しゅれでぃんがー 2021/02/25 02:20

日記 レビュー


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SHRIFT』をプレイしてからというもの、BF(バトルファック)系システムのゲームを研究したい欲が燃え上がっている。どれくらいかというと、BFと書いてあったらとりあえずページを開いて紹介ページをざっと全部読んでしまうぐらいだ。このゲームはその流れで発見した。遊んでみると確かにファックでバトルしている。看板に偽りのないゲームだった。

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 本番行為は特殊拘束(一部のキャラの描写のみ)なので、基本的にはペッティングで戦う。相手をオイかせたら勝利。まあ、データのやり取り的には普通のRPGをちょっとアレンジした規模で収まっている。しかし、普通に戦うのではなく、この世界観はこういう戦い方をする、というのをシステムで表現しているのがグッドだ。この時点で制作にはかなりの手間暇がかかっていることだろう。

 ルートによっては主人公が通常スキルだけでなく特殊スキルも覚えるのだが。特殊スキルの効果が微妙&バフ系は効果時間が少なすぎる(3ターンしかない。せめて5ターン以上は欲しかった)ので正直存在意義が微妙に感じられた。ただ、通常スキルだけで戦うという視点で見ると、なかなかにバランスはとれていたように思える。

 レベルデザインにこだわって作っているように感じられるが、そこにこだわるあまりの不自由さ、というのもない。引継ぎのプラグインは使っていないようなので強くてニューゲームは出来ないが、開幕の拠点内に最強装備が入ってる宝箱が設置されている。また、その横には回想部屋への入り口も設置されており、ゲームクリアせずとも入ることができる。自身のこだわりでユーザーに不自由を強いることなく、ダルかったら簡略化していいよ、という回答をばっさり設定している。作るのが大変なのがゲームなので、なかなかそこまで割り切れないものだと思うのだが。この極限までユーザーに配慮した仕様は凄いなあ、と感心した。


 シナリオも良い。吸精鬼とその従者、という設定を無理なく膨らませている。舞台も田舎の村にすることで世界が広がりすぎるのを避けている。物語を作る時は、どうしても際限なく世界が広がっていくものである。しかし、その思い付きに身を任せてしまうと、作品の規模が無限に肥大化するので作品自体が完成しなくなる。この作品は、小さな村という箱の中に吸精鬼とその従者という造形でジオラマを作っているのだ。【完結させられる規模で物語を作る】というのは、創作において何よりも大切なことである。

 個人的には、エンディングをきちんと作りこんでいるのはとても評価が高い。同人ゲーム、特に抜きゲーやエロ特化のゲームというのは。ラスボス倒した時点でおざなりに終わったり、エンドロールすら無かったりするゲームが本当に多い。なんというか、「やっと終わったー」、という製作者の脱力が聞こえてきそうな終わり方(終わってすらいないのだが)のゲームが溢れている。

 確かに、エロゲーにはそんなきっちりした終わりなんて求められていないのかもしれない。それでも、面白い物語というのは、きちんと終わってこそだと私は思っている。この作品は吸精鬼というテーマに対して最後まで真摯だった。それがじつに好ましい。「調べる」というコマンドで相手の詳細を確認できるのだが、そこの描写文を見ても分かる。一人一人のキャラにちゃんとした背景が設定されている。長くなるから簡素にしか描写されないが、丁寧な背景設定があるからこそ物語が映えるのである。


 このゲームは製作者さんが一人で作ったのだろうか。だとしたらこの方はとてつもなくスペックの高い人である。Ci-enの記事を見たらビックリ、0からのお絵かき、と描いてある。どうやらマジのようだ。ゲーム作ってシナリオ書いて絵まで用意する。とんでもないマルチな能力である。素直に尊敬する。ちなみにブログはこちら。

れこnote


 きちんとしたゲーム性があって、エンディングまで完璧に作ってあって。ゲームとしての完成度がとてつもなく高いゲーム。それがこのゲームに対する私の感想であった。

 ただ、チュートリアルの部分で押し切られた時の暴れる方法がてっきり連打かと思いこんでいたので。レバガチャに気づくまで数戦かかったのはちょっともやっとした。チュートリアルなら暴れ方もちゃんとテキストで教えて欲しいな、と。


 その流れで、次作も触ってみた。今度は勇者が婚活女性たちを拒否するゲームらしい。ぶっとんでいるが、それを支える裏設定がきっちり詰められているから無理が無い。すっ、と入っていける。流石にこれは見事なシナリオだ、と唸ってしまった。

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 このように、主人公は三種類の会話パターンで相手と対話。相手を萎えさせて諦めさせる。これならたとえ世界を救った勇者であろうと、この仕様の戦闘においてはLv1の村人と変わらない。むしろ村人より弱いかもしれない。このシステムと設定のすり合わせ方は天才的だなあ、とひたすらに感動した。女神転生系の戦闘会話みたいなのも実装されており、また、その会話がどれもこれも雰囲気があって面白い。何回も同じ相手と戦うと、相手に同情して欲情しやすいくなる、というのも面白い。ある意味で徐々に篭絡されていく、顔を合わすだけで相手を少しずつ好きなっているんだなというのがリアルである。

 まあ、不満な点も複数ある。スキルを使ったダメージ量が通常攻撃の1.2倍ぐらいしか無いので使う意味があんまり無かったり(攻撃連打したほうが強い。MPに相当する体力というステータスに対してスキルの消費コストが高すぎる)。その他のスキル数が少なく、また前作における盟約のような特殊スキルも無いので戦闘自体はある意味で退化した面がある。取れる行動が少ないので、ワンパターンなのだ。そして一番気になったのは、欲情を下げる手段がアイテム使用しかないので継続的な戦闘がほぼ不可能な点。レベル上げ&好感度上げで何回も戦闘していたのだが、毎回休息するためにベッドまで行かなくちゃいけなかったので単純にめんどくさい。深呼吸に欲情下げる効果も付けてよかったと思う。欲情が貯まり切った後、相手を弾き飛ばす技が無いのも理不尽。押し切られたらほぼ負けである。なんでレバガチャ無くしたんだろう、と不思議でならなかった。

 と、いった感じで欲情周辺のシステムは不便の塊でちょっとストレスだなあ、と思っていた。


 ただ、前作でも思ったけど本当にシナリオが良い。世界観というか、設定の造形が見事。それを上手く畳んでいるので、ゲームとしての完成度がそれで跳ね上がっているのである。この題材でこんな燃える展開作っちゃうの? すごすぎない? なんて。ただひたすらに拍手喝采。クリア時の満足感は、シナリオの完成度に比例する。と、私は思っている。

 オチの部分できちんと村人たちの今後も暗示されていたのが個人的には好感触。ただ単純に主人公に骨抜きなのではなく、この事件は一時の気の迷いであり、主人公がこうなったとしてもちゃんと割り切って自分たちの人生を生きていく。そんな人間的な姿が簡潔ながら描かれている。それは、とても人間らしくて自然だ。この方の作品は、登場人物たちに不自然なゆがみが無い。主人公に惚れるため、ちやほやするためにと脳みそを作者側に捻じ曲げられた形跡が無い。だからこそ読んでいて気持ちがいいのかもしれない。


 現在次回作を制作中らしいので、完成した暁には定価で買うことにしよう。そう心に決めるような作品であった。


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