行雲流水/灼熱の砲撃 2021/03/09 23:12

BLについて考えてみた

どうも、美少年を○すことでしか得られない栄養素で生きている行雲流水です。

本日、『私たちがトキめいた美少年漫画』という本を読み、ふと何故BLが生まれたのかについて私なりに考えてみました。
BLがまだJUNE、耽美と呼ばれるよりもさらに前、金字塔として知られる作品はもちろん、『風と木の詩』と『トーマの心臓』の二大巨塔です。
『風と木の詩』の作者である竹宮恵子先生は風木を執筆する前の時期に、「男女の恋愛に関しては読めない少女たちが少年同士の恋愛であれば読める」といった反応があったことについて後に語っています。
少女漫画というのは基本的に読者である少女たちが共感を持ち、その作品を楽しめるものであるという場合が多いので、主人公は当然少女であり、その周囲には当時の女の子たちの憧れとなる男性キャラクターが登場し、少女たちにとって楽しめる展開、特に恋愛をテーマにしていることが多いものです。
ただその一方で、男女の恋愛というものはどうしても生々しさが付きまといます。
結婚や子供ができるといった分かりやすいものが存在し、社会的にも夫、妻という肩書ができます。
ましてや風木やトマ心が描かれた70年代は妻は夫に従属するものという考え方が今よりも一般的だったことを思うと、恋愛と言うのは少女たちにとって憧れるようなものであると同時に社会的な契約などの現実も伴うものだったかもしれません。
男女が恋愛すれば当然性行為もある、子供だってできる。
そうした生々しさに対しての思春期の少女たちの潔癖な嫌悪感もあったかもしれません。
これらの理由から「男女の恋愛は読めない」という少女が「男同士の恋愛は読める」
という結果につながったのかもしれません。
これらの理由から、私は初期の少年愛作品は「ジェンダーの役割を解放された少女像としての少年」として好まれたのではないかと考えます。

私の場合、私自身がバイセクシャルのためヘテロセクシャルの女性とは少々違うのかもしれませんが、「女に比べて男はムダ毛が多いし、身だしなみに気を使ってない人が多くて汚い」「男と女を比較した時、女の方が自分のイメージする美しいものに近い」という理由で高校時代に腐女子に目覚めるまで小中学時代の私は男性よりも女性が好きでした。
しかし、その一方で美少年を好きになったのは小学三年生の時、『テイルズ オブ デスティニー』にはまった時です。
当時、イラストのメイキング本として出された『色彩王国2巻』のいのまたむつみ先生の作品として紹介されたゲームの立ち絵のリオン・マグナスに一目ぼれしたのです。
それまでは『キャンディキャンディ』のアンソニーや『セーラームーン』のタキシード仮面といった主人公の相手役となるヒーローキャラクターが好きだったことはあっても、小学校入学時には圧倒的に女性キャラが好きだった私が、リオン・マグナスにはまった途端に美少年キャラにドはまりしました。
今にして思えば、女性的な少年が好きということは当時の私にとっては美少年は少女の代替としての好きだったのかと思います。

では、それらの少年愛が今日のBLに変化したのはいつ頃でしょうか。
私の記憶にある限り、バブル崩壊直後の作品はまだ少年愛であったように思います。
BL雑誌などもあり、BLゲームが発表される中、その絵柄は線が細く、全体的に中性的な雰囲気があり、攻めと受けというジェンダーロールがかなり明確にありました。
攻は男らしく強引で力強い、受は小柄で可愛らしいというのが2000年代前後のBLまでには多くみられました。
この頃の攻めを「スーパー攻様」と呼び、それを題材に現代の目線で面白く描いている作品として『スーパー攻め様と時をかける俺』がありますが、こういう攻いたなあ、と笑いながら読んでいました。
ただ、この頃は少女漫画でも『快感♥フレーズ』内で描かれているヒーローもこういう強引で恋愛パートでいきなり甘いセリフを吐いてくるなど、当時の少女たちの憧れだったのでしょう。
直近の少女漫画でも『ハニーレモンソーダ』という作品で普段は塩対応で回りにも冷たいヒーローがヒロインに対してだけ優しくて甘い言葉をかける、というものを読んでいますので、BL漫画の文法は少女漫画がベースにあるのでしょう。

ただその一方で、2000年以降のBLは「筋肉受け」「ヒゲ受け」「強い受け」といった傾向がかなり多くなり、攻めに関しても2010年ごろから「モブレ○プ」というジャンルが男性向けから輸入されてきました。
これまで少女の代替品であった美少年や美青年ではなく、男としてのキャラクターの同性愛が描かれだしたのはこの頃ではないでしょうか?
作品で言えば『咎犬の血』、『鬼畜眼鏡』など男性同士であることが外見的にもかなり強調されており、この辺りから耽美、JUNE、少年愛と呼ばれていたジャンルから決別したBLとしての発展がしてきたように思えます。
この間に何があったのか考えてみると、90年代の頃の少女たちの憧れの職業といえばカリスマ美容師、キャバ嬢などがあります。
職業の違いはありますが、90年代以降の女性は男性との恋愛を主題とするより、一人の人間として独立した生き方をするようになっていたように思えます。
もちろん恋愛ものというジャンルは無くなってはいませんし、受けのキャラでもショタキャラが相手なら攻め、という立ち位置になるのはBLでも変わりません。
けれど、90年代以前に比べてジェンダーロールが薄れてきている部分はありました。
強い女性、社会進出した女性というのが一般的になってくるに従い、それまで「少女たちのアバターであった美少年」という受けのジェンダーロールも薄れ、「強くてかっこいい受け」という像に変わっていったのかもしれません。
そして更に2010年頃になると流行っているジャンルも『黒子のバスケ』のようなスポーツジャンルが連続し、アニメでは『タイガー&バニー』といった骨太な男性キャラクターが活躍するジャンルになっていきました。
古くは『キャプテン翼』の頃から少年漫画の腐向けジャンルは存在していましたが、少女漫画の文法に少女漫画の男性キャラのような攻めとヒロインのような受けというのが当たり前だったBL界隈でも骨太で逞しく、内容もかなりハードなエロを描写したものが増えました。
かつて竹宮恵子先生の風木がかなりハードな同性愛作品として扱われていた頃の作品でもレ○プシーンなどはありましたが、それらもあくまで体が重なっている程度。
耽美ものではセックスシーンはさほどハードに描かれないというのが当たり前でしたが、2010年頃からBL界ではセックスシーンに重きを置いた作品がぐんと増えたように思えます。

こうした内容の変化はpixivなどにより今までBL、男性向けと大きく分けられていたジャンルの壁がかなり薄いものになり、男性向けも読む女性がぐんと増えたことも関連しているように思えます。
逆に男性向けでもゲイ向け作品などとは別に、少女のように可愛い美少年が犯される「ショタ」というジャンルが確立されていき、「おねショタ」など従来の「男性に犯される女性」「受け身な女性」の役割が少年に置き換えられることが増えました。
近年のBLのエロシーンは私自身も含め、男性向けの作品の描写を参考にしているものが多く、またパロディネタ程度であればAVのワンシーンがそのまま使われることすらあります。(亀甲縛り 蕎麦打ち)
2000年以降の強い男性的な受け、ハードなエロシーンの増加は社会的にジェンダーロールが薄れつつある、男性向けジャンルとの垣根が曖昧になりつつある、という部分が関連しているように思えます。

私自身の作品だと『騎士団長凌○』のようにがっつり筋肉質で屈しない男を○す作品などはBLではなくゲイ向けなのでは?とジャンル分けに困る時もありますが、そういった部分もBLというジャンルが非常に幅広いジャンルへと変化していったことに由来するのでしょう。

反対に「オメガバース」という作品はどうなのでしょうか。
こちらはΩとαという性別の役割が明確にあり、また作中でも原則としてΩはαよりも劣位であり迫害されておりαに従属する、αは優秀であり優遇されておりΩを孕ませることができる、というジェンダーロールが明確に存在しています。
作品にもよりますが、原義的なオメガバースではα×Ωという絶対の不文律があり、そこにはかつての「強い攻め×可愛い受け」の構図があります。
これらは現実のジェンダーやセックスとは別にジェンダーロールが存在している世界というある種のファンタジーですが、その一方でかつての耽美ものや少年愛とは全く異なるものだと私は考えます。
「オメガバース」を好む人は70年代の耽美もののような「ジェンダーロールから解放された少女の代替像としての少年愛」を好んでいるのではなく、女性が性的なものに対して開放的になることが許された環境であるからこそ「オメガバース」というジャンルが好まれているように思えます。
かつて、少女たちは男女の恋愛には結婚や子供ができるという結果がついているという生々しさによる嫌悪感があったため、「少年愛」を好む層がいた、という風に言いましたが、今度は逆にそういった生々しさを好むことが出来るほど少女たちの性に対しての感情がおおらかになったゆえに「オメガバース」が受け入れられたと考えています。

さて、長々と語っていましたが、これらはあくまで私が個人的に感じたことや考えたことであり、もちろん別の観点からみたときに全く異なる意見があることもあると思います。
最後に語りたいことはただ一つ。
「美少年が犯されることでしか得られない栄養素」で私は生きております。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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