しゅれでぃんがー 2023/08/30 23:20

【文字――エッセイ】マメじゃない人










 バイクのウィンドシールドの留め具が割れた。真っ二つに。まさかそんな割れ方をするとは思っていなかったので驚いた。走行中に、唐突にガタガタガタガタと左部分が震えだしたから何事かと思ったらそうなっていた。金属疲労だろうか。でもそこだけピンポイントで疲労するなんてあり得るのか。何も分からない。


 とりあえずの応急処置として、工事現場にあった紐を何本か拝借してぐるぐるに結んでみたら安定した。とはいえ、ずっとこの状態にしているわけにもいかない。右側に負担がかかって同じように折れたらたまらないから。だから、とりあえずバイク屋に連絡したんだけれど。最近、対応がかなり冷めてきているのを感じる。まあ、買ってからあんまり連絡してないから。金になる客と思われていないのかもしれない。もちろん勘違いかもしれない。でも、なんというかこういう対応だったら積極的に連絡したいなあという気持ちにはならない感じだった。


 さらに直せないか色々試した。工事現場で使う超強力接着剤を付けて、洗濯ばさみで固定して一晩置いた。だが、一瞬で折れる。どうやら重すぎたらしい。これにより、接着系手段でこれを修理することはおそらく不可能であることが分かった。じゃあ残る手段はドリルで穴をあけてビスを打つしかないんだけど。そこまではしたくない……ドリルが逸れて車体に傷付いたら嫌だし。


 結局、ウィンドシールドを外すことにした。バイク屋のおじさんが、買ったとき好意でつけてくれたものだから忍びなかったけど。直らないものは仕方ないし、直しに店に行くのも面倒くさい。そして、俺のバイクから一つギアが消えた。だが、それにより新しく見えてきたものもあった。


 バイクのシールドは雨風を受けるから、どうしても泥やら埃やらがついていくからマメに拭き掃除しないと曇っていく。さらには、ちゃんとした洗剤で拭かないと取れないような謎の汚れとかもつく。しかも、何かが当たったりして傷がついたりするとそれはもう絶対に取れないから、視界がわずかずつ悪くなっていく。そうやって、買って一年半経った今、もはや薄汚いレベルまで汚れが蓄積していた。だが、それを外したことで正面の視界が一気に開けた。前を見る時にストレス要因がなくなったのである。これは大きい。


 蛇口につける浄水フィルターなども、使っているとどんどんゴミが貯まっていくから月に一回ぐらい外して洗って戻す、というメンテナンスが必要である。それをしないと、最終的に浄水フィルターに詰まったゴミのせいで普通より汚い水を使用する、なんてことになりがちだ。






 風の影響は思ったより増えたけど。外したことによる開放感の方がまさった。マメな人間じゃないと、便利だったり有用なギアってのは使えない。結果として使うから不便、なんてことになっていく。

 人によって、物を管理できる水準というのは違う。無くても困らないけどあったら便利、というのを使いこなせる人もいれば。無ければ使えない、という重要度の物すらメンテナンスできない人もいる。


 俺がどの段階の人間なのかは分からないが。少なくとも。新品のウィンドシールドを一年半しか持たせられないぐらいには、物が使えない人間なのだというのは分かる。

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