義弟と交わって/2
それから、わたしたちの間は、少しぎくしゃくしました。酔った上でのことであるし、そもそもわたしは嫌な気持ちになっていなかったわけだから、年上のわたしの方から、
「気にしてないから」
と言ってあげればそれで済んだかもしれませんが、どうしても気恥ずかしくて、それができませんでした。浩二くんの方も、わたしにキスしたことを覚えていて、それに罪悪感を持っているみたいで、わたしと目を合わせようとしません。
そういう日々が、半月ほど続いたある日のことです。浩二くんが、熱を出して寝込んでしまいました。さすがに恥ずかしがっている場合ではないので、わたしは彼の看病をするために、部屋に行きました。すると、ベッドで寝ていた浩二くんは、無理やりその身を起こすようにして、
「この前は、ごめん、真由さん……あんなこと、しちゃって」
とキスのことを、謝ってきました。わたしは、彼をもう一度寝かせるようにして、
「もう気にしてないから」
と言ったあとに、
「酔っ払って好きな子と間違えたんでしょ?」
と笑いながら続けました。すると、浩二くんは、
「間違えたわけじゃないよ」
と答えてきたのです。
「えっ……」
わたしは、ちょっと、いえ、かなりびっくりして、どういうことか訊き返すと、
「……兄貴がこの家に初めて真由さんを連れてきたときから、ずっと、真由さんのことが好きだったんだ」
と言うではありませんか。そんなにはっきりと告白してくるなんて、いつもの浩二くんらしくないのは、熱で朦朧としているからだろうと思ったわたしは、それでも、胸をドキドキとさせて、彼の額に、しぼったタオルを当ててあげました。
「何か欲しいものない?」
「……真由さんが欲しい」
「こ、こら」
わたしがそれ以上二の句が継げないでいるうちに、浩二くんは、キスの件を謝って、わたしに告白したせいか、穏やかな目をしたあと、眠りにつきました。
わたしは、少しだけ、彼の寝顔を見ていました。整った顔立ちは、まるで女の子のようで、年よりもずっと幼く見えます。これじゃ、夫が可愛がるわけだ、と思ったわたしが立ち上がろうとすると、
「真由さん、行かないで……」
うわごとのような声が聞こえます。目は開いていません。わたしは、彼のそばまで行くと、
「また来るからね」
そう言って、彼の額にチュッと口づけました。自分でもなんでそんなことをしたのか分からないのですが、そのときから、わたしは、彼と関係することを望んでいたのかもしれません。