母の浮気/13
「あらー……あら、あら……」
母は、むやみに、「あら」を連発した。それ以外に言う言葉も無いのだろう。良太としても、何を言うこともできなかった。母親に勃起を見られたのである。男が興奮しているしるしを。しかも、それが、自分の部屋の中でエッチな動画でも見ているときであればまだしも、リビングで母親の隣に座っているときだったのだから、最悪だった。
良太は、自分のまだまだ短い人生の中で、最大の汚点となり、かつ、これから恥の多い人生をどれほど長く続けるか分からないけれど、その中でも、確実にワースト3には入るであろう瞬間を、心ゆくまで味わった。
母は咳払いをした。一体、何を言われるのだろうか。
「お母さんで大きくしちゃったの?」
くらいは言われるかもしれない、と良太は覚悟した。これまで、母と性について話したことは無い。初めて射精したときも、すでに知識があったので、母に相談したことはなかった。オナニーしていることも知らないはずである。しかし、この明るく開けっぴろげな母であれば、いきなりそういうフリをしてくることもありうる、と良太は見ていた。仮にそう言われた場合、どう答えようか。
「うん」
と素直に答えればいいだろうか。そうすれば話はもうそこで終わりになりそうな気もする。……しかし、である。母親の体で勃起するなどということを認めていいものだろうか。良太にも男としてのプライドがある。母が浮気しているところを見て思うさま勃起させていたわけだけれど、それとこれとは、また良太の中では、話が違うのだった。
「良太、お母さんにおちんちん見せてみて」
実際に出された母の言葉に、良太は目を点にした。何を言われているのか分からない。母は、心から楽しそうに笑うと、
「良太がどのくらい成長しているか、確認したいのよ。ね、いいでしょ?」
と続けた。
何も良くない!
勃起したことをからかわれるのでなければ、
「男の子だから、しょうがないよ」
と慰められるか、もしかしたら、見て見ぬふりをされるのではないかと、そんなことを思っていた良太は、自分の目算の甘さを後悔した。
「い、嫌だよっ!」
良太は、叫び声を上げた。
「ええ、いいじゃーん。ていうかね、母親は、子どもの成長具合を確かめる義務があるのよ。これ、法律で決まってるんだから」
「絶対、ウソだ!」
「大きくなってるところを見られているんだから、生で見ても同じようなものでしょ?」
何も同じじゃない! と思った良太は、ソファから立ち上がろうとしたが、その前に、どんっと横から衝撃を感じて、気がつくと、ソファの上で仰向けにされて、母が上から見下ろしているのが分かった。
「ふふっ、逃がさないよ、良太」
良太は、母の目がキラリと光るのを見た。