母の浮気/15
その考えは、それから数日間、良太を悩ませた。もしも、勃起を見せていたらどうなったか。ノリのいい母のことである。
「オナニーはしているの?」
なんてことを訊いてきたあとに、
「お母さんでよければ手伝ってあげようか?」
などということになったかもしれない。そうして、もしかしてもしかしたら、手コキではなくて口でしてくれたかもしれない。そんなことを考えて、良太は、母の謝罪を受け入れたあとの数日、母にフェラチオされているところを妄想しては、幼いペニスを勃起させて、オナニーしていた。それは、甘美な妄想であって、それだけオナニーの快感も増したわけである。同じ妄想で繰り返しオナニーしているうちに、本当にそうなってくれたらという思いが良太の胸に去来したが、さすがに、母に向かって、
「フェラチオしてほしいんだけど」
とは言い出せなかった。そもそもからして、母親とそういう行為をしていいのかという気持ちがある。ただし、いざそうなったとしても、良太には嫌悪感は無かった。母にフェラチオされる図は、興奮こそすれ、気分が悪くなるものではない。
それからしばらくの間、母が浮気する現場を見ることは無かった。そうそう浮気などしていたら、近所の噂にもなるだろうし、さすがにそんなことはしないのだろうと納得する一方で、良太は、再び、母が誰かと交わるシーンを見たくて仕方なく、やきもきしながら、日を送っていた。
しかし、良太の焦燥をあざ笑うかのように、何事もなく梅雨が過ぎ、夏も過ぎた。良太は、夏の暑い盛りにも、和室の押し入れの中に隠れ、熱中症の危険と戦いながら、チャンスを窺ったが、ついに、母が誰かと交わるところは見られなかった。
あるいは、もしかしたら、この前の、友人の父親との絡みが、母のセックスシーンを見る最後の機会だったのかもしれないと良太が思い始めたころ、学校が始まって、残暑も拭われるすっきりとした気候になり始めたときのこと、
「ちょっと、ダメよ、こんなところで、良太が起きてきたらどうするの……あんっ」
新たなチャンスを得た。
しかし、今回は、浮気では無かった。
「もう夜中だから、起きやしないさ」
答えたのは、父である。
良太は、自分の名前が出てきたので、ぎくりとして立ち止まった。ダイニングに入ろうとしていた足を止めて、耳を澄ます。
「あっ、あなた……はあっ!」
「お前だって、もうこんなに濡らしているじゃないか」
父がねっとりとした声を出した。