ぐらしゅぴMk-Ⅱ 2022/10/31 08:00

映画「いのちの停車場」

映画「いのちの停車場」

キャストが豪華すぎたのでキャスト頼みで内容が薄いだろうと軽い気持ちで観てしまっていた日本映画なんですが、気が付けば2時間画面に釘付けになっていた映画です。

物語は、
いろんな理由で実家の父の所の診察所に東京から転勤になった定年前の凄腕医師のヒロイン。
そこで"命をただ延ばすだけが医療ではない"という新しい価値観に気付く。
それだけで1本映画が成立しそうな物語です。本編だけでも凄く泣けます。

しかし、伏線として実家の父との物語がまた重たすぎるんです。
「妻は意識もないまま点滴に繋がれて死んだ。俺はあんなのは嫌だ」
つまりは"この物語のラストは主役が親を毒殺しますよ"とわかりやすい伏線を提示しているんですね。

ここでお茶の間ドラマならヒロインの演技力に頼り切って死んだシーンで泣きながら父の名前を叫ぶのがお約束だな思ったんです。

しかし、最後のカットでお父さんと朝日を眺めるシーンがあった後にヒロインの女性が朝日を見ながら泣き崩れます。

てっきり"父親に注射をしてしまった罪悪感から"だと思ったんですが、
よく巻き戻して見るとケースの中には注射針に満タンに入った何かの薬品があります。
その隣にはお父さんがあれほど嫌と言っていた"点滴"が立て掛けてあります。

綺麗な朝日を"命の輝き"という最高の皮肉にして、
優秀すぎる医者だからこそ苦しむ親を殺してあげる事すら出来ないBADENDという実際に見るとなかなか衝撃のラストです。

たぶん普通の観客は実の親を毒殺してしまった罪悪感で泣いてると見えるんでしょうけど、それよりも本人にとっては地獄ですね。

さらに良いのが凄く丁寧な作りの映画なのに大切なシーンの説明はあえて全部ないんですね。
役者の演技、セリフではなく画面の中に人間の残酷さを描いているのが素晴らしい作品だと思いました。

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