように否定の言葉を繰り返すしかできない非力な獲物を、悪魔が押し倒した。

「いや……っ、な、に……するのっ」

「お前は身ひとつで俺に助けられた。その身体以外で、払える代価があると思うか?」

アドラスの長い指が頬の輪郭をなぞる。表情を引き攣らせながらもクレアは気丈に悪魔を睨んだ。

「わたしは——、わたしのこの身と心は、天界の神様のものよ」

そうだ。こんなもの契約でもなんでもない。悪魔に騙されてなるものか。

「救いもしない神に心を捧げて何になる。村人に殺されかけたお前を助けたのは、天界の神ではなく魔界の悪魔だ」

だめ、真に受けてはいけない。

魔界の住人は天界の神々と敵対関係にある。

神の加護の下に生きる地上の生き物にとっても、魔界の悪しき存在は敵なのだ。

「……あの囁きがあなたのものだと知っていたら……、わたしは助けを求めなかったわ」

至近距離で見つめられながら、クレアは挑むように言い切った。

警戒心を剥き出しにして睨むクレアとは反対に、アドラスは余裕綽々な態度を崩さない。

「見上げた信仰心だ。やはりリーナよりも……お前が聖女になるべきだったんじゃないのか」

——リーナ。その名前にクレアは息を呑み、反射的にアドラスの肩を掴んだ。

「リーナっ、彼女は無事なの!?」

「自分を身代わりにして生き残ろうとした女の心配か。無知とは誠に罪深く、哀れなことだな」

アドラスがクレアの手を掴み返し、そっと指先に口づける。そのまま見せつけるように人差し指に舌が這う。

生暖かく柔らかい感触がした直後に、唾液に濡れた部分がすっと冷え、強烈な不快感に襲われた。

「いやっ、離して!」

振り解こうとするも、握られた手はぴくりとも動かない。

「純粋無垢で世の中を知らないお前に教えてあげよう。リーナはお前が思っているほどに洗練潔白な女ではない。あれは私欲のためなら神を裏切り、悪魔と契約を交わすことも躊躇わない」

「……嘘よ、リーナがそんな」

「昨夜、俺はあの女の呼び出しに応じて地上に降り立った。あの女と契約を結ぶためにな」

クレアの脳裏に昨夜の話し声が再生される。あれは、夢じゃなかったの?

「そして俺は、リーナの『魔女として死にたくない』という願いを叶えてやった。——いくら騙されやすいお前でも、そろそろ事の全容が見えてきたのではないか?」

翌朝に感じた違和感。リーナと同じ銀色になった、クレアの髪。

朝早くから家に押し寄せてきた村人たちは、憎悪に満ちた表情でクレアを睨んだ。彼らはクレアの顔を見て、魔女だと口走った。

そして住み慣れた家から引き摺り出される時、奥の部屋ではクレアと同じ顔の女性が、こちらを見て笑っていた——。

悪魔が嗤う。

「クレア……お前とリーナの容姿を一時的に入れ替えたのは俺だ。ああ安心しろ。今はもう、お前はちゃんと元の愛らしい顔に戻っている」

「…………っ」

言葉を失い愕然とするほかなかった。

悪魔は簡単に嘘をつく。言葉を鵜呑みにしてはいけない。

……でも、わたしを焼き殺そうとした村の人たちのあの怒りは、ほかに説明がつけられない。みんなは本当に、わたしを魔女だと思い込んでいたの……?

村人たちはいつもクレアに優しかった。親を早くに亡くし、ひとりになった彼女を、度々気にかけてくれた。

そんな村人たちの豹変には理由があったのだ。

洞窟に連行される最中、オグは魔女に名前を呼ばれた者は呪われると言っていた。真偽は定かでないが、彼らにとって魔女というのはそれだけ恐ろしい存在だったのだ。

容姿を変えられたクレアに、自分の正体を証明する術はなかった。そして全ては悪魔と、リーナの思惑通り。

寒くもないのに身体が震えだす。

知らぬうちにクレアから流れた涙を、アドラスがそっと指で拭った。

「かわいそうに……」

哀れみのこもった声音に揺らぎかけるも、寸前で踏みとどまる。この男——アドラスは悪魔だ。騙されてはいけない。

「……リーナは、どこにいるの? 彼女に会わせて」

問いただすなら悪魔ではなく、まずはリーナだ。真偽を確かめるためにも、リーナの口から本当のことを聞かなければならない。

クレアは覆い被さる男の肩を押し、拒絶を示す。しかしか弱いクレアの細腕では、アドラスを退けることはできない。

獲物の無駄な抵抗を楽しそうに見下ろしながら、捕食者は現実を突きつける。

「リーナなら死んだよ。魔女を庇った裏切り者のクレアとして、村の男どもになぶり殺された」

さも当然とばかりに伝えられた内容を理解しきれず、クレアはパニックに陥った。

リーナが死んだ——?

彼女は悪魔と契約して、助かったのではなかったの?

村の人たちが殺した? クレアとして? どうして……あんなに優しい人たちが、——わたしを殺すなんて、そんな……。

……魔女を庇う行為は、殺されるほどの罪だったの……?

リーナはわたしを騙していたの? リーナが悪魔と契約したのが本当なら、わたしはとんでもない人を、匿っていた……?

「……うそ……っ、そんなはず、ないっ。村の人たちは……そんな酷いこと、絶対にしないわ」

「その酷いことをしないはずの連中に焼き殺されそうになったのはどこのどいつだ?」

「……っ、で、でも……リーナは、聖女になれるほどの女性よ。悪魔と契約なんて、するはずがない」

「お前があの女の何を知っている。アレが自分の過去を、包み隠さず打ち明けたとでも思っているのか? ……まあ、お前が俺の話を信じなくとも構わないさ。どのみちすることは同じだ」

アドラスが薄い服地の上からクレアの胸に触れた。

「い、いやっ」

性的な知識に疎いクレアでも、肉体を他人に触れられることに抵抗があった。彼女の崇める天界の神々は、地上の生き物の繁殖を目的としない性行為を禁忌としている。

卑猥な手つきに危機感を覚え、どうにかアドラスの下から抜け出そうともがく。しかし腰骨部分に馬乗りになった男から抜け出すのは容易ではなかった。

「そう怯えるな。痛いことはしない。身を任せれば、天国に連れて行ってやる」

天国などと、悪魔らしからぬ発言にそんなはずがないと小刻みに首を横に振った。

脇から腰のラインを服越しに男の手が這う。悪魔に弄ばれる恐怖は計り知れず、クレアの緊張は頂点に達した。

「……うっ……うぅ……」

涙が溢れ出す。胸元で指を組んだのは、もはや無意識だった。

——神様……どうか……。

今にもその身を蹂躙しようとする男には目もくれず、クレアは一心不乱に敬愛する神に祈った。身を固くして強く目を閉じた彼女には、アドラスの白けた表情は窺えない。

「……かみさま……っ……」

「救いを求める相手を間違えるな。この場でお前の生殺与奪の権利を握っているのはこの俺だ」

そんなことはわかっている。でも、この男に何をされようが、クレアの心は神の物だ。

「……興醒めだな」

アドラスはつまらなそうにクレアを睨み、舌打ちしそうになるのを堪えた。

死にたくないと悪魔を利用しておきながら、いざ助かればすぐに手のひらを返す。それがどれほど道理から外れたことなのか、この娘は世のことわりを全くわかっていない。

さてどうするか。まずは契約違反の賠償の重みを教えてやるべきか……。

思考を巡らせた末、妙案が浮かんだアドラスは笑みを讃えた。

一旦クレアから身を離し、ベッドの縁に腰掛け足を組む。膝に肘を置いて頬杖をつきながら、彼女が祈りに飽きるのを気長に待つ。人間の集中力がそう長く続かないと、悪魔はよくよく理解していた。

しばらくして、身構えていても何の変化も起きないことに疑問を抱いたクレアは、神への祈りよりも周囲の状況が気になり、恐る恐る目を開く。

「————っ」

視線を彷徨わせた末にアドラスと目が合う。拘束もされていないのに、ベッドの上でひとり仰向けに寝ている自分が急に恥ずかしくなった。クレアは急いで起き上がり、後ずさるようにしてアドラスから距離を取る。

「対価を払わないとは、お前は強欲でがめつい奴だな」

「だって、あなたは悪魔で……」

「悪魔ならば約束は守る必要がないと? 都合のいいように利用するだけ利用して、あとは知らぬ存ぜぬ……か。——契約に縛られた悪魔よりも、よっぽど人間のほうが狡猾だな」

「違う……違うの」

「おまけに、助けてやったというのに礼のひとつもない」

否定の言葉を言い切る前に、アドラスがグサグサと心を抉ってくる。

卑怯の代名詞とも呼べる悪魔という存在に「狡猾」と言われたのは、思いのほかショックが大きかった。

「……助けてくれて、ありがとう」

死にたくなかったのも、炎に焼かれる危機的状況からアドラスに助けられたのも事実だ。

幾分か冷静さを取り戻した今ならはっきりとわかる。あの時誰でもいいから助けて欲しいと願ったのは、紛れもないクレアの本心だった。

「まあいい。それでお前は、よほど俺に抱かれたくないようだが……その身以外、契約の対価に何を差し出せる?」

うっと言葉に詰まり、クレアは胸元を強く握りしめた。

純潔は守らなければならない。しかし大した財産も持たないクレアに、差し出せるものなどあるのだろうか……。

悩む彼女の脳裏に、ふと美しい銀髪の女性の顔が浮かんだ。

「リーナは、あなたに何を支払ったの?」

「十年分の寿命と、死後の魂の所有権だ」

あっさりと返された答えに、クレアは質問したことを後悔した。

悪魔との魂を使用した契約は天界の禁忌に触れる。神への最大の冒涜とされ、死後の浄化も許されず天界へと還れなくなる。

それは肉体を差し出す以上にしてはならない禁忌中の禁忌だ。リーナが悪魔と交わした取引の真偽は確かめようがないが、参考にできそうにない。

しばらくクレアを悩ませたのち、頃合いを見計らってアドラスは口を開いた。

「——いいだろう。お前のその天界への忠誠心に敬意を示し、俺からもひとつ提案しよう。これに乗るかはお前次第だ」

突然の申し出に、クレアは大きな目を見開いてアドラスを凝視した。

真っ直ぐな視線を受け止め、悪魔の琥珀色の瞳が微かに細められる。

「ゲームをしようか」

「……ゲーム?」

「こういうのはどうだ? お前から求めてこない限りは、俺はお前の処女を奪わない」

「本当に?」

希望を見出したクレアの声が上ずる。

アドラスはゆっくりと思わせぶりに首肯した。

「ああ。だが、お前の望みを聞くだけではゲームにならないのはわかるな? こちらは様々な手を尽くして、お前に『抱いてほしい』と言わせてみせよう。お前が天界の連中に忠誠を誓うというなら、俺の誘惑を断り続ければいい。簡単だろう?」

そうか、これは彼が与える試練なのかと、クレアは解釈する。自分から悪魔を求めるなど考えられない。

アドラスが諦めるまで彼を拒めたら、ゲームはクレアの勝ちとなる。

「これは無知で哀れなお前への、俺からの譲歩だ。ゲームを拒否するなら、その時はもう俺の好きにさせてもらう」

選択肢が増えたように見せかけて、選べる道はひとつしかなかった。

「……わかったわ。あなたのゲームを受けましょう」

「よかろう。承諾するならこっちへ来い」

差し出された手に、迷いながらもクレアは自らの手を重ねた。

「きゃっ」

アドラスに手を引かれ、バランスを崩したところを彼に支えられる。膝立ちとなったクレアの頭部に男の手が回った。

「これまでの生活の影響か、やはり傷んでいるな。せっかく美しい髪をしているんだ。後で手入れしてやる」

ぱさついた髪に指を通される。上から目線のぞんざいな口調に反した優しい手つきにクレアは目を泳がせて戸惑った。

「だめよっ、そんな贅沢、していただく理由がないわ」

早くに親を失ったクレアは、村人たちの助けを借りてどうにかこれまで生きてきた。

村人たちは皆優しい。それでもクレアには、自分は世話になっている立場なのだから、村人たちよりも質素に暮らさなければならないという負い目が常にあった。

傷んでいるからといって、髪の手入れなどもってのほかだ。

罪悪感に駆られるクレアをアドラスはふんと鼻で笑う。

「俺がやりたいことをして何が悪い。クレア、お前が俺の行動で制限できるのは、純潔を奪わない、そのひとつだけだろう? 嫌ならゲームは放棄したとみなし、こちらも好きにさせてもらうが」

「……っ! そ、れは……」

「嫌なら大人しくしてろ」

そう言われては従うしかない。

クレアは手ぐしで髪を梳かれ、居心地悪そうに身を固くする。

抵抗がなくなったのをいいことに、アドラスは好きに動いた。細い首から顎へと指を這わせ、クイと彼女の顔を上向かせる。怯えながらも真っ直ぐに見つめてくるその瞳に目を細め、薄く笑んだ悪魔はクレアの顔に己の顔を近づけた。

アドラスにピンクの唇をぺろりと舐められる。驚きに硬直したクレアを浮遊感が襲った。

柔らかな感触に背中を包まれ、仰向けに倒されたクレアははっと息を吸い込み慌てた。

「や、約束が違うわっ」

上に乗り上げる男を必死に押し除けようとするがびくともしない。

「安心しろ。破瓜に至ることはしない。こんなもの、ただの戯れだろう?」

身を屈めたアドラスがクレアの頬をべろりと舐める。

「ひゃっ……」

「禁忌には触れないさ。この程度の遊びは、村の連中も普段からしているぞ?」

「んっ……ゃ……」

耳元で囁かれてくすぐったさに肩が上がった。

「耳が弱いか?」

「知らないっ……こんなの……ぁんっ」

ふぅ……と吹きかけられた息にクレアの身体が小さく跳ねる。

ひとつひとつの悪戯に過剰な反応を見せる無垢な娘をクッと喉の奥で笑い、アドラスはあえて大きなリップ音を鳴らしてクレアの耳に口付けた。

「きゃうっ!」

「愛している……と、こうして身体を密着させながら愛を囁き合い、それから、村の奴らはどうしていた? ……んん? お前は知っているだろう?」

問いかけに顔が熱くなる。

山の中での村人の密かな逢瀬をクレアは目撃したことがあった。薬草を採りに山に入った帰りの出来事だ。ともに別の伴侶を持つ村の男と女が、木の影に隠れて情熱的にキスを交わしていた。

現場に出くわしたクレアは意味がわからないながらも、どうしようもなく恥ずかしい気分に陥ってしまった。

幸い二人はお互いに夢中でクレアには気づかなかったので、そっとその場を立ち去ったのだった。

あの時の光景を思い出しクレアが口をきつく閉じたのを、アドラスは見逃さなかった。

「そう、……ここで愛情を確かめ合うのだったな」

囁きとともに口元を舐められる。

嫌だ! あなたとわたしの間に愛なんてない——! 反論しようにも、口を開けない。身を固くしてひたすらにアドラスが飽きるその時を願うばかりだ。

きつく目を閉じて神に祈る。

不意に脚に風を感じ、ふるりと身体を震わせた。次いで聞こえた悲鳴のような高音に、驚いて首を持ち上げる。

ビリリィ——っ!

アドラスが、クレアの身に纏うワンピースをこともなげに引き裂いていた。

「なっ!? なにしてっ」

「どうした? 俺が与えた物を俺がどう扱おうが、お前にとやかく言われる筋合いはないだろ」

「そんな……」

着心地の良い衣服は瞬く間に布切れに変わり、クレアは生まれたままの姿になった。

羞恥を忘れて愕然とするクレアにアドラスが乗り掛かり、彼女の首元に顔を埋める。

「……んぅ……っ」

ねっとりと首筋に舌が這う。柔らかく生暖かい感触がした箇所に、今度はチリリと痛みが襲った。

白い肌に浮かび上がる所有印に戸惑っていると、アドラスは顔を離さないまま大きな手でクレアの胸に触れてきた。

「やっ……まって!」

「何を待つ? 約束通り、俺はお前の純潔を奪ってはいない。それにこんなもの、ただのスキンシップだ。前戯にもなりやしない」

「でも、こんな……」

「これも嫌だというなら、ゲームは放棄するということになるが……。拒絶は契約破棄とみなし、すぐにでもお前のここを、俺のペニスで犯してやろうか?」

ここ……と、秘められた場所に指を突き立てられてクレアは慌てた。

「だめ! それはっ、それだけは……っ」

「ならば大人しく愛撫を受け入れろ。心配しなくても、『欲しい』とねだらない限りお前は処女のままだ」

「…………ぁっ」

乳首を指で摘まれる。僅かな痛みの後にじんと熱がともり、くるくると指で乳輪をなぞられてくすぐったさに身をよじった。

反対側の胸に男が口を近づけ、れろれろと見せつけるように舌先で胸の頂を舐めしゃぶる。

「あっ……なに、を……っ!?」

気まぐれに乳首を甘噛みされて、クレアはひっと息を呑んだ。

「いや……っ、わたし、は……美味しく、ないわ……」

悪魔に身体を捕食される場面を想像してしまい、恐怖に震えた。

「そんなことはないさ。このぷっくりと突き出た乳首は、とても美味そうだ」

「…………っ!」

「そう怯えなくとも食いやしない。腹に収めてしまうと楽しみは一度きりになってしまうだろ? それに乙女の血肉よりも美味いものはこの世に山ほど存在する。そのうちお前にも食わせてやる」

「じゃ……じゃあ、どうして、そんなところを舐めたりなんか……んんっ」

赤子が母乳を求めるように乳首に吸い付かれ、肩がびくりと跳ねた。口で胸の先端の粒を食んだまま、アドラスはクレアへと上目遣いに視線をよこす。

クレアは羞恥と居た堪れなさにうろたえることしかできない。逃げ出したい。だけど彼を拒んだら契約違反とみなされて、純潔を奪われてしまう。

神々を慕う心からどうにか逃げずに踏みとどまっているが、本当は怖くて仕方がなかった。

動けない乙女に、悪魔は慈悲を与えない。

ちゅっ、ちゅぅ……と音を立てて胸のあちこちに赤い痕を散らす。

アドラスの意図がわからずとも、その行為には苦痛が伴わないことをクレアは次第に理解した。小さな安心が芽生えると、緊張にこわばっていた身体から徐々に力が抜けていく。

すると今度はアドラスが弄る胸の感覚に注意が向いた。やわやわと胸を揉んでくる、彼の手の温度。胸の膨らみをゆっくりと舐め、乳首をしゃぶる、舌の柔らかさ……。

くすぐったくて、落ち着かない。それになぜか触れられていないのに、下腹部のあたりがむずむずしてくる。

「いい子だ。淫乱の素質は十分にある」

「そんなこと、ない……っ」

「嘘をつくな。こんなに乳首をぷっくり立たせていては、説得力のかけらもないぞ。本当はもっと触って欲しいのだろう?」

「きゃあっ!」

左右の乳首を同時に摘まれ、鋭い痛みに肩がすくんだ。だが……クレアが感じたのは痛みだけではなかった。チリリと熱を帯びた甘い痺れを確かに自覚して、きゅっと腹に力が入る。内腿を擦り合わせたのは無意識だった。

「……ああ、下も可愛がって欲しいのか? だがそこは最後のお楽しみだ。まずはほかを楽しませてもらおうか」

「きゃっ、うぅ……っ」

舌で乳首を強く押された矢先に、今度はチュッチュと吸い上げてくる。乳首がジンジンしてきたら、今度は口に含んだ乳房をジュパッと音を立てて離すのを繰り返された。振動で膨らみがたわむ。アドラスの唾液で濡れた胸は卑猥さが際立って見ていられない。

「恥ずかしいか?」

ちりりと、胸元に痛みを感じ、恐々と顔を持ち上げてみると、肌に浮かぶ赤い花弁が増えていた。

「……んっ、これは……純潔を奪う、準備ではないの……?」

だとしたら約束が違う。未知の行為に心が挫けそうになりながらも、クレアは気丈にアドラスを睨んだ。

来年春が来れば、クレアは成人する。村での伝統の儀式を終えて、晴れて大人の仲間入りをするはずだった。

儀式についての心構えは、村の女たちから少しずつ教わっていた。

——神様に選ばれた男に純潔を捧げることで、あなたは大人になるの。これは神聖な儀式であると同時に、血の穢れが伴う、危険な儀式でもあるわ。……安心なさい。男たちに任せていれば、何の心配もないわ。

成人の儀は天界の教えにまつわる神聖なものだ。儀式をせずに純潔を悪魔に奪われるなど、決してあってはならない。

訝しがる無知な乙女を悪魔が嗤う。

「準備か、……そうとも言えるな」

男は顔を引き攣らせたクレアの手を掴み、ボトムスの生地越しに自らの股間に触れさせた。

「ひぃっ……いやっ!」

「だがこれは、目的を遂行するために特別必要というわけではない」

布越しでもわかる局部の体温と異様な膨らみに、クレアの手が震えた。

「早い話、俺のここにあるものを、お前の大切な場所にぶち込めば終わりなんだ。クレア、お前が重要視しているのはそれだろう? となるとこんなものは、ただのお遊びでしかない。違うか?」

掴まえた手を持ち上げて、アドラスはクレアの手のひらに口付ける。

「俺はただゲームを楽しんでいるだけだ。これを準備とするかはお前の捉え方次第だぞ」

「どういう……こと?」

小指の第一関節にアドラスの歯が当たる。甘噛みして、ぺろりと舐められた。

「気持ちいいか?」

当然、クレアはぶんぶんと強く首を横に振った。否定は予想済みだったらしく、悪魔は面白そうに肩を揺らす。

「いずれは俺の愛撫によって、どこからでも快楽を拾えるようになるさ」

「嘘よ……ありえない」

「信じないならそれでいい。どう思おうが、やることは変わらん」

指の股にねっとりと舌が這う、まるで芋虫が歩いているかのように気持ち悪い。これを快楽だと思うなんて、到底信じられない。

——悪魔の言うことに怖気付いてはいけないわ。これは試練なのだから……。受け入れ、耐え忍んで、いずれわたしは地上へ戻るの。

手を振り払いたい衝動を懸命に堪え、涙目になって挑むようにアドラスを睨みつけた。

琥珀色の目が僅かに細められる。その表情が何だか寂しそうに見えたのは、きっと錯覚だ。

アドラスの手から力が抜ける。逃げるようにクレアは自らの手を胸元まで避難させた。

「ここはまだまだ開発が必要か。ひとまず耳と胸と……、他はどこが敏感なのだろうな」

「きゃあ……ぁっ」

次は何をされるのかと身構えた矢先、左足を持ち上げられた。左右に開かれた足の間にアドラスは膝をつき、クレアのふくらはぎを指でつぅ……となぞる。

「いや……下ろしてっ」

その位置からだと、クレアの恥ずかしい部分が丸見えだ。ふくらはぎのくすぐったさ以上に、秘所が無防備に曝け出されたことが不安でたまらなかった。

脚の内側の、肌が薄い箇所を触れるか触れないかの際どいタッチでまさぐられる。微かに感じる男の手の感覚に身体がこわばる。

「スラリと伸びた美しい脚だが、もう少し肉が付いていたほうが俺の好みではあるな」

「……っ、知らない!」

こんなタイミングで褒められても、嬉しくもなんともない。

カッと頬が熱くなり、咄嗟に持ち上げられた足をバタつかせたが、その程度でアドラスが解放してくれるはずがない。

可愛い反抗には、思わず見惚れるほど美しい笑みで返されてしまった。

「まあ、肉付きが悪いのは仕方ないか。それでもお前は……あんな環境にいながらも、よくここまで美しく育ったものだ」

しばし状況を忘れてアドラスに魅入ってしまったクレアだったが、放心したままどうにか首を横に振る。

「……嘘よ」

こんなのはどうせ悪魔の戯言だ。この身が美しいなんて誰にも言われたことがない。

「嘘なものか。お前はとても美しいよ。肉体だけではなく、顔も、声も、——魂もな。お前という存在の価値を隠し続けた、村の連中の罪深さをお前が知らないのは、愚かを通り越してむしろ清々しいよ。よくぞ今日まで純粋でいてくれた」

歌うようにすらすらと述べられた、これを賛辞と捉えて良いものか。人から褒められ慣れていないクレアは、反応に困った。

——駄目。悪魔の言葉を簡単に信用してはいけない。

騙されるものかと口を噤む。強い意志がみなぎるその顔をふっと笑い、アドラスはクレアの両足を持ち上げた。

「……なっ……っ!」

柔軟性に富んだ身体は易々と折れ曲がり、まんぐり返しの体勢になったところで手近にあったクッションを腰の下に差し入れられた。

「大人しくしていろ。ゲームを忘れたわけでもあるまい」

「いや! こんな格好、やめてっ!」

「嫌だというならゲームは放棄する、ということで構わないな?」

「…………っ!」

頷ける、はずがなかった。

大人しくなったクレアの秘所に、アドラスが顔を近づける。長い指が、ねっとりと秘裂を撫でた。

「ああ、ちゃんと濡れているな」

膣より分泌された愛液をすくい取り、クレアの太腿に塗りつけて湿り具合を教えてやる。

それが意味することへの知識がない、無垢な娘は恥ずかしがりながらも当惑した。

「これはお前の身体が、雄を誘っている証だ」

「……嘘、……そ、んなこと、ない!」

「お前が心で誰を慕っていようが、肉体は正直だからな。快楽を与えられると、ココはこうして蜜を垂らし、雄を受け入れる準備を始めるんだ。知らなかったか?」

顔から火が吹き出しそうだった。

知らなかったかと問われれば、そうとしか言いようがない。村の者は誰も、クレアにそんな卑猥な知識は教えてくれなかった。

だから悪魔が与えてくる知識に真偽がつけられず、ただうろたえる。神の敵の言葉は全て偽りだと突っぱねるには、クレアの性根は優しすぎた。

「……っ、ぅ……もっ、ぃや……っ」

ついにクレアは泣き出してしまう。悪魔が怖いからではなく、考えることが多すぎて、完全にキャパオーバーになってしまったのだ。——しかし、悪魔は容赦がなかった。

至近距離でふぅっと、秘所に吐息を吹きかけられる。無意識に大切な場所にきゅっと力が入った。すると今度は、柔らかくて温かい、湿り気を帯びた感触が膣口を襲った。

「————なっ!?」

アソコを、アドラスが舐めている。

涙に濡れた瞳を大きく見開く。目に映る光景は、到底信じられないものだった。

「いやっ、やめて! ……きたないっ」

「どこがだ? お前に汚れたところなどありはしない」

くちゅ……っ、くちゃぁ……くちっ——。

わざと水音を響かせて、羞恥を煽られる。

こんなのはおかしい。制止を強く訴えるべきだと頭の中で警鐘が鳴り響く。しかし同時に、異常な行為を平然とやってのけるアドラスに対し、自分の感覚がおかしいのかと心の片隅に疑問が浮かんだ。

戸惑いがクレアの倫理観にヒビを入れる。それを悪魔が見逃すはずもなく——。

「舐めても舐めても蜜が溢れてくる。快楽を感じている証拠だ」

「……そんなこと、絶対にないわっ」

「口ではどうとでも言える。人間は嘘つきだからな」

「んっ……ゃ、違うっ、……本当に、わたしは……っ」

否定など無駄だと知らしめるように、アドラスは舌を膣に食い込ませた。

「ふぅんっ……んんっ、な……っ? ……それ、いやぁっ」

男の舌の温度を直に感じる、膣の浅い部分におかしな疼きが生じていた。落ち着かない感覚はじわじわと膣道の奥まで伝播して、やがて子宮へ、そして全身に得体の知れないもどかしさをクレアにもたらした。

気持ち悪い、とはまた違う。経験のないぞくぞく感にとにかく身体が休まらない。

「……ぅ、んっ、……ふぅ……ぅっ」

肉体の中心から目を背け、豪華な内装の部屋を眺めて気を紛らわす。そうして一秒でも早くアドラスが飽きてくれるのを待とうとしたクレアだったが、直後——秘所に感じた強烈な刺激に腰を跳ね上げた。

「——ひっ! あっ、ああぁっ、……なっ!? やあぁっ」

アドラスは膣を舐め啜りながら、指でクリトリスをいじり始めた。

膣口から溢れる愛液を指に絡め、滑りを帯びたその指で肉芽の上をなぞりながら往復する。

そうしているうちに、慎ましく潜んでいた芽が僅かに顔を覗かせた。神経が集中するその部分を、指先で軽く引っ掻かれると、クレアは身体をびくんと痙攣させた。

無垢でありながら敏感な身体だ。性の快楽を覚えさせたら、どんな乱れ方をするのだろうか。

堕としがいがあると、アドラスは内心ほくそ笑む。そして何も言わずにクリトリスを包む皮を指でぱくりと左右に割り、ぷっくりと突き出たピンク色の肉芽に唇を寄せた。

舌先で裏筋を丁寧に舐めてやると、たまらずクレアが暴れだした。

「やだっ、もうやめて……っ、ああぁっ、あっ、……こんな……っ、お、かしぃっ……!」

なりふり構ってはいられなかった。クレアは腰を振って愛撫から逃れようとするが、すかさずアドラスに腰を抑え込まれてしまう。赤ん坊がおしめを替える時のように、足をさらに上半身のほうへと畳まれる。上を向いた秘所からアドラスは一向に顔を離してくれない。

クリトリスからもたらされる快楽は、性体験のないクレアには強すぎるものだった。強烈な刺激に心がついていかず、悪魔と交わした「約束」を忘れて身をよじる。

そうしているうちに、ふと視線をクレアの顔に移したアドラスと目が合った。

「ひんっ……んんぅっ!」

たった一瞬。琥珀色の瞳に自分が映ったと認識した途端、これは受け入れるべき試練なのだと思い出す。

「ふ……んっ、ん……んぅ、ぅっ、うぅんっ」

暴れるのをやめたクレアを褒めるように、悪魔は優しい手つきで太腿を撫でた。

「ん……ぅ、う、くっ……ぅう……っ、んっ……」

抵抗はいけない。ならばせめて自分の口から漏れるおかしな声だけでもどうにかしようと、クレアは必死になって唇を閉じた。

ツンと育った肉芽を窄めた口でしごかれ、足先にぎゅうっと力がこもる。腹の底から得体の知れない予兆が迫り来るのを察して、膝や腰、手先が小刻みに震えだした。

「……ぃっ、んん……っ、んぅうっ、やぁ——!」

快楽に追い立てられた果てに、とうとうクレアは絶頂を迎えた。不可思議な感覚の大きな波を全身で感じながらも、愉悦に浸るより先に何が起こったのかがわからず戸惑う。ビクビクと痙攣するナカにどことなく虚しさを覚えつつ、クレアは息を荒くしてアドラスを窺った。

「……何を、したの……っんぁあ」

ぺろりとクリトリスをひと舐めして、アドラスは秘所から顔を離す。

「俺は何も。ただここをいじってやっただけだ。気持ちよかっただろう?」

「そんなこと……ないわ」

「快楽に逆らえず絶頂に達しておいてよく言えたものだ」

「今のが、快楽ですって?」

あんな訳のわからない、自分が自分でなくなるおかしな感覚が——? それこそ、ありえない。

「そうだ。お前もすぐに性の快楽を覚えて俺を求めるようになるだろう。愛撫だけでは物足りず、ここに俺のペニスを欲しがる日も遠くない」

アドラスはクレアの足をベッドに下ろし、彼女の下腹部を押し揉む。

子宮が軽く圧迫されて、なぜか膣がうねった。

「ない……そんな日は絶対に来ないわ!」

腹部の熱が疼きとなる前に、強く首を振って色欲を脳裏から追い出す。悪魔の思い通りになんてなるものか。

クレアの瞳からは、未だに希望の光が消えていない。誘惑に耐え続け、ゲームに勝てばアドラスは自身を解放してくれるのだと、クレアは本気で信じていた。

そんなある意味おめでたい獲物に含みのある視線をよこして、アドラスは自らの衣服に手をかけた。ひとつずつ、着ているものを脱ぎ捨てていく。

露わになった男の裸体に、クレアは思わず見惚れた。日焼けを知らない、傷ひとつない白い肌。程よく筋肉がついた、引き締まった肉体。そして——……。

「…………っ!」

目線を下げた末に男の象徴——そそり立つペニスを直視した瞬間、我に返って急いで両手で顔を覆う。

異性の裸体は初めてというわけではない。幼いころに、亡き父の裸は何度も見ていた。村の女たちにも、女性と男性の身体の違いについては教わった。

大人になるため儀式として、クレアの女性器に「ソレ」を受け入れる日が来ることも——。

でも、嘘……。あんなに……大きいなんて……。

アドラスのペニスは、記憶の片隅に残る父のそれとは全く別物だった。

太くて、長くて。先端が膨らんでいて……、とても硬そう……。

勃起したペニスを初めて見たクレアは顔を真っ赤にしながら涙目になった。そしてうろたえながらも好奇心に負けて、指の間からチラリとそれを見てしまう。

……あんなモノが、わたしのナカに……この悪魔は、入れようとしていたの……?

「むり……無理よっ。そんなの、大きすぎるわ……っ」

とても人間が受け入れられる代物じゃない。

口に出したクレアはすぐに、ゲームに負けた時を想像してしまった自分を恥じた。

「無理なものか。お前はいずれ、俺のペニスを自分から欲しがるようになる。これで膣奥をガツガツと彫られて悦び、子宮に俺の精子をねだる時が——必ずな」

そんなの絶対に、ありえない。あんなのを挿れられたら、死んでしまう——。

恐怖に顔を引き攣らせるクレアに追い打ちをかけるように、アドラスは信じられないことをやってのける。クレアの脚を左右に大きく開き、秘裂に肉棒を擦りつけてきたのだ。

「い……いやっ」

ダイレクトに感じる生々しい熱にクレアは慄く。怯えながらも、先程まで散々いじられたクリトリスの上をペニスが行き来する感覚に、確かな快感を覚えて泣きそうになった。

クチッ、クチュ……。ペニスに愛液が絡んでは粘着質な音が響く。怖い……怖いのに、押し付けられる肉棒の熱に膣口がぱくぱくと開閉し、下腹部にきゅうっと切なさが込み上げた。そんな身体の変化についていけず、ただ首を横に振るしかできない。

「……ふぅ……んっ……」

胸元で指を組み、クレアはひたすらに辱めが終わるその時を待った。拒絶の言葉を漏らさぬよう、唇を噛み締める。

ゲームのルールを守ってさえいれば、悪魔はクレアを犯せない。ならば下手に暴れず、甘言に流されぬよう自分を律して、耐えるまでだ。

愛液と先走りに濡れたペニスにコシュコシュと擦られ、クリトリスがじぃんと痺れた。緩い快楽に膝が震える。腰が浮きそうになる衝動をどうにか堪える。

いかがわしい姿を見ていられなくて、きつく目を閉じた。

そんなクレアを、アドラスがふっと笑う。

最後に一度、愛液で滑りを帯びたペニスの先端を膣口に押し付けてから、アドラスはクレアの膝裏に手をかけて持ち上げた。そしてスラリと伸びた脚の付け根でペニスを挟むように、左右の太腿を閉じる。

「……え……? ひっぃ……っ!?」

脚の間に異常な熱さ感じて薄らと目を開いたクレアが悲鳴をあげる。

自らの脚の間を、アドラスの硬いペニスが行き来している。素股という言葉も、その行為の意味もクレアは知らない。しかし知識はなくとも、これが卑猥な行いだというのは直感的に理解できた。

アドラスが腰を前後させるたびに内腿にペニスが擦れ、熱さと脈動が伝わってくる。

「……っ、いやぁ……っ」

「何が嫌なんだ? 約束通り、お前のナカには挿れていないだろう」

確かに、アドラスの言う通りだ。

しかし、本当にそれでいいの……?

重要なのは純潔だと。処女を守れたら問題ないとばかり考えていたのが甘かった。こんな淫らな行為を悪魔から受けては、肉体が汚れてしまう。

地上に戻れたとしても、神様はわたしを許してくれるだろうか。

「……ゃっ、こんなの……いやっ」

アドラスの腰が裏腿に密着すると、ペニスが押し出されて腿の間から亀頭がクレアの視界に入った。グロテスクな肉棒が顔を覗かせるたびに羞恥心が積み重なっていく。

皮膚の薄い内股で、芯を持ったペニスの硬さや感触をありありと感じる。卑猥さに心臓が激しく高鳴った。

動いていないのに、身体が熱い。

クレアの膝が左右に割り開かれる。ずるり……ずるりと赤黒い剛直が秘裂を行き来し、クリトリスを擦り上げた。

「ひぃ……っ、や、やぁっ……ぁっ」

下腹部に甘い痺れが走り、膝が小刻みに震えた。秘所をいじられると、自分が自分じゃなくなるおかしな気配が強くなる。

性の快感に慣れず戸惑うクレアをひとしきり楽しんだ後、アドラスは自らの分身を己の手で扱いた。

ペニスの先端から勢いよく吐き出された白濁色の液体が、クレアの腹部にかかる。

「————っ!」

飛んできた飛沫にクレアは身をすくませた。一瞬、何が起こったのか彼女は理解ができなかった。

射精を終えたアドラスは、娘の肌から精液を指ですくい取り、その指を愛液でぬらつく膣の浅い部分にぷくぷくと出し入れした。

「いっ……や、やめてっ!」

「わかるだろう? これは本来、この奥に吐き出すものだ」

成人の儀式について村の女から教わった際に言われた、「精液」や「子種」という単語が脳裏をよぎる。

「んっ……それは、でも……わたしの相手は、あなたじゃない……っ」

子作りは神聖な行為だ。悪魔の精液を胎内に注がれるなど、決してあってはならない。

いやいやと首を振って拒絶するも、クレアの口調は弱々しい。反抗に気分を害したアドラスが、いつ指を膣奥まで挿れてくるかと思うと、気が気じゃなかった。——同時に芽生えた、その指で膣奥を弄られたらどれほど気持ちいいのだろうか……という邪な願望は、全力で思考から追い出した。

「……ひんっ……ぁっ」

クリトリスをぐりりと押され、びくんと腰が大きく跳ねた。

些細な責めにも反応を示す敏感な肉体に満足したアドラスは、膝を立ててベッドに座り直し、面白そうにクレアを見下ろす。

「……まあいい。時間はたっぷりある」

上半身を起こしたクレアはシーツを手繰り寄せて身を隠し、不思議そうにアドラスを見た。

「…………これで終わり、ではないの……?」

「ひとまずはな。なんだ、物足りなかったか?」

「……っ、違うわ! ゲームに勝ったら、地上に帰れるとあなたは……!」

ため息ひとつ、呆れを隠さず悪魔は前髪をかき上げた。

「誰がいつそんなことを言った? お前から求めてこない限り、俺はお前を抱かない——これが契約だろう? 勝手にルールを改変するな」

アドラスの言葉に、クレアは呼吸を忘れて目を見開く。

「だいたい、地上に戻ってお前はどうするつもりだ? 村の連中に再び焼き殺されるのか? 偽物ではあるが、地上でクレアという女はすでに村人たちに殺されている。死んだはずの女が再び姿を現したら、村の連中はどう思うだろうな」

「……でも、わたしは戻らないと……」

「悪魔に助けられた人間を村人たちは受け入れるのか? もうあの村に、お前の居場所はない」

「それでも!」

いつまでも、魔界にはいられない。たとえイーリカ村には帰れなくても、神の加護が及ぶ地上に、なんとしてでも戻らなければいけない。

「お願い、わたしが地上に戻れる方法を教えて。わたしにできることなら、なんでもするから」

泣いてすがるクレアを、悪魔は鼻で笑った。

「では、地上に帰るための通行料として、お前は俺に何を払える?」

「…………え?」

「お前が差し出せるものを言ってみろ。その時は新たな契約を結んでやる」

クレアは無知で、無闇に人を信じてしまうタチではあるが、筋金入りの馬鹿ではない。アドラスが多くを語らなくても、地上に帰りたいならその身を差し出せと言われていることをすぐに理解した。

「ふざけないで!」

「ふざけてなどいない。俺はいつでも真面目そのものだ。地上に帰りたいと望むなら、いつでも天国に連れて行ってやろう」

怒りを露わにするクレアに「その顔も可愛いな」とアドラスがうそぶく。

「村人に焼き殺されかけた際、死にたくないと願ったのはお前だ。——助けてとすがり、俺の手を取ったのも。この結果はお前の選択によるものだと、くれぐれも忘れてくれるな」

シーツをきつく握りしめて涙を流すクレアの頬にアドラスが口付ける。

自らの軽率な選択を悔いるクレアに、悪魔を振り払う余裕はなかった。



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市街地 2024/04/06 09:11

【小説サンプル】村娘に捧ぐ悪魔の狂愛・プロローグ

※DL siteで販売中の作品のサンプルです。

あらすじ

国境近くの村に住むクレアは、魔女に間違われて村人たちに殺されかけたところを悪魔アドラスに助けられる。
アドラスはクレアを魔界へと連れ帰り、命を救った代価にクレアの身体を求めた。
助けられたことに恩を感じながらも悪魔の要求を拒絶するクレアに、アドラスはゲームを持ちかける。
「お前が自らねだるまで、処女を奪うことはしない。神に忠誠を誓っているというなら、俺の誘惑に耐えてみろ」
悪魔の提案を自らに課された試練とみなし、クレアはゲームを了承する。

——こうして肉体を淫らに開発されていく、淫蕩な日々が始まった。

全体を通したプレイ内容

快楽責め・無理矢理・焦らしプレイ・連続絶頂・歪んだ愛

【!ご注意!】

※本作は物語の展開に以下の嗜好が含まれます。

・無理矢理系の性描写。
・凶悪なマッチポンプ
・触手責め
・処女喪失までの焦らしが長め(1話と2話は本番なしの18禁)
・ヒロインの悪堕ち
・正義が不在



『村娘に捧ぐ悪魔の狂愛』プロローグ


「この程度か。お前の父親は毎年この時期になると、少なくともこれの倍は山から薬草を採って来てくれたんだがなぁ」

そう言って、商人は落胆の息を吐いた。

「クレアちゃん、大変かもしれんが、もっと頑張らないといけないよ」

「そうだぞ。親父さんもきっと、天国で君を応援してくれているよ」

村人たちの励ましが、駄目な自分を浮き彫りにする。

「そうね。来年はもっと頑張るわ」

クレアは惨めな気持ちを胸の内に抑え込み、努めて明るく笑ってみせた。



    *



荷車を引いて、村の外れにある家へと急ぐ。

首の後ろで縛った赤茶色の髪がほどけ、咄嗟に結び紐を掴むもクレアの歩みは止まらない。彼女に髪を結い直している暇はなかった。

今日は月に一度、近くの町の商人が村に来る日だった。——近くといっても、ここは王国の片隅。山の奥にある僻地の村だから、町まで荷馬車で片道五日はかかる。隣の村ですら、山をひとつ越えなければ辿り着けない場所に、村はひっそりと存在した。

クレアの住むイーリカ村は、農業と山の恵みで生計を立てている小さな村だった。王家が発行する貨幣は意味をなさず、村では物々交換が取引の主流となっている。イーリカ村を訪れる商人も村のやり方にのっとり、衣類などの生活用品を村の資源と交換するかたちで提供してくれた。

三年前に親を亡くしたクレアは、父の仕事を引き継ぎ、山に自生する薬草を採集しながら暮らしていた。

季節はこれから冬へと向かう。念のため商人からは薬草と交換で防寒着や毛布の予備を貰い受けた。保存食も、ひとりで冬を過ごすには十分な量を準備したため、彼女が引いている荷車はいつも以上に重かった。

物資を家まで運ぶのを手伝おうかとの村人の申し出は丁重に断り、クレアは雨上がりでぬかるむ土の道を行く。

——王都で大罪を犯した魔女が、こちらの地方に逃げてきているらしい。

クレアの頭の中で、商人の言葉が何度も繰り返される。

——銀色の髪をした、美しい女だそうだ。なんでも悪魔と結託して王族を操り、国を乗っ取ろうと目論んだとか。

銀色の髪をした美しい女性。その人物に、クレアは心当たりがあった。

——悪魔なんて、言葉を交わしただけでも死罪だってのに、あんなおっかねえのとよく手を組もうとしたもんだ。美人の考えることはわかんねえな。あんたらも魔女には気をつけろよ。あいつらは目を合わせただけで人を呪える。関わっちまったら、死後の魂が天界に辿り着けなくなるぞ。

商人が拠点を置く町では、ここのところ魔女の話題で持ちきりなのだそうだ。

天界の神の敵である悪魔に魅入られた人間——魔女は人々に不幸を撒き散らす。見つけたら災いが降りかかる前に殺さなければならない。

町では呪い避けの護符を身につけた男たちによって自警団が結成された。

万が一、イーリカ村に魔女が現れた時のためにと、商人は教会より発行されたという由緒正しい護符を村長に売りつけていた。

村人と商人の間で様々な魔女対策のグッズが取引される様子を前にして、クレアは生きた心地がしなかった。

今まさにクレアの家には、商人の話す魔女の特徴と一致する女性がいるからだ。

つい四日ほど前。山中で倒れていた銀色の髪の美しい女性をクレアは見つけ、自宅で介抱した。

傷だらけだった彼女は助けたその日のうちに目を覚ましたものの、警戒心をむき出しにして、当初はクレアにも心を開かなかった。それから数日世話をしてようやくぽつりぽつりと多少の会話はできるようになってきたが、よほど恐ろしい目にあったのか、彼女は今でも外の世界に異常なほど怯えていた。

助けた女性は美しかった。特徴的な銀色の長い髪、すっと筋が通った鼻、ぷっくりとした小さな唇、日焼けを知らない白い肌——。クレアが山で倒れ伏す彼女を見つけた時、妖精ではないかと疑ったほどだ。

家で目を覚ました彼女が見せた薄いスミレ色の瞳はとても神秘的だった。二重まぶたの大きな目は感情豊かで、怯えて涙を浮かべる様子は庇護欲を掻き立てられた。

体格はクレアと同じぐらいで、年齢も、詳細は聞いていないがそう変わらないはずだ。

あんなに弱々しい彼女が魔女だなんて……到底信じられない。

とにかく早急に帰って、真偽を確かめる必要があった。

「——リーナ、クレアよ。開けてちょうだい」

村の外れにある木造の小さな家に到着したクレアは手早くドアをノックする。帰宅を告げると、ドアの向こうでかんぬきが外れる音がした。

「お帰りなさい、クレア」

出迎えた銀髪の女性——リーナを、クレアは慌てて家の中へと押し込めた。

「話があるのだけど……先に荷物を片付けるから、念のため奥の部屋に隠れていてちょうだい」

魔女の話はすでに村中に広まっている。うっかり誰かに目撃されてはリーナが危ない。

荷物を家と近くの小屋に分けて収納し、荷車も所定の場所に戻した。不自然な点が残ってないかを再三確認し、クレアは家に入った。

「リーナ、落ち着いて聞いて」

寝室のベッドにリーナを座らせ、努めて冷静に話を切り出す。

「さっき、村に来た商人が言っていたの。王都から魔女がこちらの地方に逃げてきているって……その、銀色の髪をした……」

リーナの顔からみるみる血の気が引いていく。胸の前で握る手が大きく震え、ぼろぼろと泣き出してしまった。

「……違うっ、……私は何もしてないのに、どうして……っ!」

取り乱すリーナの手を、クレアがそっと自らの両手で包んだ。

「大丈夫よ。……落ち着いて。商人にも、村の人たちにも、あなたがうちにいるとは伝えてないわ。だから——あなたに何があったのか、正直に話して。これからのことを、一緒に考えましょう」

こんなにか弱くて優しい女性が、魔女であるはずがない。

真っ直ぐに目を見つめて微笑みながら頷くと、緊張の糸が切れたのか、リーナから嗚咽が溢れた。

「……クレアぁ……」

泣きじゃくるリーナの背中を摩り、落ち着くのを待つ。

魔女とされた女性を匿うことに不安はあっても、クレアはリーナを放っておけなかった。




リーナは王国の男爵家の出自だった。しかし聖女の素質があったため幼いころより親元を離され、王都の教会で聖女見習いとして育てられたそうだ。

十五歳からの三年間は王立学院で過ごし、本来ならば卒業と同時に聖女の称号を与えられるはずだった彼女の人生は、学院で大きく狂うことになる。

リーナと同じ学年に在籍していたこの国の王太子が、彼女に一目惚れしてしまったのだ。

王太子は人目も憚らず、リーナを傍に置いた。聖女の地位が約束されているとはいえ、リーナは男爵家の出自だ。そう易々と王太子に意見できる身分ではない。

誘いを無碍に断れず、王太子に付き従うしかないリーナは学院内で非難の嵐に晒される。

なかでも王太子の婚約者の怒りはそれはもう凄まじかった。しまいに公爵家の令嬢であった王太子の婚約者は、家の権力を使ってリーナを魔女に仕立て上げた。

リーナは密かに悪魔と通じている。そんな噂が出回ると、王太子にはあっさりと手のひらを返し、周囲と同様にリーナを非難する立場を取った。

王家の名の下に魔女を処刑するべく、リーナは王太子によって捕縛され、牢屋に繋がれた。

「……処刑の日を待つことしかできなかった私を……お父様が、逃がしてくれたの……」

こんなに酷い仕打ちはあんまりだ。これまでお前を教会に取られ、父親らしいことは何ひとつできなかった。せめて最後に、親として娘を助けさせてくれ。

娘の無実を信じた男爵は、自らの命に代えてリーナを王都から逃がしてくれたのだという。

「……そんなことが……」

リーナの生い立ちに、クレアはそれ以上何も言えなかった。

赤子のころよりイーリカ村で育ったクレアにとって、王都は夢の世界である。煌びやかな楽園に住む王侯貴族は皆、品行方正、神の意思に従い国を統治していると信じていただけに、ショックを隠せない。

嫉妬ひとつでありもしない罪をでっちあげ、魔女に仕立て上げられた挙句、死刑が正当化されるなんて……恐ろしすぎる。

リーナは追っ手から逃れるために国境を越えようとしていたらしい。しかし慣れない逃亡生活に疲れ果て、とうとう力尽きた。そうして山中で倒れてしまったところを、幸運にもクレアに助けられたのだ。

「お願い信じて! 私は本当に何もしていない! ……魔女なんかじゃないの」

さめざめと泣くリーナをクレアは優しく宥めた。

「わかってるわ。大丈夫よリーナ」

こんな可憐な女性が魔女であるはずがない。

「村長に相談してみましょう。村の人たちにあなたのことをわかってもらえたら、きっと隣国へ渡る手助けをしてくれるはずよ」

密かにリーナを逃すとなると、味方は多いほうがいい。すぐにでも村長の家へ向かおうとしたクレアを必死の形相でリーナが止めた。

「だめよ! 村にまで魔女の話が広まっているなら、誰にも私のことは言わないで! クレアは私を信じてくれたけど、他の人たちもそうだとは限らないのよ」

「でも……」

「魔女とされた人間が容赦なく火炙りにされるところを、ここに行き着くまでに何度も見てきたの。私はあんな目に遭いたくないわ!」

「……でも、リーナの話を聞かずに火炙りなんて、村の人たちはそんな酷いことしないわ」

「お願い! 誰にも言わないで。……お願い……お願いよ……」

懇願されて、最終的にクレアが折れた。

村人たちにリーナがイーリカ村に潜んでいるとは伝えない。隣国へ渡る方法が見つかるまで、この家に匿うと約束したのだった。

リーナは涙を流してクレアに感謝した。




日が暮れる前に、クレアは二人分の夕食を作った。

質素な食事をテーブルに並べ、クレアとリーナは揃って天界の豊穣を司る神に祈りを捧げる。

リーナの祈りの所作は美しく品があった。本来ならば聖女になるはずだったというのも頷ける。

亡き父の教えで天界の神々を心から崇拝するクレアは、リーナに純粋な憧れを抱いていた。

彼女を助け、神々のお役に立てるなら、こんなに誇らしいことはない。

——きっとこれも、神様のお導きなのね。

リーナを助けることは、天から与えられた使命なのだ。彼女は絶対に死なせないと、クレアは胸に誓った。




小さな家にあるひとつだけのベッドは、怪我人であり、一応のところ客人でもあるリーナに譲っていた。

リーナを助けてからというもの、クレアは食事用のテーブルが置かれたリビングの隅に、干し草と毛布を敷いてそこで寝起きしている。寝室でリーナが心穏やかに休めるなら、特に不満はなかった。

その日の夜、いつものようにリビングの隅で丸くなって眠っていたクレアは、ふと目を覚ました。

目を開いても閉じても視界は真っ暗だ。自分は夢を見ているのだと納得して、再び眠りにつこうとする。

——夢のはず。じゃなきゃおかしいもの……。

薄い壁を挟んだ隣の部屋から、リーナと誰か……男性の話す声が聞こえてくる。

父はもういない。……だから、この家に男の人はいない——だったらこれは夢で間違いなわ。お父さんが帰ってきたなら、嬉しいけど……。

そんなことをうつらうつらと考えているうちに、クレアは本当の夢の世界へと落ちていった。





翌朝。

「クレア! いるんだろう、ここを開けろ‼︎」

まだ日が昇りきっていない薄暗い時間に、クレアは怒声で飛び起きた。

この声は知っている。亡き父の友人で、いつもクレアを気にかけてくれるオグおじさんだ。

オグはクレアの名を呼びながら、家のドアを壊さんばかりに強く叩く。

荒い口調に急かされて、クレアは慌ててドアのかんぬきを外した。

「——っ!」

家から出た途端、オグの表情が引き攣った。そしてオグの後ろで家を囲むようにして立つ、村の男たちも同様に驚愕して目を見開く。

「オグおじさん、どうしたの……?」

「名前を呼ぶな! 魔女がっ!」

突然、頬に衝撃を受けて勢いよく壁に激突した。床に倒れて、オグに打たれたのだと理解する。

温厚なオグがなぜ……。混乱の最中、クレアはさらにおかしなことに気づいてしまった。

「……え? 白……これは……?」

俯いて顔にかかった髪が視界に入る。それは赤茶色の見慣れた自身の髪ではなく、白というよりも——リーナと同じ、銀色に近い髪色だった。

どうして……。何が起こっているのかとうろたえる。

そんなクレアに構わず、村の男たちは無遠慮に家へと入り込んできた。

「やっぱり、魔女を匿ってやがったか」

「クレアの昨日の慌てた態度、何かあると思ったんだ」

「魔女めが、村に厄災をもたらしにきたのか」

床に座り込むクレアを見下ろし、男たちは憎々しげに吐き捨てた。

「待って、どういうこと」

「早く連れて行け! さっさと処分しないと、村に悪魔を喚ばれちまう」

オグに手首を掴まれ、強引に立たされる。

「待って、みんな……話を聞いて!」

わけがわからず抵抗するも、男の力に敵うはずがない。

引きずられるようにして家から出されるまさにその時——クレアは信じられないものを見た。

赤茶色の髪、赤みの混ざった濃い茶色の瞳をした、あどけなさが残る素朴な風貌の女性。——クレア自身が寝室から密かに顔を覗かせて、うっすらと笑みを浮かべていたのだ。

「え……? ……え?」

どうなっているの。どうしてわたしがあそこに?

混乱していると村の男によって家のドアが閉じられた。

わたしはクレアよ。……でも、この髪の色は、リーナのもので……、村の人たちは、わたしを見て「魔女」って言って……。

状況が少しずつ整理されていく。

——もしかして、わたしはリーナの顔になっているの? じゃあ、家の奥にいた、あれはリーナ? 身体が……入れ替わっている……?

辿り着いた答えに血の気が引いた。

「待って! わたしはクレアよ! どうして……リーナ!」

リーナに説明を求めるも、彼女が家から出てくることはなかった。その場に残った村人達が家へとなだれ込むのを横目に、クレアは抵抗も虚しく山のほうへと連れて行かれる。

「お願い聞いて、わたしはクレアなの。オグおじさん、ジゼルさん——っ!」

村人達の名前を呼んで、自分がクレアであると証明しようとしたら、またもやオグに殴られた。

「薄汚い魔女がこれ以上喋るな! 呪いを振り撒くなら、今ここで首を落とすぞ!」

「やめろ。魔女は燃やして殺さなければ、それこそ土地が呪われちまう」

「そんなことはわかってる。ちくしょう……、クレアの奴も、魔女なんざ村に招き入れやがって……」

頬がじんじんと熱を持ち、瞳に涙が浮かんだ。違う、自分こそがクレアだと訴えたいのに、顎が震えて上手く喋れない。

そうこうしているうちに、山のふもとにある洞窟に到着した。奥行きはそれほどない、大岩の隙間を通った先に家一軒程度の空間が広がっているだけのその洞窟は、落石が危ないから絶対に近づいてはいけないと、子供のころから村の大人に言われてきたところだった。

洞窟の奥ではすでに別の村人達が待機していた。彼らはクレアが到着するや否や、怒りと緊張をあらわにした。

「準備は?」

「できている。さっさと燃やしてしまおう」

クレアは村の男たちの手によって、地面に突き刺さった丸太に縄で縛られる。

待って、やめて、魔女じゃない、わたしはクレアよと、何度も叫ぶが集まった男たちは一切聞く耳を持たず作業に勤しんだ。

拘束されたクレアの足元を囲むように薪が置かれ、松明の火がくべられる。

熱い。火は薪から薪へとじわじわと燃え移り、勢いを増していく。近づく炎に死の恐怖を実感して無我夢中でもがくも、体に巻かれた縄は弛まない。

「お願いやめて! 熱い……っ、熱いの! 聞いて、わたしはクレアよ!」

「まだ言うか……残念だったな。ここにいる奴らは全員魔女の呪い避けの護符を持っている。誰もお前に惑わされやしないさ」

オグは誇らしげに笑った。

村人達に取り乱した様子はなく、皆冷静そのものだった。冷静に、クレアが焼け死ぬのを今か今かと待ち侘びているのだ。

迫る炎は熱いはずなのに、身体がガクガクと震えた。火から上がってくる熱気で息が苦しい。

——…………。

寝巻き代わりの簡素なワンピースに火が燃え移りかけたその時。どこからともなく、クレアは声のようなものを感じ取った。

言葉で表現するには曖昧で、漠然とした「何か」が歓喜している。

自身の死を喜ぶ狂気的な気配に悪寒が走った。

——助けて欲しいか?

また……今度ははっきりと声が聞こえた。

洞窟の奥から響いてきたような、あるいは脳内に直接響くような……発生元がはっきりしないその声は、それでも確かな言葉となってクレアの耳に届いた。

「……っ、たすけて……助けてっ」

正体不明の声の主に、ひたすらにすがる。

次の瞬間、炎に包まれたクレアは低い笑い声を聞いた。

「——契約成立だ」

クレアを中心として、洞窟内につむじ風が起こった。

強風に村の男たちは立っていることもままならず、地面へとしゃがみ込んだ。風に煽られて炎は大きく燃え上がる。

しばらくしてつむじ風がおさまり、ようやく男たちが顔を上げた時にはもう、丸太に縛っていたはずのクレアの姿は消えていた。



第1話【契約の対価】へ
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