色仕掛け文庫 四巻 サンプル
こちらは先日発売された「色仕掛け文庫第四巻」に出させていただいた「コウジツの腕輪」というお話の一部になります。
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「さあ、どうぞ?」
「あ、え」
制約は成された。
ただこいつが、俺に魔法も何も使えなくなるだけの、圧倒的に不利な契約。
この腕輪を渡しても渡さなくても、もうこいつは一生、俺を害する事はできない。
そんな条件を、こいつは受け入れてしまった。
淫魔はくすっと笑って両手を開き、長い髪を揺らす。
大きく開いた胸元、深い深い谷間。短すぎるスカートはぴっちりと太ももに張り付き、むちむちの肌がそこから露になっている。
この身体が。
もういま、俺の思うまま。
「うふふ、どうしたの?」
「い、いや」
淫魔という珍しい悪魔にはずっと興味があった。
というより、淫魔に興味がない男なんていないだろう。
さっき手に入れたばかりのこの腕輪。おそらく希少価値も高い。かなりの良品に違いないが、こんな偏狭の洞窟で淫魔と遭遇するのと比べたら、どちらが幸運と言えるだろうか。
幸運?
い、いや。まあ。
珍しいことに違いはない。そうだ。
この腕輪も珍しいし、淫魔も珍しい。その両方を目にして、俺は相当ツイている。
おまけにこいつは腕輪を受け取る条件をちゃんと決めなかった。つまり俺は、本当に『満足するまで』こいつにこの腕輪を渡す必要はないわけだ。
そう、満足するまで。へへ。
「もう、仕方がないわね」
「……っ!」
ふわりと広がる髪。
花にも果物にも形容しがたい、甘い匂い。
しなやかな両腕が俺の頬を滑り、薄い翡翠色の瞳が光って、その美しさに足が縫いとめられる。魔物が迫っている、という本能的な危機感と、ついに俺は女性を体験してしまう、という漠然とした緊張と。息一つできないまま、俺の視界はぐいと引かれて、瞳から首、鎖骨、そしてその下へとなめらかに滑り、迫る予感と現実に声を上げる間もなく、俺はたぷりとソコに包まれる。
鼻先の埋まる肌の中。深い深い谷間の溝。
近すぎる暗闇。黒と肌色がゆあゆあと揺れて、はふりと自分の息が顔に返ってくる。まだその柔らかさを上手に認識できなくて、俺は小さく声を上げる。
「ん、んっ」
「うふふ」
たぷり。たぷ。
乳房を包む黒の衣装は想像以上に薄く、肌の温度が鼻先から頬まで伝ってくる。
波のようにたゆたう肌。ぱふん、ぱふんと寄せてはかえす。その肌触りは絹のようで、鼻や頬にしっとりと張り付く。
あふ。ああ。
おっぱい。が。おっぱいだった。
何かを考えようとして、いる、自分、は認識できたけれど、ただ、ふわんふわんの肌の中。急にぎゅうと包まれて、けれどそれは顔全体に分散してしまって、あごまで、ぜんぶ、ぷるぷるで、ぷにぷにで、ああ。
はふっと漏れた自分の呼吸音が、湿度の高い洞窟内に小さく響いた。
「もう、聴こえてないのかしら?」
「あ、え」
ぼやける目の前。温もりはいつの間にか消えていて、重い首をもたげると呆れた表情の淫魔が俺を見つめていた。
「触らなくてもいいの? って聞いたのだけれど。その様子だと、こういうの好きなんでしょう? ずっと見ていたものね、私のここ」
「あ、う」
「赤ん坊の方がもう少し会話ができそうねえ……。ほら、その腕のを外して、手を出して」
数瞬遅れて、俺は彼女の言ったことを理解し、もたもたとガントレットに手を掛ける。
あの胸を手で触れる、という感情と、魔物の目の前で装備を外すことへの危機感のようなものが合わさって、取り外すことに思いのほかてこずってしまう。
カシャン、カチャ。
「下はチェーンメイル?」
「え、あ」
「ちょっと邪魔なのよね」
体を寄せてきた淫魔が、アーマーとレッグの間に手を差し込んでくる。もぞっとした感触に快感が背中まで突き抜けて、俺は思わず腰を引く。
うん? と俺を下から覗く愉しげな顔。その薄緑色の瞳に目を奪われる。カチャンするるりとやけに小気味の良い音を立ててベルトが抜かれる。まるで衣類の構造まで完璧に熟知しているかのような手際に舌を巻く、暇もなく、下半身が外気に触れるような気配と、優しくソコを包み込む彼女の右手。
心臓を優しく掴まれたような感覚に、肌がざわざわとさざめく。
「……いつからこうなっていたの?」
「う、うるさいな」
「反応が早いのは期待してたからでしょう? ほらほら」
「ああ、あ、あ」
スカートのようにめくりあげられたチェーンメイルの下で、頑強な鎧の隙間から飛び出た弱点を、彼女の手が優しく扱く。
「ん~?」
「はあっ、あ、あふ」
にやにやした表情の彼女が、両腕をわざとらしく内側へ寄せた。盛り上がった胸が衣装からはみ出しそうになっていて、俺は彼女を見て、俺もまた見られていて、俺の抱えている感情の全てが見透かされているような笑みに、俺は言い訳をするように、あるいは投げやりに、そこへと飛び込んだ。
二度目の白い海は深く俺を受け入れる。
両側から自らに寄せるように掴む。掴もうと、する。けれど、指は何の反発もないほど簡単に沈み、溢れた乳肉は顔のあらゆる溝にみちみちと埋まっていく。
むにゅむにゅと溶けて、隙間の無い幸せに埋もれて。
んああ。
ああ。
「大きな赤ちゃん。うふふ。でもこのままじゃ、おっぱい飲む前におねむになっちゃうかもしれないわねえ」
下半身を襲う刺激が次第に強くなっていく。
俺はどうしようもなく彼女の乳房にしがみついて、形のない肌色の中でもがき続ける。
「ほーら、ちゅーちゅーしなくていいの?」
促されるままに、俺は夢中で彼女の衣装をズリ降ろす。
真っ白な肌の、芸術的な曲線と影。
その中心でツンと主張する朱色の突起と、それを縁取る控えめな乳輪。
考えるより先に、口が吸い付く。
「ん、んんふ、んんっ」
「あらあら」
口の中の突起に全身がカッと燃え上がる。
唇が止まらない。舌が止まらない。
こりこりの感触も、鼻先が埋まるぷるぷるの肌も。
甘い甘い匂いも。
「そんなに興奮しちゃって大丈夫かしら? ほら……」
「んあはっ、あっ、……ん、んんう」
手の動きを激しくされて、思わず離れた口を、もう一度乳房に埋める。
肌色の中。もがきながら、唇で探す。舌で探す。鼻の傍に見つけた弾力を獣のように追いかける。
また唇で、捕らえて、ああ。
ああ。
音を立てるほどの、激しい扱き。
「――――――、――――」
彼女が何かを言って、くすくすと笑った。
聞こえるはずもない。理解できるわけがない。
喉が熱い悲鳴を上げる。
せっかく捕まえたおっぱいが、初めてのおっぱいが。
行為が、彼女が。
あまりにえっちすぎて。耐えられない。
もっとしたいのに、もう。ああ。
「んっ――――――」
びゅく、びゅくびゅく。
彼女の手に勢い良く精液が解き放たれていく。
それでも彼女の手は止まらない。止めてくれない。
ああ……。