大決壊!~おもらしカノジョが妊娠するまで2~
いつもあたたかいご支援ありがとうございます!
今日は金曜日なので小説を更新する日です。
※この小説は、順調にいけば今年の5月に配信を開始する同人誌の小説です。
また、今年か来年の暑くなってきたころか寒くなったころか、僕が面倒臭く感じないときにブログのほうで無料公開していく予定ですので、バックナンバーを購入するさいはご一考頂けたらと思います。
なお、めんぼーさんに描いてもらったラフは、無料ブログには載せる予定はありません。
「やっぱり苦手だよなー」
独り呟いたのは、大和だ。
頭のなかにいるのは、もちろんスバル。
今日はあの氷のような碧眼で睨み付けられてしまった。
たしかにうなじに見とれていたのは悪かったと思うけど、それにしたって睨んでくることはないだろうとは思う。
(嫌なことはさっさと忘れますか)
心のなかで誓うと、大和は歩調を速めていく。
帰宅部の大和は、学校が終わるとさっさと家に帰ってゲームをすることにしていた。
嫌なことがあったら、楽しいことをして忘れるに限る。
そんなことを考えながら大和が家路を急いでいると。
ぽつり、
不意に見つけたのは、地面に落ちた一雫。
その雫は、点々と足跡のように続いていた。
「なんだ、これ」
常識的に考えたら、誰かが飲み物をこぼしたのだとか、考えるのが普通なのだろうか。
だけどそれにしては、不自然すぎる。
一気にこぼした感じじゃなくて、少しずつ歩きながらこぼしているような、そんな感じだ。
一体、誰がそんなことを?
視線を先に進ませていくと、点々と落ちる雫は、影になっている細い路地へと続いているようだった。
それはささやかな好奇心を刺激するには十分なものだった。
「大丈夫。ちょっと覗くだけだから」
自分に言い聞かせるように呟く。
影になっている路地を、少し覗くだけ。
大丈夫。
たったそれだけで変わる運命なんて、そうそうあるはずないのだ。
ちょっとした好奇心で細い路地を覗き込み――、
しかし、大和はそこで繰り広げられている事態に眉をしかめてしまった。
「……えっ?」
思わず短い声を上げてしまう。
なにしろ薄暗くなった路地には、一人の少女が膝をついて背を向けていたのだ。
艶やかな金髪のツインテール。
その真っ白なうなじは見間違いようがない。
いつも教室で自分の席から眺めているスバルの華奢なうなじだった。
だけど、そんなスバルが、なぜこんなところに?
しかも膝をついて、動けなくなっているようだ。
いったい、なんで?
(……んん?)
大和がその異変に気づいたのは、最初のクエスチョンが浮かんでから数秒後のことだった。
スバルの足元に、大きな水溜まりが広がっていたのだ。
――飲み物でもこぼしたのか?
一瞬、そう思ったけど、すぐに違うと理解する。
なにしろ大和の鼻孔を刺激したのは、
もわ……っ。
それはごまかしようのない、ツーンとしたアンモニア臭だった。
ただ、男のものと比べると、角が取れた柔らかい尿臭。
そして水溜まりは、こうしている瞬間にもじわりじわりと大きくなっているようだった。
しゅいいいいいいいいいいいい……。
どこからかくぐもった水音が聞こえてくる。
その発生源は……、なにを隠そう、スバルの股間だった。
スカートを穿いたまま、そして更にはショーツを脱ぐこともできていないのだろう。
くぐもった水音だった。
(お、おもらし……?)
そのことに気づくまで、更に数秒の時を要した。
なにしろ、女の子がおしっこをしているところを見るのは初めてのことだったのだ。
どうしよう。
ここは見て見ぬ振りをするのが賢いのだろうか。
そう思って踵を返そうと思うけど、心のなかのささやかな良心が『それは違うだろ』と引き留める。
迷うこと数秒。
「スバル……、いや、ウォルトン、さん……?」
小さく呼びかけると、たったそれだけで、ビクンッ、スバルは背筋を気の毒なくらい痙攣させて、身体を縮こまらせた。
それでもおしっこを止めることができないのだろう。
しゅわわわわわわわわわわ……。
気まずすぎる沈黙のなか、間抜けすぎるおしっこが漏れる音だけが響き渡っていた。
スバルを中心として暗い水たまりが広がっていき、やがて止まった。
それでも、スバルは身動き一つせずに、小さな背中をこちらに向けたままだった。
ただ、ツインテールにされて剥き出しになっているうなじが、湯気が出そうなくらいにピンク色に染まっていた。
「あ、あの……、ウォルトン……、さん?」
沈黙に耐えきれず、もう一度呼びかけてみる。
返事はない。
その代わりに、
「ううっ、ぐす……っ」
かすかな。
ほんのかすかにすすり泣く声が聞こえてきた。
どうやら……、というよりも、確実に泣いているようだ。
こういうとき、どうすればいいのだろうか?
迷っているはずなのに、口だけは勝手に喋り出していた。
「だ、大丈夫、か……?」
言葉にしてみて、あまりの迂闊さに取り消したくなる。
どう見たって大丈夫な状況には見えない。
その証拠に、スバルはこちらに背を向けたまま泣き続けていた。
スバルの小さな背中は、言外に『ほおっておいてよ』と、訴えかけてくるようでもある。
だけど、目の前で困っている人がいるというのにスルーできるほど、大和は器用ではなかった。
それにいまここでスバルを見て見ぬ振りをしたら、明日学校でどんな顔をして会えばいいのだろう。
「ウォルトン……、いや、スバル……、早くしないと誰かくるかもしれない。そ、そうだ。タオルあるから良かったら使ってくれ……って、今日は体育の授業が潰れたから未使用のタオルだぞ、一応。あー、でも洗濯したとはいえ俺が使ったタオルなんか使いたくないということなら無理にとは言わないけど」
とっさにカバンから取り出す。
だけど直後には男が持ってるタオルなんか使いたくないだろとおもって引っ込めようとして――、だけどもしもここでタオルを引っ込めたとして、そこからどうすればいいのかと思い当たって、結局のところタオルを差し出したままで大和はフリーズしてしまう。
そのままでいること、たぶん5秒くらい。
細く風通しの悪い路地に、気まずすぎる沈黙が尿臭とともに漂う。
沈黙は、スバルの消え入りそうな声によって終わった。
「使い……たい。きみのタオル、汚いなんて思ってないから」
「えっ?」
意外すぎる一言だったのと、小さな声だったから聞き取れなかったから、大和は聞き返してしまう。
だけど返事を待つのは野暮というものだ。
「ん。使うんなら、ほら」
「……でも、きみのタオルを汚してしまう」
「そんなこと言ってられる状況でもないだろ」
「……あり、がと」
それでもやっぱり恥ずかしいのか、スバルはこちらを振り返らずに気まずそうに後ろ手にタオルを受け取ってくれた。
それはいつも一つ前の席に座っているスバルと、プリントのやりとりをしているときのように。
「あぁ……スカートまで濡れちゃってる……ううっ」
タオルを受け取った涙声で呟きながら、スバルはおもらししてしまった恥水を拭っていく。
幸いなことにタオルは水色だったから、おしっこの色は目立たないはずだ。
(って、あんまりジロジロ見る気は失礼だよな)
そう思って、回れ右して待つことにする。
このまま帰ったほうがいいかなと思ったけど、もしも誰かが通りかかっておもらし処理中のスバルを見つけたりなんかしたら大変だ。
(……待ってたほうがいい、か……)
細い路地の入り口に立ち、スバルが影になるように、さりげなーく立つ。……上手くできているかは甚だ疑問だけど。
とりあえず、挙動不審にならないようにケータイをポチポチといじっている振りをする。
こうしてスバルを待つこと数分。
「……ありがと。終わった」
背後から、控えめな声。
振り返ってみると、ちょっと離れたところにスバルが立っていた。
スカートは……、前のほうは両手に鞄を提げているから、濡れているかどうかは分からない。
それでも太ももは綺麗に拭けたようだ。
ショーツは……あまり深く考えないほうがいいだろう。
「そっか。大丈夫そうならいいけど」
「うん。きみのおかげで助かった。タオル、新しいの買って返すから」
「気にしなくていいのに」
「私が気にするの」
「……よくわからないけど、わかった。それじゃあ、俺、家はこっちだから」
「あら、きみもなの? 私も同じ方向」
特にスバルのことを待つつもりもなく歩き出すと、スバルの家も同じ方向にあるらしい。
てくてくと、スバルが背後から歩いてくる気配がする。
いつもの席順とは違った、なんだか慣れない関係。
「しばらく後ろついていくから。スカート、前濡れちゃってるし」
「俺は盾代わりかよ」
「ぱんつも冷たいし……」
「穿いたままかよ」
「きみは、私にノーパンで帰れっていうの?」
「た、たしかに……っ」
後ろについてくるスバルと話しながらも、住宅街の曲がり角を何回か曲がっていく。
どうやらスバルも家が同じ方向らしく、ついてくる気配はなかなか消えない。
「ホント、きみとは家の方向が同じみたい」
「その割には一度もニヤミスしたことさえもないけどなー」
「それはお互い様よ。大和って、いつも面倒臭そうにして人と関わってないし。周りに誰かいても、今日みたいにボーッとしてるでしょう?」
「あのプリントの一件は……って、大和……いきなり呼び捨てとは。普通、逆だろ。急に距離感を詰めてくるなよ」
「あ……、ごめん。つい……」
「と、言うよりも、俺の名前を知ってるってことに驚きなんだが」
「そ、それは……、私のすぐ後ろの席だしっ。名前くらい覚えてて当然でしょう?」
「ん……、たしかに俺もウォルトンさんのフルネームは知ってるしな。お互い様、か」
「そう、お互い様。あと、そのウォルトンさんっていうのはやめて欲しい。なんか他人行儀みたいな感じするし」
「それじゃあ、なんて呼べばいいんだよ」
「スバルに決まってるじゃないの」
「やっぱり名前呼びなのかよ……わかった。それじゃあスバルさん、これでいいか?」
「だめ。スバルって呼び捨てにして」
「はぁ!?」
まさかのいきなり名前呼び捨てとはレベルが高すぎないか。
しかも相手はクラスで浮いている『プレアデス』だ。
浮いていると言っても、狙っている男子はたくさんいる。
そんな高嶺の花のような存在を、呼び捨てだなんて。
思わず振り返ると、そこには顔を真っ赤にしたスバルがぴったりとついてきていた。
「な、なによ……。そんな鳩が豆鉄砲を喰らったみたいな顔をして。そんなに私の名前がおかしいのかしら?」
「いや、そういうわけじゃないけど」
「そう。それなら決まり! きみは私のことをスバルって呼んで。その代わり、私もきみのことを大和って呼ぶから」
顔を赤くしながら、そう宣言されてしまうと断ることはできなかった。
「わかったよ……。それじゃあ、スバル……、これでいいか?」
「うん。よろしくね、大和。今日は助けてくれてどうもありがとう。あのまま独りぼっちだったら、私はきっとまだ泣いていたと思うから」
「それは……まぁ、困ったときはお互い様だから」
「意外と優しいところあるんだ。それにここまで付き合ってくれてありがとう。私の家は、ここだから」
「名前の呼び捨てから、自宅まで知ることになろうとは……」
歩きながら話しているうちに、どうやらスバルの家についていたらしい。
スバルが住んでいる家は、新興の住宅街が並ぶ区画の一軒家だった。
周りの一軒家よりも一回り大きくて、どこか異国の風情を漂わせている。
「これはずいぶんと立派な家だな」
「そう? 建てたばかりだからだと思うけど。お父様は貿易商で世界中飛び回ってて、最近ようやく腰を落ち着けたの」
「そういえばスバルはこの春に転入してきたんだよなー」
「うん。だからまだあんまり日本のクラスとか、そういうのに慣れてなくて。だから……」
スバルは呟くと、恥ずかしそうにこちらを上目遣いしてくる。
頬を赤くしてはいるものの、潤んだ碧眼はややつり目。
そんなスバルは、ちょっとだけ改まった感じになると、
「だから……、今日は本当にありがとう。また明日ね!」
恥ずかしいのか、スバルはくるりと踵を返す。
明るい金色のツインテールが尻尾のように尾を引くと、ふんわりとしたコンデンスミルクのような甘い香りに、かすかにツンとしたレモネード。
その残り香が消えるまえに、スバルは家の中へと姿を消していた。
「また明日、か……」
大和は呟くと、再び家路を急ぐことにする。
偶然なことに大和の家は、スバルの家から歩いて5分ほどのところにある。
手が届かないほど遠くにあると思っていたプレアデスは、思っていたよりもずっと近くにあったようだ。
つづく!
楽しんでもらえたら嬉しいです!
大決壊シリーズ配信中☆
イラストは鳴海也さんに描いてもらったぞ!
黒タイツ! おもらし!
CGはフルカラーで6枚描いてもらったぞ!