官能物語 2020/04/24 18:00

息子の告白/8

 これから本当に息子とするのかと思えば、まるで、夢のように思われる。ずっと男性と交わらず、もしかしたら、このまま、シないで一生を終えるかもしれないとも思っていた。それでも、別に構わない。息子のために自分の人生はあったのだと、そう思えるくらいに息子のことを愛していた。それが、まさか、当の息子とすることになるとは。再度考えてみたけれど、やはり信じることができない。

――今日すぐじゃなくてもよかったんじゃ……。

 冷静に考えてみれば、なにも今日する必要は無かったのではないか。まだ、息子が旅立つまで何日か時間がある。仮にするとしても、数日、ゆっくりと考えてから、結論を出せばよかったのではないか。しかし、結論など、息子にとってはとっくの昔に出ているのだろう。母のことを想う自分がおかしいのではないかと考えて、死を想ったほどだったのだ。そう、死である。あの子に死なれたらと考えた久美子はゾッとした。高典は、久美子にとっての、生きがいであり命そのものである。

 だとしたら、体を与えることなど、何ほどのこともない理屈だった。多少ホッとした気持ちになった久美子は、実際的な問題について再度、考えた。意外なことに、高典は童貞だという。ということは、当然、経験がある久美子が導いてやらなければならない。しかし、導くも何も、セックスのやり方なんて、ストレートなものしか知らないわけで、それを教えるにしても、何度も確認したことだけれど、もう随分と久しぶりだから、そもそもできるかどうかというところからして怪しかった。

 話は単純と言えば単純だった。勃起した男性自身を、女性器に受け止めればいい。それだけの話といえば、それだけの話である。逆に言えば、それだけの話がもしもできなかったら、どうしようかということになる。自分の方の何かしらの不具合で、できなかったら。彼の初体験を台無しにしてしまうことになりかねない。そんなことになったら、どうしようか。
 
 どうすることもできない。久美子は、深く息子を傷つけた自分自身を想像して、ゾッとした。これは、やっぱりもうちょっと時間を置いた方がいいのではないだろうか。そう、練習がいる! 練習と言っても、どうすればいいのかは分からないけれど、いきなりぶっつけ本番は無理! よし、練習のための時間をもらおう! とベッドから出ようとしたそのときに、

「お待たせ、母さん」
 
 現われたのは、上半身は裸で、下半身はボクサーブリーフ姿の息子だった。半裸の彼はまるで光り輝くようであり、久美子は、胸が鳴るのを覚えた。同時に、体の奥が熱くなる。

 このままできるかもしれない、と久美子は思った。

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