義弟と交わって/3
翌日、浩二くんの熱はすっかり治まったようで、元気になりました。
「よかったね、長引かなくて」
「真由さんのおかげかも」
「わたし、タオルしぼっただけよ」
「それだけじゃないじゃん……でも、あれって、おれの夢だったのかな」
「なんのこと?」
すると、彼は、自分の額をちょんと触るようにしました。あっ、と思ったわたしは、
「あの時、起きてたの?」
とちょっと焦りながら訊きました。
「半分かな。だから、夢かなって」
「……ごめんね、嫌だった?」
「嫌なわけないじゃん……てか、もう一度お願いしようかな」
「えっ……」
「はは、冗談だよ」
そう言って笑う浩二くんをあとにして、わたしは、彼の部屋を出ました。彼がわたしにした告白の件については、蒸し返すのはやめておきました。うわごとのようなものだったら恥ずかしいですし、もしも本気だとしたら困ったことになると思ったからです。夫の弟くんにどんなに思われていたとしても、その思いに応えることなどできません。そもそも夫がいる身で、他の男性の思いに応えることなんてできない上に、その男性が夫の弟なのですから、これは、なおさら無理ということになります。
でも、その無理が、あっさりと通ることになってしまったのは、それから、一週間後のことでした。
この一週間、わたしは、浩二くんと二人きりになるのをできるだけ避けていました。これは、本能的なものなのかもしれません。なにか、二人きりになることがまずい気がしていたのです。常に、義父母のどちらかとか、あるいは、夫や子どもをはさんで、浩二くんと向かい合っていました。
浩二くんからも、特に二人きりになりたいというようなアプローチも受けませんでした。わたしは、やっぱり、あのときの告白というのは、熱に浮かされたものだったんだと、ホッとする気持ちでいました。
ただ、同時に、少し残念な気持ちでもいました。もちろん、そんな気持ちを持ってはいけないことは分かっていたのですが、この頃、子どもくらいしか、わたしのことを好きと言ってくれないなかでの浩二くんの愛の告白は、わたしを少なからず動揺させました。もしもう一度好きだと言われたら、どういう気持ちになるのだろうかと、期待する気持ちもあったんです。思いに応えることはできないのに、そんな期待をするなんて、本当に自分の我がままさには呆れます。
でも、わたしのその期待は、その夜、叶えられることになります。