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リドルジョーカーの記事 (4)

Final_Fiend 2024/04/01 02:53

NTRハーレム番外編 在原七海が竿役おじさんのモノになる話

「レヴィ9、目標地点に到達しました」

 草木も眠る丑三つ時。マイクに乗るギリギリの音量で、レヴィ9――在原七海は囁いた。

 彼女がいるのは、つい最近建てられた一軒の豪邸のすぐ近く。

 政治家たちの怪しい動きの裏に、アストラルが絡んでいる疑惑がある……そんな情報を基に、七海は真新しい邸宅に潜入を試みていた。

 彼女は非公開政府組織である情報局特別班、通称「特班」に所属するエージェントの一人だ。兄である在原暁ともども、学生の身でありながら人知れず犯罪者を日夜追っているのだ。

 七海の報告を受け、彼女の上官にして育ての父でもある在原隆之介は、お決まりの文句を返す。

『レヴィ9、周囲の状況は』

「特に異常はありません。人や物資の流れも変化なし」

『ふむ。こちらに気付いていないのか、それとも誘っているのか……いずれにしても油断するなよ』

「了解」

 一つ、息を吐く。当初は外からの調査だけだったにも拘らず、潜入まで行うことになるとは、七海自身考えてもいなかった。

 その「外からの調査」というのも、七海が担当した任務だ。その結果、いくつか不思議な点はあるが、クロであると断定できる証拠はない……そう結論付けられたはずだった。

 しかしながら、ここ以外に探りを入れることが可能な情報源がない、という状況に行きつき、彼女は潜入を余儀なくされた。

「でも、どうしてわたしだったの? こういうのって、お兄ちゃんの方が向いてると思うんだけど」

『レヴィ9、任務中だぞ。……あいつは後々大きなヤマが控えていて、今は動かせないんだ。だからそっちに回ってきた。悪いな』

「それじゃしょうがないね……ウチ、いつも人手不足だもんね」

 七海は音もなく立ち上がる。視線の先に巨大な邸宅を見据えると、覚悟を決めたように一つ頷いた。

「いつでも行けます」

『では、任務を開始する。異常があったらすぐ報告するように。いいな』

「了解。レヴィ9、行動を開始します」

 通信を切ると、七海はそろそろと移動し始めた。あらかじめ目星をつけておいた裏口に回り、解析済みの電子錠を解錠する。

 そうして彼女は、巨大な城の如き威容の豪邸へと足を踏み入れた。

 そこが、一度入れば逃れられぬ魔窟であるとも知らずに。









(セキュリティの解除成功……うん、上手くいった)

 警報装置がまた一つ解除される。月明かりだけを頼りに、七海は真っ暗な家の廊下を進んでいく。

 豪華な造りに比して、備えられたセキュリティは一般的な家庭と同レベル。彼女にしてみれば簡単なものばかりだ。

 故に、当然の疑問が湧いてくる。

(本当にこんなセキュリティで、機密を守る気あるのかな?)

 おおよそ重要な情報を保管しているとは思えないほどに警備は手薄。この程度のザルなセキュリティでは、いくらでも盗んでくださいと言っているようなものだ。

 彼女の脳裏にチラつくのは、罠の可能性。わざと隙を見せてこちらを誘き出そうとしている――そうでなければ、ただの間抜けだ。

 故に七海はより慎重に、奥へ奥へと進んでいく。

 だが彼女は気付いていない。そこに足を踏み入れた時点で、既に勝敗は決しているという事を。

 やけに扉が多い廊下の、その中間地点。事前調査でアタリを付けた目的地のうち、最初に怪しんだ部分と寸分違わず同じ場所。ほんの少しだけ、光が漏れ出している部屋があった。

 そこに近付くにつれ、何か甘ったるい匂いが彼女の嗅覚を支配し始める。

 やがて、その扉の向こうから、くぐもった叫び声が七海の耳に届いた。

「……ぉぉっ、おぉぉぉ……」

(えっ!? なに、何の音!?)

 恐怖でたまらず彼女は足を止めてしまう。だが、その発生源こそが彼女の第一目的地であるのだ。

 後回しにすることも考えたが、意を決して扉を開けた。







 少し考えれば分かる事だった。

 扉の隙間から漏れる光があるという事は、その部屋には高い確率で誰かがいるという事である。

 人がいる部屋に侵入するというのは、彼女の制服に備えられた光学迷彩の存在を以てしてもリスクが高すぎる行為だ。

 七海とて、それが分からぬ馬鹿ではない。

 だが、肺まで満たすかのような不思議な香りが、彼女の判断を鈍らせた。

 彼女が吸い込んだそれは、部屋の中で行われる情事によって振りまかれた、あらゆるメスを発情させてしまう淫香であったのだ。

 それを嗅ぎ続けた時点で、彼女の運命は決していた。









 ほんの少し、視界が通る程度に扉を開けて、中を覗き見る七海。

 部屋に鎮座する巨大な寝台の中心部、そこにあったのは。

「お゛お゛ぉぉぉぉぉぉっ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛ほぉぉぉぉぉっ♡」

 四つん這いになりながら獣のように喘ぐ美少女と。

「ふぅぅぅ、来海のマンコ締まり良すぎだぞぉ」

 そんな美少女の尻に後ろから腰を打ち付ける、醜く太った一人の男。

 その男の名前は、七海も知っていた。

 片丘太志。普通の家に生まれ育った、どこにでもいる普通の男。

(ああぁぁ……お取り込み中失礼しました……)

 まさか情事の最中とは思わず、内心で謝る七海。

 だが、視線はベッドの上の二人から外せないでいた。

 人の声とは思えぬほどの嬌声。乱れる髪。その痴態を見ていれば、それがどれほど気持ち良いのかが分かってしまう。

 何故なら、七海も一人の女であるから。兄である暁と何度も身体を重ねたことがあるからこそ、分かる。その少女は、快感によがり狂っていると。

 だが、何がその少女をそこまでさせるのか。彼女と交わっているのは、醜い贅肉で腹をでっぷりと肥やした冴えない顔の中年男性。そんな人物とするセックスの何が気持ちいいのか、七海には想像できない。

 しかし、答え合わせの時間がやってきた。男は動きを止め、腰を打ち付けたまま身体を震わせた。

 かれこれ数分間もそうしていたが、やがて男は数歩後ろに下がる。

 ズルズルと女陰から引き抜かれたモノを見て、七海は目を丸くした。

(何、あれ……暁君のより、ずっと大きい……♡)

 男の股間にあったのは、彼女が知る男の象徴とは一線を画す代物。太さも長さも、彼女が恋する兄のそれと比べて数倍以上はあるペニスであった。

 先刻までの少女の乱れように、七海の中で辻褄が合ってしまう。

(あんなの入れられたら……絶対気持ちいい……♡)

 無意識のうちに、七海の手が自身の秘部に伸びていく。タイツに包まれたそこを指でなぞると、これまで感じたことのない快感が彼女を襲った。

(嘘っ♡ 暁君でするより、ずっと凄いっ♡)

 最早人目を憚る余裕もなく――あるいは、光学迷彩があるからと油断していたのか。七海の指遣いは、どんどん荒っぽく、激しくなっていく。

 布越しになぞるだけでは足りない。直接、膣を掻き回したい。彼女の全身を焼き焦がさんなかりの熱情は、七海の理性をあっという間に刈り取っていく。

(欲しいっ♡ おっきなおチンチンでおまんこズポズポホジりまくって欲しいっ♡ 指だけじゃ物足りないよ……♡)

 故に、気付けなかった。

 自身の秘部からなる水音が、誤魔化しの利かない音量になっていたことも。

 それを聞きつけた刺客が、背後に立っていることも。

「あは、敵陣でオナニーとは不用心ですねぇ」

 驚愕で飛び上がりそうになる七海。だが、彼女は更に衝撃を受けることになる。

 虚空から、別の声が聞こえてきたのだ。

「なかなか高度な隠蔽術を使っているようだけれど、残念だったわね。妾たちには、アナタを感知する方法があるのよ」

 滲み出るかのように、狐の面を持った少女が何もない空間に現れる。少なくとも、真っ当な方法で実現可能な芸当ではない。即ち、

(やっぱり、アストラル――)

「というわけで……一名様、ごあんなーい」

「抵抗してもいいけれど、命の保証はないわ。それだけ覚えておいて」

 歯噛みしながら、七海は迷彩を解く。姿を現した少女の両腕を、二人の刺客はゆっくりと引いて、男の元へと誘う。

 だが彼女はそんな状況下でも、身体の火照りを抑えられなかった。

 まるで……この後の展開を想像して、興奮しているかのように。







 連れてこられた少女を見て、男はふごふごと鼻を鳴らした。

「うひょー、可愛いねぇ。もしかして、この子が?」

「はい。最近太志さんの周りをうろついていたスパイです」

「へぇ……」

 下卑た欲望に塗れた視線が、七海の全身を舐め回すように上下する。

 普通なら嫌悪感で吐き気すら催すであろうそれすらも、今は七海の興奮を高める材料でしかない。

「それで、どうするのかしら。この子、アナタに抱いてもらいたいようだけれど?」

「ほう? というと?」

「あっ、それはっ」

 七海が慌てて言葉を遮ろうとするが、もう遅い。

「この子、部屋の前でオナニーしてたわよ? アナタたちのセックスを食い入るように見ながらね」

「ワタシが後ろに立っていることにも気づかないほど熱心に、です。太志さんも罪な男ですねぇ、あは」

「ほほぉ」

 それを聞くや否や、男は七海の股座に手を伸ばした。恋人がいる女性として、組織の一員として、今すぐ跳ね除けねばならないその手を――七海は、抵抗せずに受け入れた。

 予想通り、クチュリという水音。

「もうびしょ濡れじゃないか」

「……っ♡」

 羞恥を煽る言葉が、彼女の興奮を更に高めていく。

「よし、決めた。この子もオジサンの女にしちゃうぞぉ」

 男が宣言するのを、どうやら他の女たちは分かっていたようだ。

「そう言うと思ってましたよ」

「ええ、そうでなくては太志じゃないもの」

 穏やかな、しかしどこか淫靡な笑みを浮かべた少女たちは、邪魔をしないよう隣室へと消えていく。

「さあ、こっちに来なさい」

 男に腕を掴まれ、ベッドに仰向けで寝かしつけられるまで、七海は一切抵抗していなかった。

 彼女の思考を支配していたのは、彼女の前でずっとその威容を誇り続けていたペニスのことのみ。

 タイツとショーツに包まれた七海の股間に男が顔を埋め鼻を鳴らすその最中も、彼女はセックス以外に何も考えられなかった。

(はやくっ♡ はやくはやくはやくっ♡ あのおっきなおチンチン欲しいっ♡)

 やがて男は、タイツもショーツも脱がし、七海の下半身を丸出しにさせる。恥じらいに顔を赤らめる彼女の表情が、男の劣情を誘った。

「それじゃお待ちかねのチンポ、たっぷり味わわせてあげるからねぇ」

 男は無遠慮に七海の両足を掴み、股を広げさせる。ペニスの先端が、七海の秘裂と触れ合った。クチュクチュと音を立てて、焦らすように穴の周りを擦る。

(すご……間近で見るとよくわかる……♡ お兄ちゃんのよりずっと大きくて……♡ ……お兄ちゃん? そうだ、わたしにはお兄ちゃんが――)

 そこでようやく、恋人のことを思い出した七海。これまでの思い出が一気にフラッシュバックし、兄に対する罪悪感と男に対する抵抗感が辛うじて生まれた。

「あっ、あのっ! やっぱりここまでにっ」

「もう遅いよぉ、ふんッ!!」

 なけなしの抵抗を、男は意にも介さなかった。一息で、最奥までペニスを突き入れる。

「お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?♡」

 たった一突きで、七海にとっての「男」は塗り替えられた。

 未知の快感に彼女は目を白黒させる。兄の形しか知らない膣穴が、中年男のペニス用に無理矢理押し広げられていく。

 兄としていたセックスが、お遊びであったと否が応でも思い知らされる。

「うおぉ、キッツ……これは開拓のし甲斐があるぞぉ」

「へ、何を……お゛ぉっ♡」

 男はゆっくりと抽送を始めた。亀頭が最奥を突く度に、最愛の兄との思い出がひび割れ、消えていく。

「お゛っ♡ お゛っ♡ やだっ♡ やだっ♡ お兄ちゃんがっ♡ いなくなっちゃうっ♡ お兄ちゃんのことっ、思い出せなくなっちゃうっ♡」

「前の男なんて忘れさせてやるッ、ふんッふんッ!」

 顔も知らぬ兄に対抗心を燃やしたのか、中年男の腰遣いはより激しさを増した。

「う゛お゛ぉぉぉぉぉぉっ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ ひぐっ♡ うっ、ぐぅぅっ♡ う゛ぅぅぅぅぅっ♡」

 兄としていた時とは比べ物にならないほど大きな快感が、津波のように七海を襲う。男のピストンは兄と比べて乱雑だったが、大きく張ったカリや竿が性感帯を余すところなく抉り、撫でるため、兄とでは得られないエクスタシーへと七海を追い込むのだ。

(ダメっ♡ イったら終わるっ♡ お兄ちゃんのこと完全にどうでも良くなっちゃうっ♡ それは絶対ダメっ♡ でも――)

「イっ、ぐっ♡ イぐイぐイぐイぐっ♡ ふっ、ぐぅっ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ♡」

 絶頂に至るまいと我慢していた七海だったが、所詮は無駄な抵抗だった。中年男のペニスに最奥をゴンゴンと殴られ、牙城はあっさりと崩されてしまった。

「う゛お゛っ♡ まってっ♡ いまイってるっ♡ イってるのにっ♡ い゛っ♡ あ゛っ♡ あ゛っ♡ あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡」

 男は七海の絶頂などお構いなしにピストンを続ける。過剰な快感が彼女の脳内でスパークするように弾け、知性をドロドロに溶かしていく。

「お゛っ♡ お゛ぉっ♡ ……んむぅっ!?♡」

 獣のように喘ぐ七海に、中年男の太った身体が覆い被さった。そのまま顔を合わせて唇を重ねると、七海の口内に舌を捻じ込んでいく。

「んむぅぅっ♡ ちゅるるる、ぢゅぅぅぅぅぅ♡」

(――あっ、これ、ダメ♡ ……もう、暁君なんてどうでもいい♡ おじさんのこと、好きになっちゃう♡ すき♡ すきすきすきっ♡)

「んんっ、むぅ……♡ しゅき……♡ おじしゃん、しゅき……♡」

 声に出せば、ますます想いは「本当」に変わっていく。彼女の最愛の恋人は、かけがえのない時間を共に過ごした義兄ではなく、眼前の冴えない中年メタボオヤジになってしまった。

「しゅき、らいしゅき……♡ もっと、もっと……♡」

 蕩けた瞳でおねだりする七海の顔が、男の性欲を無自覚の内に煽る。

「ぐふふ、オジサンも好きだよぉ。一目見た時から絶対お嫁さんにするぞって思ってたんだぁ」

「嬉しい……なる、なります♡ わたし、おじさんのお嫁さんになりたいです♡」

 七海の心は完全に陥落し、白旗を上げていた。脂ぎった中年男の全てを受け入れ、愛してしまう。快感に流され、そうすることを選んでしまった。

 だが、彼女に後悔はない。あるのは淫靡な未来に寄せる期待と、眼前の中年男への恋慕のみだ。

「ぐひひっ、プロポーズ成立だねぇ。記念のザーメン、たっぷり注いであげるよぉ」

「うん、うんっ♡ おじさんの精液、わたしのおまんこに全部出してっ♡」

 男は腰の動きを速めた。せり上がってくる粘っこい白濁汁を最高に気持ち良く吐き出すために、思いやりの一切ないピストンを続ける。

 そんな身勝手なペニスを、七海の膣穴は優しく受け止め、全体で愛撫する。子宮口はペニスに何度も吸い付き、恋人のキスのように何度も何度も子種をねだる。

「くっ、出るぞッ! 中で受け止めろッ!」

「お゛ほぉっ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ♡」

 亀頭の先端が、子宮口に押し付けられた。精液は子宮の内壁をばしゃばしゃと叩き、あっという間に満杯にしてしまう。

「おじさんっ、すきっ♡ すきすきすきすきっ♡ キスしよっ♡ ちゅむっ、ちゅぅぅぅぅぅぅっ♡ れろれろれろれろ、ぢゅるるるるるるっ♡ あっ、まだ出てるっ♡ 射精も長いっ♡ かっこいいっ、すきっ♡」

 五分以上もかけて精液を吐き出した男は、七海に覆い被さったまま荒い息を整えながら囁いた。

「ふぅ……最高だったよぉ、君のマンコは」

「ありがとうございます♡ それで、あの……さっきのこと、なんですけど♡」

「さっき? どれのことかなぁ」

「えっと…………お嫁さんになりたい、って話です♡」

「ああ。でもオジサン、君の名前も知らないんだよねぇ」

「そっか……わたし、スパイだった……」

 七海は、最早自分がなぜここにいるのかすらも忘れてしまっていた。それほどまでに、彼女にとって最も優先するべきことが塗り替えられてしまったのだ。

 故に、更に禁忌を○す。敵に名前や素性が割れていないという有利な材料を、自分から捨てた。

「わたしは、在原七海っていいます。橘花学院に通う学生です」

「七海か、可愛い名前だね。オジサンは片丘太志だよぉ」

「太志さん……太志さんこそ、格好いい名前ですね♡」

 決してそんな事はないはずなのに、今の七海にとっては平凡極まる名前すらも愛おしい。

(ああ……やっぱりわたし、このおじさんの事、好き♡)

 そんな彼女の内心に応えるように、男は七海の目を見つめて告げた。

「オジサン、本気だよぉ。七海ちゃんは一生オジサンが幸せにするからねぇ」

「……っ♡ 嬉しいっ♡ わたし、太志さんに失礼な事ばっかりしてたのにっ、いいんですか?♡」

「過去の事なんて気にしないよぉ、これからはオジサンとラブラブ夫婦なんだもんね?」

「……はいっ♡ わたし、太志さんのことが好きですっ♡」

「嬉しいねぇ……」

 どちらからともなく、唇が交わされた。それまでの貪るようなディープキスとは違う、心を確かめ合うバードキスの雨が降る。

 男は七海の艶やかな金髪を撫でた。女の命とも表されるそれに触れられて、七海は喜びに身をくねらせていた。

 彼女もお返しとばかりに、中年男のだらしなく弛んだ毛むくじゃらの肌を愛おしげに撫でさする。

「七海、愛してるぞぉ」

「わたしも、愛してます♡ ……あの、もう一つ、ワガママ言ってもいいですか?♡」

「いいよぉ、奥さんのワガママだもん。ドンと来なさい」

「やったっ♡」

 嬉しさのあまり、頬を緩ませる七海。潜入先の要注意人物を前にしているとはとても思えぬ表情だが、それも当然。彼女の眼前に居るのは調査対象などではない。彼女が心から愛してやまない異性なのだ。

「じゃあ、その……太志さんのこと、『お兄ちゃん』って呼んでもいいですか?♡」

「ほほう。それはまたどうしてだい?」

「わたしにとっては、『お兄ちゃん』は一番好きな人だから……もう暁君のことなんか、好きでも何でもないって証拠にしたいんです♡ わたしの一番は、『太志お兄ちゃん』なんだ、って♡」

「ぐふふ。そそるねぇ、興奮しちゃうよぉ。是非とも呼んで欲しいねえ」

「うんっ♡ 大好きだよ、太志お兄ちゃんっ♡」

 こうして、学生とエージェント、二つの顔を持つ少女の在原七海は、冴えない中年太りのエロオヤジの妻に堕ちた。









「こちらレヴィ9。本日の任務、完了しました」

 夜更け近く。空がうっすらと白んできた頃に、七海は解放された。

『ご苦労だったな、レヴィ9。随分時間がかかっていたようだが、何かあったのか?』

「えっと……」

 逡巡する七海。何かはあったが、それを正直に打ち明けるわけにはいかなかった。

 それは、恥じらいだとか悔恨だとか、そういう自分に由来する感情ではなく。

 愛する男性に万一があってはいけないという、献身的な考えによるものだった。

「今夜は、起きてる人が多くて。別日にしようかと思ったんだけど、目標地点までもう少しだったから深追いしちゃった。それで、抜け出すのに時間がかかって……安心して、誰にも見つかってないよ」

『そうか。ならいいが……それで、何か証拠は掴めたのか?』

「ううん、全然……」

 これは本当だった。あの男の背後に何かあるという証拠は掴めなかった。

 本人協力のもと調査したのだから、間違いはない。

 片丘太志は、完全にシロ。

 それが、彼に対する愛情抜きに、七海が出した結論だった。

「だからね、今後も何度か潜入が必要だと思う」

『だろうな……なら、次は他の誰かを――』

「ううん、わたしがやる」

 被せるように言う七海に、通話口の向こうの人物は驚いたような声音で返した。

『どうしたんだ? さっきは「適任が他にいる」とでも言いたげだったのに』

「わたしがここまでやった案件なんだもん。どうせなら、わたしが最後までやり切りたいの」

 などと言っているが、その実は男と会う口実が欲しいだけだ。

 それを知らぬ通話相手は、不思議がりつつもその意思を汲んだ。

『お前がそこまで言うなら……この件はお前に一任しよう。頼んだぞ』

「うん、任せて。それじゃ、切るね」

『ああ、無事に帰って来いよ』

「了解」

 通信を切ると、七海は一つ溜息をついた。どうにか誤魔化せたことを安堵するものだ。

 彼女は迎えの車に乗り込み、背後に遠ざかる豪邸に思いを寄せる。

(……またね、太志お兄ちゃん♡)







 そして七海は思惑通り、任務を理由に何度も男と逢瀬を重ねていった。

 時には男の望むまま、彼女の知る美少女を軒並み男に差し出して。

 裏では、男と共に済むための準備を着々と進めて。

 そんな関係が続いたある日。

「さ、今日はビデオレターを撮ろうか」

 いつものように寝室に構える男であったが、そのベッドの横には三脚で固定されたスマートフォンがあった。

「ビデオレター?」

「そろそろいい頃合いだろう? かつてのお兄ちゃんにしっかりお別れしておきなさい」

「ああ、そういう……♡」

 同人文化にも詳しい彼女は、その意味を察知したようだ。

 男がタイマーをセットし、ベッドに腰掛ける。七海も服を脱いで男の膝の上に座ると、満面の笑みを浮かべた。

 ぽこん、と録音開始を告げる音が寝室に響く。

「暁くーん、見えてるかな? 今日は暁君に、わたしからお別れのビデオレターを送るね」

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Final_Fiend 2024/02/01 04:09

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Final_Fiend 2024/01/25 04:10

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Final_Fiend 2024/01/20 05:29

ゆずソフトNTRハーレム リドルジョーカーでNTR報告モノ

 夏休みを間近に控えた瑞花学院。いつも通りに登校してきた谷風李空は、自分の席周辺に集まる女子たちを見て、げんなりとした表情を浮かべる。

「んでー、太っちょが『パンケーキ、たらふく食べに行きたいねぇ』とか言い出してさー」

「ふぁはは、何それ! 店でいくらでも食べられるのに……ダーリン可愛すぎじゃん」

「ウチもそう言ったんよ。そしたらアイツ、思い出したーみたいな顔でさ……ぷくく、今思い出してもウケる……」

「ふふふ。でも確かに、店でもセックスしてばかりで、食べている所はあまり見ないわね」

「ええ。この間も、私と太志さんで……」

「確かあの時は、休憩時間が終わっても戻ってこなくて、僕と天音で呼びに行ったんだったね」

 同級生の女子たちが、夫である片丘太志の話で盛り上がっていたからだ。彼女たちは一様に、左手の薬指に白銀の指輪を着けている。それは彼女たちが中年太りの冴えないエロオヤジの生涯の伴侶であり、彼を生涯愛し続けるという誓いを現すもの。

「あっ、谷風クン! おはよー」

「よーっす」

「よすよすー」

 李空に気付いた来海たちは、これまでと変わらぬ様子で彼に声をかけてくる。だがかつてと違い、来海は机から立ち上がる素振りは見せない。

 このまま聞かせてやった方が喜ぶことを、彼女もまた知っているからだ。

「あっ、ヤバ。今日ウチの当番なのにゴム買ってないわ。帰りに店寄らなきゃ」

「えー、いいんじゃない? 生で」

 カエデの衝撃発言に、李空は俯きながらも目を見開く。

「いやー、学院辞めんのはちょっとね」

「でもアタシもみんなも、あの日からずっと生ハメだよ?」

「妾なんか、危険日を狙って当番に入るようにしてるわよ? オリエだってそうだもの」

「姫様っ、それは秘密とあれほど……!」

「僕も気にすることは無いと思う。今となっては、太志と生でしていない方が珍しいからね」

 誰も彼もが、夫の子種を受け入れたいと、そう強く願っている様を間近で聞かされる李空。そんな彼に向けて、かぐ耶は何かを思い出したように声を上げた。

「そうだわ、李空。アナタに渡すものがあるのよ」

「……なんだよ?」

「それはね……これ。コンドームよ」

 そう言って彼女は、0.01とデカデカと書かれた、目に優しくない色の箱を李空に手渡す。

「どういう意味だ?」

「妾にはもう不要なのよ。太志の子供を孕むと決めたから。だから、それは李空にあげるわ。太志に合わせたサイズだから、李空のそれには大きすぎると思うけれど……使う機会があれば使ってちょうだい」

「あっ、アタシのもあげるね」

「僕のも受け取ってくれ」

「では、私のものも……」

 かぐ耶に続き、来海や乃愛、オリエもコンドームを李空に差し出す。そう、彼女たちもまた、それを必要としていない。たった0.01ミリの薄くて分厚い隔たりを、煩わしいことこの上ないと感じていたのは他の妻たちも同じだった。

 不用品を押し付けられたわけだが、そのダメージは他の品々よりも遥かに大きく、彼の胸に突き刺さった。

「李空。女の子とする時は、ちゃんとこれを着けるんだぞ」

「責任の取れないことはしてはダメよ?」

 追い打ちが、李空の心を深く抉った。そんな彼をよそに、来海たちは雑談を再開する。

「そういえばかぐ耶ちゃん、最近ウチの周りをうろついてる『侵入者』ってどうなったの?」

「ああ、七海のこと? もちろん――」







「……怪しいところが、何もない?」

『ああ、不自然なくらいにな』

 数日前の橘花学院・第三寮。多くの学生たちが暮らす寮の一室で、在原暁は自身の所属する組織――情報局特別班、通称「特班」の室長であり、彼の父親でもある在原隆之介と通信を行っていた。

 その内容とは、彼らが所属する特班の調査対象である、「一夫多妻法」と呼ばれる新法の関係者について。

「あんなデタラメな法律の裏に何もないなんてこと、ありえないでしょう?」

『だが現実に、証拠になりうるブツは出てこなかった。それどころか、隠蔽された痕跡すら見つけられないんだ』

「……となると、やはり」

『「上」の予想通り、アストラルが絡んでると見ていいだろうな』

 アストラル。20世紀末に発見された粒子で、この世の超常現象の全てを説明できるとまで言われる超物質。人間の脳とリンクし、超能力とかつて呼ばれていた現象をもたらすそれを以てすれば、多くの人間に催○をかけたり、認識改変を行うなど造作もない。

 多くの反対を押し切って、急とも言えるほどのスピードで可決され、そのまま施行の日を迎えた「一夫多妻法」。その裏に政治的な取引の痕跡がないとは考えにくい。故に、そこにはアストラル能力による何かしらの干渉があるのではないかと、彼らの「上」――即ち政府の者の一部は考えているのだ。

「レヴィ9が調査に当たってる方も?」

『ああ、まるで成果なし。今回の新法で利益を得ている連中のうち、まずは実際に新法に従って多重婚姻を行った人物を軒並み調べさせたが、報告書によれば、どれもこれも政治とは無関係の一般人だった。多重婚姻者に支給される家の建設を担当した業者については調査中だが、中間報告を読む限りではそちらもシロだろう』

「ますます変ですね。誰が聞いても怪しい法律なのに、何もおかしな所がない……」

『そうなれば、アストラルに矛先が向くのは当然ではあるな。なんせ、あり得ないことでも起こせるのがアストラルだ。だからこそ俺たちの出番なわけだが……とはいえ、今はこれ以上できることは無い。立場上、一番怪しい政府内部に探りを入れることは不可能だしな』

「ということは、今は出来ることがないんですか?」

『いや、そうとは限らない』

 隆之介の側から、パラパラと紙をめくる音が連続する。やがてそれが止まると、彼は再び言葉を発した。

『多重婚姻者のなかに、妙なヤツがいる』

「妙、と言うと?」

『ああ。出自も妙だが、家の警備が異様なほどに堅牢だった。他の多重婚姻者の家にはないほどにな。そこの調査はレヴィ9が担当していたはずだが……本人から聞いてないのか?』

 レヴィ9とは、暁の妹である在原七海のコードネームである。彼の妹もまた、非公開組織のエージェントとして暁と共に活動しており、この橘花学院にも暁同様に潜入していた。

「いえ、特には……そいつの名前も知らないくらいですし」

『そうか、なら共有しておこう。……名前は片丘太志。年齢37歳、職業は喫茶店の店員。妻たちと同じ職場で働く、こいつ自身はどこにでもいる普通の男だ』

「こいつ自身は……ということは、妻たちが怪しいという事ですね」

『ああ。繰り返すが、片丘にもその妻たちにも、政治家との接点は一切存在しない。一度潜入したレヴィ9からの報告もシロだった……だが、そこにヒントがあるかもしれん。再度潜入部隊を組むかもしれんから、お前も準備しておけ、レヴィ6』

「わかりました」

『では、定時連絡終わり』

 暁は通話を切り、ほうと息を吐く。下った指示は、要約すれば「待機」の2文字に尽きる。今出来ることは、出動に備えた準備だけ。モヤモヤとしたものが彼の胸に溜まるが、吐き出す当てもなかったため、彼は気持ちを切り替える。まずは同じ案件に当たっている七海と情報共有を行うため、彼女のもとへ行こうとするのだが。

 着信音が、暁の耳を劈いた。そこに表示されているのは、さっき切ったはずの通信相手。

 不審に思いつつも、彼は電話に出るのだが。

 先程までとは打って変わって、緊迫した様子の隆之介の声がした。

『おい暁! 七海は今どこにいる!?』

「どうしたんだよいきなり、ていうか名前――」

『今はそんなことはいい! 七海はどうした!?』

「あいつなら、今日はまだ会ってないけど」

『くっ……先手を打たれたか……やはりあの男が……』

「おい、父さん? いったい何があったんだよ」

『……辞表だ。七海の名前と字で、辞表を送り付けてきたんだよ!』

「…………は!?」







「あれ、暁? どうしたの?」

 焦り顔の暁に声をかけたのは、同級生の周防恭平だった。

「恭平! 七海を見てないか!?」

 大慌てで詰め寄る暁に、恭平は困惑しながらも答えを返す。

「ちょっ、暁、落ち着いて! 七海ちゃんなら三司さんに呼ばれて学生会室に――」

「分かった、ありがとう!」

 それだけ聞いて猛スピードで飛び出していく暁を、恭平は唖然とした顔で見ていた。

「どうしちゃったんだ、暁……?」

 そんな彼を尻目に、暁は学生会室を目指してひた駆ける。彼がそうまでするには理由があった。

 在原七海は、彼の義理の妹……というだけではない。多くの艱難辛苦を共に乗り越えてきた同僚であり、何よりも想いを交わした恋人同士でもあるのだ。そんな彼女の身に何かあったとあれば、落ち着いていられるはずもなかった。

 規則で禁じられているはずの、無許可での能力使用までも行って走力を高めた彼は、あっという間に学内を走り抜けて目的地に辿り着く。

 乱暴に扉を開けば、そこにいるのは呼び出し人であり、学生会長でもある三司あやせと、探していた七海……だけではなく、

「こんにちは、先輩! ……? どうされたんです?」

「やあ、暁君。……息、荒いね。大丈夫?」

「随分と慌てているようだが、何かあったのか?」

 後輩であり七海の友人でもある壬生千咲、学生でありながら研究者としても活躍する式部茉優、同級生にして第三寮の寮長も務める二条院羽月の三人もそこにいた。

 よく見ると、彼女たちは皆一様に意味ありげな笑みを浮かべていたのだが、暁の意識は七海だけに向いていたため、それに気付くことは無かった。

「七海! どういうことなんだ、一体!」

「暁君、落ち着いて。順番に説明するから、まずは座りなよ」

「ああ、わかった……」

 兄の焦りに対し、妹は酷く落ち着いた様子で空いている椅子を指差す。彼が促された通りに座った、その瞬間だった。

「……ッ!? なっ、身体が……!!」

 暁の身体が、まるで押し固められたかのようにピクリとも動かなくなる。かつて彼が体感したことのあるこの感覚は、式部茉優のアストラル能力によるものだ。

「茉優先輩、これはっ」

「……もしもの時のために、ワタシと三司さんも動くつもりだったが」

「どうやら必要なさそうね。良かった」

 羽月とあやせまでもが、ため息を吐きながら言う。千咲もそれを咎めもしないし、戸惑う様子もまるで見せない。まるで、全員が暁の敵であるかのように。

 暁たちが橘花学院に転入してから1年近くが経つ。その間に彼は、七海と恋仲になっただけでなく、この学生会室にいる女子とも友好を深めていた。今彼を拘束しているのは、学院を襲う危険な組織から共に学院を守り抜いた、戦友と呼べるほどの仲だった者たちなのだ。

 それが今では、協力して暁を取り押さえ、何事かを始めようとしている。そんな光景に、彼は不気味さと身の危険を感じる。

「何のつもりだ……!」

「安心して。暁君に危害を加えるつもりはないから」

「じゃあ何でこんな拘束を――」

「……その方が、興奮するでしょ?」

 妖しい笑みを浮かべた七海が、いつも仕事で使っているタブレット端末を取り出した。素早く指を動かした後、それを暁の前の机に置く。

 画面に映っているのは、一本の動画だった。

 そこには、ベッドに腰掛ける贅肉たっぷりの中年男と、一糸纏わぬ姿で男の膝の上に座る七海の姿があった。

『暁くーん、見えてるかな? 今日は暁君に、わたしからお別れのビデオレターを送るね』

「なっ、何だよこれ!?」

「何って、今動画で言ったでしょ」

「そうじゃない、どういうつもりでこんなものを見せるんだ!?」

「……それも動画で説明するから、黙って聞いてて」

 底冷えするほどの声で、七海は暁を諫める。そんな彼女の様子に、さしもの彼も口を結ぶしかなかった。

 口論の間に進んだ分を巻き戻すと、画面の中の七海は嬉しそうに言葉を紡いでいく。

『えっと、この人は片丘太志さん。わたしが調査してた相手で、これからわたしの旦那様になる人です♡』

 その名前は、つい先ほど隆之介から聞いた名前だった。「一夫多妻法」の適用対象である多重婚姻者のうちの要注意人物。

 そんな男を、旦那様呼ばわりするはずがない。つまり七海は既に敵の術中にあると暁は考えるのだが。

『暁君の事だから、太志さんたちがわたしを操ってるとか、そんな風に思ってるんだろうけど……全然違うよ♡ わたしは片丘太志さんのことが、心から大好き♡ だから、暁君とはお別れ♡ ねっ、太志さん♡ キス、しよ?♡ ……はむっ、ちゅぅぅぅぅぅぅぅ♡ ちゅっ、ちゅっ、ちゅぅぅ♡』

 まるで恋人同士のように、七海は男と唇を重ねる。何度も何度も、愛を確かめるバードキスの雨が降る。

「ああ、ここでは言い忘れてたけど、報告書は嘘偽りなくきちんと書いたよ。太志さんもその奥さんにも本当に何もなくて、無関係の一般人だった」

「そうだね。アタシがやった計測でも、リンク値はみんな普通の人と変わらなかったし」

 事実、彼は能力者でも何でもない。当然、魔族でも天使でも死神でもない。信じ難いほどの精力とペニスを持っていることを除けば、どこにでもいる中年男だ。

「つまりですね、先輩は……」

「男として、太志さんに負けたんだ」

「これ以上ないくらい、明確でわかりやすい答えよね」

「………………っ、何だよそれ!」

 激昂し、今にも立ち上がろうとする暁。しかしながら身体はビクともせず、彼を椅子に縫い付けるかのように固定し続ける。

『んんんっ♡ はぁぁぁぁっ♡ 太志さんっ♡ そんなにおっぱい吸っても、まだ母乳出ないよっ♡ あぁっ♡ あっ♡ おっぱい飲みたいなら、はやく赤ちゃん孕ませてっ♡ あんっ♡』

 画面の中では、男が七海の乳首に吸い付き、音を立てながら舐めしゃぶっている。七海も嫌がる素振り一つ見せず、男の欲望を受け入れている。

「暁君もすぐにわかるよ。こんなおチンチンに愛されたら、誰だって太志さんに一生ついていきたくなっちゃうってこと」

 暗転の後、場面転換。七海は男に向けて尻を振り、挿入の時を今か今かと待っている。

 露出した性器を目の当たりにして、暁は度肝を抜かれた。

「…………は?」

「大きくて形も良いでしょ、太志さんのおチンチン♡ 暁君ならわかるよね、これがどんなに凄いのか……」

 凄い、などという言葉で説明できる代物ではないことは、暁にも容易に理解できた。男のペニスは、暁のそれの何倍もあるほどに巨大であり、オスとしての敗北を一瞬で認識せざるを得ないほどの逸物であった。

「これがおまんこに入ってくるだけで、太志さん以外の男の人なんて、みんなどうでも良くなっちゃうんだ。一突きされるたびに、暁君との思い出もどんどん消えちゃって……♡」

『お゛ぉぉぉぉぉぉぉっ♡ やっぱりこれすきっ♡ 太志さんのおチンチンすきぃぃぃぃっ♡』

『お兄ちゃんのとどっちが良いんだい?』

『こっちっ♡ 太志さんの方がいいっ♡ あぁぁっ♡ 暁君のよりっ、ずっと気持ちよくなれるのっ♡ あんっ♡ ねぇっ、もっとっ♡ もっとおチンチンくださいっ♡』

『じゃあ、もうお兄ちゃんとはセックスしちゃダメだぞぉ』

『うんっ♡ もう暁君とはエッチしませんっ♡』

 迷わず兄以外の男を選んだ七海。暁の心に暗いものが湧き上がる。そしてそれは、彼の下腹部へと血を運んでいく。

「ねぇ、暁君。もしかしてだけど……わたしが太志さんに抱かれてる所を見て、興奮してる?」

「……それは、その…………」

「答えてくれないならいいよ、こっちに答えてもらうから」

 七海は暁のズボンのジッパーを下ろし、パンツとズボンの隙間から性器を露出させる。

 姿を覗かせたのは、太志と比べてあまりにも控えめで小さなペニス。

 それを見た七海はため息を吐き、他の4人は蔑むような、あるいは憐れむような声を上げた。

「いやー……おちんちんは可愛いんですね、先輩。こんなのを七海ちゃんの中に入れてたんですか?」

「あー、まあ、うん。アタシはちょっとお断りかな。これじゃ全然気持ち良くなさそうだし、今後の成長も無さそうだからね」

「まったくだ。在原君のような小さくて粗末なモノにはちっとも惹かれない。見てくれ、太志の立派で逞しくて、男らしいこれを……これが、本物の男の象徴だ」

「ふふ。人を偽乳だの平野だの乳部・タイラーだのと呼んでくれた割に、随分と小さくてみっともない粗チンね? 私の胸は太志が愛してくれるけど、アナタのそれはどこの誰が愛してくれるのかしら?」

「……妹が寝取られてる姿で興奮するとか、キモッ。あーあ、こんなキモい人じゃなくて、太志さんに初めてをあげたかったなぁ……」

「くっ……」

 皆、思い思いに暁のペニスを罵倒していく。心を交わしたことも、身体を重ねた初体験も否定され、暁の精神は既にズタズタだ。

 そしてそんな彼に、画面の向こうの七海が追い打ちをかける。

『太志さんっ♡ すきっ♡ だいすきっ♡ すきすきすきすきっ♡』

『オジサンも七海が好きだよぉ。オジサンのお嫁さんになってっ』

『なるっ♡ なりますっ♡ 太志さんとっ、ずっと一緒に暮らしますっ♡』

 それは、一つの恋が終わった瞬間。何よりも大切だったものを、完全に奪い去られた瞬間。

 だが、これはあくまでも暁にとっての話。

 七海にとってみれば、新たな日々が始まった瞬間であり、想い人と真に心を通わせた瞬間でもある。

「そういう訳だから、もう暁君とはお別れ。特班を辞めるのも、太志さんとの夫婦の時間を増やすため。分かった?」

「あーあ、先輩フラれちゃった。でも、勃起はしたままなんですね」

「ピクピク震えて……射精したいんじゃない?」

「七海君にフラれたのにか? 流石にそれは、男として情けなさ過ぎるだろう」

「典型的な寝取られマゾね。七海さんに愛想を尽かされるのも納得だわ」

「……ふーん。いいよ、最後だから特別にシコシコしてあげる。雑魚オスらしくみっともなくぴゅっぴゅして、スッキリわたしとお別れしよ?」

 そう言って、七海は机に腰掛け、暁のペニスに右足を延ばした。5人に見つめられながら、暁は妹の足裏でペニスを扱かれ、たちまち射精へと上り詰めていく。

 画面では、こちらもいよいよ大詰めだった。男は後背位で七海を獣のように○す。その腰遣いは荒く、もう間もなく射精しようかという所だ。

『おぉぉぉぉっ、七海のマンコに出すッ! 子宮で全部受け止めろッ!!』

『う゛んっ♡ ふとしさんのせーえきっ、わたしのなかにだしてっ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ わたしのこと、ママにしてぇぇぇっ♡』

『おおっ、出るッ! 出るッ!!』

『お゛っ♡ お゛お゛っ♡ イ゛っ♡ イ゛ぐっ♡ イぐイぐイぐっ♡ イ゛っ……ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ♡』

 男がペニスを最奥まで押し付け、腰の動きを止める。それと同時に、七海は背中を大きく仰け反らせながら絶頂した。

 それと同時に。

「……イって♡ イけ、雑魚オス♡ イけ、イけ、イ……け♡」

 暁もまた絶頂した。ぴゅるぴゅると少ない精液を吐き出し、七海の靴下を白濁で穢していく。

「うわ、本当に気持ち悪い……妹の寝取られでイくなんて、最低だよ。おまけに早漏……ほんと、暁君ってダメダメだね」

 不快感を隠そうともしない七海。今や、彼女に暁への愛情など微塵もなかった。

 画面の中では、二人の身体が不規則に震えていた。入りきらなかった精液が、繋がったままの秘部から滴り落ちていく。

『お゛ほお゛ぉぉぉぉぉぉぉっ♡ すごいっ♡ おなかのおくっ、びちゃびちゃたたかれてるっ♡』

 可憐な顔立ちをあられもなく歪ませながら、全身で快楽に浸る七海。そこにはただ、愛する夫の精を受け止める幸福と歓喜だけがあった。愛していたはずの兄のことなど綺麗さっぱり忘れ去り、新たなる、そして永遠の伴侶と繋がり続けることを彼女は選んだのだった。

『はーっ、はーっ……あー、七海ちゃんのマンコ、とても良かったよぉ』

『ふーっ♡ ふーっ♡ 太志さんが、喜んで、くれたなら……はぁ、はぁ……♡ 嬉しいな……♡ 好き、太志さん、大好きです♡ それで、あの……♡』

『んー? どうしたんだい七海』

『あの、天音ちゃんから聞いたんだけど……♡ わたしも太志さんのこと、お兄ちゃんって呼んでいい?』

『勿論だよぉ、是非呼んで欲しいなぁ』

『……っ♡ うんっ、太志お兄ちゃん、大好きっ♡』

『うおぉ、七海にお兄ちゃん呼びされるの、凄くいいねぇ』

 鬱屈した射精を終えた暁に、更なる一撃。兄妹という唯一の繋がりすらも、冴えない中年太りの男に奪われた。たった一つ、生殖能力で劣るという、それだけのことで。

『あっ♡ ホントだ、お兄ちゃんのおチンチン、また硬くなってる……♡』

『何回戦でも行けるぞぉ。ほら、そろそろ千咲も入っておいで』

『はーい♡ やっと出番ですね♡』

 画面の外、手前側から赤い髪の少女が歩いてきた。躊躇うことなくベッドに乗り上げると、男と熱い口付けを交わす。

「先輩、知ってました? 私も太志さんのお嫁さんになったんです♡」

「千咲ちゃんだけじゃなく、アタシや三司さんもお嫁さんになったんだよ♡」

「勿論ワタシもだ♡ 太志のような、強くて頼もしい白馬の将軍様に嫁ぐことが出来て、とても嬉しく思っているぞ♡」

「そうね、太志は私たちのヒーローだから。好きになるのも当然よね……♡」

 かつて信頼して背中を預けたはずの仲間までもが、あんなエロオヤジを慕い、愛している。男として、これ以上ないほどの敗北だった。

 七海は靴下を脱ぐと、未だ身動きの取れない暁の顔に向けてそれを投げつける。

「暁君の精液で汚れた靴下なんて履きたくないから、それはあげる。わたしのことを思い出してシコシコするのに使って。……じゃあね、暁君。わたしは太志さんのお嫁さんとして幸せに暮らすから、暁君も元気でね」

「待てよ、何処に行くんだ……!」

「わたしたち、転校するんだ。この学院、太志さんの家からだと遠いから」

「お嫁さんみーんなで仲良く暮らしてる豪邸があるんです。いつか先輩もご招待しますね!」

「寮長も辞めることになるが……まあ大丈夫だろう。ワタシがいなくても、寮の治安は安泰だろうからな」

「待てよ。三司さんも茉優先輩も、そんなことしていいのか!?」

「ああ、うん。おと――理事長の許可も出てるから。広報活動に協力してくれるなら、学院は出ても良いって」

「アタシも留年する理由無くなったからね。この学院で研究を続ける必要もないんだ」

 予想外の回答に、暁は反駁出来なかった。何があったか彼には分からないが、少なくとも彼女たちがこの学院に残る理由はなかった。

 口を噤むしかない暁に向けて、七海は冷たく吐き捨てる。

「……負け惜しみは済んだ? わたし、太志お兄ちゃんのところに帰りたいんだけど」

「なら、そろそろ行こうか。人を待たせてるしね……バイバイ、暁君」

「それじゃ先輩、さようなら。どうかお元気で」

「ではな、在原君。キミにも素敵な伴侶が現れることを願っているぞ」

「……ふぅ。寝取られマゾで粗チンの在原君に、そんな人がいるとは思えませんけど……ま、祈るだけならタダですよね。在原君にいい出会いがあることを祈ってます」

 180度態度を変えたあやせの言葉は、どこまでも他人事でしかないのだった。

 七海は机を下りると、端末を片付けてしまう。そして、暁のズボンのポケットからスマホを取り出した。動けない暁の指にボタンを当て、指紋認証を解除する。

「さっきの動画、送ってあるから。好きに使ってね」

 そう言いながら、七海は暁のスマホを操作し、動画を再生し始めた。悪夢としか言えない光景が、再び目の前で繰り広げられる。

 それだけ済ませると、彼女たちは暁に背を向け、部屋を出ていこうとする。

「いいのか。茉優先輩がいなくなれば、俺だって動けるようになるんだぞ」

 どれだけ距離が離れていても拘束を維持できるほど、茉優の能力は強力ではない。そう読んでの発言だった。

 だが、最悪とは常に創造の上を行くもので。

「甘いなぁ。アタシは今、能力を発動してないんだよ。その椅子には、アタシの能力を遅滞発動してくれるトラップが仕込んであるんだ。今回は時限解除されるようにしてるから、そうだね……その動画が終わる頃には、解除されてるかな?」

「あのハメ撮りが8時間くらいあるから、それくらいですかね?」

 七海の言葉に、暁の顔から血の気が引いていく。少なくともあと8時間は、この地獄を延々と見せつけられるという事だ。

 とても正気を保っていられるとは思えない。下手な○問より余程効果的だ。

「わたしたちと太志さんの夫婦生活を邪魔しないって約束してくれるなら、解除してあげてもいいよ。……もし反故にしたら、本気で怒るけど」

 脅しをかけられ、暁は歯噛みしながら頷いた。羽月とあやせ、そして茉優が警戒するように能力発動の準備をするが、彼は抵抗しなかった。というより、そんな気力はもうなかった。

 もう興味もないといった様子で、5人は学生会室を後にする。最後の最後、部屋を出る直前で、七海は兄だった男に最後の言葉をかけた。

「……バイバイ、元『お兄ちゃん』」

 パタンと音を立てて扉が閉まる。兄妹の歩む道が、明確に断絶した音でもあった。







「それにしても、太志さんと会ってから、皆さん変わりましたよね」

 校舎を出るまでの道すがら。何かを噛み締めるように、千咲は思っていたことを口にした。

 反応は様々だった。

「そうだね……わたしだけじゃなく、みんな変わったね」

「あー、確かに……昔ほど研究第一じゃなくなったね。でも、二条院さんと三司さんの変わり方はアタシより凄いんじゃないかな」

「そうなのか? 三司さんは分かるんだが……ワタシは、どこが変わったんだろうか」

「前までの二条院さんなら、ハーレムなんてけしからん、成敗! くらいのことは言って太志をボコボコにしてたんじゃない? ……ていうか、私は納得されるのか……解せぬ……」

 あやせがそう思われるのも無理はなかった。先程垣間見せた天使のごとき丁寧な振る舞いは、あくまでも取り繕っているに過ぎない。このくだけた在り方こそ、本来の彼女の気質だ。

 当然、親しい者以外には隠していて、羽月や七海、千咲はそんな姿を知らなかったのだが。

「みんな、太志のお嫁さんになるんでしょ。すぐにバレるなら、隠してもしょうがないから」

「……わたしは、そんなあやせ先輩もいいと思います」

「うんうん。何ていうか、親しみが持てるっていうか……」

「人間味があるよね。二条院さんもそんな感じだよ」

「ワタシもか!?」

 かつての羽月は、規則こそが優先で、そこに例外を設けない、徹底した機械のような存在だった。だけどそんな彼女も、太志に愛されたことで考えをすっかり改めてしまった。

「……というか、ワタシは太志のお嫁さんになるんだから、いつまでも二条院と呼ばないで欲しいぞ!」

「それもそうだね。アタシも片丘茉優になるわけで」

「そうすると、わたしは片丘七海で……」

「私が片丘千咲ですね!」

「……で、私が片丘あやせ、か。うん、いいじゃない」

 満足気に、新たな名を呟く少女たち。その心は、幸せな日々への期待と希望で満ち溢れていた。

 そんな彼女たちの前に、一人の人影が現れる。それは、彼女たちが「待たせている」人物だった。

「お待たせ、琴里」

「遅いよー、茉優」







 自室に戻った暁は、すぐさま隆之介に事のあらましを報告した。一通り聞き終えた彼は、重たい息を吐きながら、しばらくの沈黙を置いたのち口を開いた。

『…………そうか、分かった』

「申し訳ありません、食い止めることが出来ず……」

『気にするな、こっちにも同じ内容の手紙が届いててな。それを読む限り、説得は無理だろうと思った。七海が一度決めたら折れないのは、俺たちもよく知ってるだろ』

「そう、ですね。それで、再調査の方は……」

『一応やってみるが……七海の言ったことが正しいなら、前と同じ報告書を書くことになるだろう。まさか、無実の人間を拘束するわけにもいかんしな』

「………………すみません、俺がアイツの心を繋ぎ留められていれば」

 暗い声で話す暁を、隆之介はどうにか慰めようとする。

『いいさ。特班としてではなく、父親としていずれ会うこともあるだろう。後のことは俺に任せて、お前はゆっくり休め』

「はい、失礼します」

 通話を切る。だが彼はそのまま休む気にはなれなかった。

 義理とはいえ、家族として過ごした短くない時間。その全てが、一人の男に穢された。

 だがどうしようもない。組織として動くことは出来ず、男として奪い返すこともできない。

 手の打ちようのない敗北。なのに何故か、どす黒い興奮が彼の中にはあった。

 スマホを操作し、一本の動画を表示させる。それは七海が最後に残した、彼女たちと男のハメ撮り映像。

 悔しげな声を上げながらも、彼は小さな陰茎を一人で惨めに扱くのだった。

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