真夏の記憶8
中学生にもなって、紙おむつだなんて。
♭4日目 風邪を引いておむつお姉ちゃん
「うう……、んんん……っ」
海に行った翌朝。
布団から出ようとした葵だけど、なんだか怠くて身体を起こすことさえもできなかった。
それでも無理に起き上がると、ズキズキと頭が痛くなって視界がきりもみ回転してくる。
「あれ、あれれ……?」
なんとか起き上がるけど、葵はすぐに布団に倒れ込んでしまった。頭が痛いし、身体が重たい。それに吐き気もあるようだった。
(やだ、もしかして、風邪引いちゃった……?)
昨日は海でたくさん遊んだし、身体を冷やしてしまったのかも知れない。
それでもまさかおばあちゃんの家に来ているときに風邪を引いてしまうだなんて。
たくさん遊びたいのに。風邪を引いたことを認めたくなくて、無理やりにでも身体を起こそうとするけど――、
「む、むりぃ……」
頭がガンガンして立つことはおろか、身体を起こすだけでもツラかった。
それに身体に起きた異変はこれだけではなかった。
お尻にペッタリと纏わり付いてきているショーツの感触は、もしかして……。
イヤな予感がしつつも、お尻を包み込んでいるショーツに手をあててみると……、
やはりだった。
ショーツはじっとりと湿っていて、手のひらの匂いを嗅いでみると、ツーンとしたアンモニア臭に涙が出そうになってしまう。
完全無欠のおねしょだった。
(寝る前に、ちゃんとおトイレ行ったのにぃ……)
ゆうべはおねしょをしないようにとあまりジュースを飲まずにいたし、しっかりとトイレにも行った。
それなのにおねしょしてしまうだなんて。
海で遊んで眠りが深かったのもあるし、すずらんスリップとショーツという格好で寝てお腹を冷やしてしまったというのもあるのだろう。
……隣で寝ている茜はおねしょしていないから、ただのいいわけでしかないけど。
「ううっ、頭、痛い……っ」
ただでさえおねしょしてしまって気が重たいというのに、頭がガンガンと痛む。
そんな葵の意識がまどろんでいくには、そう時間は必要としなかった。
☆
「お姉ちゃん、朝ご飯だよー」
頭痛で苦しんでいると――、
ゆっさゆっさと身体を揺すってきたのは茜だった。
揺すられるだけでもツラかったし、茜の元気のいい声が頭に反響してガンガンする。
「お姉ちゃん、顔真っ赤! 風邪引いちゃったの!?」
「うう~、そうみたい……」
「朝ご飯、食べれそう?」
「む、むりぃ……」
「こ、これは重症だ。お母さん呼んでくる!」
「ありがとう……」
と、お礼を言う前に茜は部屋を出ていってしまった。
程なくして母と祖母がやってきて、おねしょしてしまったシーツやショーツを替えてもらったり氷嚢を作ってもらって、葵はあっという間に絶対安静モードにさせられていた。
(せっかくおばあちゃんの家に遊びに来てるのに、風邪引いちゃうなんてもったいないなぁー)
だからせめてできるだけ早く直してしまいたかった。
このまま布団で一夏が終わってしまうなんてもったいなさ過ぎる。
そう思って氷嚢を抱っこしながら眠りについた葵だけど――、
☆
だけど葵の風邪は、自覚している以上に重症だったらしい。
「んにゅ……、冷たい……」
葵が目を覚ましたのは、氷嚢で腕が冷え切ってしまったからだった。どうやら氷嚢を抱いているあいだに深い眠りに落ちていたらしい。
葵の左腕は、血が止まっていたみたいに冷たくなっていた。
「……おしっこ、したい……」
氷嚢でお腹まで冷やしてしまったみたいだ。
いつの間にかタオルケットも蹴っ飛ばしているし。
枕元に置いてある目覚まし時計によれば、もうすぐお昼の時間らしい。
そういえば、朝ご飯は何も食べていなかった。
枕元にスポーツドリンクが置いてあるけど、お腹が膨らむものじゃないし。
「お腹減ったし、おトイレも……」
そう思って立ち上がっ――、
「えっ、あっ、うっ」
立ち上がる前に膝が折れてしまって、葵は前のめりに倒れ込んでしまった。
不幸中の幸いか、畳の部屋だったから両手をついても怪我はしなかったけど、その衝撃は少女の尿道を粉砕するには充分だった。
「あっ! あううっ!」
前のめりに倒れ込んでしまった葵は、無様にもお尻を突き出すかのような格好になっている。
クロッチが食い込んだ縦筋がヒククッ、小刻みに痙攣すると、
しゅわわわわわわ……。
クロッチに暗い染みが浮き上がると小水が滲み出してくる。葵の内股に、生温かい滝が落ちていった。
ツーンとした生温かい恥臭が和室に漂い、畳に取り返しのつかない湖が広がっていく。
こんなにも無様な失態を晒してしまっても、葵はおしっこを止めることさえもできなかった。
それほどまでに弱っていたのだ。
しゅいいいいいいい……。
「うう……、最悪、だよぉ……」
ヒクッ、ヒククッ!
少しでもおしっこを止めようと尿道に力を入れても、小刻みに秘筋が虚しく痙攣するばかりだった。
畳に倒れ込んだ音を聞きつけて、茜が様子を見に来たらしい。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
ふすまが開かれると、隙間からぴょっこりと茜が顔を出した。
そのどんぐり眼が大きく見開かれる。
「わわっ、お姉ちゃん、大丈夫!?」
大丈夫か、そうでないかと言われると、大丈夫じゃない方だと思うけど、妹に素直に弱音を吐くこともできず、
しゅいいいいいい……。
葵はただ、妹に見られながら漏らし続けることしかできないのだった。
☆
「えぇ……っ、そんな……っ、こんなの、絶対無理、だよっ」
葵は珍しく語気を強めてしまった。
それもそのはず、祖母が買ってきてくれたものは――、
「紙おむつなんて、絶対に無理!」
思春期を迎えて女の子っぽく身体が丸みを帯びてきたっていうのに、この年になっておむつだなんて。
学校のクラスの誰かに知られたりなんかしたら、一瞬にして学校中の噂になってしまうに違いなかった。
「お姉ちゃん、アタシもおむつ、充てた方がいいと思うな。このままだとお姉ちゃん、大変そうだし」
「で、でも……」
葵があまりにも愚図っているから、いま和室にいるのは葵と茜の二人きり。
その畳は祖母が綺麗に拭いてくれたから事なきを得たけど、和室にはかすかなアンモニアの残り香が漂っていた。
(また漏らしちゃうかも知れないし……、このままだとおばあちゃんに迷惑かけちゃうし……)
「うん、分かった。充てる、よ」
「それじゃあ、おむつここに置いておくね」
部屋を出ていこうとする茜だけど、葵はその小さな背中を呼び止めていた。
「待って、その……、身体、起こすのツラいから……、茜に充てて欲しいの」
「わかった。それじゃあ、ジッとしててね!」
茜は綺麗に小さく折りたたまれていた紙おむつを広げてみせる。
それは白地にピンクの花柄模様があしらわれた、思っていたよりも可愛らしいデザインをしていた。
「わぁ、ほら、ピンクの花柄模様でこんなに可愛いんだ。アタシも今夜充ててみよっかなー♪」
「ホント……、これならいいかも……」
きっとおむつを充てるときの抵抗を、少しでも和らげようとしてくれている気遣いなんだと思う。
花柄の紙おむつは、可愛らしくて、そして思っていたよりも薄かった。
「それじゃ、充ててあげるからねっ」
「う、うん……」
妹にショーツを脱がせてもらって、まだ一本の陰毛の生えていないツルツルのおまたを晒す。
葵の大事な少女の部分は、まだ産毛さえも生えないないパイパンだった。
茜もまだ生えていないから、きっと生えるのはまだまだ先のことだと思う。
そんな葵の秘筋からは、サーモンピンクの肉びらがはみ出していた。
葵はおむつを充てやすいようにと、仰向けになってお尻を浮かせる。
それが妹に秘部を見せつけているようなポーズになってしまう。
「えーっと、まずはお尻におむつを敷いてっと。それから……、おまたを包み込むようにして前のほうに持ってきて……、それからそれから……、横からテープを持ってきて、それで止めるっと……、よし完成!」
説明書を見ながらも、茜は紙おむつを充ててくれた。
これでおねしょをしてしまっても大丈夫……だと思う。
「ありがとね、茜」
「気にしないでよ。お姉ちゃん、今日はゆっくり寝ててねっ」
「……うん」
小さく頷くと、タオルケットをお腹にかける。
すると風邪で体力を消耗していたのだと思う。すぐに葵の意識はまどろみの沼へと沈んでいった。
☆
「んっ、んにゅう……、おしっこ……」
お腹がツンと張った感触に葵が目を覚ましたのは、そろそろ夕焼けになろうかというころだった。
あれから何度か目が覚めて、スポーツドリンクやゼリーを食べた。
汗をかいたとはいえ、いつもよりもたくさんの水分を取っているのだ。
トイレに行きたくなるのは当然のことだった。
だけど……、
「うう、身体、重たい……っ」
身体を起こして立ち上がろうと思っても、頭が割れるように痛いし、視界がぐるぐる回る。
とても一人でトイレに立てる体調ではなかった。
カサリ――、
聞こえないふりをしていても、衣擦れの音の代わりにイヤでも紙おむつが擦れる音が聞こえてくる。
(しちゃって、いいの……?)
それが率直な感想だった。
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この小説は、同人誌『真夏の記憶』として発表しています。
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