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リョナの記事 (6)

ヒロイン工学研究所 2019/01/13 21:01

『四葉の戦姫 クローバーローゼ』感想

こえだ商店」さんのヒロピン漫画『四葉の戦姫 クローバーローゼ』の感想をヒロピンの考察もかねてまとめてみました。

正面から挑む姿勢に感服

この作品の存在を知ったときにまず最初に注目したのが、「ヒロピン漫画」「ソフトリョナ作品」とはっきり銘打っていることでした。
※ヒロピンやリョナについてはこちらの記事を参照して下さい。

私もそっち系が専門なのでときどきそのことを感じますが、「ヒロピン」や「ソフトリョナ」といったジャンルは、シーンの雰囲気作りや微妙なニュアンスが重要な世界であり、わかりやすいエロ表現や過激な暴力表現のインパクトで関心を引けない分だけ、商品としてはやや玄人向けなところがあります。またピンチの魅力は、ダメージシーンなどの演出のみによって生まれるのではなく、キャラやストーリーといった土台があってこそ成立する総合的なものなので、制作者側にもそこを構築できるだけの総合的な実力が求められます。

それだけに、サークル第一作目となる作品に付けられた「王道変身ヒロインヒロピン漫画!!」というキャッチコピーはなかなか挑戦的な感じがしました。

「王道」と「ヒロピン」はどちらも基礎力と総合力が重要になる分野なので、二重にハードルが高いわけです。

しかし、サンプル画像を見てもわかるように、作風には奇をてらったところも過度なデフォルメもありません。演出もタッチも全年齢向けの作品でも十分通用するような、まさに正攻法のもので、二重に高いハードルに正面から挑んでいる感じがしました。

「うーん、これは実力があるからこそ出来る挑戦だな」

というのが最初にこの作品を目にしたときの印象でした。


構成力あってこその「王道」と「ヒロピン」

「とんでもなく奇抜な脚本では拙さを大目に見てもらえるので、下手にキレイに整えるよりも、尖ったところを武器にしろ」

といったアドバイスをベテランの人から聞いたことがありますが、王道作品というのはまさにその逆であって、奇抜さがない分だけ堅実な上手さが必要とされます。

この作品を読み始めてすぐに感じたのは、
「あっ、これはデキる人の作品だから大丈夫だ」
という安心感でした。序盤からもう構成がしっかりした作品であることが伝わってくるんです。

例えば、「普通の女の子がどうして正義のために戦う変身ヒロインになったのか?」というヒロイン誕生秘話の部分などは、どうしても説明のために尺を取ってしまって、下手をすると短編作品では特に重要となるテンポとバランスがそれが原因で損なわれてしまうなんてことになりがちなのですが、この作品ではそこをたったの2ページでしっかり伝わるように描いています。決して特筆するような描き方がなされているわけではありませんが、手際の良さが感じられます。私はこういうのをさり気なくコンパクトにまとめるのが苦手なので見習いたいです。

また、バトルが始まってからもバトルシーン一辺倒にならず、待ち合わせ場所に現れないヒロインのことを親友が心配するシーンが何度か挿入され、場面転換ごとにピンチのステージが変わっていくという省略のテクニックが効果的に使われています。

ヒロピン作品の難しさは単にやられシーンを羅列するだけでは十分な昂奮が生まれないところにあります。そこでこのジャンルでは特に、巧みな構成によってストーリーを魅せていく手腕が重要になってくるのですが、まさにこの点が非常にしっかりと出来ているのがこの作品の特徴です。

同人作品は商業系作品に比べると、「自分はこれが描きたい!」という熱量がものを言う世界であり、そこがまた商業系にはない個性的でエネルギッシュな作品が生み出される良いところなのですが、それが先行しすぎると、作品を一歩引いたところから冷静に眺めて構成を練るといった地味な作業が疎かになることもよく起こります。

同人作品で「王道」と「ヒロピン」をやろうとするときの最大のネックは、「構成力が特に必要とされる分野なのに構成が疎かになりがち」なところにあるんじゃないかと前々から考えていましたが、この作品はその課題を難なくクリアしている感じがすぐに伝わってきたので、安心して作品世界に入ることができました。


「物足りない」ではなく「もっと見たい」

「ヒロピン」「ソフトリョナ」と明記されている通り、この作品には「陵○」に当たるような過度な性的表現も、一般に「リョナ」と呼ばれるようなハードな暴力表現もありません。むしろそういった要素無しでも楽しめるように作られた作品と言った方が良いと思います。

この作品を読んで素直に感じたのは「もっと見たい」でした。内容や描写があっさりしすぎているから「物足りない」と感じたのではなく、このテイストで描かれた新しいエピソードが早く読みたい思いました。特に、最後に加わった新ヒロインが次回作でどんな目に遭うのかとても楽しみで、今から待ち遠しいです。

そうした「次回作への期待」が自然に生まれるのもまた、ヒロピンを盛り上げるための必須の条件であるストーリー構成とキャラ立てがしっかりしていることの賜物だと思います。

こういった作品が立派な先例として生まれたことによって、「過激な性的表現や暴力シーンに頼らなくても、ヒロピンだけで人を興奮させることができる」ことが証明されたと思うので、類似ジャンルを目指している者としてはとても心強く感じました。ただ、それと同時に「ヒロピンだけで魅せるためには何が必要なのか」という問題をあらためて考えさせられる結果にもなったので、そのことについては出来ればまた別の機会にまとめて書きたいと思います。

作品ページへ

ヒロイン工学研究所 2016/09/18 20:05

リョナ・ヒロピン表現における悪の特権

前回の記事でリョナ・ヒロピンと悪役の関係について書きましたが、今回はもう少し具体的にリョナ・ヒロピン的な表現をする上での悪の利点について考えてみたいと思います。


非道な攻撃ができる

これは特にリョナ観点から重要なポイントですね。
社会通念上、女性に対する暴力がそもそも悪である以上、ヒロインに対する情け容赦のない攻撃は悪にのみ許される特権なわけです。

普通の人間なら攻撃することをためらうような場所への攻撃や
もはや戦闘不能のヒロインを勝つためではなく嬲るために攻撃するような行為が自然に出来るのが悪人キャラの長所です。



言葉責めができる

ヒロインを苦しめるのは物理的な攻撃だけではありません。
焦燥感、不安、恐怖、敗北感、屈辱、絶望感…
様々な心理的なダメージもまた、リョナ・ヒロピン嗜好の対象になります。

つまり、ヒロインを嘲弄したり傷付けたりする言葉が必要なんです。
これは特にシチュエーションやヒロインの内面性を重視するヒロピン趣味にとって重要なポイントです。

物理的なダメージによって苦痛や敗北に打ちひしがれるヒロイン――そんなヒロインの姿に憐憫の感情ではなく、侮蔑や嗜虐の感情から言葉を浴びせることができるのも悪人だけです。


彼らは嗜虐的なシチュエーションを自ら楽しむことによって、リョナ・ヒロピン趣味の読者の優秀なエージェントとなり、言葉責めによって読者の興奮を効果的に煽ることが出来ます。

エロ展開への期待をもたせることができる

そんな悪逆非道で情け容赦のない敵が、戦いに敗れ、戦闘不能になったヒロインをそのままにしておくでしょうか?

敵が悪である場合の大きなポイントは、

「敗北=ヒロインの性的蹂躙」の可能性

を示唆できるところです。

バトルそのものに「陵○」のテーマを潜在させることが出来るのも悪人キャラの特権です。

また陵○というテーマは、敗北という要素に付加価値を与えるだけではありません。
ヒロインという存在が敵にとって「対戦者」であると同時に「性欲の対象」でもあるという状況は、バトルに独特の緊張感を与えてくれるだけでなく、戦うヒロインの美の性的魅力を強調してくれます。

なお、こうした利点を発揮する上で、敵があらかじめ勝利後の陵○を宣言している必要はありません。

「こんな奴に負けたら、その後滅茶苦茶にされちゃうんだろうな…」
という印象を与えるだけでも十分効果的です。しかし、あえて語らずともそんな印象を与えることが出来るのは悪人だけです。



「こんな奴に」効果でカタルシス倍増

悪である敵は、憎むべき存在であるだけでなく、負ければ我が身を陵○されるおそれすらあるわけですから、当然ヒロインは絶対に負けるわけにはいきません。逆に言えば、
そんな悪人に負けてしまうことは大きな屈辱と絶望を生みます。

一般的にヒロインの「負けられない」という気持ちが大きければ大きいほど敗北のカタルシスも大きくなりますが、悪人というのは悪人であるというだけで、その「負けるわけにはいかない!」という思いを増幅してくれるのです。


相手が善人であっても「負けるわけにはいかない!」という気持ちで戦う場合はあるでしょう。
しかし相手が悪人である場合は、この思いのニュアンスがちょっと違って、言わば、
「こんな奴に負けるわけにはいかない!」
という思いなわけです。
負けられないのは「この戦い」であると同時に、「この相手」なのです。
ここでは、悪人である相手に対する軽蔑や嫌悪、反感などの強いマイナス感情が、その分だけ「負けらない」という思いを別の理由から強化しています。

これは逆の観点から見るならば、
善人や非悪人とは違って、悪である敵に敗北することは、

ヒロインのプライド、信じてきた価値観、人格の否定
につながりやすいということなのです。
つまり戦うことのリスクがそれだけ大きいわけです。

「こんな奴に負けるわけにはいかない!」という思いによって高騰した戦意は、
「こんな奴に負けるなんて…!」という失意の落差を準備します。
このように悪人である敵は、戦うヒロインの闘争心と敗北のダメージの両方を増幅させカタルシスをより劇的にする効果をもっているのです。

ヒロイン工学研究所 2016/09/13 21:23

ヒロイン工学研究所 2016/09/13 20:06

ヒロイン工学研究所 2016/09/09 11:17

やっぱり悪が好き

敵役に求められるもの


前回の記事でリョナ・ヒロピンとは、

「ヒロインが敵に苦しめられる姿を見て昂奮する性的嗜好」

と、ゆる~く定義しておきましたが、
今回は、そのヒロインを苦しめる役である「敵」の存在について考えてみたいと思います。

リョナやヒロピン趣味にとって望ましい敵の姿とはどんなものでしょうか?
もちろんその問いに対する答えは人それぞれです。

「ヒロインが苦しむ姿さえあれば十分」というリョナラーの方の中には、攻撃方法にはこだわっても、敵のキャラについてまではこだわらないという人もいます。

しかし、リョナラーであっても、ある程度はシチュエーションにこだわるのが普通ですし、元来シチュエーション重視であるヒロピン趣味においてはヒロインを苦しめる敵の性格は重要なポイントになります。

そのため、「どんな敵が望ましいか?」という問題は嗜好性を分類する上で一つの基準になります。
分類する方法も色々考えられ、例えば、

・男性か女性か
・強い敵か弱い敵か

など、性別や戦闘力を基準に大きく分けることが可能です。

しかし、実際には「敵は同性である女性でないとダメ」とか「ザコ敵であることが絶対条件」というようなポリシーをもっている方はそれほど多くないような気がします。「それぞれに良さがあって好き」という意見が大半でしょう。

そこで色々と考えたのですが、リョナ・ヒロピン趣味においてもっとも基本的な敵キャラの分類方法は、やはり、

その敵が悪人か非悪人か ※善人である必要はない

なのではないかと思うに至りました。

これは言葉をかえて表現するならば、



ヒロインが悪人によって嬲られる方が昂奮する

…と感じるか否か、という問題です。





敵に悪を求めない人は結構いる

敵が悪人であることはリョナ・ヒロピン趣味にとって必須の条件ではありません。
その証拠に、そっち系の画像を漁ると、嬲る側が悪人ではないものが多く見つかります。

悪を求めない理由も人によって様々なんじゃないかと思います。

「シチュエーションはどうでもいい、ヒロインの苦悶さえあれば十分」という考え方以外にも、「ヒロインが懸命に戦うにもかかわらずやられてしまう姿に昂奮するのであって、敵が悪である必要はない」と考える方もいるでしょうから、シチュエーション重視のタイプが必ず悪を求めるとは言えません。

また、悪人であることがNGであるというケースもあり、攻める側に自分を同一化して楽しむタイプの中には、敵があまりにゲスな奴だと抵抗や不快感を覚える人もいるようです。同様の理由からエロ作品における醜いオッサンや触手がNGだという話も聞いたことがあります。
この趣味本来の感性と矛盾するようですが、非道な行為に対する単純な嫌悪感が理由である場合もあります。

同じ趣味の中でも人によって感受性は様々なので、これ以外にも理由は色々あるはずです。

余談ですが、NGの理由は実際に話を聞くと結構意外なことだったりして面白いです。





やっぱり悪が好き

とは言え、やはりリョナ・ヒロピン趣味においては敵に悪を求める方が多いんじゃないかと思います。

理由はとても簡単です。
「ヒロインが敵に苦しめられる姿を見て昂奮する」ことがすでに外道の趣味だからです。

そんな外道の願望を満たすべくヒロインを嬲り者にするエージェントには悪人こそが適任なのです。

もはや立ち上がれないヒロインを引きずり起こしてさらに痛めつけるようなマネは悪人でないと出来ません。
ヒロインが苦しむ様子を見つめながら浮かべる愉悦の表情は、ピンチシーンを盛り上げるための強力な演出上の武器ですが、この武器を自由に使えるのも悪人だけです。

つまり、リョナ・ヒロピン嗜好を遺憾なく満足させる上で、悪人はとても頼りになる存在なのです。



すでにお気付きだと思いますが、私も嬲り役には何らかの悪の属性が欲しいと感じる人間の一人です。格闘ゲームなどで、魅力的なヒロインはいるのに、嬲り要員として有能な悪役がいないと、とても残念な気持ちになります。

この種のタイプにおいて「悪」の存在は、リョナ・ヒロピン嗜好を成り立たせるための必須条件なのです。



ちなみに過去に実施したアンケートによると、敵タイプの人気投票の結果は以下のようになっております。

※回答数:381


ただ、どのようなタイプの敵を好むかは、「どのようなヒロインが」「どのような展開で敗北に至るのか」という問題と密接にかかわっているので、独立した問題として扱うべきではなく、アンケート解析などをする上では、

ヒロインタイプ・敵タイプ・敗北過程
は常にセットで考える必要があります。

こうした調査と分析は今後も機会があれば行う予定なので、何か面白い発見があればまた記事にして紹介していくつもりです。

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