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創作メモの記事 (13)

ヒロイン工学研究所 2023/07/13 21:02

AI編集者との対話

AIに編集者になってもらう

一人で創作する者の弱味、それは制作中の作品について相互にフィードバックしながら制作をサポートしてくれる編集者がいないことです。
作品を制作中の作者はちょっとした質問や対案提示などがあるだけでそれをきっかけとして作品についての理解を深めたり良いアイデアを生み出したりすることができます。この場合、質問や対案は必ずしも才気ある鋭いものである必要はありません。
重要なのはむしろそれが自分以外の外部から与えられる刺激であること。素朴で基本的な質問であっても、あらためて外から促されて答えを考えることによって新たな発見があり、またそれまで雑然としていた思考が整理されて、やるべきことがはっきりしてきます。

そこでAIの出番です。
私はずっと以前から対話型AIが進歩すれば、AIに編集者の役割を担わせることが出来るんじゃないかと考えていましたが、この半年の間にその環境は驚異的なスピードで整ってきました。現在私はChatGPTを活用することで実際に「AI編集者」というものがどのような形で可能なのかを日々模索し続けています。

AI編集者に求める機能としては主に次の三つが考えられます。

1.作品理解や新しいアイデアにつながる対話
2.スケジュールや工程の管理
3.マーケティング関連の助言

私の同人活動は今のところ厳格な締め切りを設定せずにやっているので、重要なのは1と3です。特に新しい作品の企画段階では1と3はセットにして考えることになります。
なお、ヒロイン工学研究所はヒロピンに関する研究を目的の一つとしており、作品の公開は研究成果の発表であると同時に作品を通じてのアンケートデータの収集という意義をもっています。普通の編集者でこういう問題に対応している人はあまりいないと思うのですが、有益なフィードバックを得るための読者との関係性作りという点ではこの問題もマーケティングと大差はないので、これも3のカテゴリーに含めて考えます。

ChatGPTに編集者役になってもらう

実際にAIに編集者になってもらう方法としては「ChatGPTに具体的に指示をして編集者役になってもらう」というやり方でいきます。
今回はちょうど「敗姫処分 No.3 add'l」の企画をしているところだったので、ChatGPTにAI編集者として新作についての質問をしてもらうことにしました。

具体的な手順としては以下のようなプロンプトでChatGPTに質問リストを複数案提出してもらい、それを私が取捨選択してまとめなおしました。

【プロンプト】
あなたはマーケティングの知識も豊富な優秀な編集者です。あなたが担当する漫画家が次回作の構想を具体化し、それによってマーケティング戦略も具体化できるようにするためにいくつかの質問を作成して下さい。

新作企画に関するAI編集者からの質問リスト


【AI編集者】
次回作のストーリーについて教えてください。物語の概要や舞台設定、主人公の特徴など、基本的な要素について教えていただけますか?

物語の流れやプロットについて、詳しく教えていただけますか?主要なエピソードや展開、クライマックスについて具体的なイメージをお伺いできますか?

キャラクターやストーリーの魅力を最大限に引き出すために、特定の演出やクリフハンガー、驚きの要素などを考えていますか?読者を引き込むための具体的なアイデアを教えていただけますか?

今回の作品で伝えたいメッセージやテーマはありますか?読者にどのような感情や考えを抱かせたいですか?またそのためにどのような工夫をしますか?

次回作の雰囲気やトーンについて教えてください。作品の世界観や表現方法について、具体的なイメージをお伺いできますか?

前作との関連性はありますか?前作と関連がある場合、今作はどのような点で独自性があるといえますか?

作品全体のスタイルやアートディレクションについて、どのようなイメージがありますか?色彩、線の使い方、パッケージのレイアウトなど、具体的な要素について教えてください。

ターゲット読者層を具体的に定めてください。この作品はどのような人々に向けて描かれていますか?年齢層や性別、興味関心などを考慮に入れて教えてください。

競合作品や同じジャンルの漫画と比べた際の差別化ポイントは何ですか?他の作品との違いや魅力を教えていただけますか?

読者に作品を広めるためのマーケティングアプローチについて考えていますか?

ファンエンゲージメントのためのアイデアはありますか?読者とのコミュニケーションや関係構築を促進する方法について教えていただけますか?


…以上が質問リストです。
内容は基本的なものですが、なかなかしっかりした質問です。前作との関係と今作の独自性を問題にするところなどは盲点でした。この編集者、雰囲気的にはなかなか有能そうなので期待がもてますが、見掛け倒しの可能性は大いにあるので、まだまだ真価はわかりません。今後、より突っ込んだ問題に対応できるかどうか検証していきたいと思います。
なお、この質問への回答はこれから考えていくつもりですが、機会があれば同人制作の進捗報告の記事で紹介したいと思います。

ヒロイン工学研究所 2023/01/01 00:00

【AI活用】迎春用春麗春画を作成する

2022年はまさにAIの年でした。
ヒロイン工学研究所としてもAIの可能性を検討するために、「AIのべりすと」、「Stable Diffusion」、「ChatGPT」などの各種AIを使って実験を試み、その一部を記事にしてきました。
このAIブームは間違いなく2023年にも続き、さらなる発展を遂げることが予想されます。そこで毎年恒例の迎春用春麗春画の2023年版はAIを活用して制作することにしました。

下絵を用意する

制作の方法は以前から記事で紹介しているように、ある程度の水準までAIで作った画像を下絵にして手描きで加筆修正して仕上げていくやり方を取ります。
まずは春麗の画像をたくさんAIに生成させ、その中から下絵として使えそうなポージングのものを選んでいきます。

この第一次選考で選ばれた候補の中から最終的に一枚を選び、今度はそれを元にしながら画像生成を繰り返し、絵のイメージを理想に近づけていきます。

こちらが今回第一次選考の中から選んだ一枚です。不自然なところは色々ありますが、足を右脚を上げて少し体をひねったポージングが良いエロに発展していく可能性を秘めていると判断しました。おそらくこの時点ですでに緊縛吊るしシチュを思い描いていたと思います。

この絵からスタートして画像生成を繰り返し、徐々に想像するイメージに近づけていきます。そして生成の過程で生み出された多くの絵から良いとこ取りをした合成画像がこちらです。

曖昧なところやコスのデザインがおかしいところは色々ありますが、下絵としてはこれで十分なので、ひとまずAIでの作業はこれで終了です。

手描きで加工する

ここから先は手描きで加筆修正していきます。加筆修正の方法は以前に記事で紹介した通りです。

  1. まずは近景のみをトリミングして、見切れていた部分を描き足します。
  2. 次に背景用に生成した別のAI画像を近景の後ろに配置します。
  3. あとはひたすら加筆修正をして緊縛絵として仕上げていきます。
  4. 最後に形や構図の微修正と色調補正をして完成です。

まとめ

AI画像生成から手描きでの完成までをメイキング動画にしました。

下絵(AI)と完成品との比較を見ていただければわかるように、かなり描き込んでいるので、作業量はそれなりにありました。通常の作業におけるラフイメージ段階までをAIが担当していることになりますが、AIを使っていてもそこに至るまでには試行錯誤と紆余曲折があるので、実はそれなりに時間がかかっています。そのためAIを使ったことによる時短効果は一般的に考えられているよりもずっと限定的です。
もしも制作過程にAIが関与していることがそれだけで何らかのマイナス評価を生むのなら、この方法は割に合わないことになります。
一方で、かなりの部分を手描きで制作していることにより、悪い意味での「AIっぽさ」はそれなりに消臭されているのではないかと思います。「品質や表現性においてAI的な画一性が感じられないならば、制作過程にAIが関与していても構わない」という意見が主流になるのであれば、この方法はある程度有効だと言えます。

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ヒロイン工学研究所 2022/12/02 20:40

【AI活用】キャラデザ再現過程・春麗編

AI画像生成で春麗のイメージに近付けていく

今回は特定のキャラのAI画像を入手するために出力を重ねながら理想のイメージに近付けていく過程を紹介します。
以前記事にも書いた通り、世界的にある程度有名なキャラクターはAIがキャラクター名とキャラクターデザインをセットで認識しているので、キャラクターデザインを詳細にプロンプトで指定していくよりも直接キャラクター名を入力してしまった方が早い場合が多いです。
ただし、キャラクター名からそのキャラクターデザインを再現する精度はキャラごとに違い、名前のみではあまりイメージ通り再現されない場合もあり、その場合は工夫と努力を重ねていく必要があります。
ちなみにスーパーガールのような世界的に(特に英語圏で)有名なヒロインは「胸の真ん中に赤いSの字があって…」などと細かく指定しなくても、かなり正確なデザインで出力されてきます。

今回挑戦するのは春麗です。
春麗は世界的にもかなり有名なキャラなので、AIもちゃんとキャラ名とデザインをセットで認識しています。ただし、最初から完璧に再現してくれるほど精度は高くありません。
こちらが最初に出力した画像。


精度が低い理由はおそらく知名度の低さではなく、公式にも複数の異なったヴァージョンのデザインが存在しているせいだと思われます。この画像も複数のヴァージョンがキメラ的に合成されているようにも見えます。
※ちなみに背中から尻尾がたくさん生えてしまった原因はプロンプトに関係ないワードが混入していたせいだと後に判明しました。なぜか不可解なものが出力され続ける場合はまずプロンプトを確認しましょう。

イメージを近付けていく過程

今回は再現度のあまり高くないキャラ画像を公式イメージに近付けていく過程を紹介します。しかし、作業工程は単純にして地道です。その時点で一番イメージに近付いている絵をお手本となる元絵にしてAIにそこから類似のヴァリエーションを複数枚出力させ、その中から少しでも理想イメージに近付いた画像を再度新たな元絵にして同様の作業を繰り返していきます。
このアプローチは一気に理想に近付くときもあれば、少しずつしか理想に近付いていかないときもあります。また、一部は理想に近付いていくのに他の一部は徐々に理想から遠のいていくといった困った症状が出る場合もあり、ゴールまでの過程は決して平坦な道を同じペースで進むようにはいきません。

今回は進化していく画像を要所要所で保存したので、備忘録も兼ねてその過程を記録しておきます。

まずこちらが先ほども紹介したスタート地点となった第一世代の画像です。


AIが「春麗」というキャラを認識していることは一目瞭然ですが、デザインの再現性は低いです。ここからスタートして先ほど紹介した作業を地道に何度も何度も繰り返します。そして最終的に私がゴールと判断した画像がこちらです。

パッと見た感じではかなり良い出来ですが、細部までよく見ると公式デザインの完璧な再現ではないことに気付きます。例えば、手首に装着しているはずの突起付きのアイテムがありません。
現時点ではAIに完璧にデザインを再現させることは不可能ではないにしても、特別のアプローチと努力が必要であるとわかっていたので、今回のゴールは少し甘めに設定してあり、「手描きでちょっと加筆修正すれば完璧になる」というラインに到達した時点で終了としました。

では、実際に画像が進化していく過程を動画で見ていきましょう。目安として画像には番号が付けてありますが、実際の世代数ではありません。動画ではゴールの数字が25になっていますが、実際の世代数はおそらく50前後だったんじゃないかと思います。また、そこにたどり着くまでに生成された画像(その大半は次世代に継承されずに消えていった)は、ちゃんとは数えていませんが、1500枚は優に超えていると思います。


マッチョ化する腕、赤くなるタイツ

次に進化の過程の紆余曲折を見ていきたいと思います。


これは4の段階の絵ですが、この時点で「右腕右脚を上げて構える」というゴールまで継承される基本ポーズが確定しているのがわかります。一方で、シニョンなどは形成されておらず、下半身のコスも少し違います。また脚はまだ生脚のようで、ブーツも履いていません。

7の段階でようやくシニョンとブーツが形成され、下半身のコスも徐々にイメージに近付いてきました。その一方で、何やら腕にマッチョ化の兆候が表れ始めています。

15の段階でようやくシニョンがリボン付きのそれらしいものになり、脚にもタイツが現れています。肩のコスの形状もイメージに近いものになりました。特に指定したわけでもないのに、コスの生地の質感とシワが良い感じです。
ところがこの後、変な症状が出て来ます。

17の段階を見ると腕のマッチョ化が再発した上に、肩のコスの形状は退化してイメージから遠のいています。また、タイツの色がなぜかどんどん赤くなっていきます。
この辺からはプロンプトで「細い腕」と指定したり、腕が細くなった画像を新しいお手本に設定したりと、色々と調整を繰り返して腕のマッチョ化を何とか抑えながら進めました。しかし、油断すると腕はすぐに再びマッチョ化するし、タイツはどんどん赤くなるしで、終盤はイメージに近付ける作業とイメージから遠のく傾向を抑える作業の同時進行になり、一進一退の連続になりました。
後で考えるとプロンプト内にある「Street Fighter」というワードがマッチョ化を引き起こしていたのかもしれません。

こうした悪戦苦闘の中で妥協の必要性を痛感したので、結局、腕の太さやタイツの色はレタッチで修正することにして、終盤はむしろ顔の方を重視して調整することにしました。25の画像に到達した時点で今回のAIでの作業はここまでとして、最後の締めくくりとしてそれまでに生成された画像の中から良いとこ取りをした合成をこちらで作成して26の画像にしました。

まとめ:現在のAIの不備を補うためにレタッチは必須

今回はAIがキャラとして認識しているキャラを公式デザインのイメージに近付けていく過程を紹介しましたが、はっきりと言えるのは、少なくとも現時点では「AI画像生成は楽じゃない」ということです。
基本的に時間がかかる上に、泥沼化したときに解決する方法が確立されていないので、想定外の時間を費やしたあげくに上手くいかない可能性だってあります。

また、イメージに近付くために要する時間と労力は一般的に言ってイメージが理想に近付いてくればくるほどどんどん大きくなります。ポーカーを例にすれば、手札がロイヤルストレートフラッシュに近付けば近付くほど欲しいカードが限定されて来て、そのカードがやって来る確率が小さくなるのと同じで、大雑把にイメージが良い方向に向かえばOKだった序盤とはまったく異なり、終盤になると「あそこの部分がもう少しこうなればいいのに!」という具体的な期待を込めてガチャを回すので、見事それが実現される可能性も小さくなっていきます。
ちなみに手描きで修正できるスキルさえあれば、ある程度イメージに近付いた時点でそこをゴールにすることができるので、終盤にひたすらガチャを回し続けるこの無間地獄が免除されます。実際に経験したことがある人はわかると思いますが、この差は絶大です。つまりレタッチ出来る人とそうでない人とではAIの便利さに致命的な差があるということです。AIの登場によって「描ける人と描けない人の差がなくなった」といった意見を最近よく目にしますが、現状ではやはり描ける人の方がはるかにAIを使うときに有利です。

機会があれば今回成案として得られた画像をさらにレタッチして一つの作品に仕上げてみたいです。また、毎年恒例の迎春用春麗春画をAI画像を下絵にして描いてみるのも面白いかもしれません。

ヒロイン工学研究所 2022/11/10 21:30

【AI活用】複数のパーツを合成する

今回は複数のパーツを合成して一枚のイラストを作成する方法を試してみたいと思います。

実はこの方法、すでに紹介した実験の中でも試しています。


このナコルルの絵では背景と短刀が別途出力したAI画像の合成ですし、

このジュピターの絵では背景がそうです。

今回は背景や小物ではなく近景のキャラクターを合成してみたいと思います。

合成の利点

AI絵をパーツに分けて合成する利点については前回の記事でも少し触れましたが、現在私が使っているAI画像生成は基本的にガチャを回すたびに全要素が変わってしまうので、ある程度その幅を調整することが出来たとしても、やはり同時に全ての要素がイメージ通りになる瞬間というのはなかなかやって来ません。しかし、AI画像をパーツに分けてこちらで合成することが出来れば、全パーツが同時に成功するようなそんな奇跡の一瞬に賭けてガチャを回し続けることなどしなくても、上手くいったパーツさえゲット出来ればいいので、各パーツが上手くいくまでガチャを回せばいいわけです。
スロットで「777」がそろうまで頑張るのではなく、左と真ん中と右に一回でも「7」が出たらそれを合成して「777」にしてしまうようなことです。

もっとも基本的な方法は近景と背景を分けて後から合成するやり方です。
これによって近景がいじりやすくなるので構図やポージングを再構成することが可能になります。また、背景を簡単に差し替えられるので、シチュエーション作りがしやすくなります。

巨大ヒロインVS触手怪獣

今回挑戦するのは「ヒロイン」と「陵○役」という近景のキャラ二体を別々に出力して合成する方法です。

ちょうど「マイナーキャラ限定お題募集企画」でユリアンやウルトラウーマンベスなどの巨大ヒロインが巨大怪獣に犯される絵を描いてほしいという依頼が入っていたので、そのための習作も兼ねて、今回は「巨大ヒロイン」と「触手怪獣」をAIに出力させて、合成していきたいと思います。

まずは巨大ヒロインから。基本となるプロンプトは「female Ultraman」というワードで出力しています。

紆余曲折ありましたが、最終的に行きついたのはこんな感じです。
両腕を上にあげているポーズは拘束を連想させますし、突き出たバストはそこに触手が絡んで乳責めしている光景が目に浮かびます。
合成によって陵○シチュが作りやすそうなヒロイン絵の素材が手に入ったので、今度はそれに合うような触手怪獣をAIに作らせます。
画面左側から迫り、触手を伸ばす様子をイメージしながら簡単な下絵を入力し、出力させた結果がこちら。

ヒロインに比べると比較的簡単にイメージに近いものが出来ました。キャラ部分のみを切り取って使う予定なので、簡単に切り取れるように背景は白一色になるよう誘導しました。

これで近景を構成する巨大ヒロインと触手怪獣は準備出来ました。あとは背景ですが、今回は巨大ヒロインを生成する過程で使えそうなものがたまたま出来てしまったので、背景はそれを流用することにしました。
すべてのパーツを合成して再構成した結果がこちらになります。

触手はコピペして増やしたり変形したりしながらヒロインに絡ませました。
パーツ分けした素材を合成しただけですが、触手陵○絵のテイストは十分出ていると思います。あとはヒロインのデザインを調整したり、勃起乳首を描き足したり、汁感を増量したりして、色調補正処理をして完成です。

まとめ

キャラを合成して絵を作るという今回の試みはまずまず成功だったと思います。
ポイントとしては、「どう合成するかを考えながら素材となるパーツを生成する」ことに尽きるので、この方法を採用する人は日頃からそういう意識でAI画像を見るクセを付けておいた方が良さそうです。

ただ、今回の絵が上手くいったのは、それが触手絵だったからというのはあります。触手は関節がないためにポージングをほとんど自由自在に操作することが可能で、そのために非常に絵作りが容易です。関節をもった人間同士の絡み合いをパーツの合成で作る場合はもっと難しいか、別の課題が出てくる可能性もあります。

また、今回のヒロインはオリジナルだったので、二次創作のときのように公式設定に合わせてデザインを修正する作業というものが必要なかったわけですが、ここには別の問題があります。それはこのように生成されたオリジナルヒロインをまったく一から作り直す別の絵でAIに再現させることは非常に難しいということです。
有名な版権キャラならAIはキャラ名とデザインを不安定ながらもセットで認識していますが、オリジナルのキャラの場合は言葉でデザインを指定する必要があります。この方法でイメージ通りのデザインを出力させるには相当プロンプトを工夫した上でなおかつ偶然の一致に賭けてガチャを回し続けるしかありません。

こうした問題については、また別の機会に別の制作に挑戦しながら考えてみたいと思います。

ヒロイン工学研究所 2022/11/06 21:28

【AI活用】AI絵を加工してヒロピン絵を作成

AI絵を加工してヒロピン絵を作成

前回ナコルルのイラストを作成したときと同じ方法で今度はヒロピン絵を作成してみました。いよいよ自分の分野でAIがどれくらい使えるかの検証です。

前回との違いはAI絵を加工する過程でテーマそのものを変えてしまうことです。前回のナコルルはAI絵も加工後の完成品もどちらもナコルルの可愛さを表現するためのキャラクター画的なものでしたが、今回の実験ではノーマル絵を加工して少しエロい要素のあるヒロピン絵に変えてみたいと思います。

AIによる画像生成サービスでは「不適切な画像」と判断したものを自動的に排除するものが多いので、エロやグロ画像生成OKのAIを利用する場合をのぞけば、不適切と判断されそうな要素は魔改造で事後的に盛り込むしかありません。
今回作るのは単なるヒロピン絵ですが、健全なノーマル絵をエロ絵に改造する場合も課題は同じなので応用できると思います。

セーラージュピターをAIに出力させる

さて、今回作るのはセーラージュピターのヒロピン絵です。
前回のナコルルと同じように、まずは「Sailor Jupiter」をAIが正しく認識しているかを確認するところから始めます。

デザインはやや不安定ですが、「水兵と木星」を出力したりすることなく、ちゃんとキャラとして認識はしているようです。
プロンプトを工夫したり、出力を繰り返したりしながら、上の画像のように何パターンかそろえてみました。これは普通のイラスト作成の工程で言うと、ラフスケッチを描きながら構想を練る段階にあたると言えます。

次に出力された画像の中からヒロピン絵の下絵になりそうなものを選びます。
AIによる不適切判定を回避するためにどれも健全なノーマル絵としてのプロンプトで出力していますが、ちょっと改造すればヒロピンシチュに使えそうです。
左の絵は勇ましい戦闘シーンをイメージさせる絵ですが、群がる触手に絡め取られそうになっているシーンに改造できそうです。
中央の絵はキックをしている絵ですが、表情さえ変えれば吹っ飛ばされて壁に激突している絵に見えそうです。
右の絵は「sleeping」というプロンプトが功を奏して、このままでもやられて横たわるヒロピン絵に見えます。

今回は少しエロ要素も入れたいので左の絵を下絵にして触手に捕らわれるヒロピン絵にしたいと思います。

近景と背景を分離

使う画像が決まったら、まずは近景のキャラと背景を分離します。


これは改造するときに各パーツをいじりやすくするためですが、そもそも改造することを前提にAIに画像を生成させるときは最初から近景と背景は分離するつもりで考えた方が合理的です。
AIが出力する画像では「近景はイメージ通り上手くいったが、背景がおかしい」ということが頻繁に起きるので、両者が同時にイメージ通りなるまで出力を繰り返すと、途方もない時間がかかってしまいます。
完成品レベルまでAIに出力させようとする場合には、「すべての部分が同時に上手くいっている奇跡の1枚」を出力させるために様々なテクニックを駆使しなければならないのですが、改造できるスキルがあればこの奇跡をパーツの合成によって捏造できます。

デザインを訂正し触手と背景を加える

前回のナコルルに比べると今回のセーラージュピターはキャラクターデザインが間違っている部分が多いので、それを修正していきます。ついでに触手に囲まれた状況にマッチする背景もAIに出力させ合成し、簡単ですがジュピターに絡み付く触手も描き加えました。

これで一気に仕上がりのイメージが見えてきました。通常のイラスト作成で言えばカラーラフの段階に当たります。このぐらいのレベルの仕上がり予想図を比較的短時間で速成できるのはなかなか凄いことだと思いました。ただし下絵の出力までが難航した場合にはそれも帳消しになってしまうので、イメージ通りに出力させるためのプロンプト研究は欠かせません。

ここまで進めてきて一つわかったことがあります。
現状ではAIがキャラクターデザインを完璧に再現して出力することは、そのキャラクターが世界的に有名でなおかつデザインがシンプルである場合をのぞけばほぼ絶望的です。したがって二次創作においては加筆修正が必須となります。そのため、絵としては魅力的でも加筆修正するのが難しいようなAI絵は下絵に向きません。改造することを前提にAI画像生成を使うときは「改造しやすさ」をつねに念頭に入れておく必要があります。

例えば一番右の絵は唯一額にサークレットらしきものが形成されているので、他の二つに比べればより正確なキャラクターデザインに近付いているとも評価できますが、結局サークレットの形状がまったく違うので描き直さなければいけません。そうなると、一回消さなければならず、「改造しやすさ」という観点から言えばむしろサークレットが形成されていない方が下絵としては使いやすいわけです。
このようにAIに出力させるのが「完成品」なのか「下絵」なのかによって、出力結果に対する評価も変わってきます。

とりあえず完成

仕上がりイメージが固まってきたので、あとは細部を加筆したり、表情を描き直したりしていきます。そして出来上がったのがこちら。


直すべきところはまだたくさんあるので、厳密に言えば完成ではないのですが、今回の目的は実験なのでこれで十分です。今後あらためて加筆や色調補正などの処理を加えてちゃんと完成させたり、差分を作ったりするかもしれません。そのときは追記として掲載したいと思います。

なお、今の作業環境ではAIに高解像度の画像を出力させることが出来ないので、多少修正処理はしたものの細部を見ると画像の荒さが残っているところがあります。AIに高解像度の画像を出力させるためには相当ハイスペックな環境が必要になるらしいので、この解像度問題は今後も避けて通れない課題となりそうです。

まとめ

今回の実験でわかったポイントをまとめると以下のようになります。

・ノーマル絵から加工後を想像する
・近景と背景は分ける
・キャラデザは大部分描き直す必要がある
・改造しやすいものを下絵にする
・画像の荒さを補正する必要がある

今回の制作で感じたのは、この手法はなかなか使えると同時に楽しいということです。しかし、その楽しさはゼロからイラストを描くときの楽しさとは少し違っていて、創造というよりは加工や改造の楽しさです。食材を見てどんな料理にするかあれこれ考える感覚にも似ているかもしれません。
実用面で言えばやはりカラーラフの完成予想図をかなり短時間で作れるという点が魅力的です。時間がかからない分だけ複数の案を用意することも可能なので、構想を練ったり打ち合わせのときなどに使えそうです。

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