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媚薬の記事 (2)

柱前堂 2022/07/22 23:13

末路

ラウンド終了のゴングが鳴ると、マリの発情しきった体はぽつんと残された。
しばらく立ちつくしていたが、やがて体の疼きが満たされることはないと悟り、ふらふらとコーナーへ戻った。

「ふっ……ふぁっ……はぁーっ、ふーっ、あっ……んんふぅっ」

セコンドが用意したスツールに座っても、熱を帯びた吐息はやむことがない。
インターバルのたびに量を増して塗り込められる媚薬と、累計200発を越えるマシンガンジャブが、マリを淫乱媚肉サンドバッグに変えていた。
もはやマリはイくことしか考えられず、このリングに立った理由すらも思い出せない。

「あーっ、あっあっあっ」

なんとかイこうと、恥も外聞もなく大股を開いて股間を触る。だが、ボクシンググローブを嵌めた手では、表面を撫でるのがやっと。そんな甘い刺激では、このカラダに溜まりに溜まった快感を爆発させることはできない。
むしろ、もどかしい思いが積もるばかり。既に濡れそぼったトランクスから、愛液が染み出してくるだけだ。
股間では果たせないと分かると、今度は乳房を揉みしだく。だが、どんなに激しく揉みあげても、グローブを嵌めた手では乳首をつまむこともできない。
今やマリにとってボクシンググローブは闘うための武器ではなく、勝手にイかないようにするための貞操帯だった。

「うーっ……ふっ、はぁっ、ふーっ……んぷっ!」

そう、本来この邪魔っけなボクシンググローブは武器。そしてマリは、自分がここまで昂った原因を思い出した。
自分の腹を殴りつける。自分の頬を殴り飛ばす。対戦相手と同じようにしたのに、全然気持ち良くならない。
威力が全然足りない。腰の入らない手打ちだからというのもあるが、そもそも発情しきったマリがまともにパンチを打てるわけがない。
この試みもまた、自らを虚しく愛撫する結果に終わった。

「ふーっ、うーっ、ふふーっ……んごごっ!」

万策尽きて熱い吐息を繰り返すばかりのマリの口に、マウスピースが突っ込まれた。
厚めに作られているマウスピースには、媚薬がべったりと塗られている。噛めば潰れるほどに粘り気が高い媚薬は、マウスピースの歯型のみならず側面にも垂れ落ちるほどに満載されている。口腔内に留まってラウンド中に少しずつ効果を発揮するよう設計された薬を、意識朦朧としたマリは力強く啜ってしまう。
口に触れた異物を、乳首を吸う赤ん坊のように吸いあげる。臭いはないがほのかに甘ったるい媚薬を、舌でさらう。
快楽に蝕まれたマリの体は、反射的に刺激を追ってしまうのだ。

「はぁ……っ、あふっ、んふぅ……っ!」

たちまち、体の疼きが一段と酷くなる。
全身に回った快感は、もはや火に炙られているのと大差ない苦痛だった。この刺激から解放されるなら、なんだってする。マリはそれしか考えられない。

セコンドはマリの痴態には構わず、てきぱきと媚薬ワセリンを体に塗りつける。
頬、耳、鎖骨に塗り広げ、乳房には揉みこむように万遍なく。すっかり柔らかくなったお腹にも念入りに。
その指の動きは念入りな愛撫でもあり、マリはますます悲鳴じみた喘ぎ声をあげる。

そうして、マリにとって地獄のようだったインターバルが終わる。
スツールから立たされ、ゴングが鳴っても、その意味を理解できていないマリはされるがまま。

だが、対戦相手が近付いてくると、曖昧な表情が歓喜に染まる。

どんな目に遭っても絶対殴り倒したかったアイツ。それはマリに最高の快楽を与えてくれる、唯一の救いだった。

柱前堂 2021/01/23 23:58

地下ボクサーの媚薬を吸い出す

短いインターバルの間に、出来るだけのことはやった。ユキの呼吸はいまだ熱を帯びて切なげだけど、何もしないよりはずっと落ち着いた。

けれど、ここからが勝負だ。運営スタッフに渡されたマウスピースを、目の前に持ってきて眺める。
新品の白いマウスピースには、べっとりと半透明の薬が塗りたくられている。地下ボクサーを発情させ弱らせる、即効性の媚薬だ。
ラウンドのたびに新しく塗り直されるこの媚薬マウスピースを、私がユキに咥えさせないといけない。

「ユキ、口開けて」
「ん……」

ユキの唇と唇の間に、乾きかけて粘度を増した唾液が糸を引く。5ラウンドに渡って殴り合い、疼きを抑えこんだユキの体は限界が近い。そこに媚薬を盛ったマウスピースを咥えさせるのだ。
ユキの口にマウスピースを押し込む。上の歯にマウスピースをあてがうと、溢れた媚薬がにゅるっと押し出されてくる。歯茎に触れた媚薬に早くも反応したのか、ユキは口を閉じて私の指をしゃぶり上げる。マズい、こんなに昂っているなんて。

慌てて指を引き抜くと、ユキは切なげな目で訴えてくる。それに応えて首に手を回し、ユキのねだるようにもぞもぞする唇にキスをする。
唾液を送り込み、媚薬が溶けたそれを吸い上げる。マウスピースに盛られた媚薬を削り落としたりするのは反則だが、一度口に入れてしまえばそれを吸い出すのは自由。少しでも地下ボクサーの負担を減らすための、セコンドの最も重要な仕事だ。

マウスピースを揉み洗いするかのように舌で舐め回し、媚薬を少しでもこそげ取る。甘くピリピリする味は本能的な警戒心を煽るけれど、それこそユキの口に残してはおけない。精力的に舐め取り、吸い上げなければ。

だというのに、ユキの舌が絡みついてきてうまく動けない。艶かしく動く肉塊が、情熱的に私の舌を愛撫し、締めつけ、挿れる穴を探して舐め回す。激しく動き回る私達は、柔らかい唇に覆われた結合部から唾液を漏らして口角を汚す。
ユキ。ユキ。ユキ。求められて熱が移ったかのように、私もユキの口腔を舐め回す。二人の舌がダンスのように縦横無尽に、溶けたマシュマロみたいにべっとりと、絡み合って一つになる。

突然肩を引かれ、ユキと引き剥がされる。キスに夢中になってセコンドアウトの合図にも気付けなかったのだ。ユキに言葉をかけることもできず、運営スタッフに引かれてリングを降ろされる。

一人残ったユキの背中はふらふらとして頼りない。リングの上で闘うことを忘れ、今にもオナニーを始めてしまいそうな上気した頬。
ボクシングで劣勢に立たされたユキは、運動量が増え受けたダメージを回復させるために血流が増えた。それで媚薬の効きが良くなると、動きが落ちてさらに殴られる悪循環に陥っていた。地下ボクシングで望まれる一方的なサンドバッグショー、その今日の犠牲者に選ばれてしまった。

きっとユキはこのラウンドは保たないだろう。まだ余裕のある相手に滅多打ちにされ、苦悶と快楽の表情を晒してノックアウトされる。その姿を見せつけられたとき、ユキ以上に媚薬を飲んだ私もイッてしまうのだ。

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