息子の告白/34
キスはすぐに終わって、
「へへっ」
と、いたずらっ子のような顔で笑う青年のことが、やはり愛おしくてたまらない。言葉にしたことにウソがないことが分かった久美子は、もうこれからどうなろうと、それはこれからのことだと思い定めた。これから自分とシたいというなら、させてやればいいのである。幸いに……と言っていいかどうかは分からないけれど、血のつながりは無いのである。
――それにしても……。
まさか、息子と血のつながりがないことを、幸いにして、などと思うことがあるとは、つい数時間前まで、考えもしなかった。人生とは面白いものだと言わざるを得ない。
「どうかした?」
「何でもないわ」
「あー、本当に気持ちいいよ、久美子のなか。今日から、この体はおれだけのものだから」
そう言うと、高典は、身を起こして、自分のものであるという印でもつけようとしているかのように、乳房に手をつけてきた。久美子は、男の手によって、自分の胸乳の形が変えられるのを見た。
「あんっ……そんなことになるの?」
「なるよ。おれ以外の男としたらダメだからな」
「そんな人いないわよ」
「じゃ、いいけど。断っておくけど、再婚とか絶対許さないから」
「じゃあ、わたし一生一人ってこと?」
「何言ってんの。おれがいるじゃん」
「……一生、面倒見てくれるの?」
「当たり前だろ」
どうして当たり前などという話になるのか分からない。そもそも、あと数日したら、彼は新天地に向かって旅立つのである。
「一緒に来ればいいじゃん。てか、来てもらうことにするから」
高典は断定的に言った。
「そんな……母親がついていくなんて」
「母親じゃないし」
そう言うと、高典は、腰を打ち振り始めた。
「はあっ……ああっ……」
久美子は、すぐに襲い来る快感に、声を上げた。たくましい肉棒にナカをこすられ奥を突かれ、まるで体全体が揺さぶられるような快楽である。
「久美子は、おれのカノジョだろ」
「か、カノジョ……あんっ、はあんっ!」
「そうだよ。おれの女だ。いいな?」
そう言って、腰を振りながら、乳首をつねり上げるようにする。
「はあああっ!」
快感の電流がひときわ大きく久美子にショックを与えて、その豊満な体が震える。
あまりの快感に久美子が何も答えられないでいると、息子は、
「いいな? 久美子は、おれの女だぞ」
と何度も繰り返し、ガシガシと奥を打ちつけてきた。久美子は、うなずくしかなかった。こんな快感を教え込まれては、彼の恋人にならざるをえない。そうして、乳こそ与えていないとはいえ、それ以外の面では、全てに渡って世話をして、育ててきたといえる青年に支配される悦びに、久美子は、心まで震わされるのが分かった。
「ああ、高典、すごい……」
彼のことを自分の恋人として認めると、快感がさらに一段階上がったようで、まるで、嵐に翻弄される小舟のように、自らがどこに漂っていくのか分からないような気持ちになった。久美子は、また、息子の腰に両足を絡みつかせていた。そうして、両手を開いて、彼を迎え入れると、ぎゅううっとその背に腕を回した。しがみつくことで、ようやく安心した気持ちになったけれど、
「あっ、あっ、あっ、あっ!」
快感がおさまるわけでは全く無く、肌を合わせたことで、今度は別種の気持ちよさが生まれて、
「ああ、イキそう……イクッ、ううっ」
「おれも出すよっ」
「来て、一緒に、一緒に! ああっ、イクッ、イクーーーーーーーーッ!」
どくどくどくっ、と肉棒の脈動を感じるのとほとんど同時に、久美子は絶頂に達した。目の前が真っ白になるような快感に、久美子は、今日何度目か分からない、心からの開放感を味わっていた。
(了)