yatsureCreate 2018/09/14 12:18

TSと親友と戸惑いと−エピローグ

「おっす、ってかはえーなおい。」
「お前もな。」
「んじゃ、行きますかー。」
「・・・・・・。」

あれから数週間、正直特に大きく変わった事はない。名目が"親友"から"恋人"に変わったところで、別に何も変わらない。今日は、とうとうアイツがゲーミングパソコンを買う資金が貯まったという事で、電気街へと繰り出した次第だった。別にネット通販でもいいのだが、やっぱり実機を見たり他のパーツを見たりする方が楽しいだろう。TS病にかかった後も、そういった感覚含めあんまり変わらなかった。あえて言えば、前よりも光り物が少し好きになったかな、くらいなものだ。そう言えば、一緒に外で遊ぶのは初めてじゃなかろうか。一応もう女子な訳だし、という事で学校では女子と話すことが多い。話してみると、今までの"警戒心"みたいなのは気苦労だった事がわかった。男も女も、別に同じだと。勿論、変だと感じるところはある。例えば同調圧力が強いな、とか、嫉妬心が表に出過ぎじゃない?とか。そういった部分は苦手だったが、まぁ概ね問題ない。上手い子に化粧を教わってみたり、意外と女子を楽しんでいる。そういった意味で言えば、今日はちょっとだけ楽しみだった。ふはは、男の頃から感じていたが、やはり女子はちょっと可愛いだけで民の視線が集まってくる。フッ、容姿は自分の実力じゃないが、それでも自分に自信を与えてくれる。加えて今は、化粧やオシャレといった努力値要素がある。これについては、自信を持っても良いだろう?と、準備に時間がかかることを予め計算して早起きし、待ち合わせ時間に予定よりも早く到着して待っていた訳だが、なるほど。世の女子が"彼氏が鈍感な件"ってスレタイを乱立させる意味がわかったかも知れない。流石に髪切ったか、とか、口紅いつもと違うね、とか、そこまでは望まないが、なんていうか・・・可愛いね、の一言くらいは有ってもよくないか。誰の為にわざわざ頑張って身なりを整えてやっていると思っているんだ。

「・・・・ん?どうした?」
「・・・・なんでもねーよ、バカバカしい。ほら、とっとと行くぞ。」
「え?お、おう・・・。」

行きつけだったゲーミングパソコン専門店へと足を運ぶ。この街は、TSにかかる前からよく二人で来ていたが、その時はパソコンパーツというよりも同人商品や、いかがわしい、法的に大丈夫なん?みたいなものが売っている怪しいお店とかを巡っていたので、今日行くお店をコイツは知らない。スタスタと先を歩き、ついて来いと言わんばかりに先行する。今となってはあいつの方が身長が高いので、歩幅的に逸れる事はないだろうから、そりゃもうズカズカと歩いていった。観光地としても知られているのか、最近は外国の人も多いこの街は、油断するとはぐれてしまうが、大丈夫だろう。ガヤガヤと喧騒が飛び交う中、人混みをうまくすり抜け進んでいく。そうこうしているうちにようやく、お店が見えて来た。一旦人が多いポイントも抜け、一息つきながら後ろを振り返る。

「・・・アレ?」

いない。思わず声が出るほど、なんか意外だった。そして、一瞬頭が真っ白になるも、ハッとする。そうか、今までは互いにそれなりの身長だったから見失う事はなかったが、今の自分はそこそこ小さい。自分が人混みに紛れたら、見失うのも無理ないのでは、と。大きくため息をついて、スマホを取り出すと、アイツからメッセが来ていた。返事と共に店の住所とアクセス用周辺地図を送ってやる。別に今の時代、はぐれたからといって大した問題にはならない。とは言え、少し罪悪感が広がってくる。悪い事したな・・・。買い物に付き合ってやっているのはこっちだが、だからと言って置いて歩くのはちょっと思いやりに欠けるのではなかろうか。そんなことを考えながら店の前で待っていると、間も無くアイツが姿を現した。

「わりーわりー、人混みって歩き慣れないから、気づいたら見失っちまった。」
「いや、私も迂闊だった。さ、中入ろうぜ。」

そう言えば、TSってから変わったことがあった。言葉遣いだ。正直な話、自分は言葉を"鳴き声の延長"だと思っている。だから、見た目に合った言葉を使わないと、少なくとも周りから"センスx"として見下されるのだ。人とはそういうものだ。というのも、そもそも自分が、例えば女子で"俺"という一人称を使っている人間を"センスx"としていた節がある。という事で、そこそこ男勝りな女子、として喋り方を人によって変え、一人称は私で統一した。面倒だったが、仕方がない。周りは自分が元々男だなんて知らないし、例え知ったとしても変わらない。無駄に周りからの評価を下げる必要もないだろう。コスパが悪い。こんな事を考えるくらいだから、結構自分は不満に思っているのかも知れない。

「うはぁ・・・!なんて心踊るスペック表なんだ・・・!おい見ろよ、新しいジーフォースが載ってるぞ!!」
「ほんと好きだよな、パソコン。というか、パーツ?」
「うぉ!?SSDもメーカー物で1TB載る時代か・・・!来たな新時代・・・!あ、ちょっとパーツの値段見てくる!」
「ちょ、おい!俺のパソコン見繕ってくれるんじゃなかったのか!?」
「ヘァーン・・・?ああ、これでいいんじゃね?」
「すげーテキトーだな・・・。わかったわかった、先にパーツの階見に行こうぜ。」
「おうっ!メモリの相場も見ておきたいしな!うはは!」

思い切り目を輝かせ、おもちゃ屋を駆けずり回る子供のような足取りで階段を登って行く親友兼恋人。そんなもん、ネットでも見れるというのに、とか言ったら怒られそうだ。急な階段にも関わらず、あっという間に登りきった親友の後ろ姿を目で追っていると、ふわっ、とスカートの中が目に入り、咄嗟に目を逸らした。もはや見慣れたと言ってもいいはずなのに、なんか、外で見るって違う。すぐにパーツコーナーの方に向かってしまったので、ほんの一瞬しか見えなかったが、十分催した。うーむ。
一通りパーツの値段や新商品を見終わった後、ハッ!?と我に返ったようにこちらへ戻ってくると

「し、忍びねぇ!お前の用で来たのに、付き合わせちゃってホントごめんっ・・・!満足したから、パソコン、見に行こう!」

と、顕著に謝ってきた。だが、この街に来るときは大体いつもこんな感じだったし、コイツが楽しそうなのがなんとなく楽しいからいつも付き合っていただけなので、なんていうか、平常運転だ。

「構わんよ。作戦はコスパ重視、な。予算は・・・大体このくらいかな。」
「おぉ?結構貯めてたんだな。そんだけあれば、十分な物が買えるぞ。うはぁ・・・迷うなぁ・・・!」

このコーナーに来るのは二度目だというのに、目の輝きが色褪せない。それどころか、まるで自分が買うのを選ぶかの様な楽しみ方をしている。打って変わって、自分はあんまり興味がない。全く、という訳でもないし、実際自分専用のパソコンを買う、というのは初めてだから、それなりにワクワクしてはいるが、アイツ程ではない。パーツやスペックの知識など殆ど持ち合わせていないし、違いがわからん。そして、そんなことよりも・・・

「うわー・・・CPUを落とすかGPUを落とすか、この問題については結論がいつまで経っても出ないぜ・・・。結局ゲームによるし、なんならパブジーはCPU依存だっていうしなー・・・。・・・ん?」
「・・・・・。」
「・・・どうした?なんか服についてるか?私。」
「あ、いや、なんでもない。楽しそうに選んでるなーってさ。」
「こんな至福な事ねーぜ、マジで!スペック表を見比べてるだけでヨダレもんだぜひっひっひ・・・・」

可愛い顔立ちに可愛い服装。それら全てを台無しにする様な発言と表情に、これが普通の男女だったら氷河期が訪れてるだろうなと感じる。だが、正直なところ言えば、なんか、こういった男の頃から変わらないアイツの面を見るたびに、安心する。デモ機でベンチマークソフト?を立ち上げ、算出される数字を見ては目を輝かせるコイツを見ていると、なんか、楽しい。イケメンのくせに、やってる事がオタクそのもので、しかもそれを外でやってしまうくらい周りが見えていない。今だって見た目が美少女ってだけで、やってることはパソコンオタク、というか、少年に極めて近い。お祭りで、当たらないくじ引き露店の景品に目を輝かせる少年そのものだ。コイツには、普通成長過程で身について行くはずの恥や外聞という物が欠如しているのだろうかとたまに心配になるが、それがコイツの良いところでもある。非常に感情豊かで、その感情は、強い感染力を持っている。だから、コイツと一緒にいると楽しいのだ。そう考えると、なんでコイツは自分と一緒にいるのかがわからない。

「店員さん、ぶっちゃけ1070にi5と、1060にi7だったらどっちがいいの?」
「あー、もうそのあたりはホントなんとも言えないんですけど、なんのゲームで使います?」
「一旦パブジー。他のゲームもやるかも知れないけど、今はパブジーだけかな。」
「じゃあ1060とi7のセットですかねー。あと、これは噂なんですけど、どうやら1070は結構安定してないみたいなんですよ。」
「え、そうなんですか!?」
「ええ。今後のドライバー更新で良くはなっていくと思いますけど、今のところは。なので、そういった意味でも。1060あれば、大抵のゲームは暫くお楽しみいただけると思いますし。」

ウッキウキで、店員さんとパソコンの話をするアイツを見ていると、僅かにムッとしてしまう。話の内容はちんぷんかんぷんで、暗号だらけ。店員が男、というのがきっとネックで、自分の醜さに吐き気がする。はぁ、あいつが男の頃は、こんなこと思わなかったのに。いや、そんなこともなかったかも知れない。俺とは違うグループのそういう奴らと話しているのを見た時、似たような気持ちになったっけ。やれやれ、だな。

「と、いう事で!決まったぞ、最高のセットが!モニターは応答速度1msをこだわって、144Hzは切り捨てじゃい!あ、マウスとキーボードは一応セットで付いて来るみたいだから、もし使ってみてやりづらかったらまた見に来ようぜ!まぁ、元々うちで使ってるアレも似た様なものだから、大差ないと思うけどな。それとも、それも見ちゃう!?」
「・・・マウスパッドだけ見ようかな。」
「おう、こっちこっち!私もマウスみーちゃお!」

なんか、他の異性と選んで買ったプレゼントをもらう恋人の気分で、なるほど、結構面白くないもんだ。

「はーっ!楽しかった!ってかアレだな、パソコンめちゃ重な事忘れてたよあはは!」
「流石にあれは持って帰れねーわ。モニター共々宅配安定。」

あれから会計諸々を済ませ、どっと疲れた俺達はそもまま親友の家へとなだれ込んだ。元々はうちでパソコンをセットしてもらう予定だったが、持って帰れる様な代物ではなかったので、セッティングは延期。まだ時間もあるので、折角だし親友宅でパブジーでもやろうかとなり、お菓子類を買い込んでようやく一息、といった感じだ。あの街は、道を歩いているだけでも色々なものが目に入って来るので、あまりの情報の多さに疲れてしまう。それが楽しいのだが。ごろん、とその場に仰向けになり、目を瞑る。いやはや、疲れた。

「くぅ〜、しっかし、お前が羨ましいぜ、マジで!あんな新しいパソコンで遊べるなんてよー!」
「そうなんか?っても、お前が使ってるあのパソコンの方が凄そうだけどな。自作なんだろ?」
「確かにまだ負けちゃいねーって気概だけど、にしたって数年も前の技術で作られたもんだからな。車とかと違って、全てにおいて劣っているのが現実だ。あぁーっ!私も欲しいなーっ!・・・あ。」
「・・・ん?」
「今の"俺"なら、出来るんじゃないか?禁断の、"援助交際"という錬金術が・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・何?」
「・・・別に。お前の身体だろ、好きにしろよ。」
「な、なんだよそれ、感じ悪いな。」
「・・・・別に。ちょっと疲れただけだよ。」
「パソコン屋に居る時もなんか、途中から様子が変だったし・・・。」
「・・・・・・・。」
「お、置いてったのは悪かったよ・・・。その、自分が小さくなってるって事を考えてなくて・・・。」
「置いてった・・・?ああ、いや、あれは別にしょうがないだろ。見失った俺も悪かった。」
「あれは・・・?じゃあ、お前は一体何に怒ってんだよ。」
「怒ってねーよ。ちょっと疲れただけだって。」
「ダウト。ならなんで、パソコン屋にいた時から機嫌悪かったんだよ。」
「別に機嫌悪くなんてなってねーよ。・・・・!?」

情けねー。そう思いながらも、不貞腐れる様に横を向くと、親友は自分の手を引き仰向けにさせたかと思うと、どし、と跨ってきた。重っ、と思った瞬間、あ、やっぱ軽い、と感じ、変な気分だ。上を向くと、親友が自分の顔を覗き込み、割と真剣な目を向けて居る。

「お前がグダつくなんて珍しいじゃねーか。なんだよ、文句があるならはっきり言えよな。それとも、俺に隠し事か?」
「別にそんなんじゃ・・・」
「じゃあ言えよな。言ってくれないと、わかんないだろ。」
「・・・・・。」
「・・・・ひゃあっ!?な、なにすんだこのばかっ!」

バッ、と、親友が飛び退く。馬乗りになった親友の身体を見ていたら、つい手が伸びてしまった。ふみゅ、と胸を服の上から揉むと、アイツは突然のことに驚き、そのまま。呆れて言葉が出ない。結局、自分のこの無気力感も、不機嫌さも、全部この性欲と"恋人"に対する嫉妬心が原因だ。話にならねぇ。こんな醜い話、アイツにしたらなんて思われるだろうか。相当うざったいだろうな。気持ち悪いだろうし、アイツにとってこの感情は、百害あって一利なし、だ。アイツは多分、自分に対して恋愛感情なんて持ち合わせていないだろうから。それに関しては、逆で考えた時に、自分だったらと考えると難しい。アイツに対してそう思う、という事は、自分だったらそう思うという事でもある。結局、恋愛感情なんてただの下心。友情に比べたら、あまりにも不純だ。こんな事なら、俺がTSりたかった。今の自分は、アイツの情けによって成り立って居る。アイツは俺の事が友人として好きで、きっとそれは自分と同じで掛け替えがなくて、失いたくない大切な物であり者だ。だからこそ、自分からの欲求に応えてくれる。それに加えて元々男だから、自分の性欲を仕方がない事象だと受け止めてくれている。・・・だけに過ぎない。拒絶されるよりかは数千倍マシで、比べ物にならないが、だからと言って、そういう問題でもない。こうやって空気を悪くする様な事、今までにあったか?グズ過ぎる。わかっているのに、どうしようもなかった。

「・・・えっち、したい・・・のか・・・?」
「・・・したくない時なんかねーけど、そうじゃな・・・お、おい!?」
「うわ・・・みるみるうちに大きく・・・。なんか、今となっては貴重映像だな、これ・・・。」
「そりゃ、お前に触られたら血液も集まるわ・・・うあっ・・・!?な、なにすん・・・っ・・・!」
「はむ・・・ん・・・。したいなら、したいって言ってくれればいいのに・・・。ん・・・。」

するすると慣れた手つきでズボンのチャックを下ろし、愚息が取り出される。この部屋は恋人の部屋。そんな、不思議と甘ったるい部屋で愚息を触られたら、心臓は仕事を強○される。何度も味わった親友の唇がもたらす圧倒的な快楽量を、体は覚えてしまっていて抵抗が難しい。くぷ・・・と咥えこまれると、いよいよ手の施しようがなく、生温かい口内の粘膜に脳髄が秒速で溶けていく。強○的に流れ込んでくる快感を処理するための酸素が足りない。次第に呼吸も乱れ、理性を失ってしまいそうだ。

「ん・・・・はむ・・・ん・・・・。」
「くっ・・・はー・・・!はー・・・!や、やめろ・・・!」
「んは・・・・。すごい、ひくひくって・・・。もう、イキそうなん、だろ・・・?我慢しなくても・・・」
「やめろっ!」
「・・・・!?」

ビクッ!
親友の身体が、自分から発せられた大きな声で緊張し、強張った。肉棒をさする手を止め、唇を離し、親友は恐る恐る自分の顔を覗くと、怯えた表情を変えずに目を逸らした。その姿に胸が締め付けられる。親友が、そんな表情をしなければならない理由なんてどこにもないのに。次の言葉を考えずに、声を発した。あのまま行けば、自分は流されてしまいそうだったから。上った血液を下ろそうと、浅く呼吸を繰り返して居ると、親友の方が先に口を開いた。

「な、なんだよ・・・。俺、何かしたか・・・?なんとか言ってくれよ・・・。俺、わかんねーよ・・・。」
「はー・・・。はー・・・。俺が、悪かった・・・。もう、こんな事、やめよう。」
「は・・・?なんだよそれ。こんな事って、なんの事だよ・・・?」
「友達に戻ろう。俺がお前を、女としてしか見れなくなっちまったばっかりに・・・すまねぇ。」
「なんだそれ・・・?今更そんな・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・それは、もう、私の身体に飽きた、って事か・・・?」
「は・・・?」

自責の念に堪えきれず本心を告げると、親友から思いも寄らない言葉が発せられた。その言葉を聞いた瞬間、んなわけねーだろ!と心の中で叫んだわけだが、一体、どういう事だ。自分はてっきり、親友がホッとしてくれるかと思っていた。親友だって人間だ。女性になったからと言って性欲がなくなるわけではないだろう。だが、そんなものは一人で発散できる。というか、できる類のものしか患っていないと、思っていた。だから、自分から求められるのは、気持ちいい事かも知れないが邪魔なのだろう、と。ゲームや会話してる時なんかが顕著だが、そのほか全て。それに、恋人同士だからと言って、恋人ヅラされるのは嫌なんだろうな、と。あくまで親友前提で、恋人なんていうのは建前も建前、それこそ、親友の事が好きだと言った自分への尊重の印、程度のものだろう?だが、もう自分は、そんな中途半端な優しさに耐えられない。こんな事、今日だけではなかった。それに、アイツは"気持ちに整理がついていない"と言っていた。それが、ずっと怖いんだ。整理がついた時に、アイツから拒絶されるのが。アイツが、男はやっぱり無理で、女の子を恋人にするわ!と言い始めたら、勿論自分は応援するが、それは同時に、自分への拒絶だ。そして厄介なことに、アイツは優しい。きっと、そう結論を出していたとしても、自分を傷つけないために、それこそ自身の想いを押し殺してでも、自分を受け入れてくれるだろう。もしくは、現在進行形で。それが、堪えられない。それなのに、いつまでもアイツに甘えて、アイツが限界を迎えるまで自分の欲をぶつけ続けた挙句にアイツから話を切り出させるなんて、残酷じゃないか。それが親友に対する仕打ちか。明示的にアイツは、悪くない。それだけは、なんとか避けるべきだと、覚悟したんだ。なのに。

「お、お前は・・・!お前はやっぱり、俺の、私の身体だけ、女を体験する事だけが、目当てだったのか・・・?」
「違うっ!やっぱりってなんだやっぱりって!ってか、なんでそうなるんだ!?俺は、本気でお前を女として好きになっちまってるって言ってんだ!だから、このままじゃもう、前みたいには接せないんだよ!・・・・!?」

訳のわからないことを宣う親友に、自分の考えを伝えるべく身体を起こし、座りながら言葉を発すると、その終わり際にドンッ・・・と、親友がぶつかるように抱きついてきた。不意を突かれ、カクンっ、と肘が抜けると、そのまま親友に押し倒される。首元に親友は顔を埋め、横隔膜を痙攣させている。その表情は、見えない。

「お・・・俺も・・・なんだ・・・。」
「・・・なに、が・・・?」
「俺、最近おかしいんだ。気づけばお前の事を考えちまうし、学校じゃ目で追っちまう。前よりも、お前と遊べる事が嬉しいし、今日だって・・・。化粧とかオシャレとか、一体誰のためにやってると思う・・・?」
「お、お前・・・。」
「変わっていく。俺が、俺じゃ無くなるような、そんな錯覚すらする・・・。怖いくらい、何かが劇的に変わっていくんだ・・・・!それは顕著に、全部、お前に結びつく・・・!」
「・・・・・・・。」
「き、キモイだろ・・・?身体が女になったからって、そんな簡単に、急激に男を好きになるものか・・・!?よりによって、お前だなんて・・・!これじゃあ、これじゃあ俺はまるで・・・!」

泣いている。親友が、自分の胸で。つくづく情けない野郎だな自分は。不安?耐えられない?よくもそんな戯言を脳内で宣ったものだ。自分の悩みなど、TS病を患ったコイツの悩みに比べれば、本当になんでもない事だった。そりゃそうだ。自分にとって親友は掛け替えのない存在だが、親友にとって自分は、それ以上の存在だ。男は、女に下心以外で近寄らない。元々男だった親友は、その事を嫌という程知っている。つまり、今後近づく男は、誰一人として親友は信用できないという事だ。なまじ外見が良いものだから、コイツの中身を認め、今までを知り、心底分かり合う、なんて事は起こらない。男なら、コイツの容姿に幻想を抱くだろう。それは自分も例外ではないが、自分を例外たらしめる理由は偏に、コイツが男の頃から仲が良かった事である。だから、ある意味コイツにとって、自分を失うという事は、今後恋人を諦める、とほぼ同義だ。言い過ぎな感じもするが、事実だろう。人は、そう簡単には解り合えない。だが、これだけなら大した問題にはならなかった。ここまでは、自分が告白する前に考えついていそうなものだ。現にコイツは、自分の告白に対し、曖昧な返事をしている。そこまで危機感を持つような事ではなかったということだ。その時点では。

「元々、お前の事が好きだったみたいじゃないか・・・!」

もしも自分以外の男を好きになったのなら、こうまで悩まなかっただろう。それなら、間違いなくTS病のせいだ。それ以外に要因がない。好みのタイプも女子だった。だが、親友である自分となると、本当にTSが原因か曖昧になる。いや、間違いなく、先ほどと同じ理由でTS病のせいなのだが、本人からしたら、そうではないのだろう。親友は、胸元から顔を上げ、ぼたぼたと涙を零しながらも自分の顔を見つめて思いの丈をぶつけてくれた。きっとその振る舞いは、自分を本当に信用してくれている証なのだと、胸が熱くなる。

「はは・・・。俺が女になったお前を好きになったのと、俺を女になったお前が好きなるのは、なにか違うのか?」
「全然違うだろ!俺は男を好きになってんだぞ!他人事だと思って、いい加減な事言うな!」
「確かに他人事の域は出ないだろうけど、いい加減なことは言ってないぜ。それに、これはそもそもお前が悪い。」
「・・・・・!し、仕方ないだろ・・・!あ、あの時は・・・」
「じゃあ、今は?」
「・・・・す、好きだ・・・。性的な意味で・・・。」
「・・・めちゃ好みっすか?」
「うるせーな!そうだよ悪いか!お前、ほんっっっっっっと顔だけは整ってるよな!お前がブサイクだったら、俺はこんなに悩んでねーよ!」
「ハッハッハ!苦しゅうない!」
「・・・今の内に言っておくけど、お前が他の女子と話してるのを見るとイライラする。」
「マジか、みーとぅー。」
「あ、あと、その・・・・」
「・・・・なんぞ?」
「・・・えっち、したい。」
「・・・・は?・・・・んむっ・・・!?」
「ん・・・む・・・。」

唇が、熱い。考えたいことはまだあるのに、親友の眼差しから目が離せない。伏し目で、自分の事をじっ・・・と見つめながら、くちゅ、くちゅ、と舌を動かされる。思考までかき回されている様だ。いつから、なんて、気にするだけ無駄か。親友は、自分の事を好きだと言った。それも、性的な意味で。その葛藤を、よくもまぁここまで表に出さずに過ごせたものだと感心する。いや、もしかしたら、自分が気づかなかっただけで、節々に出ていたのかも。AVを見なくなったと言っていたのは、つまり好みが変わった、という事だったのかも知れない。最早なんとも言えないが、絡められる舌の感触が気持ちよくて思考がうまく働かない。自分好みの女の子とキスしている最中に、言語化が必要な思考なんて出来る訳がない。

「はー・・・。はー・・・。か、確認なんだけど、さ・・・。お前・・・俺と、えっちしたい・・?」
「・・・お前、マジで男心を失くしちまったみてーだな。」
「お、俺とお前が同じとは限らねーじゃねーか!」
「男が女を好きになる理由なんて、"ヤりたいから"以外にあんのか?俺はそんな事を唱える男がいたら、信用しねーぜ?マジで。」
「そ・・・それはそうかも知んねーけど・・・。」
「・・・・・。」
「・・・なんか、急に恥ずかしくなってきた・・・。やっぱやめ・・・」
「おいおい、それも通らねーって事はわかるよな?」
「わわっ・・・!?」

そそくさと自分の体から離れようとする恋人の腕を掴み、がばっ、と押し倒す。顔を真っ赤にして目を見開いているコイツは、どこか嬉しそうな感じに見えなくもない。顔を真っ赤にしているのは自分も同じだろうけど。好きな女と二人きり、それも女から"えっちしたい"などとキスされて、止まれる思春期の男などいるものか。多分親友は、試したのかも知れない。自分が、本当に親友の事が好きなのかどうか、を。わざわざ好きだって言ってやったというのに。これだから言葉は使えない。

「んっ・・・!」
「はー・・・。ごめん、服の脱がし方、わからないんだけど・・・。」
「え?あ、ああ・・・。」

胸に手を伸ばすと、服の肌触りと下着の感触が指に伝わってきて、初めて胸を揉ませてもらった時の記憶が蘇る。下着・・・固い。テクニックを持った男なら、キスしながらするすると脱せる事ができるのかも知れないが、なんかこの服、どうしたらいいかわからない。変に強がってもいいのだが、折角向こうから誘ってきたのだから、正直に白状してもいいかな、と。親友は一見慣れた手つきで服を脱ぎ、下着を外して傍に置くと、チラッ、とこちらを見ては、間も無く顔を背けた。服は、上から羽織っていた物だけ脱ぎ、それ以外は上下の下着だけを脱いでいた。これ、上の服はまくっていいのだろうか・・・?生地が厚いのか、乳首も浮いてない様に見える。それでも、乳房の膨らみに合わせた服のラインにちんこが痛い。ゆっくりと服をめくると、親友は何かを思い出したかのように目を見開き、ガシッ、と腕を掴んできた。

「で、電気!電気消せよ!」
「え、なんで?」
「恥ずかしいからに決まってんだろ!バカ!」
「今まで別に大丈夫だったじゃん?今更なにを・・・」
「い、いいから!消さないならやめる!」
「ええ!?わ、わかったよ!」

今更恥ずかしいなんて思う筈もないとは思うが、親友の表情が本気だったので、部屋の明かりのリモコンに手を伸ばし、3回、ボタンを押す。窓から差し込む明かりを頼りに、服をめくりちくびに吸い付くと、びくっ、と親友は身体を強張らせた。ふと、親友の表情が気になり顔をあげようとして気がついた。そういえば、今までのえっちは全て、自分から誘っていた。といっても、そんなに沢山肌を重ねた訳でもないが、ともあれ今回は初めて、親友から誘われたのだ。誘われたという事は、親友がムラムラした、という事だと思うが、それはつまり、気持ち良くなりたい、という事だ。なるほど。電気を消させた訳がわかった気がする。確かに自分も、口でしてもらっている時は無意識に表情を繕っていると思う。なんか、変な顔してそうだから。実際相手からみれば、気持ち良さそうにしている顔はベストオブ表情なのだが、恥ずかしい事に変わりはない。

「んっ・・・!」
「すげ・・・なんか、めっちゃ濡れてる・・・。」
「言うなバカ・・・!あっ、んっ・・・!」
「悪い・・・。どの辺が気持ちいいんだ・・?これ・・・。」
「えと、もう少しだけ上・・・ん、そこら辺・・・うん、そんな・・・感じ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
「・・・・・。」

ぬる・・・ぬる・・・。親友の指示通りに、充血したお豆を指の腹で撫でる。舌と指では感じ方も違うだろうと、お伺いを立てて正解だった。徐々に息が荒くなっていく様子から、気持ち良さそうだと思える。あれから少し、セックスについて調べたが、そう簡単には中でイケる様にはならない様なので、一旦諦めた。なんか、色々大変そうだし・・・。なので、せめてココで一度はイってもらおうと、いつも挿入前に奉仕している。どうして射精後って、あんなに性行為がどうでもよくなるんだと不思議で仕方がないが、賢者タイム中に奉仕しようなど絶対に思えないだろうから、今のうちにしてあげる。下腹部に力が込められ始め、花弁周りがひくひくしてきている。時折花弁から蜜をすくい、決して痛くならないように気を配りながら、くりくりと親友が今の所一番感じる部位を撫でた。

「はー・・・!い、イキそう・・・。」
「ん・・・。んむ・・・。」
「んっ・・・。んんっ・・・!んっ・・・!」

口付けを気持ち良いものだと、より感じてもらえるようにする為に、親友が絶頂を迎えるタイミングで口付けを行うようにしている。くちゅ・・・と舌を滑り込ませた頃、悩ましくも押し殺しきれなかった声が親友から漏れ、それと同時にびくんっ!びくんっ!と身体を痙攣させ始めた。絶頂後は敏感になりすぎて痛いらしいのだが、どの時点から痛くなるのかわからないので、親友からストップがかかるまで撫でてあげる。絶頂中は、その快楽の波に耐える事で精一杯なのか、口付けして絡ませている舌は動かない。その間、親友の舌に奉仕する。親友自身が舌への接触を認識しているかは不明だが、身体は感じているだろうから。

「あっ・・・は・・・!も、もうやめて・・・いっ・・・!」
「あぁ、すまん・・・。そろそろ、挿れていいか・・・?」
「う、うん・・・。」

熱のこもった吐息を漏らしながら、親友は潤んだ瞳でこちらの様子を伺っている。身体を起こし、親友の両膝を掴んで足を開かせ、愚息を濡れそぼった花弁へと押し当てる。ここまでの流れは、それなりに慣れてきたかと思っていたが、実際のところ心臓はばくばくと高鳴り、ひどく興奮していた。今まではどこか、心の奥底の、手が届かない場所がじくじくと膿んでいる様な感覚を抱えながら事に及んでいたが、今日は違う。親友は自分を求め、自分は親友を求めている。両思い。そう考えるだけで、激しく鼓動する心臓が締め付けられ、熱くなった。花弁の割れ目で、濡れた肉棒がひくひくと脈を打っている。無意識に、親友の中で果てる事を想像し、その瞬間の満たされ具合を演算してしまう。

「んっ・・・!」
「うっ・・・くっ・・・。」

腰に力を込め、ゆっくりと親友の体内に肉棒を沈める。普段よりも余計に濡れた花弁は、すんなりと肉棒を飲み込み、粘ついた肉と液で密着した。その生温かく、ぬるぬるとした感触に包まれたいと、自分は肉棒が根元まで入るように腰を深々と沈め、ぐにゅう・・・と親友の出来たてな子宮を圧迫した。その刺激にまだ慣れないのか、一瞬親友の顔が歪むも、愚息に粘膜がまとわりつく快感でそれどころではない。それに、心なしか・・・

「はー、なんか、いつもよりネトネトしてる・・・?」
「し、知るか!んっ・・・!あっ・・・!も、もう少しゆっくり・・・んっ・・・!」
「はー・・・!はー・・・!ごめん、もう、出そう・・・!」
「んっ・・・いい、よ・・・。その、中に、出して・・・。気持ち、良いんだ・・・はー・・・はー・・・。」
「う、ん・・・うっ・・・!」
「ふあっ・・・・♡」

ぬるぬる感が。絡みつく体温が。締め付けが。今までにない粘り気と熱と圧迫感に、愚息は早々と咽び泣いてしまった。これは早漏と罵られても致し方ない。コンドーム着けようかと本気で悩むが、半年後からは着けないといけない、と考えると今のうちに生えっちを堪能するべきなんじゃないか、とまぁまぁクズい考えが思い浮かんでくる。びゅくっ・・・!びゅくっ・・・!とこちらも粘り気の強い情欲を吐き出し、精液が尿道を舐める快楽に酔いしれた。毎度毎度思うが、本当に気持ち良すぎる。この快楽を知ってしまったら、そりゃ避妊具つけない派なんて輩が出てくるのも仕方がないとは思えてくる。仕方のない部分など一切ないが。今までは、親友の優しさにつけ入り、快楽に身を任せて中出しするなんて本当にしょうもない奴だな自分は、と後ろめたさがあった。今はそれが全て許され、寧ろ親友からおねだりされている。女性が、精液を体内に放出される事を気持ちいいと感じるように作られていても不思議はない。射精中、親友の顔を覗くと、瞼を強く閉じ、まるで快感に集中している様で、気持ち良さそうだ。

「う・・・ん・・・。はー・・・。ごめん、早くて・・・。」
「え?あはは、いいよ別に・・・。お、俺の身体、気持ちいい・・・・?」
「すっげー気持ちいい・・・。おっぱいも柔らかいし・・・。」
「・・・・そうか。」

苦笑いに近い笑みを零す親友は、嫌そうというよりも照れている様に見えた。やばい。可愛い。一発入魂な自分の体が恨めしい。賢者モードが強い自分は、連続プレイなどそうそう出来ず。血の気の引いた愚息を親友から引き抜く。暗くてよく見えないが、結構な量を出したので花弁から白濁色の粘液が滴り落ちているかも知れない。やばい。今既にもう一回したいと思い始めてはいるので、今夜辺りにもう一回、えっちしたくなると思う。これは予知だ。だが、夜になるとどっちの家にしろ親が居る。なんだかなー。

「そういえば、今日は何時頃お前の家に行く?明日の午後には着くんだろ?」
「ああ、12−14の時間指定にしたから。ちょっとパブジーやりたいし、19時半とかに出ようか」
「りょー・・・。」
「・・・ん?どした?」
「あのさ・・・今日、母さん22時までの日なんだケド・・・。」
「へー、そうなん・・・だ・・・。」
「う、うん・・・♡」

めっちゃ誘ってくる。多分、そういう事だろう。時間的にも、20時頃からご飯を食べ始めて、食べ終わった後くらいに復活しそうではある。恥ずかしそうにもじもじしながら顔を背ける親友の姿に、既にちんぴくして居るので間違いない。女性の性感など知り得る術はないが、相応に気持ちがいいのかも。少し、安心した。ティッシュで事後処理を行いながら、親友はパソコンの電源を入れ始める。親友が衣服をある程度整えてところで電気をつけて定位置に座ると、"お菓子持ってくるー"と部屋を出て行った。本格的に、自分に彼女が出来た訳だが、なんか実感としては薄い。それでも、明日から、いや、既に幸福な時間は始まっていて、一旦終わりは見えない。将来への不安は暫く考えないようにして、今目の前にある幸せを全力で楽しんで行こう。親友がお菓子とジュースをお盆に乗せて部屋に戻り、近くにおくと、親友も定位置に座った。さぁ、レッツゴリラAIM。

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