専門学校に行った子供から「洗濯の汚れが落ちない」と電話がきた話。
先日、４月から都会の専門学校に行って寮生活を始めた息子から、嫁に電話が来ました。
「なんか洗濯の汚れが落ちてない気がするんだけど」という内容だったようで、洗濯機の仕様などを聞いたり、説明したりしていました。
しかし、どうも洗濯機の使用手順は間違ってないようで、どうして汚れが落ちにくいのか？と、時間にして５～６分話合っていました。
で、結局結論としては「それ、洗剤じゃない。柔軟剤やｗｗｗ」ってなって、終わりました。なんと、彼は持たせた洗剤類の中から、柔軟剤を洗濯洗剤と間違えて使ってたということで、大笑いで話を終えました。
嫁が「あきれた」と話をしてきましたが、「それは僕らの教えてこなかった教育にも落ち度があることで、本来笑うところじゃないんだけどね。」とは、言いましたが、僕も笑いました。
が、僕は内心、これはとても素晴らしいことだと、しみじみ思い、感動すらしていました。
家を出るまでの彼はとても面倒くさがりで、家にいる時にも、洗濯機の使い方を説明しようとしても、「面倒くさい。そんなくらいその時になればわかる」と、説明を聞こうともしませんでした。
彼は家に居る時には洗濯物も下に持ってこない。「持ってこないと洗濯しないぞというと「そのままでいいよ。気にしないし。面倒だ。」と何事にも終始この調子でした。
しかし、やはりというかそれは甘えなのです。その言葉の裏には「どうせ溜まってくれば親が放っておかない。やってくれるだろう」という背景があったはずなのです。
しかし、一人暮らしを始めるようになればそれは、言葉通り「そのまま」になるのです。
その結果、自分でやらねばと自発的に動き出し、今回投げ出すことなく、すがるように電話してきて、長い説明にも根気よく耳を傾ける結果となりました。
これは、まさに、僕が望んだ効果の一つです。
当初「都会の専門学校に行って一人暮らしをする」と彼が自分の道を宣言したときに、嫁は大きく反対しておりました。一方、僕は大変感動し喜びました。子供が自分で決めて自分の足で歩く道を選んだことにです。
「強○されるでもなく、自分で道を決める。」
これは黄金より価値のあることです。大金持ちが大金で子供に与えようとしても与えられない「金の心」なのです。
しかし、僕は手放しですぐ許すほど甘くないのです。自由には覚悟が必要、僕の元を離れるなら、その覚悟が本物かどうかを試させてもらいました。僕は昭和の人間なので僕流の「獅子は千尋の谷に我が子を突き落とし」って奴です。
学校の下見から、寮まで自分ですべて調べるように言い、さらに彼がやったこともないプログラムの習得をするように彼にハードルを課しました。
最低限のハードルとはいえ、彼はそれを見事に乗り越え出て行きました。
彼はいままで、毎日ベッドでゴロゴロし部屋の中でスマホを構ってたのを僕は知っています。
嫁はそんなだらけた様子を心配していましたが、僕は「好きにさせておけ。これは彼の大切な自立心を熟成させる期間なのだ。」と言って口出しさせませんでした。
僕も若いころ覚えがありました。
何不自由なく満たされた実家の中にいて好きなことをさせてもらっていました。が、そうしている中で感じる「何かが足りない感」を。言ってみれば「暖房が効き過ぎた部屋で頭がぼーっとしているような、ぬるま湯な感じ」を。
この期間に親が道を示さないことが大事。何か言えばそれが拠り所になり、反抗していることで自分との対話をやめてしまい、「何かをやった感」を得て満足して、しかもせっかくためたエネルギーを消費してしまうだろうと思ったからです。
「親は何も言ってくれない。自分は本当にこれでいいのだろうか・・・」
こう思わせるには、自由に考える時間が大切なのです。邪魔をしてはいけない。
本当に彼がそう思ってくれるかどうかは「賭け」ですが、僕は彼がそうあってくれるだろうと賭けました。これが僕流の「本当の意味で子供を信じる」ということでした。
僕は、家族全員に望むことは「僕のもとに居る以上、みんながただ自由であって欲しい」という一点だけです。が、自由の原点ともいえる、「人生の目的地」だけは自分で決めねばなりません。
例えば、目的地があれば「新幹線の方がいいよ。」なり「飛行機の代金出してやるわ」など、手段などアドバイスができますし、全力で支援もできます。
しかし「僕の目的地はどこですか？正解はどれですか？」
僕の子育ての最中には、この質問だけには決して僕は答えませんでした。
この質問だけは「やりたいこと、目的地は自分考え、自分で自由に決めなさい。」と、いつも突き放してきました。
ただ、「こういう選択肢はある」「こういう考え方がある」など、僕の人生で得た考え方や、実例、「より正解と思われるものを選ぶための考え方、手段」は教えてきました。
「自由に選択する」これは実は、とても力の要る行為だと思っています。
「２つあるうちどちらかしなかない。」場合は楽です。だけど、「だだっぴろい荒野で自分で自由に決める」これは訓練が必要だと思うからです。親が選択に介入することは、その力を失わせることになると感じます。
当然、本人の決めた目標や目的地は決して否定しませんでした。「（あー、これはちょっと痛い目に合うかもな）」と思うものも、分かってても言わずに通してきました。
「人間は思っているほど賢くない。結局自分の経験や痛みからしか学べない」と僕は思っています。
１００回「転ぶと痛いよ気を付けて」と親が言うより、1回転ばせてみる方が早いと思っています。先回りして否定したり結果を教えるのは正しいことではないと思うからです。
また、僕は自分が未来を見通せるなどと、うぬぼれていないのです。
そして、仮に途中で決めたそれを投げても否定しませんでした。（もちろん経済的に無理だったり、倫理的にダメだと感じるものは理由を説明し、止めました。それは僕含め他者の自由を侵害するからです。）
「親は木の上に立って見ると書く」とはまさしくです。
当然、これは放置や無関心とは違います。
親の仕事は「子供にいかに何かをしてやるか」ではなく、むしろ「子供を信じて、いかに何もしないようにするか」が、大事ではないかと思っていました。
これは、むしろ、実は何かをしてやるよりもつらいことだと思っています。
現に子供に出させたハズの決定や、手助けしたいタイミングに、つい喉元まで出てくる「先回り」を飲み込むのに毎回必死でした。
「洗濯洗剤について聞いてきた」
しっかり教育されてきた多くの皆さんには、一笑に伏してしまうこの一件も、
僕にとっては上記の集大成の結果だと思うと、改めて感動を禁じえません。
世間知らずで、ダメだった親の教育の分、成長の伸びしろがあると思っています。
彼は一人暮らしの練習の中、自分が大きく伸びることを感じ自信を高めていくことと思います。
ひとしきり話が終わったようで、最後に嫁が
「お父さんに代わる？」と聞くと（スピーカー
子供「いや、用はないよ。じゃね（ﾌﾞﾂ」
僕「・・・・。」
まぁ・・・でも、盆も正月もかえってくる必要もありません。
若者には楽しい都会で、1日でも多く自由な時を満喫して欲しいなと思う僕でした。
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