新婚でお嬢様 志保 EP1.
東京都内ー
豪邸がいくつも立ち並びそれなりに緑も多い、とある地区
その中でも一際大きい屋敷の中の応接間で
一人の若い女性…志保は固い表情で
一言だけ呟いた
「わかりました…!」
志保の前、テーブルを挟んでソファーに座っている老人が「うむ」と頷いた
「籍を入れて一つの屋根の下で暮らす。今はそれだけでいい」
「式を挙げろとは言わん、子供を作れとも言わん」
「話はこれで終わりだ。行っていいぞ」
「…」
志保は何も言わずその場を離れたー
沢木 志保(さわき しほ)は
今年、八王子のとあるお嬢様学校を卒業し
春から都内の大学に通う女子大生だ
そんな志保に突然持ち上がった縁談の話…
(いつかは来るものと思ってはいたけど、こんなに早くなんて…)
驚きはしたが、どこかで諦めにも近い納得をする志保
志保には兄が居た。沢木家を継いだ優秀な兄が…
ある女性と素敵な出会いをして、そして結ばれた兄が…
では自分はといえば…きっとよく知らない男の元に嫁ぐのだろう
「沢木家のため」に…
聡明な女性である志保は早くからそれに気付き、覚悟をしていた
…
…
しかし淡い期待を持って一度だけ拒否の姿勢を示すも…
やはり受け入れられず、仕方なく従う志保は
ついに相手の男と都内の屋敷で使用人達と共に暮らし始めた
相手の男も志保と同じく戸惑っている様子だった
お互いに複雑な心境で、よそよそしく「夫婦」の真似事をする二人
どうせなら前向きに考えよう、相手と接っしよう
と志保は考えるも、男性に対しての免疫が薄い志保は
なかなかその先の行動に移せずにいた…