息子の告白/33
久美子は、これから自分が食べられてしまうような気持ちになった。それは全く嫌な気持ちではなくて、むしろ、
――ああ、むちゃくちゃにして……。
大いに興奮を誘うような気分である。
息子は、そのまま覆い被さるようにしてくると、
「愛しているよ、久美子」
真剣な眼差しを向けてきた。
――わたしも愛してる、愛してるわっ!
「えっ、本当?」
高典は、驚いたような顔をした。久美子も驚いた。どうやら、心の中で思ったことを、そのまま声に出してしまっていたようである。
「本当に、おれのこと、愛してるの?」
息子が真剣な目で訊いてきた。
久美子はうなずいた。真剣な思いに応えなければいけないという気持ちもあるし、そもそもが本当のことだった。
「それって、息子として? それとも、男として?」
さらなる問いに、久美子は、どう答えればいいか迷った。息子としてはもちろん愛している。しかし、彼がいま望んでいる答えはそれではないだろう。とはいえ、男として愛しているなどということを言ったら、母子関係が壊れてしまう。もちろん、いまこうして体を交えているということでもって、すでに親子関係など崩れていると言えば言えるけれど、それは今日だけにとどまるはずである。もしも、男として愛しているなどと答えたら、それが今日だけにとどまらなくなってしまう。
「ねえ、どっち?」
高典は、ほとんど唇が触れるくらいにまで、顔を近づけてきた。その目は真剣そのものであって、ごまかしを許してくれそうにはない色で満ちていた。
「おれは、久美子のこと、女性として愛しているよ」
息子の声に、久美子は、自分の中で何か綺麗な音が鳴るような気がした。その音が自分自身を新しく生まれ変わらせてくれるような、そんな気分になった。
「だから、久美子も、おれのことを男として見てほしい。今日だけの関係なんて嫌だ。これからも、おれは、久美子とシたい。いや、絶対にするからな」
そう言い切った彼は、すでに一人前の男だった。そう感じたということは、彼のことを、一人の男性として考えて、愛していいということだと久美子は、腑に落ちた。
「わたしも愛しているわ、高典」
「男として?」
「……うん」
「じゃあ、これからも抱いていいんだね?」
「嫌だって言っても、するんでしょ?」
それに対する答えはなく、その代わりに、久美子は、自分の唇が奪われるのを感じた。