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2021年 10月の記事 (6)

有坂総一郎 2021/10/25 13:30

ドイツ戦車の行方

この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》

さて、米帝の方向性はだいたいは固まったからいけるところを進めていくよ。

この世界はイベントトリガー多すぎて作者が管理するのに苦労することこの上ないのだが、まぁ、それだけ作者の妄想じゃなく、作中の人間たちが自由に自分たちの意志で動いていると理解して欲しい。

歴史を作るのは神ならぬ人間なのだ。

おかげで作者が後で苦労するのだが、まぁ、そんなもんだろう。作者の分身である有坂総一郎も自爆だってするし、尻拭いに苦労するんだから、歴史をいじくった責任を負うと言うことでその苦労も受け入れよう。

さて、そんなこんなでドイツだ。そう、ドイツだって世界の主要プレイヤーだ。

ん?中小国?あぁ、そんなもの勘定に入っていない。この世界は列強以外は舞台装置に過ぎん。人間としてのそれなど殆ど価値もない存在だ。そういう世界なのだから仕方がない。この世界は生やさしく甘っちょろい現代的価値観による人間は平等論理など誰一人認識などしていないし、そんなお花畑は真っ先に死ぬ世界なのだ。それこそが帝国主義という世界観だ。それだからこそ、列強は列強として君臨し、世界を支配していたのである。力こそ正義である。

さて、そのドイツは史実よりも遙かに世界に振り回されているといえるだろう。

ナチ政権こそ誕生したが、その基盤は盤石ではなく、保守合同による連立政権といった体だ。しかも、その連立相手である帝政復古派はナチ政権の中枢に食い込んでいて、その領袖がヘルマン・ゲーリングである。

彼を中心に企業連合は帝政派に属し、その豊富な資金力でナチ党の拡大を邪魔している。

企業集団の中核たるクルップ、IGファルベンは帝政派に属し、また反ナチ的なハインケルなども帝政派に名を連ね、半国営化されたユンカースは航空省の傘下となり実質的にゲーリングの子飼いと化している。

史実通り、メッサーシュミットはナチ党に与しているものの、史実ほどに航空省からのバックアップはない状態である。これはエルンスト・ウーデットが日本へ長期出張したままで航空省と結びつけることがなかったことによるものであり、代わりにハインケルが主力戦闘機の主導権を握りつつある状態だ。

同様に急降下馬鹿であるウーデットが急降下爆撃機を主戦力として整備することがないために、四発重爆の開発が史実よりも進むことになって、ドイツ空軍は戦術空軍から戦略空軍へとそのドクトリンが変化している。

だが、変化はそれだけではない。

旧第二帝国は大海艦隊を整備し、世界第二位の海軍を建設したそれであり、海軍も同様に大艦隊復活を狙い帝政派と連携し、虎視眈々と建艦体制を築くことを狙っていた。

そこに軍縮条約の事実上の骨抜きと日英米仏伊の超巡建艦競争が始まったことで代艦建造の英独協定が結ばれた。これは対ソ、対米を意識したものであり、大英帝国が東西から米ソに挟まれないためにバルト海をドイツに抑えさせることを狙った結果によるものだった。

当然、地震に脅威となり得るそれでは困るため隻数制限こそ課したが、その実、排水量の制限をつけなかったことでドイツ側はフリーハンドを得て5万トン級戦艦を建造することも可能となった。これによってH級戦艦相当のそれを建造可能になった。

陸軍は海軍よりも切迫度は遙かに大きく、コメコン結成によって順次予備役を再訓練することで戦時体制移行の際に召集を容易にするという段取りを行いつつ、正面装備の刷新に取り掛かる。

陸軍予算の殆どを人件費に費やしているそれだけに容易に装備の調達を進められないが、軍馬からトラック及び砲兵トラクターへの置き換えによる予算捻出を進め、浮いた予算を戦車や機動砲の開発に注ぎ込むことでヴェルサイユ条約を抵触しない様に陸軍兵制改革を進めていったのだ。

そして、バルカン戦役、満州事変、日ソ衝突による列車砲の活躍が大砲王に刺激を与え、陸軍とは別に装備改変が突き進むことになる。列車砲の鉄道軌道からの解放、すなわち、無限軌道による展開自由度の獲得である。

これは大きな挑戦であった。

鉄道軌道上であれば、車軸を増やすなどして軸重を調整すれば100トンだろうが200トンだろうが運べるのであるが、それを捨てて台車を無限軌道シャーシに置き換えるというものだ。

その果てしない挑戦は履帯幅の拡幅、転輪構造の新規開発へと進み、42~43年頃に実用化の域に達した挟み込み転輪・千鳥足転輪へと進化を遂げた。5年程度の技術進歩である。

だが、当然、その進歩は機甲戦術の大家の目にとまる。

日ソ衝突によって満州や北支、満蒙における日本製戦車のそれによって戦訓が伝わり、快速戦車による電撃戦構想がハインツ・グーデリアンの脳裏には浮かび、彼のスタッフによって検証されるようになった。

だが、ドイツ国内で開発が行われている戦車は独ソ断交によって失敗に終わったⅠ号戦車、開発途上のⅡ号戦車程度であり、Ⅰ号戦車に至っては戦車ではなく、シャーシの再利用による自走砲へ転換するといった惨状であり、グーデリアンの望んだ状態ではない。

そこにクルップが独自で進めていた列車砲の陸上戦艦化の過程で生まれた挟み込み転輪・千鳥足転輪であった。

彼はこれに注目し、兵器局へ持ち込んで極秘でⅡ号戦車のシャーシとして使った場合の試算を行う。そして、当初予定の20mm砲ではなく、37mmないし40mm砲を採用した場合の概算を見積もらせたのである。

また、装甲に関しては必要最低限度に抑えつつ、工夫を行うことを考え、海軍の傾斜装甲を参考にした。

さて、ここまで書けばおわかりだろう。Ⅱ号戦車にしてⅡ号戦車にあらざるモノ。

これがドイツ陸軍における戦争初期において活躍する騎兵戦車の誕生秘話である。

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有坂総一郎 2021/10/16 18:00

ネタバレと解説

さて、ネタバレと解説行くよ。

この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》

今朝の更新分の話題だけれど。

そう、大砲王が目覚めてしまった。奴が目覚めるには十分な刺激であったとは思う。そして、その技術を十分に持ちうるからこそ可能性を提示出来た。

実際にドイツは陸上戦艦を真面目に考えていたし、その発案がドイツ軍需省であったとしても、実際の設計案を提示したのはクルップ社であったことから奴らの鉄の意志を感じずにはいられない。

だが、その実現性は製造するだけなら兎も角、運用するという点については当の本人たちも非現実的だと最終的には闇に葬られる結果になったことは非常に有名な話だと思っている。

しかし、彼らの考えや設計案が現実的に運用可能な水準であったらどうであろうか?

実際問題、80cm列車砲は1400トン近い重量であったが、ドイツ国内からソ連領内まで持ち込まれた。

だが、そこまで極端なものではないにしても、17cm列車砲や28cm列車砲は相当数が量産され、各戦線で活躍し、特に28cm列車砲などはイタリア戦線で大活躍したことが知られている。

今回の視点はそう言った中口径サイズの列車砲だ。

フィスト・オブ・ウォー・シリーズではE-75の車体を流用した牽引台車を使い陸送を可能にしたそれをモデル化している。
ドイツ軍28cm自走砲K3ラステントリーガー&E75“ヘルモーズ”

これを今回はモデルにしている。

E-75は”マイバッハHL234”4ストロークV型12気筒液冷ガソリン800馬力のエンジンを積む予定だったという。その予定時速は40km。

流石に35年時点でそこまでの性能を求めるのは難しい。しかし、17cm列車砲は80トン、28cm列車砲の220トンと比べれば遙かに軽い。

しかも17cm砲は40口径で射程27kmと艦載砲由来の使いやすいそれであるため量産も遙かに容易なのである。史実ではこの17cm列車砲は6基、28cm列車砲の25基に比べれば少ないが、これは本命ではなく置き換え目的だったからだと思われる。

しかし、艦載砲と同サイズであることは量産性が担保されているものであり、70口径にも至る28cm列車砲に比べると遙かに実用難易度は低いと言える。

とまぁ、ここまで書いて気付いている部分を敢えて目を瞑ろうと思った。

17cm級だと所詮は重加農とそれほど射程が違わない。数キロ長ければ良い程度だ。ぶっちゃけこの程度なら通常の重加農を自走化、機動砲化した方がコストは小さいのだ。

だが、後期で出来る17cm重加農は17cm列車砲を上位互換する性能を有しているのだが、牽引時23トンという重量過大かつ牽引車両の不足と能力不足によって満足に運用出来なかった。

よって運用の容易さを狙ってティーガーⅡの車体を利用した自走砲を計画したがそもそもティーガーⅡの車体も問題がある時点でお先真っ暗という時点でお先真っ暗なことは変わらないのである。実際に頓挫している。

とまぁ、ここまで検証してみて、やってみる価値はあるが、代替可能であるし、固体性能ではなく総合火力を求めれば15cm級や10cm級の野砲を自走砲化した方が余程戦局に寄与するという事実の再確認でしかなかった。

なんだが、全くの無駄でもないだけに、時期的には有りだろうと結論に至ったのである。

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有坂総一郎 2021/10/11 13:30

転生者という存在

転生者なんてものは限られた存在だと考えることも出来れば、そうでないとも言えるだろう。

世間一般の転生モノでは多くが限定条件による制限されたものであると考えられる。まぁ、際限なく存在したら世界が壊れるってのもあるし、異分子が少ない方が面倒が少ないという作者側の都合によるものであるのは間違いない。

さて、そこでうちの「このはと」であるが、基本的な姿勢としては転生者は複数存在し、どこにでもいる可能性をかなり初めの段階で示している。

東條英機、平賀譲といった主人公サイド、大角岑生などはかなり特殊なそれであるが別軸として存在している。

では、他国はどうかと言えば、そうだと断言はしていないが、ゲーリングやチャーチルは転生者の可能性があるという前提で登場させている。無論、ドイツの帝政などは転生者が介入している可能性があるだろうし、ハンガリー無双のホルテイ摂政もそうである可能性はある。

作中で山猫ことパジェロを製造している赤菱などは転生者集団がノリと情熱でやってしまったアレな例である。だが、彼らの役割は歴史への介入ではなく、製造中止になってしまったパジェロを自分の手で作り上げるという浪漫の結果であり、歴史介入者になるつもりなど毛頭ない。

そして、今回の更新で登場する「彼女」もまた転生者であるが、これは明確に敵役として登場する最初の人物だと言えるだろう。

まぁ、誰をモチーフにしたのか、候補がいくつかあるだろうが、まぁ誰を想像しても結果は一緒だ。どうせ連中は金太郎飴みたいなそれだからね。

以前からどこかのタイミングでと思ってはいたのだが、タイミングを失ってしまったのと関係しそうな人間を軒並みぬっころしてしまったことで出すに出せなかったという事情でお蔵入りしていたのだが、丁度良い人間とセットで出せそうだと思い、書いてみた。

そのセットで出す人間である与謝野晶子に対しては別に悪意などなにもない。彼女の著作や言動をそのまま利用しただけだから、印象操作もなにもない。

世間のイメージが間違っていたと言うだけの話に過ぎんということだ。

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有坂総一郎 2021/10/07 15:30

陸軍利権族問題

「Pz.Sfl. IVc装輪トラック版?」
「議会陸軍閥の予算争奪問題」
「空軍創設による陸軍利権問題」
というコメントをいただいた。

まずはチップいただいたことに御礼申し上げたい。いつも支援ありがとう。執筆や考証の際のコーヒーブレークに活用させていただいているよ。

さて、本題だ。

前回は自走砲の話をした。まぁ、ここんとこそればっかりなんだが、なんせ、これはドクトリンという陸軍の運用について考えないといけない問題に直結しているだけに大事な部分だからだ。

議会陸軍閥、まぁ、日本で言うところの族議員という奴だね。

族議員はは特定の政策分野に精通して関連する省庁の政策決定に強い影響力を及ぼし、関連業界の利益を擁護してそれらの代弁者の役割も果たす国会議員およびその集団の俗称・・・・・・とウィキペディアにはある。

米大統領にして大魔王の称号をほしいままにするフランクリン・ルーズベルトもウィキペディアの流儀に従えば、海軍利権族になるであろうし、支那利権族になる。

では、陸軍利権族はどういった勢力かと考えると見えてくるモノがある。

例えば、自動車産業だ。フォードやクライスラーなどである。フォードは基本的に反戦論を唱えるけれど戦争における生産では協力している点で考えれば、当初はのってこないだろうが、クライスラーやGMなどはアメリカ陸軍の機動化、自動車化における恩恵が大きいだけに売り込みを図るのは間違いない。

また、この時期だと電機・家電メーカーでしかないレイセオンも開発の仮想製が途絶したレーダーの代わりに食い込んでくる可能性はある。ただ、ミサイル屋、レーダー屋のレイセオンがどう関わってくるかは未知であるが。

そしてトラック業界がこれを見逃すことはないだろうから、マック・トラックスなどがクライスラーなどと同様に売り込みと同様にロビー活動を進めることだろう。

特にこのトラック業界が大きな影響力を発揮するんじゃないかと思う。ニューディール政策で土建業界にそれなりに活気が出て来ているとは言っても、たかが知れているわけで、需要期が過ぎれば落ち目になることを甘受するわけがなく、定期的な需要が発生する軍需に乗り出すのは道理であると言えるだろう。

では、コウイッタ軍需に乗り出したい企業の論理を考えてみる。

現実問題として、アメリカは明らかに陸軍力や陸軍の兵器に関しては日欧に対して遅れている部分がある。特に車両に関しては二歩も三歩も遅れている。それは戦車で碌なモノがないという時点で明白だ。

史実ベースで38年時点で考えてみれば分かるが、日本は九七式中戦車、ソ連はBT-5やBT-7、英帝はマチルダII、巡航戦車 Mk.III、ドイツはⅢ号戦車初期が実用化済みでⅣ号戦車が実用間近であったのに対して、アメリカはM2中戦車すら実用化出来ていない。

そして「このはと」世界の場合、35年ではあるがその出遅れ感は顕著であると言えるだろう。

ドイツはコメコンという存在によってポーランドという緩衝国を失い国境にまでソ連の影響と脅威は迫っている。それによって軍拡への道を史実以上に歩まざるを得ない状態である。作中では明確に語っていないが、海軍の襲撃艦という存在を考えても戦車開発は進展していると考えるべきであろうし、英独の関係良好というそれを考えても一定条件下で黙認はあると考えるべきだ。

ソ連も東西に敵を抱えているという状況である以上、打撃戦力は必要であるし、失脚したとは言ってもジューコフによって極東へは戦車が雑多であっても集結させていたことで起動戦力としての認識は出来ている。よって、開発は史実同様に進んでいると考えて良い。

英帝に関してはマチルダⅠの開発中だけれども、性能不足は明らかで、早々にマチルダⅡを開発する方向に進むだろう。これは満州における戦訓を観戦武官から報告が行くであろうからだ。ひょっとしたらクルセイダーが一足飛びで誕生する可能性がある。どこぞのアレな「聖グロ一の俊足」を実現しかねないのが紅茶狂いだと考えている。

それらに対して、内政も経済も貿易も外交もガタガタになって孤立している米帝において陸軍利権族が巻き返しを図ろうとすれば、遅れている部分である戦車開発と自走砲開発、自動車化の推進によるコンパクトで打撃力と機動力のある電撃戦ドクトリンとなるだろう。

特に自動車社会であり、国内の道路網が整備されている米帝であるだけに相性も良く、国内における展開も容易に出来、欧州に介入する場合でもその特性を活かせることを考えれば説得力があるだろう。

尤も、アジアやアフリカといった地域に投入する場合、著しく相性が悪い可能性が高いが、そこは見ないふりをするだろう。若しくは大量生産によってカバーする考え方かも知れない。

だが、問題は米帝が基本的にモンロー主義であるということだ。

外征陸軍の必要性がないモンロー主義と電撃戦ドクトリンというのは相性が悪い。そもそも、防勢ドクトリンとモンロー主義こそ相性が良いのだ。

そうなれば、戦車の必要性は低下するわけで、史実でもそうだからこそ出遅れていたという話なのだ。

しかし、陸軍予算は有限だ。特に超重爆を列車砲の上位互換として整備する方向性で動いている以上、そちらに予算が取られる。そのために予算縮減を迫られているわけだ。そのしわ寄せは通常兵器や人員に行くしかない。だからこそ、自動車化によって馬匹の全廃、自走砲化による人員削減を行う必要がある。

まぁ、人員削減によって浮いた予算を新兵器へ突っ込んでというそれで進めるしか取れる手段がないのだから仕方がないのだが、退役軍人による失業問題が発生する。これへの手当をどうするかという問題はまた厄介な問題であると言わざるを得ないだろう。

つづく。

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有坂総一郎 2021/10/04 16:00

自走砲化という点での考証

「Pz.Sfl. IVc装輪トラック版?」
「議会陸軍閥の予算争奪問題」
「空軍創設による陸軍利権問題」
というコメントをいただいた。

まずはチップいただいたことに御礼申し上げたい。いつも支援ありがとう。執筆や考証の際のコーヒーブレークに活用させていただいているよ。

さて、本題だ。

Pz.Sfl. IVc・・・・・・実に良いところを突いてきてくれていると思う。

まさにその通りだ。イメージではこれはその範疇にある。

Pz.Sfl. IVc
Pz.Sfl. IVc - World of Tanks Wiki*
グリーレ

この辺を参照しつつ話を進めようか。Pz.Sfl. IVcとグリーレは別個のものであるが、話の進行上では同じ考え方で話せるから併記していると理解願いたい。

さて、グリーレについて先に述べておこう。

チェコ・スコダ社の38(t)戦車戦車のシャーシを流用した自走砲だ。まぁ、干し芋会長の愛車のモドキ進化のそれである。

38(t)戦車の車台に15cm sIG33重歩兵砲を搭載した自走砲として装甲師団および装甲擲弾兵師団の重歩兵砲中隊に配属され、各中隊は6門ずつのグリレを運用したという。

原型砲の15cm sIG33重歩兵砲が歩兵連隊の歩兵砲中隊に2門ずつが装備されたことと合わせて考えると、独立機動出来る自走砲化による集中運用は予算縮減と効率化の面で適当に思える。

反面、歩兵連隊単位での支援火力の低下は否めないため、戦場での師団単位での運用に拘束されるという問題があるだろう。

よって、独立混成旅団の様なバランスの取れた戦力配置を行った編制へ移行する可能性がある。自衛隊で言うところの即応機動連隊が丁度良い編制例になるだろうか。

次にPz.Sfl. IVcについて述べよう。

これは8.8cm Flakを積んだⅣ号戦車のシャーシを転用した自走対空砲だ。

元々は重突撃砲的なモノを志向していたドイツ兵器当局だが、8.8cm Flakが意外な形で対戦車砲としての性能を発揮したことから、方針を転換してオープントップ式の自走対空・対戦車砲として開発された。

開発時期が遅かったと言うことはあるが、理屈は通っているモノで、何か着想に至るイベントさえあれば30年代でも実現出来るモノだから叩き台としては非常に好適と言えるだろう。

だが、これにも落とし穴が存在する。

グリーレについては150馬力程度の発動機で15トン以内に収まる。つまり、30年代でも十分に開発可能なのだが、Pz.Sfl. IVcは30トン弱で400馬力程度の発動機である。

35年当時に存在したライトR-975(空冷星形7気筒)を用いれば400馬力台は十分に発揮可能であるのだが・・・・・・これって中戦車サイズの車両に用いるモノであり、当然、20トン台の車体規模を前提とする様になるわけだ。

ここが落とし穴だ。

このライトR-975を積んだ中戦車であるM2中戦車は39年制式であり、M3中戦車は41年制式である。つまり、シャーシの開発がずっと先という問題なのだ。

自走砲ってものはこの時代では自走砲という枠組みが先にあるんじゃなく、戦車というそれがあって初めて成立する。

よって、グリーレの様な歩兵砲を積んだ自走砲はM2軽戦車を基本として設計することで最短で36年頃に登場させることは出来ると考えられるが、純粋な自走砲としてのそれはやはり40年代までは登場し得ないと考えるべきなのだろう。

あと、ライトR-975という存在もまた厄介な問題を引き起こす原因である。星形発動機を戦車の発動機に用いるなんてのは米帝くらいしか行っていない。

M3中戦車であったり、M4中戦車のあの不細工な格好の原因こそこの星形発動機搭載に起因すると言って良い。要は車高が高くなる原因なのだ。車高が高くなると重心が高くなる。重砲を搭載する自走砲が高重心なんて文字通り「なにを考えているんだ?」という話。

このあたりが米帝の装軌車両に関しての問題となる部分だ。

そこで、出来る限り早期に機動化・自走化を達成するためには、装輪車両というそれが望ましいという一定の結論に至る。実際問題、米帝が自走対空砲を装軌式で開発するのは戦後のことで、それまではハーフトラックであったことから裏付けられていると言えるだろう。

ハーフトラック式の自走対空砲の原型であるM3ハーフトラックなんだが・・・・・・これも39年着想、40年制式というそれだから、正直なところ難しい。

ハーフトラックの概念そのものはシトロエン社のケグレス式ハーフトラックによって実用域に達していた時期であるだけに開発の可能性は十分にあるのだが、このあたりはもう少し妥当な数字を出せるモノを探る必要があると考えている。

だが、逆に単純に装輪式トラックであれば、フォード社やクライスラー社とかのトラックの歴史を調べるだけだから難易度は低いし、あとは対空砲の重量などのバランス取りで十分だろう。

最悪、牽引能力の強化を行ったことで高機動砲化というそれで誤魔化せば良いと考えている。

つづく。

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