約束(♡喘ぎver.)
一日の気温も安定しだし、暑くもなく寒くもない。空気もからっとしていて、過ごしやすい夜。
大学でのサークル活動を終えた私は、一台の車を待っていた。
約束の時間まで、もうすぐ。彼女の性格からして、遅れる心配は微塵もない。携帯にも、特に連絡は入っていない。
ということはそろそろ――。
「来た」
まだ姿は見えないが、遠くの方から車のエンジン音が聞こえてきた。免許も持っておらず、車については何の知識もない私だが、この音だけは、見分けられる自信がある。
私の目の前に、ゆっくりと一台の車が止まった。扉を開け、車に乗り込むと、私はまず鼻で大きく息を吸う。芳香剤か、彼女の香りか。とにかく、待ち望んでいた香りで肺を満たすことから始める。
これは何度味わっても飽きない、幸せな瞬間。
「おまたせ」
「綾さん、お疲れ様です」
「雪もね」
優しく微笑む綾さんは、運転席から手を伸ばし、その手入れされた綺麗な指で私の頬を撫でる。
絶妙な力加減。色々なことを思い出させるその指先に、全身がぞくぞくっと震える。
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