官能物語 2020/08/22 14:00

母の浮気/49

「えっ、い、いいんですかっ?」
「いいわよ。昔はよく一緒に入っていたじゃないの」

 昔というのは、女の裸の意味も分からないほどの、子どもの頃のことである。その頃なら、久司と一緒に、あるいはもちろん良太だけで、母と入浴したことがあった。

――そんなのありか……。

 良太は、もう何度目か分からない嫉妬の念を、久司に対して持った。母と一緒に風呂に入るなど、良太からすると、妄想さえしていない行為である。久司は、セックスの終了を告げられて、気落ちしたテンションを、再び、上げたようだった。

 良太は、二人が合体を解いて、母が、自分の股間をティッシュで拭っているのを見た。そう言えば、今のは中出しである。二回とも。母は、妊娠が怖くないのだろうか。あるいは、妊娠しないように、何かしらの処置を施しているのだろうか。分からない良太の目の前から、二人の姿が消えた。ふうっ、と良太は、とりあえず息をついた。どうやら、あと二時間あまりの間、ここにいなくてもいいようである。二人が入浴している最中に、そっと、家を出て行けばいい。合い鍵を持っているので、それでもって鍵をかければ、あとは二時間ほど、外で時間を潰せばいいだけの話である。

 良太は、そっと押し入れの障子を押し開けて、和室に出た。そうして、そろそろと、リビングを抜けて玄関へと向かう。そのとき、シャワーの音が聞こえてきた。どうやら、二人ともちゃんと風呂に入っているらしい。まことに結構なことだった。これで、一層安心して、家から出て行けるというものである。

 そこで、良太の頭に、ある考えが浮かんだ。その考えをすばやく吟味して、

――いや、ここは家を出た方がいい……。

 そう思ったのだけれど、良太の足はひっそりと、浴室の方へと向かっていた。二人の、浴室でのやり取りを、見ることまではできないまでも、聞きたいと思ったのである。

 浴室は、脱衣所が併設されていて、奥に、入浴スペースがある。脱衣所に入れば、さすがに気づかれる。だから、二人の姿を覗くことはできないけれど、運が良ければ、脱衣所のドアを少し開いて、声を聞くことくらいはできるかもしれなかった。

 そんなものを聞いたところで、また嫉妬に苦しむだけかもしれないけれど、良太は、誘惑に打ち勝つことができなかった。二人が、入浴中にどんな話をしているのかを聞きたい。もちろん、脱衣所のドアが開いていなければ、そのときは、大人しく家を出るのみである。

 良太は、脱衣所のドアへと近づいた。すると、鍵がかかっているどころか、引き戸は少し隙間があいているようだった。この家には彼ら二人しかいないと考えれば、鍵もしっかりとかけなくてもいい理屈である。良太が、脱衣所のドア近くに張り付くと、

「あっ、おっ、おばさん、ダメですっ!」

 久司の焦った声が聞こえてきた。

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