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2022年 05月の記事 (20)

有坂総一郎 2022/05/30 17:00

ご心配かけて申し訳ない

とある一件で心配をしていただいて大変ありがたく申し訳なく思う。

それが理由で筆を折るとかそういうことはないので、それは大丈夫であるが、間違った正義感なのかそういったものは誰にとっても不幸な結果しか生まないものだと思う次第。

直接的な支援をいただいている方たちだけでなく、読者として執筆を待っている方も、考証記事などを楽しんでくれている方も、今後とも宜しくお引き立てのほど願いたい。

少しでも考証面で質の高い執筆を心掛けるので変わらぬ有形無形のご支援も宜しく御願いしたい。

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有坂総一郎 2022/05/28 07:00

ジレンマ・トリレンマ

滑腔砲や転用可能性を考えてみているけれど、なかなか難しい。

シンプルに考えるだけで望ましいのは加農砲を戦車砲にすると貫通性能や初速を稼げる。けれど、当然のことだけれど加農砲は榴弾砲や高射砲などよりも遙かに重い。

105mm級を下に列記してみよう。

九一式十糎榴弾砲
砲身重量:343kg
砲列重量:1500kg
砲口径:105mm
砲身長 :2090mm(20口径)
初速:454m/s
最大射程:10800m

九二式十糎加農砲
砲身重量:1172kg
砲列重量:3730kg
砲口径:105mm
砲身長 :4725mm(45口径)
初速:765m/s
最大射程:18200m

試製十糎戦車砲(長)
砲身重量:
砲列重量:4700kg
砲口径:105mm
砲身長 :5759mm(55口径)
初速:900m/s
最大射程:

試製十糎対戦車砲(カト砲)
砲身重量:
砲列重量:
砲口径:105mm
砲身長 :5759mm(55口径)
初速:900m/s
最大射程:

試製砲は何れも戦争末期に開発されたものだから、当然のことではあるが、時代の趨勢に適したそれで開発されている。よって、重量も5トン弱になっている。同様に五式七糎半戦車砲でも3トン弱の重量となっていることから長砲身砲、高初速砲の宿命であると言えるだろう。

九五式重戦車改造車であるジロ車のそれで九二式十糎加農砲が搭載されていたが、本砲が隔螺式 であっても問題が無かったのはそのシャーシの巨大さ故と言えるだろうか。それ以外に先述した砲は鎖栓式のものであるが、戦車砲としてはこちらが一般的である。

ロイヤル・オードナンス55口径120mmライフル砲の砲身重量や砲機構全体のそれも試製砲の段階で同等クラスにまで増大しているが、それは金属素材や冶金技術の進歩の分があるのだろうと推測する。

さて、そう考えるとやはり滑腔砲をでっち上げたくなるのだが、しかしそこで問題がある。試製砲が量産化されるまで概ね1年半から3年程度は掛かるのだ。戦術の五式七糎半戦車砲が1年半、試製五十七粍戦車砲が4年以上、試製十糎対戦車砲(カト砲)も2年程度掛かっている。

タ弾の伝来のタイミング次第では結局間に合わないと判断するべきなんだとは思う。これが常識的判断というモノだろう。しかし、それでは結局、タ弾を対戦車用の砲弾として活用するのに限界が出てくるわけだ。

タ弾の特性はライフル砲、特に高初速砲と相性が悪い。よって、九一式十糎榴弾砲は兎も角、他の700m/s以上の初速を持つ砲で積極的に使うものではないことになる。

そうなると折角、大口径化しても通常の徹甲弾や徹甲榴弾などを使うことになる。タ弾は口径拡大すればそのまま貫徹能力が向上するのにである。正直勿体ない。

では、75~105mm級の低初速砲を戦車砲で用いれば良いかと言えば、それでは逆に通常の徹甲弾や徹甲榴弾の威力が減るだけである。

全くもってあちらを立てればこちらが立たずこちらを立てればあちらが立たずである。

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有坂総一郎 2022/05/27 07:00

滑腔砲とタ弾とMBTモドキと

タ弾つまり成型炸薬弾(HEAT弾)を用いる場合、ライフリングが余計となりその性能を発揮出来ない。

また、高初速だと命中時の存速によって正しく機能せず砲弾が砕けたり威力が低減する。

よって、使用の前提が歩兵砲や山砲となる。実際、これらは200~550m/秒程度の初速となっている。例外は試製機動五十七粍砲の850m/秒くらいか。

九一式十糎榴弾砲において三式穿甲榴弾(タ弾)の場合では射距離1000mで120mm、射距離500mで80mmの装甲を貫通し、一式徹甲弾を使用し射距離1500mで63mm、射距離1000mで70mm、射距離500mで76mm、射距離100mで83mmであるという。

これを見る限り前述の命中時存速で威力が落ちるというのは事実であると考えてよいだろう。

よって、九〇式野砲を戦車砲転用してタ弾を用いる場合、九一式十糎榴弾砲の450m/秒という初速よりも遥かに速い680m/秒であるため一式徹甲弾を使用した場合は射距離1,000m/約70mm、500m/約80mm、タングステン・クロム鋼弾の「特甲」を使用した場合は1,000m/約85mm、500m/約100mmを用いるよりも結果として貫徹能力が低下すると推測出来る。実際に九〇式野砲では三式穿甲榴弾(タ弾)を用いていないことから裏付けられると思われる。

仮にタ弾を積極的に使うという前提ならば、史実通り四一式山砲を活用して射程距離に関わらず75~100mmの装甲を貫徹させることを目指した方が良いだろう。

さて、そこで戦後の話になるが、戦後西側は105mm級ライフル砲へと進んだ。しかし、第三世代MBTは120mm級滑腔砲へと転換している。これは以下の理由からそうなった。

技術レベルの向上に伴い装甲の防御力増強が顕著になり、これを撃破するために高威力の砲が求められたものの、実用上の重量制限から砲の大口径化には制限が付いていた。そこで、HEAT弾とAPDS弾が開発され、以後の対戦車戦闘における主力となったが、この二つの弾種には以下のようにライフリングによって加わる弾体の回転が不利に作用する特徴があった。

HEAT弾
収束させたメタルジェットで相手の装甲を貫徹するため、ライフル砲で発砲すると、着弾時にメタルジェットが遠心力の影響を受けて収束せず、威力が減衰してしまう。
APDS弾
細長い弾体を高速回転させた場合、逆に安定性が低下してしまい、威力・命中率がともに低下してしまう。

上記理由により、戦車砲の分野においては再び、滑腔砲が主流となっている。

よって、タ弾を汎用対戦車砲弾として用いるなら自然と滑腔砲へと進んでしまう。

そしてタ弾の特徴と貫徹能力と砲口径の関係は非常に相性がよく、それを最大限に引き出すことが出来る存在こそ滑腔砲であるのだ。しかも滑腔砲はライフル砲と違い軽量化出来るというオマケ付きである。

ラインメタル55口径120mm滑腔砲とロイヤル・オードナンス55口径120mmライフル砲が1350kg程度と1800kg程度であると考えるならば大分重量を削減可能だ。概ね25%程度の重量減と換算可能だろう。

九二式十糎加農砲をライフル砲から滑腔砲へ仕様変更すると五式七糎半戦車砲程度の重量に押さえることは可能っぽい。初速はそれほどの違いはでないっぽい。前述のラインメタルとロイヤル・オードナンスの初速を調べる限り、多少ラインメタルの方が速い。1750m/秒と1650m/秒である。

となると九二式十糎加農砲の初速は765m/秒から変化なしかむしろ増速する可能性が高い。増速した場合、一説によると1.5倍になるという説もあり、眉唾だが1000m/秒程度にすらなる。多少増えたとして800-900m/秒程度と考えても十分だ。その数字なら五式七糎半戦車砲と同等の数字である。

さてそうなると、問題になるのが初速だ。

先述した通り、高初速はタ弾と相性が悪い。だが、それは一定程度滑腔砲にすることで押さえられる。また、試製機動五十七粍砲の850m/秒でも試験が行われたことから、滑腔砲仕様の九二式十糎加農砲で用いる分は問題ないのではないかと推定可能であろう。

しかし、デメリットもある。命中精度・有効射程がライフル砲にくらべると劣位になる。

だが、それは運用方法である程度誤魔化せると考えられる。待ち伏せや戦列射撃などいくらでも工夫が可能だろう。

よって、タ弾の到来時期次第では105mm級滑腔砲を搭載した戦後MBT級を投入可能ではないだろうか。

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有坂総一郎 2022/05/23 07:00

諸兵科連合部隊の夢幻<5>

戦車師団の総兵力の数字にくらっときたが、それで済ませてはここで可能性を検証する意味が無い。

では、本題である歩兵戦闘車(IFV)にスポットを当てていこう。

歩兵戦闘車の原点は装甲兵員輸送車(APC)に由来する。これは二次大戦時には一定の水準で米独において実現していた。アメリカにおいてはM3ハーフトラックがそれとなるだろう。ドイツにおいてはSd.Kfz.250 ハーフトラックやSd.Kfz.251 ハーフトラック を挙げることが出来る。

さて、それらも多少の武装を施して乗車戦闘が可能な能力はあるが、あくまで輸送がメインとなる。

限定的な交戦能力ではあくまで戦場までの移動手段としてしか利用出来ず、戦場のど真ん中で立ち往生するなど問題もあり、本格的な装甲を付与した交戦能力を有した兵員輸送車を必要とするに至ったのである。

こうして積極的に戦闘へ参加出来るそれがIFVとして発展登場することになるが、それはまたドイツによって生み出されたのである。それがクルツとラングであったが、どちらも西ドイツ軍部においては希望する性能に達しておらず、後にマルダーを開発することになる。同時期フランスもAMX-VCIを開発している。

独仏に遅れること数年、今度はソ連がBMP-1を開発し、これは軽量なため浮航能力を有していた。また、兵員室に8名を収容、ガンポートを備え密閉された兵員室に乗車した歩兵が携行火器を車外へ射撃することが可能であり、これは車両の火力を増強するとともに、歩兵は車外へ出ることなく戦闘が行えるというものであった。

BMP-1は西側諸国に「BMPショック」と言うべき衝撃を与えた。これは後に開発される陸上自衛隊の89式装甲戦闘車にも引き継がれている。

しかし、このガンポートはくせ者であり、装甲に穴を空けてそこに車内から射撃出来るようにしているという構造上、装甲の弱点となっていた。そのため、第1世代IFVに流行した後は第2世代ICVにおいては廃止されることが多かった。だが、89式装甲戦闘車の様な例外もある。

戦後日本において冷戦による北辺防衛は国家防衛上重要なものであり、北海道侵攻を仕掛けてくるであろうソ連のT-80&BMP-2のペアに対抗するというそれによって敵IFVの排除を行うことが求められた。しかし、当時の日本には60式/73式装甲車といったAPCしか存在していなかったため自前のIFVを調達することが急務となっていたのである。また、TK-Xと称され開発中であった90式戦車と同時期に配備することを念頭に開発が進められた。

概ね、第2世代、第3世代のIFVは25-40mm級の機関砲を装備している。89式装甲戦闘車は90口径35mm機関砲、M2ブラッドレー歩兵戦闘車は87口径25mm機関砲、ウォーリア装甲戦闘車は81口径30mm砲、ダルド歩兵戦闘車は80口径25mm機関砲、プーマ装甲歩兵戦闘車は82口径30mm機関砲、Stridsfordon90は70口径40mm機関砲といった具合である。

何れも長砲身の機関砲を装備している。

では、30-40年代にこういった砲がなかったかというとそうでもない。

例えば、ボーフォース40mm機関砲は60口径であり、また、九六式二十五粍機銃も60口径である。

しかも両方とも36年時点で十分に調達可能な代物である。

流石に89式装甲戦闘車に搭載されているエリコンKD 35mm機関砲の初速1300m/秒に比べれば落ちるが、それでも九六式二十五粍機銃は初速900m/秒であり、ボーフォース40mm機関砲初速960m/秒と十分な性能である。

ドイツの3.7cm FlaK 36/37高射機関砲も十分に選択肢に入ると言って良いだろう。
なんだったら初速が落ちるけれどCannone-Mitragliera da 37/54(Breda)というのも選択肢としては悪くないだろう。

開発時期を考えると40年前後とすればここに挙げた選択肢の何れもが可能であるし、3.7cm FlaK 36/37はライセンス生産して一式三十七粍高射機関砲となっているから一番有望なのはこれになりそうではある。兵站の面でも共通化が出来るから望ましい。

ただ、この時期に25mmは兎も角、40mm前後ってのは戦車砲と同然だから過剰な性能とも言えるだろう。場合によっては軽戦車が不要になってしまうことさえ起きそうだ。

となると250kgと軽量で制圧射撃に過剰すぎない九六式二十五粍機銃が一番適当と言うことになりそうだ。だが、陸軍が海軍に頭を下げるとは思えないからラ式二十粍高射機関砲を採用するという流れが適当になりそうだ。

思ったよりも現実的なサイズに収まったな。

これならナトをベースとしなくてもホキの車体延長程度で収まりそうだ。そうすると史実実績の年産500両まで行かなくてもその半分程度なら十分に賄えそうだ。

ふむならば、先述した戦車師団の構想分を十分に整備出来ると踏める。ということは2個戦車師団程度の必要分を賄えると言うことになる。

実現の可能性が見えてきたぞ。

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有坂総一郎 2022/05/22 07:00

諸兵科連合部隊の夢幻<4>

さて、ここまではナトをベースとした歩兵戦闘車の可能性を論じてみた。

流石にこれを量産すると言っても、陸軍予算と配備数が結構シビアになると思う。となると、やはりこれらを優先配備するのは結局は諸兵科連合部隊への集中配備か、各歩兵大隊へ大隊本部用に15~20両程度配備になるか。

仮に大隊本部に20両配備だと、3単位師団だと3個連隊9個大隊だから36年時点の師団数が概ね20個師団程度だから単純計算で3600両・・・・・・。

ホハとホキの年産500両を考えるとその7倍だから、まぁ、実現不可能であるとは思わないが、とてもじゃないが戦時予算でもない限り整備不可能だな。

戦車師団付属の機動歩兵連隊が歩兵3個大隊(大隊は3個中隊、機関銃1個中隊)に連隊砲1個中隊、整備1個中隊で、人員約3000名、戦車22両と自動車280両であるというから、ざっくり計算で自動車1両あたり10名計算。

ということはナトのシャーシ流用の歩兵戦闘車(IFV)を250~300両程度必要とするわけだ。流石にそれは多過ぎるから、大隊本部に20両ずつで60両と連隊本部の分で30両程度とざっくり80~100両と換算すると現実性が出てくるか。

後の分はホハやホキで賄えば構わないだろう。定数を満たせない分は従来通りのトラックを充当する形で構わない。実際問題としてトラックや兵員輸送車をゼロにするわけにもいかないし、そもそも生産能力が追いつかない。

さて、そうすると、機動歩兵1個連隊に対して100両の配備と仮定して話を続けようか。

次は師団捜索隊の分を計算する。師団捜索隊の基本編制は以下の通り。

本部
 乗馬中隊 - 通常の乗馬騎兵
 装甲車中隊
  装甲車小隊 - 軽装甲車 5両
  乗車小隊 - 自動車化騎兵(乗用車 1両、自動貨車 4両)

これは乙編制警備師団のそれだが、これ以上の規模になると普通の捜索連隊規模になるから上記を基準に換算する。

本部 - 歩兵戦闘車 2両
 装甲車中隊×2
  装甲車小隊 - 軽戦車/歩兵戦闘車 5両
  乗車小隊 - 自動車化騎兵(歩兵戦闘車 1両、装甲兵車 4両)
合計:軽戦車0-10両、歩兵戦闘車4-14両、装甲兵車8両

次に戦車師団の師団捜索隊について。

本部
軽戦車中隊(2-3コ) - 軽戦車(九五式軽戦車など)10両
乗車中隊
砲戦車中隊   - 砲戦車(実際には九七式中戦車や軽戦車で代用)10両、軽戦車2両
整備中隊

これを規準にすると以下のような数字だろう。

本部
軽戦車中隊×2-3 - 軽戦車 20-30両
乗車中隊 - 自動車化騎兵(歩兵戦闘車 4両、装甲兵車 16両)
砲戦車中隊 - 砲戦車 12両
整備中隊 - 自動貨車 8-12両程度?


明確な計算はややこしいからしないが、戦車1個師団辺りの定数は概ね以下のような数字になりそうだと考える。※機甲軍創設時の戦車第1師団を基礎に算定。

戦車連隊×4
 1個連隊定数:中戦車40両
機動歩兵連隊
 歩兵戦闘車100両、軽戦車20両、装甲兵車0-150両、自動貨車0-150両
機動砲兵連隊
 機動九〇式野砲12門、機動九一式十糎榴弾砲24門、自動貨車12両
戦車師団速射砲隊
 一式機動四十七粍砲12門
戦車師団捜索隊
 軽戦車20-30両、歩兵戦闘車4両、装甲兵車16両、砲戦車12両、自動貨車12両
戦車師団防空隊
 対空戦車15両
戦車師団工兵隊
 自動貨車30両
戦車師団整備隊
 自動貨車30両
戦車師団輜重隊
 自動貨車200両

総数としては以下の通り。
中戦車160両
軽戦車40-50両
砲戦車12両
対空戦車15両
歩兵戦闘車104両
装甲兵車16-166両
自動貨車284-434両
機動野砲12門
機動榴弾砲24門
機動速射砲12門

車両:781両、砲48門

改めて思うが、えげつない規模だな。

続く

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