美少女のいる生活/24
約束した時間までに家に戻ると、
「お帰りなさい!」
パタパタと近寄ってきた美咲が、薄手のパジャマ姿である。
「今日、色々荷物が届いたんです」
そう言われた貴久が、彼女の部屋を見に行くと、「色々」と届いた割には、部屋の中はがらんとしていて、あまり変わらなかった。
「クロゼットの中に入れてありますから」
「何が来たの」
「主に服と下着ですね」
「やっぱりベッドがいるな。あと机」
「ベッドはいりません」
「布団派だから?」
「それもありますけど……わたし、昨晩みたいに、貴久さんと一緒に寝させてもらったらダメですか?」
「えっ、これからずっと?」
「はい」
「じゃあ、よっぽどベッドがいるな」
「え……」
「あれじゃちょっと狭いだろ。もう少し大きなやつに買い替えよう」
「いいんですか!?」
「約束の週末まで、おれを襲わないという約束をしてくれたらな」
「お、襲ったりしません!」
「本当に?」
「……多分」
「次の休みにベッドを見に行こう」
「はい!」
貴久は、先にシャワーを浴びてすっきりとしたあとに、用意された夕飯を食べた。リクエストに応じてくれた純和風のメニューは、体に優しいものである。その中の一品をすすりながら、貴久は言った。
「しじみの味噌汁とは豪勢だな」
「わかめとお豆腐にしようかなって思ったんですけど、冷凍しじみっていうのが売ってて、そもそもお買い得な上に半額のセール中だったので、つい買っちゃいました」
「ああ、そうだ、そうだ。その買い物なんだけど、今日の分はあとで返すから。あと、そのうち、美咲ちゃん用のクレジットカードが届くから、身の回り品はそれで決済するようにしてくれ」
「えっ、でも、それって、貴久さんの口座から落ちるんじゃないですか?」
「そうだよ」
「そんなのいけません。わたし、自分の生活費は自分で払いますから」
「それは絶対にダメだ。二人で生活するために必要なものは、おれが払う。そのくらいの甲斐性はある。これに関しては議論は無しだ」
「……分かりました」
「おれたちいずれ結婚するなら、家計管理は美咲ちゃんに一任するから、その予行演習だと思えばいいんじゃないかな」
「あっ……はい!」
貴久は、今日、婚約者がいるということを会社で伝えたというエピソードを話した。そうして、帰りに、それを全く信じていない女性の同僚に飲みに誘われたことも話した。
「その人、綺麗な人ですか?」
「美咲ちゃんほどじゃないよ」
「ひえっ」
「何だよ、ひえって」
「何でもないです、驚いただけです。そういうことよくあるんですか?」
「たまにね」
「全部断ってください!」
「了解」
貴久は、その日も美咲とベッドを共にした。美咲からは芳香が漂って、まるで、花を抱いて寝ているようだと、貴久は思いながら眠りについた。