しゅれでぃんがー 2020/04/13 21:00

流行りに乗る

 先日、『100日後に死ぬワニ』が完結した。完結前からバズっていたこの作品は、完結と同時にメディア展開を開始。良くも悪くも話題となって、綺羅星の如く消えて行った。いや、消えたかどうかは分からないが。一つの時代を築いたのは事実だろう。私はあの作品に対して特に何か思うところも無いので、世間の流れを眺めては、ぼんやりとしているだけだった。

 これが下地となったのかは分からないが、この後に『〇〇日後に〇〇する〇〇』、という作品形式をツイッターで頻繁に見かけるようになった。結婚したり、寝取られたりと、上手い事作品形式をコピーして使いこなしている。ツイッターではこういう後乗り手法が隆盛を極めており、向こう数年はこれで飯を食う人たちがたくさんいるのではないだろうか、と思っていたりする。

 他に流行っている形式としては、『1いいね毎に〇〇する〇〇』だろうか。このド直球な承認欲求とフォロワーが欲しいという形式は、本人のコンテンツ力が露骨に試されていて面白い。本人の腕が確かなら一定の効果を見込める手堅い形式だと思う。


 この話を友達としていた時、彼は金にもならないのに露骨な後乗りをする人たちに対してドン引きしていた。だが、私はそうは思わなかった。コンテンツの骨組みを写すのは、創作の基本である。それを使ってオリジナルの何かが作れるのであれば、それはそれでいいのではないか。誰だって一からコンテンツを立てるのは大変だ。なら、既に流行っているコンテンツに乗っかるのは、何も悪い事ではない。以前、何処ぞのラノベ作家が、だいしゅきホールドの起源を主張していたのとは違うのだし。「俺が(私が)考えた」、なんて言い出さない限りはグレーだろう。


 それの強みを最大まで生かした形式が『やる夫スレ』である。あれは創作者にとって最高の補助輪だ。なにせ、キャラを造形する必要が全く無い。いや、全く無いと言えば語弊があるが。キャラの方向性に合う原作のキャラの持ってきて、それに肉付けすればいい。だからストーリーの創作のほうに注力できるので、物語が作りやすいのだ。困ったら原作のネタに乗っかることもできる。キャラ造形が苦手な人は、みんなあれからやればいいとすら思ったりする。

 やる夫スレというのは、AA(アスキーアート)で1レスずつコマ割りのように物語を作る形式の創作形態だ。まあ、市販のキャラを勝手に使っているのでその点でいれば限りなく黒いのだけれど、ある種同人即売会に流通している本たちのように黙認されているコンテンツである。あの辺の界隈の人たちはみんなモラルが高いので、一線を犯さないからだろうか。作者さんたちがみんな匿名を固持している、というのもあるのかも。

 だが、そのせいでいずれはあそこも「俺が(私が)考えた!」と言い出す人に無言で丸パクリされる未来が来るであろうな、と思っていたりする。匿名の怖いところは、後出しで起源主張されたとしても、抵抗できないところだ。市場に出てしまったらもう無理。覆せない。言ったもん勝ちでお金が流れていく。


 話が逸れた。現在SNSが発達し、バズったネタに即乗りしやすい環境ができあがっている。だから流行ったネタはすぐに亜種が大量に現れ、そして一握りの人間がそれに乗り上へ上がっていく。ある意味、チャンスが多く転がっているのがあの辺の界隈だと思う。他人のパクリとか……なんて斜に構える前に。這い上がりたい人はどんどん乗っていけばいい。そんなこと言い出したら今流行ってる催○云々ネタの同人とかどうなる。ゴブリンやらオークが竿役の同人は。竹の子みたいにいっぱい出てるじゃないか。なにも行動しない人は、何か掴んだりできないのだ。

 流行りに乗って書き始め、技術を上げて次のステップへ行く。それは健全なサイクルだろう。今後もSNSのそういう動きを眺めながら、このネットミームの行く末を見届けたい。

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