ぶるがり屋 2021/10/10 22:43

青天を衝け 30話 の感想

青天を衝け 30話
「渋沢栄一の父」の感想です。

青天を衝け | NHKオンデマンド
大森美香
2021/2/14〜
(C)NHK

青天を衝け

 まさに新章・明治編。
過去の苦しみを超え、新しい時代の情熱のままに突き進む!
の先にある、産みの苦しみと新たな戦いの始まりでした。
 苦しみ、歪み、衝突、情欲、最愛の父の死。
もう情緒がグチャグチャだよ!

 大久保利通に罷免されられた形ですが、ある意味栄一も、他者の幸せを奪う側に立っちゃってるのですよね。
今回は描かれていませんが、商才ない者、武で立つ者、権力に隷属する者など立ちいかなくなりますし。

 先に金額出して期待と方向性を示し、でも空手形なのと、少額だけど貧乏なりに確実な金額渡すのと、革命政府の形としてどっちが正しいかというと難しいですねー。
あと裕福で商売に励んだ豪農と、ギリギリの生活を領民も自分もやってきた薩摩藩下級藩士の違いも大きいかも(笑

 そんな国政の中の衝突・苦しみの最中、五代友厚との敵意と共鳴、西郷隆盛の苛烈さと儚さ、年経ての恋・浮気、何より愛し尊敬するとっ様の死。
心が… 心が苦しい……っ!

 栄一ととっ様。
人間の質が全く違う親子だけど、栄一はとっ様の誠実さ公平さを尊敬して止まず。
とっ様は栄一の奔放さと利発さ、情熱と行動力が可愛く尊いものだったのでしょう。
 お互いにお互いにとって、何より美しく染め抜いた藍だったのだと。

 成長と巣立ち。
もう、栄一を子供と厳しく叱り優しく受け入れてくれる、あの家はなくなったのだと。
力を失っていくとっ様の姿が、黒く大きい家、菜の花畑、年老いた家族たちの姿、その美しさがそう語っているように見えました。
 ああ、なくなったのだと。

 栄一の目指す国の姿は、とっ様のような生き方が、報われ、幸せになる世の姿なのだと考えます。
真面目に正しく、優しく厳しく誠実な、人を支え良いものを作る人が。

 ふと、前回の「平九郎の意思に反しても」は死者の意思を自分の行動の理由にしない、という意味でもあるのだと思ったのです。
栄一はこれからもきっと、とっ様の言葉一つ一つは裏切ることもあるでしょう。
例えば今回誇りとされた「天使様の臣」は辞めちゃう訳ですし(笑
 でも、平九郎にもとっ様にも、魂は裏切らない、顔向けできない生き方は選ばない。
それも確かだと思うのです。

 …浮気? まぁそれは、うん。

 今回好きなシーンは、五代友厚に国の形を問われて胸がぐるぐるし始めてる栄一の顔と、留学に心底嫌そうな岩倉具視です。
いやぁ、悩み苦しみ、血の通った人間たちだ。

 栄一は心の根っこは変わらなくても陣営は変えますが、同時に恨みもあんまり忘れませんし、五代を同志と認めるのは、「おかしろい」はまだまだ遠いでしょうね(笑
 大久保利通と岩倉具視は数少ない才能を認め合った古くからの同志ですから、あんなに友達っぽく頼む利通も、子供っぽく嫌がる具視も、お互いだけじゃないのかな。

 そして今や、西郷隆盛は誰にも本心を見せない、見せられない場所に居るような。
苛烈さと危うさだけでなく、そんな切なさと儚さを感じました。

 徳川家康の(この時点で十分強気な演出ですが)タブレットに、zoom廃藩置県は斬新で攻撃的な演出でした。
考えてみれば日本有史以降最大の政治機構の変革・権力収奪でですよね。
そして内乱の芽であり、栄一の唱える金と生活の保証が最大の保障策なのが理解出来ます。
 人は誇りと生活が奪われたら戦うしかないですが、誇りは形式的に、生活が十分に守られたら戦う程の理由にはなかなかならないですからね…
この後少しづつ時間をかけて削ることを考えると、遅延・分断策ではあるのですが。

 そこらへんの大改革が、短期で問題少なく進めてしまったことに、また多くの藩が、その藩主と武士たちの存在があったことを数十秒で見せた手腕に驚いたり。

 いやぁ、大河は面白い。

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