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創作メモの記事 (13)

ヒロイン工学研究所 2020/10/21 20:43

複数ヒロインについて

複数ヒロイン作品は可能か?

先日、読者アンケートで「バッドエンドシミュレーションや敗姫処分シリーズで複数ヒロインを描くことは出来ないか?」という趣旨の質問を頂きました。結論から言うと可能ですし、以前から検討もしております。

複数ヒロイン作品を出さなかった理由

私がメインヒロインを一人に絞る理由は、複数ヒロインで釣っておきながら購入者の推しのヒロインの出番が不十分だとどうしても不満が生まれてしまうという懸念があったのと、単純にヒロインごとの人気の格差に興味があったからです。
私はもともと「ヒロインがたくさん登場するから豪華だ」という感覚があまりない人間で、むしろ登場キャラが不必要に多くなることでストーリーやキャラ描写の密度が落ちることの方を気にするタイプです。

今後の研究次第

しかし、複数ヒロインであってこそ表現できる魅力的なシチュエーションがあることも理解しており、それを実現してみたいという意欲もあります。
ただ、その場合でもヒロインが複数になる難点は残るので、そのせいで内容が薄くなったり、煩雑になったりしないように複数ヒロイン用の脚本術や構成術というものを研究する必要があると思っています。

現在複数ヒロイン作品の素案は二つほどありますが、実現できるかどうかは今後の研究次第だと思います。

ヒロイン工学研究所 2020/05/30 20:56

【備忘録】漫画制作の流れ

今後また漫画制作をするときのために今回の制作の大まかな流れを記録しておきたいと思います。

取材・準備

どんな制作でも最初の取材と準備が大切なので、まずは制作に使えそうな情報や素材を収集しました。集めた情報は主に

・過去作品のアンケート結果
・原作に関する情報
・ゲームのプレイ動画
・舞台となる場所に関する情報
・創作論・テクニック

などです。

原作に関する情報は設定画やプロフィール情報の他、ゲーム中の台詞などの資料を集めました。
ゲームのプレイ動画では絵になるモーションをキャプチャして画像資料として集める他、「この技を出したらこの技で返された!」のような劇的な展開がプレイ動画の中にあった場合にはアイデア用にその展開と動画のURL、再生位置を一緒に記録しました。
場所に関する情報は背景画を描くときに必要ですし、場所情報からアイデアが浮かぶことも多いので、作品で使えそうな場所をストリートビューで探してURLを記録しました。主に調べたのはスペインの闘牛場とドイツ・オーストリアあたりのお城です。
また、すでに読んだ脚本術などの創作論の本(Kindle)をハイライト部分だけ全部読み直して、今回の制作に役立ちそうなものをピックアップしました。

画像以外の資料用のデータはすべてアイデアや考察のメモと一緒にExcelに記録し、何の参考用のものかわかりやすいように「バトル」とか「台詞」のようにタグを付けました。

メモを増やす

情報収集とアイデアメモは基本的に同時並行です。
たくさんの情報に接しているとそこで刺激されてどんどんアイデアが出てくるので、何でもいいのでとにかく頭に浮かんだものはすべてExcelにメモとしてタグを付けて残しました。例えばそのメモがラストシーンの台詞に関するものならば「ラスト」「台詞」などのタグをちゃんと付けておくことが何よりも重要で、こうしておけば行き詰ったときにたくさんのアイデアを瞬時に検討できます。

ちなみにこれがメモデータの一部。


完成後にボツになったシーンのアイデアを見ると、シーンはボツになったのにシーンの機能や伝えたかったニュアンスなどは作品に残っていたりすることがよくあります。つまり使わなかったアイデアというのは実際には生きていることが多いということです。

シーン構成・ラフな脚本作成

この段階ですでにシーンに関する断片的なアイデアも相当数出ています。それらを並べながら構成を検討し、ラフな脚本のアウトラインを作ります。シーンのメモを並べ替えたり、別の物に変えたりしながら全体像をチェックする作業なので、ネームを描きながら検討するよりもはるかに楽でした。
ただ、制作後記でも書きましたが、このときに脚本として作り込んだ部分は実際にネーム段階で漫画的表現にするときにかなり翻案とやり直しを余儀なくされました。その原因は「この脚本が漫画の形になったときにどうなるか?」をイメージする力が脆弱だったことにあると思っています。

ラフスケッチの蓄積

取材・準備の段階からずっと練習目的でラフスケッチは続けていましたが、脚本と漫画化イメージが上手く結び付かないときの橋渡しとしても機能することが途中で分かったので、シーンのアイデアは言葉で記録するだけでなく、なるべく漫画化した場合の実際のシーンをイメージしてラフイメージも描くようになりました。
このラフイメージはネーム作成のときにコピペしてそのまま使ったり、ネーム上で複数案を比較検討するときに大活躍したので、たくさん描いておいても損はないです。もちろん練習にもなるので一石二鳥です。

ネーム作成

ストーリーのアウトライン、キャラ立て、台詞などはラフな脚本で大体確定しており、実際のシーンをイメージしたラフスケッチもそれなりにあるので、それに基づきながらネームを作っていきます。
ここまでの準備や蓄積があるのでこの作業はいきなりネーム作成に取り掛かるのにくらべて相当楽なはずです。ただし、私の場合は漫画制作の経験が浅いので、それを差し引いてもネーム作成にはそれなりに苦労しました。制作後記にも書いた通り、この辺は完全に泥縄式に進めていきましたが、これはもう制作工程の組み方とは関係なく避けては通れない苦労だったと思うので、ここでは触れません。

仕上げ

おそらく漫画制作に慣れている人のネームは仕上げイメージがその中でばっちり出来ているのだと思うのですが、私はまだそんなレベルには程遠く、必要なニュアンスや迫力が出なくてネーム段階に戻ることもありました。これも作業工程の問題というよりも漫画経験の浅さの問題だと思うので、ここでは触れません。

以上が今回の漫画制作大まかな流れで、脚本とネームの橋渡しをもっとスムーズに出来れば、基本的にはこのままの形で次回以降も踏襲していいのではないかと思っています。

貴重なものが手元に残る

最後に強調しておきたいのが、Excelへのメモ書きの蓄積は絶対に必要(ただしデータ管理にどのソフトを使うかは自由)だということです。これは中盤での試行錯誤や制作に行き詰ったときの解決のスピードを格段に上げてくれるだけではなく、制作後にも貴重なものを残してくれます。それは次の制作にも使える教訓やチェックリストです。作品のクオリティを上げるために注意すべきポイントなどは、制作から離れているときにはあまり浮かびませんが、最前線にいるときはどんどん湧いてきます。自分が自分のために作った要点集は確実に次の制作でも活躍するので創作をする人間にとっては貴重な財産になります。

宣伝

というわけで完成した漫画がこちらになります。
強気なヒロインが追い詰められ完全敗北するまでの姿を描いたソフトリョナ・ヒロピン漫画です。

ヒロイン工学研究所 2020/05/24 20:29

アンケートの活かし方について

多数意見であることは重要じゃない

以前アンケートの活かし方について質問を頂いたことがあったのですが、この問題は前から一度自分なりにまとめておこうと思っていたことでもあったので、この機会に変態趣味に関する考察と合わせて記事にしました。

ヒロイン工学研究所では新作の企画をするときや内容を細かく検討するときに必ず今まで実施したアンケートの回答を精読することにしていますが、これは決して多数意見に従うということではありません。

A,B,C,Dの中で一番好きなものは何ですか?という質問で仮にBが最も多くの票を得たとしても、それだけで「よしじゃあBで行こう」ということにはなることはあまりありません。

理由は、
「何かの得票数が高いということだけがわかっても実際には具体的な制作の指針は立たない」
からです。

多数意見は実態に迫るほど多数じゃなくなる

わかりやすく解説するために「スカトロ」という極端なシチュを例にとって考えてみます。
スカトロは糞や尿などの排泄物をテーマにしたシチュエーションに付けられるタグですが、実際にスカトロに興奮する人たちの心理を詳しく観察すると、そこには二つの全然異質な傾向性が見えてきます。

一つは解放型です。
文明社会では人前での糞尿の排泄は社会的にタブー視されていますが、そうした強力な抑圧が解き放たれて、社会の良識的な秩序が糞尿の奔流によって破壊される光景に興奮や解放感を覚えるタイプです。
おそらく幼児的な心理が強く影響しているタイプだと思われるので、このタイプの読者に対して表現に訴求性を持たせるためには「うんち」や「おしっこ」そのものがもつインパクトが重要になります。
オノマトペ的に表現すれば、
「ぶりぶりぶりィィィ――ッ!」
「じょぼぼぼぼぉッッ!」
といったような止めようのない破壊的奔流のイメージがポイントになってくると思います。

もう一つは羞恥型です。
この場合は逆に、タブーを破壊する解放感ではなく、タブーを犯してしまった文明人が心理的に苛まれること=羞恥にサディズムまたはマゾヒズム的な興奮を覚えます。
ぶっ壊すことに単純に快感を覚える解放型とは対照的に、羞恥型の興奮は複雑かつ倒錯的です。羞恥型は文明人的価値観が人一倍強いがゆえに、人前での排泄行為に屈辱を感じ取りますが、その屈辱が逆に興奮を生みます。
訴求性をもたせるための表現のポイントは排泄物そのものがもつ力ではなく、矛盾や葛藤に晒される良識的な心理の方です。排泄行為をド派手に演出する場合も、目的はあくまでもそんなことをしてしまったヒロインの心理的ダメージを描くことの方にあります。


さて、本題に戻ります。
もし仮にアンケートの結果、見たいシチュエーションのトップが「スカトロ」になった場合、どんな作品を作るべきなのでしょうか?
答えは、
「アンケートの結果からはわからない」
です。

解放型に喜ばれる作品を作れば、羞恥型からは「うんちが見たいわけじゃない」と言われ、羞恥型に喜ばれる作品を作れば「もっとうんちを描け」と言われてしまう可能性があります。

これは
「多数意見であることは具体的な指針を与えてくれない」
だけではなく、
「多数意見を実態に即して細分化すると全く異質なグループに分かれてしまう場合、最初の結果を単純に多数意見として扱っていいのか?」
という問題でもあります。

解放型と羞恥型は対照的ですが決して無関係ではなく、実際の嗜好の中では相互に入り組んでいたりする場合もあります。では、どんな風に入り組んでおり、どんな表現が効果的なのでしょうか?それも「見たいシチュエーションの一位はスカトロ」という結果からは何もわかりません。

「スカトロが人気だったのでスカトロ作品を作ったのにあまりウケなかった」みたいなことが起きる原因はこういうところにあると思われます。なお、話を分かりやすくするためにスカトロという極端な例を取りましたが、これはどんな属性タグに関しても多かれ少なかれ言えることで、ヒロイン工学研究所が関係しているジャンルで言えば「リョナ」などがそうです。

選択回答の扱い

では、どうすればいいのか?アンケートは結局あまり役に立たないのか?と言うとそんなことは決してなくて、この場合の問題はむしろ「回答結果を見ても参考にならないようなアンケート」を作ってしまったことにあります。
例えば「スカトロ」として一括されている嗜好タグの中に実際にはかなり異なるグループが存在することを知っていれば、アンケートを設計する段階で、他の質問を設けて回答者が解放型なのか羞恥型なのかを推測できるように設計しておけばいいわけです。
ただ、このようにより詳しい嗜好の実態に迫れば迫るほど最初に圧倒的多数派に見えていたグループは細分化されていくので、制作の指針を立てるのに役立つレベルの具体的な嗜好タイプが見えてくる段階では圧倒的多数派など存在しなくなっていきます。

こうした理由からヒロイン工学研究所では一部の例外的なケースをのぞいて選択回答における多数意見は重視していません。制作に直接役立つ情報は断然記述回答の方にあるので、むしろ「この人の意見は興味深いが、この人はどういう嗜好タイプなんだろう?」という順番でその回答者の選択回答をチェックするというアプローチが一般的です。

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