七道一味 2023/11/03 22:15

【小説】ドリームパラダイス・その後……

※この小説には、「ドリームパラダイス」エンディングまでの
ネタバレの内容を含みます。


「ふう……一仕事終わり、っと…………」
 そう呟いて、青年──タクミはリビングのソファーに、どさっと腰を落とす。
「うーーん、面倒事を片付けた直後のスッキリ感、清々しさって格別だよなぁ……♪」
 窓から見える景色には、燦々と陽光が降り注ぎ、干したばかりの洗濯物が風にはためいている
今日は折角の日曜日だからと、朝から家中の掃除をして、溜まっていた洗濯物も片付ける事にしたのだった。
 もうじき昼という頃になって、ようやくそれらが終わり……タクミが次に何をしようかと考えつつ、大きく伸びをした時
ポケットのスマホからチャットアプリの通知音が鳴った。
『タクミ君、今なにしてる?』
「ユリちゃんからだ……えっと、『さっきまで家の掃除をしてて、終わったところだから暇だよ』……と」
 そう送ると、十秒も経たずに返信が帰ってくる。
『朝からお掃除してたんだ! とっても立派だよ!』
「そ、そうかな」
『それでね、私の方は今お土産物屋さんに居るんだけど、素敵なストラップを見つけたの!!』
『二つ買っておいたから、お揃いにしようね! タクミ君も、気に入ってくれるといいな!!』
「『ユリちゃんがそう言うのなら、僕が気に入らない訳ないよ! 楽しみにしてるね』……っと」
 タクミの彼女──大河内ユリは今週末、学校の友人女子達に誘われて大手のテーマパークへ、旅行へ行っている最中だ
校内でも冴えないタクミとは対称的に、美しく学業も優秀なユリは常に周囲から引く手数多で、彼女と二人っきりになる事さえ普通は難しい。
 それでもユリは、例えこうして離れている時にも……彼氏であるタクミへ小まめに近況を連絡して来てくれる
タクミにとって、それは何よりも幸福な事だった。
「ふふ……ユリちゃん、楽しんでるみたいだなぁ」
 彼が、送られてきた可愛らしいスタンプでの返信を、にんまりとしながら眺めていると
突然、背後から大声で声をかけられた
「おーーい、タクミ!! ”マスブラ”やろーぜ! マスブラ!!」
 驚きスマホを落としそうになるも、タクミは呆れつつ声の主に振り返った。
「す、スズラン……キミさぁ…………
いつから家に入ってきてたの? 呼び鈴鳴らしてないよね??」
「は? どうでも良いだろ、そんなの
細かい事イチイチ気にしてたら、ハゲるんだぞ?」
 不思議な銀髪に、褐色肌の生意気な表情を浮かべる小柄な女子──
スズランは、タクミの非難の視線を全く気にしない様子で応える。
「それより、何だよお前……スマホの画面見つめながら一人でニヤニヤしてさ
マジでキモかったよ、流石のボクでも引いたね」
「う、うるさいなっ! 勝手に人の家に入ってくるような子に言われたくないよ!!」
「フン、どうせ……お前の事だから、エロ動画でも見てたんだろッ?!
あ~~あ、お姉ちゃんに言ってやろ~~っと」
「違うから……」
 このスズラン、タクミには未だ信じ難い事だがユリの妹だという
優しく礼儀正しい姉に対して、なぜこのような妹が存在するのか 実に不可解だった
いや、彼女ら姉妹について不可解な点は、他にも有るのだが…………
 ともかく少し前までの清々しさは何処へやら、もうゲンナリしてきたタクミは
招かれざる客に なるべく早く、穏便にお帰り頂くにはどうすれば良いのかと考え出した。
「…………それで、一体何しに来たの?」
「だから、マスブラだよ! マ・ス・ブ・ラッ!!」
「マスブラ……ああ、はいはい」
 マスブラ──正式名称”大乱戦マスターズ・ブランディング”という
簡単な操作ながらも奥深い駆け引きが楽しめる、大人から子供まで人気の対戦アクションゲームだ。
「でも、ああいうゲームってわざわざ僕と二人だけでやるよりも
四人くらいの友達で集まってワイワイやるのが楽しいんじゃ……」
「……は、はあぁ~~!? このボクが、折角お前なんかのトコへ来てやったのに
なんだよその言い草はッ! お姉ちゃんに、タクミは冷たい奴だって
あることないこと吹き込んでやったっていいんだぞ!!」
「はぁ…………わかったよ、じゃあ先に僕の部屋へ行ってなよ」
「最初から、そう言えば良いんだよッ! フン!!」
 思えば、タクミがスズランとも知り合ってから暫く経つが、姉と違って学校へ通っている様子は無く
タクミやユリ以外の人と喋っているのも見たことが無い
以前ユリと共にレストランに行った際、彼女も一緒に付いてきたのだが……
自分で店員に注文を告げる事も出来ず、会計時には姉の後ろに隠れるように立っていた。
「………………」
 まぁ、そういう事なのだろう
背後に受ける生暖かい視線に気づかないまま、タクミの部屋へ向かうスズランの足取りは
心なしかウキウキしているように見えた。

 二時間後……
「だあぁッ!? くそおおぉぉ~~……!!」
「……また、僕の勝ちだね…………」
 はっきり言って、スズランはゲームが下手だ
タクミが真剣に相手をする場合は言うに及ばず、わざと手を抜いてやっても
勝手に自滅して負ける。
「も……もう一戦だ! もう一戦ッ!!」
 そのくせ自分が勝つまで止める気はないらしく、もうタクミは彼女より先に
自滅する事で勝ちを譲ろうかとも考えたが、そうしたらそれはそれで怒るだろう。
「ぐぅ、うううぅ~~~~ッ!!」
「……」
 タクミが記念すべき百連勝目を迎えた時、スズランはベッドにコントローラーを叩きつけた。
「さ……さっき、ボクの方が絶対先にボタン押してただろッ!
このコントローラーが壊れてるんだよ!! でなきゃ、お前なんかに負けるもんか!!
それに操作スティックだって、なんか指滑ってやり辛かったし…………」
(うわぁ……遂に、コントローラーの所為にし出したよ…………)
 この調子では、友達が居ないのも もっともである。
「お前のヤツ、貸せよッ! く……!!」
「わわ、ちょっと……やめてよ いきなり…………っ!!」
 スズランはタクミにしがみつき、コントローラーを無理やり奪い取ろうとするが
タクミはバランスを失い、二人共床に倒れ込んでしまう。
「うぅ…………」
「あいたた……だから、やめてって言ったのに」
「……ご、ごめん…………」
 さすがに消沈し、謝るスズラン
しかしこの時……タクミは気付いてしまう
自身の上に覆いかぶさるような体勢になっているスズランの胸が、
直ぐ眼前にある事に。
(こ、これは…………マズい……!?)
 普段はまるで、生意気な少年のような口調や態度で接して来て
身長もタクミより頭一つ分ほど低いスズランだが
その胸は決して豊かとは言えないものの、柔らかな女性の肉体としての魅力は
しっかりと備えられていた。
 一度それを意識してしまうと、数瞬の間に また別の感覚がタクミを襲う
対戦でエキサイトしていた彼女の身体から漂ってくる、不思議な香りは
汗臭さとも違い、良いとも悪いとも言えないが……脳を真っ白に染め上げられるような
錯覚を与え、心臓を高鳴らせた。
「うくっ……うぅ…………!」
 タクミは咄嗟に身体を捩らせ、少しでも危険な魅惑から逃れようとしたものの
運悪く……そのせいで今度は起き上がろうとしていたスズランが体勢を崩してしまう
「うお、ッ!?」
「んぶっ…………」
 そして顔面に勢い良く胸を押し付けられる形となってしまったタクミの思考は遂に停止する。
「んん、チッ……急に動いたりすんなよな! 危ないだろッ……!!」
 自分の事を棚に上げて、再びスズランが起き上がろうとした時……ある事に気づいた。
「…………ん? おい……おや? おやおやぁ~~??」
 態度を急変させ、意地悪な笑みを浮かべながら彼女は嘯く。
「タクミぃ~~? お前さぁ、ズルしてたんだな?!」
「ズ、ズル……?」
 まともに思考もできないタクミが聞き返すと、
「だって、そうだろ? 自分だけ……こんなトコに
”コントローラー”隠し持ってたんだから、なッ!!」
「!! あ、あぐぅぅっ!?」
 既に隠しようが無いほどに大きくなってしまっていたタクミのペニスを、スズランは
ズボン越しに膝でグリグリと刺激する。
「へへへッ……♪ ボクとの真剣勝負なのに、ズルだなんて……
とんでもない奴だな? お仕置きしてやるよ ザ~~コ」

〈続きは、有料プラン限定にて追記しています〉

【 500円支援 】プラン以上限定 支援額:500円

プランに加入すると、この限定特典に加え、今月の限定特典も閲覧できます 有料プラン退会後、
閲覧できなくなる特典が
あります

バックナンバー購入で閲覧したい方はこちら
バックナンバーとは?

月額:500円

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

月別アーカイブ

記事を検索