【小説】エンゼルリリー ~狙われたエンゼルブーツ~ その3
「ふにゅううぅぅぅっ!?」リリーは思わず目を見開いて叫んだ。
「うふぅぅぅ……き、きつきつだわ……!」と悪魔がいった。「ふふふ、どうしたの、リリーちゃん。そんな声だして」
「あ、は……く、くはぁぁぁ……」リリーは咄嗟にこたえられず、呻き声をあげた。
(そんな――な、中に……ッ)
左脚には二本、右脚には三本もの触手が入り込んでいた。エンゼルブーツの胴回りがいくら太く、脚とのあいだに隙間があるといっても限界があった。一本入るだけでもかなりのきつさがあるのに、そこに二本、三本と入り込まれ、エンゼルブーツはパンパンに張り詰めてしまった。左脚もそうだが、右脚は特にひどかった。ブーツに触手の形が浮き上がり、ラバー質の胴が伸びてしまっている。エンゼルブーツだから耐えられるが、これが普通のブーツなら、触手の力に破壊されてしまうところだ。
恐ろしい衝撃が脚とブーツを襲った。ブーツの中で足の指が丸まり、ふくらはぎが強張った。なにか言い返したいのに、声をだすことができない。
(あ、あく……くぁ……だ、だめ……力が……)
練り上げたエナジーが蕩けたように、固く結ばれていたものが解けていくように崩壊していく。なんとか留めようとするがどうにもならない。発動しかかっていた聖舞の力が弱まり、エンゼルブーツがもたらす、あの心地よい力の感触も失われてゆく。そしてついに、瞳に帯びていたエナジーの輝きまでもが消失してしまった。
(ブ、ブーツが……う、ぁ……く、苦しい……! ま、まさか……リリーの、リリーのブーツの弱いところ……あぁっ!)
額に珠の汗が浮かんだ。リリーは苦しみを顔にだすまいと、声にだすまいと堪えた。
「う、くうぅぅっ、な、なんでもない、わよ……! びっくりしただけ……はぁ、はぁ……ぬ、ぬきなさいよ……!」
「なあに? 追い出せばいいじゃない。そうでしょ? エンゼルブーツはすごい力があるんだから、こんな触手簡単に追い出せるでしょう?」
五本の触手が、ブーツの中でぐねぐねと動いてふくらはぎをこすった。触手の表面はわずかにぬめりを帯びているが、しかし触れられてみると、その皮膚にはざらつきがある。そのざらついた皮膚がニーソックスの生地に引っかかり、なんともいえない刺激をもたらした。
「あ、く、くは……あはぁぁぁ……ッ」リリーは唇を噛みしめ首を振った。
(あはぁぁ……あ、熱くて、ぬるぬるして、きもちわるい……! 脚が……リリーの脚、あしがぁぁ……ッ)
「柔らかいふくらはぎ……」奥へは入らず、ふくらはぎの周りやブーツの裏地を執拗に撫で回しながら悪魔はいった。「この桃色ブーツの中に、こんなものを隠していたのね。こんないやらしい脚で、聖舞天使なんて! 挑発してくるわ、生意気な脚……。太くて、もちもちで、このソックスで一生懸命締めつけて……。あぁぁ、これがエンゼルブーツ! 外はつやつやしてるけど、中は柔らかくてすべすべの布がはられて……ふふ、人間のものとはぜんぜんちがう。さすがは天使のブーツ、いい履き心地だわ。でも、ふふふふ、ちょっと蒸れすぎよ!」
「ふ、ふにゅっ!」リリーは赤くなった。「ち、ちが――」
「なにがちがうの! ブーツもソックスももうぐちゅぐちゅじゃない! ソックスなんて色が変わってるわ! あぁ、すごい熱! リリーちゃんの『ながぐつ』は、生意気な脚だけじゃなくて、このぐちょむれを隠すためでもあるのね。それに、それに――あぁっ、なんてにおいなの!」
「あぁぁっ!!」
「すごいにおいよ! 桃みたいな、甘くて、濃くて、蕩けるようなにおい! リリーちゃんの蒸れたにおい……うふぅぅ、か、嗅いでるだけでイってしまいそうだわ――」
「あはぁぁぁっ! ち、ちがう! そんなことない! 臭くなんかないんだから!! ゆ、ゆるさない――エンゼルブーツ!!」
リリーはブーツにエナジーを伝えようとした。眉がきつく寄り、頬が紅潮し、唇が噛みしめられる。しかしどれだけ一生懸命にエナジーを込めようとしてもうまくいかない。注ぎ込もうとするエナジーがなにかに阻まれてしまう。力がでない。エンゼルブーツが輝かない。
(あぁぁぁ、だ、だめぇぇ……)
「力がでないようねえ」悪魔はリリーの心を見透かしたようにいった。
リリーはどきりとした。
「なにを……」
「わかってるのよリリー、あなたの弱点は」と悪魔はいった。
「そ、そんなこと――リリーに弱点なんてな――あぁぁっ!!」ブーツの中でぐちゅりと触手が動き、リリーはたまらず身体を震わせた。
「ふふふ、そんなに汗かいて、苦しんで……なんてかわいらしいのかしら! でもだめよ。エンゼルブーツ、たしかに外側は硬いわ。エナジーも濃くて、ちょっと責めたくらいじゃなんともない。でも、うふふふ、内側が弱点なのよね! 中に入り込まれると、リリーちゃんのエンゼルブーツは力をだせなくなる!!」
「あぁっ!」リリーは悲鳴のような叫びをあげた。「ちがう! そんなことない!!」
「ちがわないわ! 中に入ったら、リリーちゃんの足がきゅって丸まって、力が抜けたのよ! そして、たあっぷり汗をお漏らしして……」
「ち、ちがう! ちがうんだから! こ、この――んくううぅぅぅうっ!!」
リリーは思いきり力を込めた。エナジーをブーツに注ぎ込もうとする。
触手にエナジーの流れが阻害される。蒸れているせいでうまくエナジーが伝わらない。だがそれでも、なんとかエナジーでブーツを満たしてゆく。ブーツの輝きが増し、力がこみ上げてくる。瞳が再び光り出す。
「せ、聖舞――!!」
「だめよ! そんなこと、させてあげるとでも思っているの!?」
悪魔が叫び、ブーツの中で触手から、じゅぶ、ぬぶぶぶ……と淫液が溢れ出した。
あぁっ――とリリーは叫び、目を見開いた。頭が真っ白になり、宙のなにもないところを見据えた。
淫液はねっとりと脚を伝い、くるぶしから垂れてブーツの底に広がった。ブーツの底に染みこみながら、同時にソックスに染みこんできた。淫液はただの粘液とはちがう。悪魔が溢れさせる、肉体を淫らに発情させるこの汁は、それ自体が邪悪な意志を帯びているのだ。濃厚で粘つく汁は、ソックスや、ブーツの内側の布地の、きめ細かな繊維のひとつひとつにべっとりとへばりつき、異様にしつこく、舐るように侵してくる。
「あ、は――」リリーは息を詰まらせた。(な、中に……中に……)
ぱくぱくと、空気を求める魚のように唇を動かし、リリーは小刻みに震えながら虚空を見つめ続けた。太ももに力がこもり、むちむちとした肉が艶めかしく揺れる。ブーツの中で両足の指が開いたかと思うと、ぎゅっと丸まり、淫液の広がった底を掻く。(ち、力が……)とリリーは思った。(聖舞……聖舞……)そう繰り返し唱えた。だが、淫液がさらに溢れ出て、ブーツの中全体に広がっていくと、エンゼルブーツからバチバチと桃色の粒子が――エンゼルブーツのエナジーが――火花のように散った。
「ひ、ぁ――ッ」リリーは息を呑んだ。
深刻なダメージを受けているのはもう誰の目にも明らかだった。もう能力を発動すらできないことも明白だった。それでもなお、リリーは顔を真っ赤にしながらエナジーを注ぎ続けたが、ついに限界は訪れた。
「せ、聖舞――聖舞――あ、あはあぁぁぁぁぁっ!!」
リリーが悲痛な声をあげると同時に、空間を一瞬、桃色の光が満たした。エンゼルブーツのエナジーが放たれたのだ。リリーが自らの意志で放ったものではない。聖舞の発動に失敗し、エナジーが霧散してしまったのだ。
「う、くぁ……んふぅぅ……」
光が収まり現れたのは、凄まじいダメージを受け、消耗したエンゼルリリーだった。力の入っていた身体は脱力し、意識は朦朧として、ときおりびくびくと身体を震わせていた。もとから汗ばんではいたが、いまや顔や腕、太ももなど、露出している肌は濃厚な天使の汗でぬらぬら、てらてらと輝き、同時に湯気が出そうなほどの熱気と、桃のような甘い体臭が漂っていた。
そして当然、もっともダメージが大きいのはエンゼルブーツと、それを履いた脚であった。聖舞の発動を破られ、淫気の侵蝕が一気に進んでしまったのだ。脚が、それもエンゼルブーツの中にある、膝から下のところだけが異様な熱を帯びていた。淫気がそこにだけ濃厚に留まっている。ブーツの裏地と脚を侵し、ブーツの内部を性感帯に変えてゆく。ブーツの蒸れだけでなく、淫気のもたらす快楽の熱が脚を襲い、ブーツを履いているだけで溜まらないものがこみ上げてくる。腰を揺すりたくなる。尻を振りたくなる。乳房がじんじんとし、股間の奥が潤んでくる。あまりの熱に辛くなり、ブーツの中で足の指が開いてしまう。
(あはぁぁ……)リリーは心の中で喘いだ。(ブーツ、あぇあ……ブーツ……う、ぁ……?)
とそのとき、リリーは我に返った。あっと叫んで自分の身体やブーツを見た。
「そ、そんな――あ、あぁぁ……ッ」
「どうやら、勝負はついたようね」悪魔は勝ち誇っていった。
「ふにゅっ、そ、そんなことない! まだ負けてない! まだ戦えるんだから――」リリーは叫びかけたが、びくりとして、顔にまたどろどろとした汗を滲ませると、唇を噛みしめ腰を揺すってしまった。「あ、く――ふ、ふにゅ――」
「ふふふ、もうだめよ。中をどろどろにされて、力なんてはいるわけないわ。え、そうでしょうエンゼルリリー? びくびくして、苦しいのね? もっと苦しめてあげる! 奥、奥にはいって――」
触手はさらに奥まで入ってきた。ブーツの足首から先は胴よりもずっと狭い。だが、触手は淫液を潤滑油にして、無理矢理に頭を押し込んでくる。
「ふにゅううぅぅっ! はいってくるなぁっ、そんな奥、ふあぁぁ、入らないぃっ!!」
エンゼルブーツが悲鳴をあげているのを感じた。悪魔が弱点の内部に入ってくる苦しみ、淫液に穢される屈辱、しかし、そのどれもがどうにもならない。外に巻きつかれているのなら抵抗もできる。だが中に入り込まれてしまったのだ。ぐちゅぐちゅ、じゅぶじゅぶと淫液が凄まじい音を立てる。肉の中に埋もれて見えなくとも、ブーツの足の甲のところに触手の形が浮かび上がっているのがはっきりとわかる。
(そ、そんな無理矢理ぃっ!! エンゼルブーツが、あぁぁ、ブーツそんなにしたらだめぇっ!!)
エンゼルブーツの苦悶は、同時にリリーの苦悶だった。ブーツのダメージが脚に伝わってしまう。エナジーで繋がっているために、リリーの足はソックスに染みこむ淫液と、ブーツへのそれで、二重のダメージを負ってしまう。ブーツが苦しめば苦しむほど、それが快感へ変えられてしまう。
触手が頭部を蠢かせ、悶え苦しむリリーのつま先に近づいてゆく。ブーツの中で、リリーに抵抗する手段はほとんどない。ただ、ソックスの足の指を開いたり丸めたりして、あるいは足の甲を反らせるくらいしかできない。だが、そうして足の甲を反らせるたびに、足が触手に触れてしまう。触手は昂奮して熱を帯びている。なぜこんなにも気持ち悪くなれるのか理解できないほどにグロテスクな弾力がある。ネバネバとした、そして同時にぬるぬるともしている淫液が足に染みこんでくる。白いソックスに染みこんでしまう。足の甲に引っかかり触手が蠢く。リリーはつま先までいかせまいと足を反らせて反抗する。だが、触手は凄まじい力で思いきり押し入ってくる。ずぶぶぶっと激しい音が鳴り、つま先のところまで入り込まれてしまう。
「はくうぅぅっ!」リリーは歯を食いしばり、押し殺した声をあげた。「あぁぁ、そんな深く――」
「そ、そうよ!」悪魔は叫んだ。「深いところ、リリーちゃんの、エンゼルブーツのいちばん深いところ……あぁぁ、こ、これがリリーちゃんのつま先……ちっちゃくて、しっとりむれむれのかわいい足……!!」
触手がついにつま先に触れる。リリーの足は、指の先から爪に至るまで、整った、小さく可愛らしい形をしている。触手はその指を、ソックスの上から、指の先からその根元、そして指のあいだに至るまで執拗に舐るように先端を這わせた。それはまさしく舐っているのだった。溢れ出す淫液は唾液で、それを染み出させる先端は舌だ。淫液を指のあいだにぬりこみ、ねっとりと擦りあげてくる。リリーのソックスはつま先の布が二重になっている。その分、多くの汗と、そして淫液を吸ってしまう。
「あ――あはあぁぁぁぁぁっ!!」リリーは唇を噛みしめ堪えようとしたが、堪えきれずに叫んだ。
(あ、足があぁぁっ!!)リリーは内心で、より激しく、より狂おしく叫んだ。(あ、足――リリーの足、つ、つま先まで汚されてるぅぅっ! ブーツ履いてるのに! エンゼルブーツ履いてるのにぃっ! 守られてるのに、効かないのに、あぁぁ、な、中にはいるなんて、そんな、そんな――ひ、卑怯よ! ブーツの中にはいるなんて、リリーの、リリーの弱いところ責めるなんてぇっ! うくぅぅ、指はだめぇ、つま先、ソックスぐちゅぐちゅにして、指のあいだにはいりこむのだめぇっ! びくびくしちゃだめなのに、いけないのに、ふあぁぁ、あ、足、足……敏感……う、ぁぁあ、戦ったあとの、履きっぱなしブーツの中くちゅくちゅするの――)
そのとき、ふくらはぎに刺激が走った。
(きゃあぁぁっ!! ブーツが、ブーツがぁぁっ!!)リリーは心の中で悲鳴をあげた。
ぎゅむうぅっという、ラバー質のそれが立てる特徴的な音が、ブーツが埋まる肉の中からくぐもって響いてくる。触手が蠢くたび、バチバチという電流のような刺激がブーツを走る。それはエンゼルブーツを履くリリーにしかわからない衝撃である。淫気と触手に責められ、ブーツの中のエナジーが乱れ、さらにはリリーとブーツのあいだにある、エナジーのリンクが断たれはじめているのだ。
リンクはふくらはぎから足の裏に至るまで、ブーツと足のあいだに張りめぐらされたエナジーのつながりだ。リンクがあるからこそ、リリーはエンゼルブーツにエナジーを注ぐことができ、そしてまた、エンゼルブーツはリリーに力を与えることができるのである。そして同時に、リンクがあることで、天使のコスチュームはたとえ密着していなくとも、天使の意志に反して脱がされたり、ずらされたりすることがないのである。
その、コスチュームにとって不可欠なリンクが断たれてしまう。ふくらはぎのそれがいまの一瞬で半壊し、足首から先の、特につながりが濃いところまでもが危機にさらされている。
(あはあぁぁ、あはああぁぁぁぁっ!! リ、リンクが――う、ぁ、リンク切れちゃう、ち、ちから抜けるうぅぅ……ッ!! こ、このままじゃ、あ、ぇあ……ぬ、脱げる……ブーツ脱げちゃう……!! なんとかしないと、ブーツ脱げたら戦えないぃっ! 戦えないのに――あぁぁ、ど、どうすれば……!?)
リリーはブーツの中で足を動かした。ぬぷ、じゅぶぶ……と音がして、淫液がねっとりと足に絡みついてくる。淫液はすでに底に溜まり、つま先どころか、足の甲のあたりまでがその中に浸けられてしまっている。だが、溜まっているのは淫液だけではない。もうそのことを否定できない。ブーツを犯され、凄まじい量の汗が溢れ出してしまっている。
(――う、ぁ――)リリーはぶるぶると震えた。(あ、熱い……蒸れ、る……ブ、ブーツ、ブーツぐちょむれ……)
「どうしたの、エンゼルリリー?」悪魔がいった。
リリーははっと我に返った。
(ふにゅっ!? な、なにをかんがえてるの!? 負けないんだから! こんなことで屈するリリーじゃないんだから!!)
「な、なんでもないわよ!」
「いいえ、わかってるわ。感じてたんでしょう? ブーツをぐちゅぐちゅにされて、昂奮して、いやらしくなってたんでしょう?」
「バカなこといわないで! そんなこと、あるわけない――」
「そういってくれると思ったわ! んふふ、いまのリリーちゃんの顔、見せてあげたかったわ! あんなに蕩けた顔してたくせに、また元気になって……。んふぅぅ、でも、リリーちゃんがどんなに強がっても、そのいやらしい、むちむちの身体は嘘がつけないわね。上のお口がどんなに嘘をついても、下のお口が正直になってるわよ!」
リリーははっとして股間に目をやり、思わず悲鳴をあげた。白いスーツの股間が濡れ、色が濃くなっているのだ。それは汗ではなかった。エンゼルスーツは薄くはあれど、相当な量の汗を吸わない限りは汗染みができることなどない。しかし、股間から溢れるそれに関しては別で、量も多くエナジーも濃厚なため、スーツに染みをつくってしまうのである。
(あぁっ! そ、そんな!!)リリーは絶望的なきもちで叫んだ。(リリー、濡らして――)
「それが証拠だわ!」悪魔が勝ち誇ったように叫んだ。「エンゼルリリーはとんでもない変態さんね! 大切なブーツをいじめられて、汚されて感じてるんだわ!!」
「み、みるなぁっ! そんなはずない! リリーは感じたりなんか――エンゼルブーツで感じるはずないんだから!! これは――くぅぅ、汗をかいちゃっただけよ!!」
「そう? そうかもしれないわね。汗っかきのリリーちゃんは、もうあちこち汗まみれだもの。顔も腋も、スーツの中も……それに、ブーツの中もね!」
ぐちゅっと、ブーツの中で触手が蠢く。
「くああぁぁぁっ!」
「うふふふ、おまんこより、こっちの方がお汁をだしてるみたいね。ねえ、感じるでしょう?」
悪魔はブーツの中を掻き回しながらいった。
(あえあぁぁ……だ、だめぇ、だめぇぇ……ッ)
リリーはそれを感じた。ブーツの中で足を動かすと、ぐちゅり、ぐちゅりと音がするのを。触手が蠢くたびにその音は激しくなり、粘つきを増し、ねちょぐちょという汚らわしい音に変わった。そして異様な、粘つく、熱を帯びたものがブーツの中に溜まりだした。
(あ、汗が、リリーの汗が――)
染みだしたリリーの大量の汗が、淫液と混じって変異を起こしているのである。その変化は劇的に、そして一度始まると凄まじい勢いで進行した。淫液と、汗の中の天使のエナジーが反応し、ねちょねちょとした、まるで蕩けたチーズのような汁に変わっていく。それは見なくとも、足に触れただけで、汚らわしく、においも凄まじいことがはっきりとわかった。しかも、それに触れているだけで淫らな刺激が走ってしまうのだ。淫液がリリーの汗を取り込んで進化し、リリーに特別に効き目のある、おぞましい淫汁と化しているのだ。
(あぁぁ、き、汚いぃ……! ねばねばして、どろどろで、あ、足に絡みつく――ふ、ぁ……ソ、ソックス、ねとねと……あぁぁ、ソックスぅ、ブーツ汚れて……くぁ、ぐ、ぐるじい……!!)
もはや、ごまかしようのない昂奮がリリーを襲っていた。それはブーツからこみ上げ、太ももを伝い、股間や、乳房や、そしてリリーの精神を蝕んでいた。エンゼルブーツとそれを履く足から伝わったそれが子宮の中をくちゅくちゅと刺激してくると、今度こそリリーは、自分のそこが開き、奥の方から溢れ出たものがスーツの裏地にべっとりと染みこんでいくのを感じた。
「わかるでしょう? いやらしいお汁ができていくの」悪魔はうっとりとしていった。「リリーちゃんのくっさい汗……うふふ、わたしのお汁と混ざって、とおっても素敵な、べちょべちょの、ねとねとになってるわ」
「ふ、ふにゅ……はぁ、はぁ……!」リリーは首を振った。「そ、そんなことない……! そんなことないもん! 臭くなんてないんだから、あぁぁぁ、かきまわすなぁっ!」
「わかってるくせに! 嗅いだことあるでしょう? 自分のにおいだもの、よくわかってるはずよ! ふふふ、いやらしいリリーちゃんなら、自分のにおいを嗅ぎながらオナニーしててもおかしくないわ」
「な――そんなことするわけない!!」
「だったら――」
ズボォッ! と右のブーツに入っていた触手のひとつが引き抜かれた。リリーにそれを見せつけた。リリーは息を呑んだ。触手の先端に付着した、べっとりとしたクリーム色の汁――。
「嗅がせてあげる。これがリリーちゃんの汗のかたまり。とっても濃くて、汚くて、そしてくっさいお汁。すごく、すごくエッチで、いいにおい――」
汁まみれの触手がリリーの鼻先に近づいてくる。リリーは息を止め顔を背ける。
「や、やめなさいよ!」
「だめよ! 嗅ぎなさい、ほら、ほら!!」
悪魔はブーツの中でぐちゅぐちゅと触手を蠢かせる。快感が走り息が詰まる。こみ上げる快感に突き動かされる。堪えようとする。だが堪えられない。リリーの小ぶりな鼻がひくひくとして、ついににおいを嗅いでしまう。
「ふにゅうぅぅっ!」
その瞬間、リリーは叫んで痙攣した。
それは、嗅いだだけで頭が蕩けるような甘い香りだった。だが同時に、嗅いだ瞬間に「臭い」という言葉が浮かぶ香りであった。
(く、臭いぃぃぃっ!! くしゃいのぉぉっ! こ、濃すぎるぅぅ、甘すぎて濃すぎて、臭い、くさいくさいくさいいぃぃぃっ!!)
「どう!?」悪魔が叫んだ。「くさい? くさいかしら? 自分のブーツのにおいは!! 感じちゃうわよね、どきどきしちゃうわよね、どうなの、エンゼルリリー!!」
(ち、ちがうぅっ! ちがう、リリーのブーツ、こんなにおいしないもん! 淫液が、汚いお汁混ざって、あぁぁ、こんなにおいに、あぁぁ、こ、これ、これだめ――ぁ)
リリーは、悪魔にそう叫んだつもりだったが、実際には喘ぐばかりで言葉を発することができない。
(んにゅ、だ、だめぇぇ……ッ!)リリーはビクビクと震えた。恐ろしい感覚が、身体の奥底からこみ上げ、下腹部が蕩けるような熱を帯びだした。(そ、それだめ、がまん……がまんするの。だ、だしちゃだめ、がまん、がまんぅ……)
歯を食いしばる。小さく、猫の鳴き声のような呻き声をあげる。目を細め、眉を寄せ、頬を真っ赤に染めて堪える。だが、甘く濃厚なブーツの悪臭が鼻を刺激し続ける。においを嗅ぎ続けてしまう。股間が熱くなる。溢れそうになる。堪える。歯を食いしばる。しかし開いてしまう。熱いものがスーツの中に漏れ出してくる――!
(あ、あ――だ、め……でちゃう、でちゃうでちゃうでちゃう――)
「ふ、ふにゅうううぅぅっ!!」
リリーは絶頂してしまった。股間の、いやらしい割れ目が開き、濃厚な天使のエナジーが艶めかしい体液と化して放たれた。極薄のエンゼルスーツが愛液を吸収する。しかしあまりの量に吸いきれず漏れてしまう。どろどろに濡れたスーツが股間にへばりつく。淡い桃色の、控えめではあるが、それだけに欲情をそそる、秘めたものの形がスーツに浮かび上がる。漏れ出した愛液が太ももを伝う。股間のまわりにむんむんとした熱気が漂い、濃いリリーのにおいがそれに続く。
(イ、イッちゃうぅっ! むれむれ天使イクうぅぅっ!!)リリーはなにを考えているのかもわからず、心の中で叫んだ。
「イッた――」悪魔は声を裏返らせて叫ぶと、そのまま絶句した。数秒の沈黙があった。やがて空間全体の肉が、昂奮のあまりぶるぶると震えだした。
「イ、イッた! イッたのね、エンゼルリリー!! ブーツのにおい嗅がされて、に、においを、においで……」
「ち、ちがうぅぅ……そんなことない、これ、ち、ちがうぅ……ッ」
リリーは喘ぐようにいった。
(そんな、リリー、リリー……におい嗅がされて、ブ、ブーツのにおいでぇっ!)
はぁはぁと、艶めかしい、発情を堪える女の吐息が漏れる。全身がむずむずとして、たまらず身体を揺すってしまう。乳房や、身体中のむちむちとした肉が欲情を煽るように震える。頬が真っ赤に染まり、瞳が潤み、口の端に濃厚な唾液がにじみ出す。それらが、リリーの意志とは関係なく起こってしまう。
(あぁぁ、だめぇぇ、発情、発情だめぇぇ……発情……リリー発情……ふにゅ、ち、ちがう……発情、発情してない……! 天使は、あぁぁ、天使は発情なんてしないの……ブーツのにおい嗅がされて発情なんてしないぃっ!)
「あ、あぁぁぁ……ッ! な、なんて天使なの……リリーちゃん、リ、リリー!!」悪魔は叫んだ。「もうたまらないわ! が、我慢できない――!!」
両足のブーツの中で触手が動き出す。奥へ入り込むのではない、ブーツの中で前後しはじめたのである。それは男が女を責め立てるときに行う、あの動きにほかならなかった。
「ふにゅううぅぅうっ!!」リリーは目を見開いて叫んだ。「な、なにしてるのよ!? はへあぁぁ、そんなことぉっ!!」
「なにを? わからないの!?」悪魔は叫んだ。「犯してるのよ! あなたのブーツを、エンゼル――エンゼルブーツを!!」
「あはあぁぁぁっ! や、やめ――ブーツは、ひあぁぁ、リリーのブーツは、ずぼずぼしていいところじゃないんだからぁっ!」
「だったらなに? おまんこをずぼずぼすればいいの!? いいえ、ちがうわ、ちがうわよね!? リリーちゃんはここをこうされたいんだわ!!」
「そんな、そんなこと――ぐ、ぐうぅぅぅっ!!」
「そんなことない!? ならどうして喘いでいるの!? どうしてそんなに昂奮して、感じて、濡らしているの!」
右脚の一本を、つま先のところまで押し込み悪魔は叫んだ。
「ああぁぁぁぁっ!!」リリーは激しく首を振った。「ちがうぅっ、淫液が、あはあぁぁ、淫液のせいなんだから! リリーは、リリーは――あ、あひあぁぁっ!!」
「ちがわないわ! リリーちゃんは、ブーツを犯されて感じるのよ! ブーツで、く、くぅぅぅ、ブーツで感じて……お、犯されて――おぉぉぉ、い、いいっ!! エンゼルブーツいいッ!!」
「あはあぁぁ、そんな、そんなあぁぁっ! は、激しすぎるぅっ!! いやらしい触手、あひぁっ、そんなに激しくしたら――あ、あぁぁぁっ!!」
「壊れちゃう? エンゼルブーツ壊れちゃう? いいえ、いいえ!! こんなことでは壊れたりしないわ! 天使の衣は――うふぅぅぅ、きつきつよおぉぉ……ッ!!」
「ひあぁぁぁぁぁ――――ッ!!」
リリーはあられもない嬌声をほとばしらせた。唇の端に唾液が滲み、ほとんど垂れてしまいそうだ。頬は真っ赤に上気し、蒼い瞳が潤みだす。額に桃色の髪が一筋張りつく。乳房がぶるんぶるんと揺れ、もっちりと肉の乗った腰が左右にくねり、スーツに細かなしわが走る。
(だめえぇぇぇっ!)リリーは心の中で叫んだ。(あ、脚がぁぁっ! リリーの、リリーのエンゼルブーツぅっ!!)
押さえきれない。発情してしまう。エンゼルブーツを犯され感じてしまう。
(ブーツ責めるのだめぇぇっ! リリーの、エンゼルリリーの弱点ずぼずぼするのだめえぇぇっ!! あはあぁぁ、そんなにずぼずぼされたらぁっ! ブーツが、ブーツがだめになっちゃう! 力だせなくなるぅぅっ!! ふにゅ、ふにゅうぅぅっ! そんな、そんなあぁぁっ! リリーのブーツ蒸れてどろどろなのに、どろどろのむれむれブーツにいやらしいお汁注ぎ込むのだめなのぉっ!! 力でなくなる、リリーの力の源なのに、あはあぁぁっ! な、なんとかしないと、耐えないと、だめに――エナジー漏れて――ん、んんぅっ!!)
リリーはガクガクと痙攣した。強烈な快感がこみ上げた。エナジーが濃厚な液体と化し、開ききった女のそこから溢れ出ようとするのがわかった。
(あ、あぇ――で、でる――でちゃうでちゃうでちゃう――)
「ん、ぐうぅぅぅぅっ!!」
淫らな、とろとろとした女の蜜、天使の蜜、人間のそれとは一線を画する濃厚なエナジーの塊が溢れる。スーツの中が漏れ出した愛液でどろどろだ。スーツの着心地は股間のそこ以外も悪化の一途を辿っている。リリー自身の汗に蒸れ、どろどろとし、いつもの守られているという感触は微塵もない。それどころか、ぬるぬるとしたスーツの食い込みに感じてしまう。
「あはははは! またお漏らししたわね!! そうよ、それがあなたの本性――ブーツで感じる変態天使!!」
「う、ぁ……あぁぁ、ぁ……ッ」
しかし、リリーはそれに対して言葉を返すことができなかった。
(び、敏感すぎる――あ、ぁあ……だめなのに、ぁ、感じちゃ、だめなのに――! あぁぁぁ、ブーツが、あぁぁ、も、もう――ッ!!)
頭の中に、断たれていくリンクの音が響く。ブーツの中で、エナジーが淫気に侵され、抵抗も虚しく爆ぜてゆく感覚がある。
幾度となく意識が遠のき、そのたびに痛烈な快感によって引き戻される。ブーツの中を触手が掻き回し、淫液と汗の混ざった粘液がずぼずぼと汚らわしい音を立てるたび、なにもされていないはずの天使の急所――女の園の奥に鋭い刺激が走る。リリーがもっとも感じるところを責められたようになる。
もう限界だ。堕ちてしまいそうだ。これ以上はエンゼルブーツがもたない。そしてリリー自身も。なんとかしなければならない。負けるわけには、負けるわけにはいかない――!
「せ、聖舞……ん、ひ……んんぅぅ……せ、聖舞ぅうッ!!」
リリーは叫んだ。
自分の状態も、悪魔の状態もリリーはほとんど頭になかった。ただ天使の使命を胸に抱き、そのことだけを考えてエナジーを引き出した。エナジーがスーツを走る。太ももに、ソックスに、そしてブーツに伝わってゆく。淫液に邪魔される。触手に邪魔される。リリー自身の汗に邪魔される。
「ん、んくうぅうぅぅうっ!!」叫び、身悶えし、リリーはなおもエナジーを注ぎ込む。コアクリスタルが輝き、エンゼルブーツから粒子が散る。無理矢理に注ぎ込まれたエナジーでブーツが悲鳴をあげている。だが、もうこれしかない。リリーの武器はこれ以外にない。
(たえて、耐えてエンゼルブーツ! 勝つのよ、リリーは、リリーは――エンゼルリリーは負けないいぃぃぃっ!!)
エナジーの高まりを感じる。力が湧いてくる。それと同時に快感も昂まってくる。また絶頂してしまいそうだ。それを抑え込む。ここで果てたら終わる。もう敗北してしまう――。
「リリーは……リリーは! た、戦うんだからぁっ!!」
叫びながら、リリーは、自分がなにを叫んでいるのかも理解していなかった。この、身内からこみ上げる異常な昂奮が、悪魔を打ち倒そうとする天使の使命からきているものか、おぞましい欲情からきているものかもわからなかった。頭の中になにかがつまったようで、耳の奥がガンガンと鳴り、しかし身体のどこにも痛みはないどころか、感覚は鋭敏で、ますます力が増していくようだ。リリーはエンゼルブーツの脚を思いきり持ち上げた。肉がブーツに食いこむように、吸い付くようにして押さえつけてくる。凄まじい快感が走る。股間が熱くなる。乳首がいまにも勃起しそうになっているのを感じる。しかし、それはどこか他人ごとのようだった。リリーは夢中だった。夢中になってエンゼルブーツを引き抜こうとしていた。さらにエナジーを注ぎ込む。力が湧いてくる。
「まだそんな力があるの!?」悪魔が叫んだ。昂奮のあまりその声は上擦り、ほとんど悲鳴のように聞こえる。
「あたりまえよぉっ!!」リリーは叫んだ。「あひぁああぁぁ、リリーは、リリーは天使なんだから! んにゅうぅぅ、おしおきしてあげる、リリーが、リ、リリーの、リリーのエンゼルブーツで――あ、あぁぁぁ、ぬけるうぅぅ、ふにゅうううぅぅ、ふんぎいいぃぃ――ッぇあ!?」
と、不意にその視線が宙に固定されると、目が限界まで見開かれた。
「あ、へぁ……?」
リリーは蒼い瞳をぶるぶると震わせた。震えはたちまち全身に広がった。身体中をわなわなとさせながら、リリーはエンゼルブーツに目をやった。
肉に埋もれたブーツは光の粒子を溢れさせていた。だが、その粒子がいま、肉の中に流れ込んでいた。リリーがそうしているのではなかった。肉は悦んでいるかのように、いや、事実悦びながら蠢いて、エンゼルブーツを揉んでいた。
――桃色の、エンゼルブーツのエナジーを吸収していた。
「う、そ……」
「嘘じゃないわ」悪魔は底知れぬ欲情を滲ませていった。「ふふふ、ようやく吸収できるわ。エンゼルリリーのエナジー――あなたのブーツ!!」
「あ、あぁぁ……ッ」
(エ、エナジーが――)リリーは歯を食いしばった。(ん、ぁ……ぐ、ぐるじい……あ、ぇあ……ち、ちが……がまん……がまん……ま、負けな……負け……ぁ)
「あ、あぁぁぁぁ――あひああぁぁぁぁぁっ!!」
リリーはガクガクと痙攣した。
「だ、だめえぇぇぇぇっ! エナジー、エナジー吸っちゃだめへえぇぇぇっ!!」
ぶしゃぶしゃと愛液が噴き出す。足の力が抜けていく。聖舞の力が失われてゆく。
「吸うなあぁぁぁっ! リリーのエナジー、ブーツのエナジー吸っちゃだめえぇぇっ! 戦えなくなるぅぅっ、ち、力ぬけちゃううぅぅっ! あぁぁぁ、エンゼルブーツ、エンゼルブーツぅっ! おねがい耐えてぇぇ、吸われちゃだめなのおぉおっ!!」
「なんておいしいの!」悪魔が半狂乱になって叫んだ。「こんなのはじめて! こんなおいしいの――あぁぁぁ、エンゼルリリー、もっと、もっと吸わせて! あぁぁ、もっとぉっ!!」
力が抜けていく。脚の力が急速に抜けてゆく。強烈なエナジー吸引を受け、エンゼルブーツの力が奪われてゆく。悪魔を討つための天使のブーツがその羽をもがれ、ただの頑丈なだけのブーツに堕ちてゆく。
(あ、あぁぁ……だ、め……こ、これ……これだめ――あ、足が、足が――)
ぬっぷ、ぐじゅぶ、じゅぶぶぶっ! ブーツの中から音がする。だが音を立てているのは触手ではない。リリーの足だ。リリーのソックスの足が激しく蠢き、その汚らわしく、淫らな音を鳴らしている。
(あ、あぁぁ……あぁぁぁぁっ!!)
もはや我慢できない。リリーは心の中で絶叫した。
(この音だめぇぇ、く、くせになるぅっ! 蒸れて、どろどろの音くせになる、ぐちょむれブーツの音くせになるうぅぅっ! ふにゅうぅうっ! エンゼルブーツだめぇぇ、リリーの、リリーのながぐつ責めるのだめへえぇぇっ! 弱いのぉっ、リリーながぐつ責められるの弱いのおおぉぉっ!!)
ぐちゅ、ぐちゅぐちゅっ、ぐっちゅうぅぅうっ!! そのとき、触手の、先ほどよりも勢いを増したピストンがエンゼルブーツを襲う。左脚の二本、右脚の三本が容赦なく、絶え間なくエンゼルブーツの履き口から奥までを貫く。
「ふにゅううううぅぅぅっ!!」リリーは絶叫した。
「たまらないわ!!」悪魔もまた絶叫した。「蒸れて、どろどろで、あはあぁぁぁ、わかる!? エンゼルリリー、こんなきもちいいのってないわ! おまんこよ! あなたのブーツ――くあぁぁ、ブーツまんこいいっ! 触手おちんちん搾られるうぅぅっ!!」
「ひあぁぁぁっ! ち、ちがううぅっ! なんてことを、ふにゅうぅっ! リリーのブーツ、そんなのじゃない! こ、これは、悪魔を蹴る、せ、聖なる、聖なるブーツ……あ、は――あはああぁぁぁぁっ!!」
奥を突かれ、リリーはたまらず仰け反った。目を見開き、喉元を晒し天を向いたリリーの口元から、どろりと涎が流れ落ちる。
それと同時、ブーツの中で突っ張り、硬直した足のかかとがブーツから浮き上がる。
(ぬ、脱げるぅ……!)リリーは思った。(ち、力が、ブーツの力がぁぁっ! このままじゃ脱げちゃううぅっ! う、ぁ……だ、め――)
「あぁぁ、リリー、リリー!」悪魔が叫ぶ。「脱げそうなのね! もう限界なのね!! うふうぅぅ、こうしてあげる、どう、どう!?」
触手の一本が浮き上がったかかとに触れ、そこからぐるぐると足のつま先まで巻きついてくる。もはや、リリーとエンゼルブーツとのリンクはほとんど断たれている。エンゼルブーツは悪魔の手の内にあり、悪魔がその気になればブーツから足が引きずり出されてしまう状態だ。だが悪魔はそうしない。リリーの足をしゃぶりながら、残りの触手でさらにピストンを激しくする。そのざらつく、淫液を染み出させる忌まわしい皮膚を、リリーの足とブーツの裏地にこすりつける。
(あ、足――リリーの足――あえぇぇ、ぐちゅぐちゅだめ、奥まではいるのだめ、足のうらくちゅくちゅだめ、つまさきしゃぶるのだめぇぇぇっ! あへあぁあ、ちがうぅぅ、ちがうのぉぉっ! 負けちゃだめ、屈しないぃぃっ、リリーの、リリーの足は――リリーのブーツはぁぁぁっ!!)
「あはあぁぁぁっ! へ、平気なんだからぁっ、なんともないぃぃ、リリー、リリー効かないいぃぃっ!!」
「耐えるわね、耐えるわね!」悪魔は叫んだ。しかし、その声はいままでとはちがった。ほとんど囁くような、鋭く、堪えきれないものをふくんだ声だった。
「でも、うふぅぅぅ、わ、わたしはもう限界だわ! こんなきもちいいブーツまんこ、もう、で、でる――」
「ひあぁぁっ! や、やめ――どこにだすつもりなのぉっ!?」
「きまってるわ!」
「そんなぁっ! だめ、だめだめだめ! そ、外に、外にだして! 中は、あへあぁぁ、な、中はだめぇぇぇっ!! あ、へぁ、あ、ああぁぁぁっ! ふ、膨らんでるぅっ! ふ、ふくらむのだめ、ど、どくどくして、熱いののぼって――あぁっ、だめ、だめ――」
ブーツの中で触手が脈打った。強張り、脈打つ太い肉の中を、それが先端に向かっていくのがはっきりとわかった。悪魔のもつ力の中でも、特に天使に致命的なもの。淫液の何倍も濃厚な力をもち、それがたとえ下位種のものでさえ、一人前の天使を発情に追い込む汁。おぞましい白濁とした汁。それが両足合わせて五本の触手の中を上ってくる。精液が上ってくる。ピストンが激しくなる。エンゼルブーツが悲鳴をあげる。
(き、きてる――あ、ぁ――だされる、だされちゃう、ブーツに、な、ながぐつに――ひ、ぁ――ブ、ブーツ、ブーツが――!!)
「で、でるううぅぅぅぅっ!」悪魔が叫び、精液が放たれた。
「ひああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
リリーは、もはや一切堪えることができず、悪魔の叫びをかき消すような絶叫を放った。
エンゼルブーツの中に精液が放出される。五本の触手から放たれる精液が瞬く間にブーツの中を満たしてゆく。おぞましい熱、凄まじい粘つきのそれがリリーの足とブーツの裏地を侵蝕してゆく。
(た、耐えるうぅぅ、がまんするの、がまん、がまんがまんがまん――)
リリーは叫ぶ。絶叫しながらも耐えようとする。快感が身体も心も蹂躙している。絶頂してしまいそうだ。耐えなければ。耐えなければ負けてしまう。腰がガクガクと揺れる。全身が痙攣を起こす。太ももが震える。ブーツの中で足の指が広がる。愛液が漏れる。まだ、まだ耐えられる――。そのとき、エンゼルブーツから桃色の粒子がはじけ飛んだ。リリーは息を呑んだ。頭が真っ白になった。震える唇からどろりと涎が溢れると、ガクガクと痙攣しながら、快感に突き動かされるまま叫んだ。
「イ、イくうううぅうぅぅっ!!」
絶頂する。全身を激しく痙攣させ、愛液を噴き出し、ブーツの中で指を丸めて果ててしまう。エンゼルブーツの力が抜ける。エナジーを強烈に吸引される。エナジーがほとんど枯渇する。
「だめぇぇっ、エナジーがぁっ、リリーのブーツだめになる、だ、だめに、だめ――あぁぁぁぁぁ屈服しちゃうぅぅだめへええぇぇっ!!」
リリーはそれを感じる。エンゼルブーツが完膚なきまでに敗北したことを。もはや力が発揮できないことを。そして、聖舞天使であるリリーが、この瞬間、もう悪魔に対抗する術を失ったことを。
「イクうぅぅうッ!! イク、イクイクイクううぅぅうぅっ!!」リリーは愛液をぶちまけ叫んだ。「らめへええぇぇぇっ!! ブーツだめ、ながぐつだめへえぇぇぇっ!! イッちゃうぅぅっ!! リリーイク、ブーツ犯されてイク、エンゼルブーツあそこみたいにずぼずぼされてイク、ブーツ中出しでイクううぅぅうぅぅうっ!! ブーツ敗北しゅごいひぃぃっ! ブーツ、エ、エンゼルブーツ――あへあぁぁぁ、エンゼルブーツで――イ、イックううぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
リリーは激しく震えた。潮を噴き、止まらぬ絶頂に悶え、理性を失い淫らに叫んだ。悪魔がなにかを叫んでいる。しかしその声はもう聞こえない。もはやエンゼルブーツのことしかわからない。リリーは叫ぶ。絶頂が終わるまでそうして叫び続ける……。
「あへぁ……うぁ、あぁぁ……」
狭く暗い悪魔の体内で、エンゼルリリーが喘いだ。
その身体は完全な発情状態にあった。股間は常に愛液を垂れ流し、太ももは噴き出した愛液で濡れていた。乳首は硬く強く勃起し、物欲しそうにひくついている。汗の蒸れも凄まじく、リリーがひくひくと身体を震わせるたびに、スーツや手袋、そしてブーツの中から、ぐちゅぐちゅ、ねちょねちょと音がした。
エンゼルブーツにはまだ触手が入り込んでいる。射精は終わり、もうその動きも完全に止まっている。
と、ずぼぉっと音がして、触手がブーツから抜けた。
「あひぃっ!! あへぁ、ブーツ、リリーのブーツぅぅ……」
エンゼルブーツはそのエナジーのほぼすべてを奪われていた。リンクもほとんど失われ、かろうじて足の裏がつながっている程度だ。まだなんとか桃色のエンゼルブーツの姿を保っているが、ダメージがひどすぎるあまり、触手が抜けたとたんにぐにゅりとへたれてずり落ちてしまった。履き口からどろどろと精液が溢れ出た。
リリーははぁはぁと荒い息をつき、意識を失いかけ呆然としていたが、不意に唇を震わせると、自分の身体やブーツを見て身体を震わせた。
「う、ぁ――そんなぁぁ……リリーの、リリーのエンゼルブーツがぁ……」
「ふぅ、ふぅ……ふふ、うふふふ……! 大事なブーツがだめになっちゃったわね」と悪魔はいった。「でも、まだ終わらないわ。あなたのブーツとその脚。もっと、もっともっと責めて、エナジーを奪い取って、もっといやらしく発情させてあげる。これからよ、エンゼルリリー……これからよ……」
肉の壁が迫ってくる。部屋が狭くなり、リリーを包みこもうとしてくる。
「あ、あぁぁ……!」リリーは唇を震わせた。瞳に怯えと快楽の色が走った。だが、それは一瞬のことだった。リリーは目を閉じた。強い意志が唇を結ばせ、そして次に目を開いたとき、蒼い瞳が肉の壁を睨んだ。
「ま、負けないんだから……。どんなに責められても、リリーは……エンゼルリリーは悪魔になんて屈しないんだから……!」
3
エンゼルリリーが消息を絶ってから二日後。天使のひとりが街から離れた林の奥で、悪魔に敗北したと思われるリリーを発見した。
使われていないはずの小屋に真新しいベッドがひとつ置かれ、リリーはそこに寝かされていた。かろうじて変身状態は保たれ、手袋をはめ、股間に染みをつくっているものの、エンゼルグローブとスーツにダメージはほとんどなかった。
その一方、脚のダメージは激しかった。白いソックスは白濁色に汚れ、ところどころ穴が空いていた。右脚のエンゼルブーツは脱がされ、もう片方は完全に力を失い、足首のところまでずり落ち、激しい凌○を受けたのが見て取れた。脱がされた右のブーツはリリーの傍らにやけに大切そうに置かれており、それは履き口のところやつま先のところが破壊されていた。どうやら一度変身が解かれたらしく、リリーが最後に着ていたワンピースやタイツが床に落ち、エンジニアブーツにはエンゼルブーツと同じように凌○のあとがあったらしい。
「あへあ……はへ……んにゅぅぅ……」
発見されたとき、リリーは自我をほとんど消失して呻いていた。
小屋の中は発情したリリーの放つ強烈な体臭で満ち、発見した天使も、その場でにおいにあてられてしまったという。
「ブーツぅ……リリーの、リリーのブーツぅ……」
リリーはひくつき、虚ろな目で宙を見つめながら繰り返しそう口にしていた。その口元には、快楽の笑みが浮かんでいた。