しゅれでぃんがー 2022/03/10 00:56

【創作――アイディア】『ボイド・テラリアム』分析


【概要】
 荒廃した世界で再起動したロボット。元スーパーAIと出会い、人類最後の生き残りの少女と出会って終末の世界で活動する。

【ゲームシステム】
 箱庭造作+ローグライク




 人間じゃない存在が主人公の物語が好きなので、『魔女と百騎兵』以来の気になるタイトルだった。人間以外が主人公のゲームは、思い返せば日本一ソフトウェア以外出してるのを見たことが無い気がする。あるかもしれないが、俺の認知には無い。

 遊んでみると、思わずうなるような設定とシステムが目白押しだった。忘れないように書き記す。



【荒廃した世界とローグライクの親和性】
 主人公は少女の食料を探したり、テラリウムの装飾や家具とかを作る素材を集める為に、廃墟となった地下都市を探索する。自動増殖、廃棄と再生を繰り返すプログラムがあるらしく、地下都市はダンジョンのように常時中身が変化しているらしい。この設定により、不思議のダンジョンのシステムを違和感なく落とし込んでいる。これによりゲーム性の根幹が世界観と完璧に結びついている。設定とゲームシステムの齟齬が無いのはとてもすごいことだ。





【入手したアイテムは持って帰れない】





 主人公は途中で力尽きても、ダンジョンを踏破しても最終的に「スクラップとしてダンジョンから排出される」。それにより主人公が拠点に戻ってくる理由もすんなりと成立させている。この時、持ち物は全部原子レベルの資源に分解されているっぽい。個別のアイテムを持ち帰るシステムを廃止し、大まかな素材アイテムに変換することによりそれらを消費してアイテムをクラフトするという流れが成立している。

 不思議のダンジョン系ゲームにおいて、「アイテムが持ち帰れる」というシステムはゲーム性と相反するシステムである。ハクスラゲームってのは、「決められたルールから開始する」からこそ面白いからである。決まったステータスで、道中拾えるアイテムはランダム。それによって独自の解法を描き、クリアまでの道筋を描くのだ。それが楽しい。それが、アイテムが持ち込めてしまうと「ルールが根本的にねじまがってしまう」。ゲームにならないのである。だから、レアアイテムを持って帰っても、倉庫の肥やしになることが多い。持ち込みありダンジョンを用意するのもいいだろうが……私はそっちは趣味じゃなかったりする。アイテムの準備するのがだるいし、失敗したらアイテムロストするのもダルイし。なにも持たずにダンジョンにそのまま行って、クリアしたとか途中でミスったとかで一喜一憂するのがお手軽で楽しい。あえて言うが、持ち込みありダンジョンは事前準備量が多すぎてやってられん。

 レベル継続性ローグライクも個人的には無しである。「レベル上げてゴリ押しする」が成立してしまうからだ。適正レベルまでレベル上げ、という作業自体が無駄にしか感じない。ゲームするためにゲームの準備をする……それって面白い? なんて思ってしまう。ささっと進めたいのに、レベル低すぎて敵強すぎて勝てませーん、進めませーん、なんてことになるとその時点でアホらしくなってやめたりする。

 仕様として64の風来のシレンの城作るシステム+アイテムを素材ポイントに分解してそれらを合わせて目的のアイテムを作成する。このクラフトシステムは美しい。見事である。




【ルールを変化させていく要素もある】



 テラリウムに配置するオブジェクトを作ると、主人公の基礎ステータスが強化される。因果関係は謎だが、別にそれ自体は整合性とかどうでもいいことなので目をつむっていいと思う。大事なのは【テラリウム要素とダンジョン探索が楽になることが連動している】という部分だ。テラリウム要素がそれだけで完結してたら、それに興味が無い人はそっちをほっぽって無視したり、楽しみを見出せなかったりする。俺はそういうタイプだ。だが、家具を作れば攻撃や防御力の基礎値が上がる、ってなるならダンジョン探索の効率を上げるためにも家具作りを頑張るわけである。で、実際に作ってステータスが上がってステータス欄にそれが表示されたら嬉しいわけである。作る→主人公の成長→ダンジョンで素材集め→作る……というサイクルが綺麗に繋がっている。このゲームのゲームデザインは本当によくできている。

 ハクスラにおいて成長要素は邪道という考え方もあるが。「努力により根本的なルールが変化していく」という形式なら俺はアリだと思っている。たとえば、ヒロインの好感度を上げて一定になると絆アイテムとかもらって基礎ステータスが上がるとか。それはヒロインとの交流→主人公の強化→冒険が楽になるというサイクルがあるわけだ。シナリオに興味が無かろうと、ゲームとしてできることが増えるならイベント全飛ばししてでも好感度上げたりするだろうし、実際にステータスが上がれば嬉しいだろう。それも、最後にドカンと上がるよりは序盤、中盤、後半で徐々に上がって最終的に大幅強化と言える数値に到達する方がモチベーションが維持できる。

 ゲーム全体に散りばめた要素が、最終的にメインのゲームシステムを楽にする、楽しくする要素に連動するサイクル。これがゲームには必要なのだろうと思う。




【装備品の割り切った調整】
 このゲームは装備品のステータスが一緒である。全部+10%上昇っぽい。じゃあ何が違うかというと、特定の敵に特攻という部分のみ。攻撃力が全部同じのドラゴンキラーとかメタルキラーとかって感じ。でも、これはじつに合理的なレベルデザインだと思う。だって、銅の剣。金の剣。鋼の剣。エクスカリバー……とかあるとする。それぞれ攻撃力が1、3、8、20とかあるとする。……だるくない? RPGゲームってだいたいそういうシステムだけど。俺は昔からこの形式が疑問だった。いちいち装備品を買い直すのがだるい。強化したところで銅の剣+2は金の剣と同じだから、最終的に無駄になる(風来のシレンでは合成の壺システムでそれを解消していた)。じゃあ弱い装備品の存在価値ってなんなんだろう。新しい街に行って、高い装備品を買い直して攻撃防御を必要値にしろってことなのかな。じゃあお金足りなかったら金策の為に雑魚狩りしないといけないの? それってレベル上げと一緒じゃん。どれもこれもがただただダルい。だから、私はRPGが面白いかどうか分からないのだ。

 このゲームは特攻だからこそ適宜付け替えて戦うのが有効であり、無視できない攻撃力上昇やダメージカットがあるので各装備品に存在意味がある。これなら俺も理解できる。装備品に存在価値あるな、と。










 このゲームのシステムは見るべきところがたくさんある。参考にしよう。

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