スコムスscomscroll 2021/05/30 18:00

XCOM同人小説SCOM 本作 3-2 エイミ。救出後

昼過ぎにちょっと眠気が襲ってきそうな午後。
開いたままの医務部のドアから赤いショートカットと白いワイシャツの襟を激しく揺らしながら、緊迫した表情のエマが入ってくる。

エマ:は、博士!! 博士いる? エイミが! エイミがああ!!!

奥の治療室から短い黒スカートと手術用のティシャツの上に白衣を羽織ったヴァレンがひょっこりと頭を出してきた。

ヴァレン:エマちゃん、どうしたの?

夢中で走ってきたせいで巻き上げられしまったスカートの裾を整えながら、エマは苦しい呼吸を頑張って抑え込む。

エマ:エイミが、はあ、研究部に監禁されたかもしれない!

ヴァレンの目が丸く開いて、治療室から慌てて出てくる。

ヴァレン:どういうこと? 落ち着いて説明してごらん。

ヴァレンはエマを椅子に座らせて、自分はその前のデスクにお尻をかけて立つ。
エマは手を胸に当てて深呼吸を数回してから、今日まで起こった出来事を早口ながらもはっきりとした言い方で説明してくれた。
この前、軍曹である2人の男に食堂で絡まれたこと。
任務の後、浄化処置機で治療を受けてから、エイミが酷く落ち込んでいたこと。
エイミの部屋で、以前エイミに絡んできたマーティンという軍曹とエイミが口喧嘩をしていたこと。
最近、男の兵士たちの中でエイミが出てるという変な映像の話が回っていること。
そして、エイミが昼ご飯を食べた後、1人で研究部に向かったことまで。

エマ:研究部って、アタシもそうだけど、一般兵士が普段寄るところじゃないよね! しかも1人でさ! 無線も繋がらないし、心配なんだけど、研究部に聞いてみたら、相手してくれなくてさ!!

ヴァレンがエマの肩に両手を乗せる。

ヴァレン:分かった。そういうことなら、頼れる娘がいるわ。ちょっとまってて。

手に持っていたタブレットにSCOM全員のリストを表示させたヴァレンは、オリビアという名前をタッチすると、白衣の胸ポケットに入っていた小型のインカムを耳にかける。

オリビア:はーい。博士。何の用?

無線の向こうから、だるっとした女の声が返ってきた。

ヴァレン:オリビアちゃん? 久しぶり。実はね…

落ち着いた大人らしい口調でエマから聞いた話をまとめて伝える。
その隣ではエマが流石と言わんばかりの目線でヴァレンを見あげている。
簡潔に説明を終えると、オリビアはしばらく間をおいてから返事を返した。

オリビア:なるほどね。アイツ、ついにやっちゃったのか…キモいヤツだからそのうち事故るって思ってたけど。じゃあ、データ関係のことと、こっちのことは私が何とかするから、博士は私の指示通りに動いてもらえる?

ヴァレン:うん。いいわよ。教えて。

オリビア:本当は私が今すぐにでも部長の実験室に行って蹴飛ばしたいとこだけど、ロックもかかってるし、こいつらの映像を処理しておくにはどの道ちょっと時間かかりそうだから、誰か他に頼れる人を連れてきて。

ヴァレン:エマちゃんと一緒だけど。機械に詳しい娘だわ。

オリビア:エマ? いいね。それと、部長ってあんな変態バカだけど、一応男だから、万が一の時、力で抑えられる人もいた方がいいな。誰かいる?

ヴァレン:それなら、ケイリちゃんも連れて行くわ。

オリビア:おお。大尉か。頼もしい。じゃあ、今から話す通りに入ってきてちょうだい。

ヴァレン:うん。分かった。うんうん。


研究部のコンピュータ室を通って、スライドドアを通ると横に伸びる廊下に7つのドアが並んでいる。
オリビアはすぐ近くにある中央のドアを開いて、後ろについてきた2人の女性に手招きをしてみせる。

オリビア:ここが研究部の管制室。という名の休憩室みたいなとこだけど、今は誰も入って来るなって言ってあるから、気楽にしてていいよ。適当に座って。

オリビアは長デスクの側に置かれた椅子に深く座ると、組んだ足をデスクの上にあげて、背もたれに身を預ける。
彼女のすらりとした長い脚の綺麗な肌を煽る肌色のパンスト。組まれた太ももの間から純白の下着がもろに見えてしまうけど、オリビアは全く気にしていない様子だ。

エイミも近くの椅子に腰を下ろす。
エマは壁際に備わったティーマシンから3人分のお茶を入れる。
2人もオリビアのやんちゃな行動や態度には特に驚かない。

エマ:あのヤンキーが生物学の修士までとって、ここで研究員としてエイリアンを解剖してたなんて、こんなこともあり得るんだね。

エイミ:あはは、でもオリビアって怖そうな印象だったけど、実際に不良な子達とは関わってなかったよ。

オリビアはアゴに手を当てて、相変わらずだるっとした声で話す。

オリビア:高校の勉強がつまんなさすぎて好き勝手にしてただけだよ。私、頭は悪くないからね。エマほどではないけど。

2人分の紅茶をオリビアとエイミの前に置いて、エマは自分の紅茶が入った銀色のティーカップを持ったままゆっくりと座り込む。
オリビアはデスクの上に乗せていた足をさっと下ろして、ティーカップを唇に運んでは少し啜る。

エイミ:ありがとう、エマ。あの…タイソン部長はその後どうなったの?

両手を添えたティーカップに視線を落としたまま、エイミが質問した。

オリビア:あのゲス野郎は独房に入られたわ。ただ、あの中でも研究を続けること自体は許されたらしいから、アイツにとって大した罰じゃないと思うけど。頭狂ってるのは確かだけどね、天才ってことも否定できないんだよな…あ、ゲスな軍曹共はどうなったの?

オリビアは背もたれに寛いで頭は後ろに傾いたまま、目線だけをエイミの方に向ける。

エイミ:それが、ヴァレン博士が上層部に話してみたけど、証拠不十分で有耶無耶にされたって…

エマ :全く。人員不足なのは分かるけど、上層部ってこういうことに甘いんだよね。ムカつく。

エマは紅茶を一口啜ると、イラついた手つきでカシャンと音を立てながらティーカップをソーサーの上に戻す。

オリビア:私もそれはムカつくけど…仕方ないのも事実だからね。エイミ。悔しいだろうけど、元気出してね。後、何かあったら1人で悩まずに相談してよ。私、とりあえずは臨時だけど、部長代理だから、力になれるからね。多分。大体のことは。

エマ:えっ!? オリビアってもうそんな立場なの??

エマも、エイミも、今の話には少し驚いたようだ。

エイミ:そういえば、オリビアっていつからSCOMで働いていたの? SCOMに入る前は何してたの?

オリビア:ここに来たのは1年前くらいかな…その時はまだSCOM自体が出来上がってすぐだったらしいから、私って意外と初期メンバーの内に入るんだよね。

話を止めたオリビアは少し眉間に皺を寄せる。

オリビア:で、その前はアドヴェントの遺伝子研究所で働いてた。末端だったけど。

エイミ:あ、アドヴェントの研究所って、エイリアンの…

紅茶を一口啜ってから、オリビアは相変わらずのだるっとした声で答えてくれる。

オリビア:そう。大学院を出て、入った就職先が人間の遺伝子を研究するエイリアンの研究所だったんだよね…


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