暖かい悲しみ
自転車を転がしている時、いつもイヤホンをつけている。耳に引っ掛けるタイプのやつで、どれだけ揺れても落ちないから気に入っている。充電も10時間ぐらい保つし、イヤホンケース自体が充電器になってるので出先でも充電できる。便利な時代である。
配送オファーの効果音を聴くためのものだが。音楽を流したりもする。運転中でも片耳だけなら法律違反ではなかったはずなので。自転車を転がしている時は、ずっと音楽を聴いている。
思い出せる限りの懐かしい曲を買い漁る。お金が無くても、なんとか捻出して買う。たくさん曲があれば、長い時間飽きずに過ごせる。そうやってたくさんの曲を買うが、なんとなく合わなくてプレイリストから外したらしつつ。少しずつリストを長くしていく。
ふと、気づいたことがあった。私はなんとなく、冬の歌を多く聴く傾向があるらしい。別れの曲とか、過去を思い出す曲とか。そういう曲を、好んでいる。それに気づいたのは、とある曲を聴いたのが切欠だった。Goose houseの、「冬のエピローグ」という曲だ。
この曲は『四月は君の嘘』というアニメの主題歌で、このアニメも私は好きだった。最初は普通のボーイミーツガールかと思えば、中盤から思わぬ展開を見せる。一緒に舞台に上がる約束をしたのに、彼女が来ない。主人公は一人で上がる。そしてなぜ来なかったかというと、家で倒れて救急車で搬送されていたから。彼女は不治の病で、余命幾ばくも無かったのだ。そこからの物語は急展開だ。息つく暇も無い。最後まで一気に見たが、感動した。良い話だった。
主題歌の「光るなら」は知っていたが、「冬のエピローグ」は知らなかった。光るならを検索した時に、一緒に出てきて初めて知った。曲調も良いが、特に歌詞が良い。彼女が居なくなって二回目の冬に、主人公が彼女を思い出しているのだろうか。胸に染み入るような歌詞が、切ない曲調で歌になる。
忘れようとして、嫌なところを書き出そうとしても。愛しい記憶が消えない。色褪せてもなお恋しい記憶。いつまでも忘れられない未練が伝わってくるような歌詞である。
悲しくても忘れられないのは、それが大切だったから。悲しいと思い続ける限り。それはずっと大切なものなのだと、自分自身で自覚し続けることがてきる。だからこそ。悲しい記憶を捨てられない。暖かった思い出を感じられるから、その暖かさを忘れないために。その悲しみを手放せない。
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