しゅれでぃんがー 2023/09/02 17:39

【エッセイ】綺麗な絵

 同人ゲームについて記事を書き始めて随分経つ。買った作品数自体は、もっと遡れば三千作品ぐらいにはなるだろう。二千五百作品ぐらいはこの五年ぐらいで買ったが、全部電子販売なので助かっている。CDとか紙の本で揃えていたら、今頃私の生活スペースは同人作品に浸食されきっていただろう。寝る場所も無くなっていたかもしれない。それは言いすぎか。


 それだけ買えば、電子販売されている作品で面白そうな作品、というのは粗方掘りつくしてしまうわけで。最近はレビューを書くこともほぼ無くなった。なぜかというと、単純にレビューを書くほどの感想を抱く作品と出会わないからだ。操作はできるけど、エロシーンを順番に見ていくような。プレイする手間暇を追加されたCG集みたいな作品が多い。九点五割ぐらいはそういうゲームだ。

 プレイして、サンプルページで見たよさげなCGを見て終わり。そういうゲームはエンディングも数行だったりそもそもエンディングが無かったり。ストーリーもあるけど無い。キャラクターたちに歴史も無い。なにか理解できない謎の流れでエロエロしていって、全ヒロインとヤったら終わりだ。それになんの感想を抱けばいいのだろうか。いや、何も思わないだろう。せいぜいヌけましたとかエロかったですとかそんなもんだろう。

 レビューってのは、頼まれて書くような仕事でもない限り。内から湧き出てくる衝動を書く作業である。この作品からこんなことを感じた、ここが感動した、このキャラが素晴らしい、物語のテーマはこうなんじゃないか、等々。自分のうちに留めておけない衝動を、外に出して伝えずにはいられない。それが文字となってSNSなり作品ページのレビューなんかに送られるわけだ。だから、感想が書かれる作品ってのは、最低限なにがしかの感情を生み出す、心を動かすような何かがある。それが無い作品は、何も書かれない。値段の割に内容が薄すぎるとか、プレイの手間暇がかかりすぎてエロが見られないとか。値段や操作性なんかのレビューは来るかもしれないが。内容に関しては、何も言われないことが多いように思う。

 その点において、ゲームという媒体は漫画に次いで強い。絵で描写しきれない部分はテキストや効果音、演出なんかで補填できる。それらで装飾したうえで、水準以上の画力があればそれだけで一定以上の評価につながる。内容はなんかそこらへんの作品と大差ないのに、異様に売れてるゲームや漫画というのが時々見かけるんだけど。そういうのはほぼ全部、絵が圧倒的に上手い。逆に言えば、絵が上手ければそれ以外の要素が弱くても売れるし、それは絵が上手ければ上手いほど他の要素が許される下限が下がっていくように感じる。絵が上手いというのは、ことエロコンテンツにおいては唯一無二のアドバンテージである。






 話が逸れた。感想を書くほど心が動く作品、というのはじつは今回の本題ではない。たくさんのエロコンテンツを見てきて、ふと、気づいたことがあるのだ。どれもこれも裸が描いてあったり色んなシチュエーションで性行為が描いてあったりするんだけど。エロいと感じる物が圧倒的に少ない。中には画力だけでエロさを生み出してる作品とかもあるけど、だいたいは綺麗、という印象だけの作品が大半だ。一言で言えば、ヌけない作品ばかりである。いや、趣味が合わないだけじゃないのか、と一時期思ったりもしたのだけれど。そういうわけでもないように思う。なにか、明確なヌけない理由ってのが何処かにあるはずだ。それは具体的に何なのか。私は長いこと考えていた。そして、最近ようやく言語化できるようになった。

 綺麗なだけの絵、というのは具体的にどういうことか。それは、【論理的ではない絵】のことだと私は考える。例えば、なにがしかの理由でさらわれるなり路地に連れ込まれるなり、ゴブリンに負けたとかそういうのでいい。それで、長時間犯されたというシチュエーションがあるとする。そういう絵で、シーンの初めの絵はヒロインの体は綺麗でもいい。なにせ、行為の始めなんだから。まだまだ五体満足。だが、暗転して数時間後……みたいなテキストが挿入され、その演出後のヒロインのCGが。ただ汁まみれになってるだけだったりしたら、萎える。だって、数時間も激しい性行為にさらされたんなら汗だくになったりするだろう。乱暴に扱われたんなら痣とかできたりしないだろうか。近年では、表情をちゃんと目のハイライト消したり涙でぐちゃぐちゃだったりして気を使っている作品は増えてきたけれど。胸に歯形つけたりとか。それでも大半の作品はただ単純に体中汁まみれにした差分だけで、エロくなると考えてたりする。それで許されるのは十年以上前のエロゲーぐらいだ。まあ、当時から私はそういう絵にエロさを感じてはいなかったけど。

 昔のエロゲーも、ストーリーはこだわったものが多かったが。絵もそれはもうちゃんと綺麗だし上手かったが。それでも、使えるエロ絵というのはあんまりなかったように感じる。keyとかleafとかelfとかアリスソフトとか、そういう大手メーカーでも。絵は別に使えると思ったことは無かった。それはなぜかというと、やはり。上手くても絵の差分が道理を通った加工がされてなかったからではないだろうか。いやまあ、アリスソフトは一番最新のゲームを先日触ってみたが、それはちゃんと絵がエロかったので。エロゲーメーカーも日進月歩で進化しているのかもしれない。まあ、十年以上経って進歩してなかったらそれこそ絶望かもしれないが。

 モンスターに捕まったり触手や肉壁に埋め込まれ苗床になっていたとしても。ヒロインの体は綺麗なもんである。汗もかかず涙も流さない。表情も叫んでる亜種みたいな顔がだいたいテンプレだ。体にかかる液体なんて精液と粘液だけ。絵画かな、なんて思っちゃう。テキストやシチュエーションと、絵がマッチしていないのである。だから、使えなかったのだ。


 とびぬけて上手いと感じない絵でも、エロい絵はたくさんある。それらは激しい性行為を感じさせる汗の描き込みとか表情のバリエーション。顔を伏せて歯を食いしばってたり、敵意に満ち溢れた視線や怒号を発してそうな口とか。気の弱いキャラなら泣き顔に特徴があったりすると合理的でエロい。ただただかける汁の量だけで時間経過と行為の激しさを誤魔化そうとしていない。そういうエロコンテンツに、私はエロさを感じる。

 こういう描写はリョナを書く人に上手い人が多いと思う。殴ったり蹴られたりして虐げられると人は怒ったり悲しんだりするだろう。それと同じで、凌○されたら普通は泣き叫んだり怒り狂ったりするわけだ。そういう、単純ながら当たり前な部分を。リョナを書く方々はおざなりにしない。丁寧に描く。だから、ゲームや漫画でも触りやすい。ストーリーでそれはもうひどい扱いを受けるキャラたちが、そいつらを倒しに行くとする。その辺で負けた時の悲惨なリョナとか、クリアした後の敵をむごたらしく○問するみたいな復讐描写とか。どちらも道理が通っている。描写も、ストーリーも無理が無い。だから、脳にすっと入ってくる。作品内の描写が絵とテキストやストーリーが喧嘩していないことが多いのだ。


 私は別に、リョナが好きなわけじゃない。道理と合理が通っている作品が好きだ。それらがきちんと作りこまれてる作品が、結果としてリョナが多いというだけの話。





 エロコンテンツは、とにかく性行為が描いてあればいいとか複数人にぐちゃぐちゃにされるのがいいんだろうとか、そういう作品が多いけど。明確に他人棒は出た時点で無理、とかいうジャンルの違いとかがある。少なくとも、顔あり主人公とかを用意する作品は他人棒無しにしといた方が無難……また話が逸れた。そんな話は置いといて。

 絵の綺麗さ以外の部分で、大事なことというのはある。ユーザーは、ただ裸と性行為が描いてあるだけでほいほい乗せられたりしないのだ。

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