官能物語 2020/04/21 14:00

息子の告白/5

 久美子の瞳に、彼の瞳が映る。少年の瞳の美しさに久美子は心が吸い込まれるようになった。そのまま、どのくらい経ったことだろう、ハッと我に返った久美子は、彼の胸板を押して、その身を離した。

「な、なにをしているのっ!」
「好きなんだ、母さんのことが。ずっと好きだった」

 高典は、真剣な声を出した。

「えっ、ど、どういうこと?」
「どうもこうもないよ。その通りの意味だよ。母さんのことが、好きなんだ、一人の女性として」

 久美子は、頭をがんと殴られたような衝撃を受けた。それは、さきほどのガッツポーズと同じ、いや、それ以上の威力である。息子が自分のことを女として見ているという。そんなことがあるだろうか。

「子どもの頃から、ずっと好きだったんだよ。でも、もちろん、母親だからと思って、気持ちを抑えてきたんだ。いけないことだって。でも、好きで。おれ、どこか頭がおかしいんじゃないかって、そんな風に思ったよ。母さんがよくしてくれるたびに、申し訳なくて。でも、そんな風に思わなくてもよかったんだよね。おれと母さんの間に、血のつながりがないなら」

 久美子は、再び身を寄せた少年に、抱き締められるのを認めた。

「ちょ、ちょっと、待って。落ち着いて!」
「母さん。いや、久美子さん。おれは、あなたのことが好きだ。あなたは?」
「待って、待って……本気なの?」
「こんなこと、冗談で言うわけないだろ」
「で、でも、わたしのことが好きだなんて……わたしなんか、もうおばさんだし」

 久美子は、微妙に論点が違うことを主張した。それだけ、パニクッていたわけである。高典は、

「おばさんなんかじゃないよ。母さんは、綺麗だよ。現に、おれの友だちの中には、母さんとヤりたいって言っているやつ、何人もいるし」

 と答えた。

「ええっ!?」

 今時の若い子は熟女が好きなのだろうか、熟女ブームなのだろうかと、またもやおかしな方向に思考が傾いていきそうなところを、何とかそれを元に戻そうとした久美子は、

「と、とにかく、血がつながっていないって言っても、わたしたち親子なんだから、だ、ダメよ!」
「久美子さん」
「そ、その呼び方やめて」
「じゃあ、とりあえず、母さん。おれ、母さんのことがずっと好きだったんだ」
「そ、それは分かったから」

 高典は、その切れ長の瞳に獰猛な色を浮かべた。

「いや、分かってないよ、母さんには。好きな人がすぐそばにいるのに、想いを告白できない辛さなんて。おれ、母さんのことを想って、何度もオナニーしたんだよ。でも、そのたび、罪悪感で本当に自分が嫌になって。こんなヤツ死んだ方がいいんじゃないかって、そんなことまで思ったよ」
「な、何を言っているの!?」
「本当にそう思ったんだよ。でも、死んだら、もう母さんに会えないだろ? だから、諦めたんだ。母さん!」

 久美子は、ソファに押し倒された。背中がソファの座面につけられた状態で、息子を見上げる格好になる。ギラギラとしたその目は、もはや息子のものではなく、メスを犯そうとするオスのそれだった。

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